拓也は戸惑っていた。突然の華雄の質問に……その、内容に…
「………っ」
何も答えられずに居た。話す事もごまかす事も出来ずに……
彼女たちの疑問は当然だった。
拓也は気を失う前に力を使った。だがこの世界では、拓也の力を解明する技術が無いのだ。
何故あの男達が突然命を落としたのか、それは拓也が言わなければ決して解明されないのが事実であった。
「(どうしよう……、力を使ったんだ、やっぱりあの時傍にいた人たちは……)」
何も答えない拓也を見て華雄は更に声を上げた。
「どうした!!なにも、答えられんか!!どうやってあの者たちをこr『ドスッ!!』ゴフッ!!」
霞が華雄を殴った。
「ゆ…月!向こうへ行こう??ね??挨拶も出来たし、後は私達がやっとくから、ね??」
「え、詠ちゃん??どうしたのっ??まだ、お話してるのに」
「いいから、いいから、行こう月」
詠が月の手を引いて部屋から出て行った。
その時、華雄も立ち上がり、霞に怒鳴る。
「張遼!!何をする!!」
「ドアホッ!!月の前で何の話しとんねん!!」
華雄の声より大きな声で言い返す。
「か…賈駆が、その事について分からんと言ったから本人に聞こうと…」
華雄が理由を話すが、霞は呆れてため息を漏らした。
「はぁぁ、……この際やし聞いとくは、どないしてあいつ等やったんや??」
「…………」
霞は拓也に向き直り質問しなおしたが、拓也は黙り込んだままだった。
「(……僕が話さなければ、誰も分からないままだ。…………でも)」
拓也の頭の中には、昔…先生と話した事が蘇ってきた。
_回想_
「拓也」
「なに?先生」
そこは、とても小さな針灸医の家で、その中の診察室の中で二人は話していた。
「いつか君にも、全てを話せる人が出来るといいね…」
先生は優しく僕に笑いかけてくれた……だが僕は……
「!!……いらない!!そんなのっ、いらない!!信用なんて出来ない!!
皆、僕を憎んでる!!僕を見て、脅えてる!!気味悪がってる!!」
拓也は声を張り上げ、先生に向かって大声で叫んだ。
「そんな人たちの中でなんて、無理だよ…、もしこの力がなくなっても僕は誰かを殺してるんだ…、
『僕』を見てくれる人なんていない」
「でも、見て欲しいんだろう??優しさが欲しいんだろう??……今は、見つからないかもしれない、でも!!
いつか、君の話を、言葉を、受け入れてくれる人が見つかるよ、絶対だ、そして君が話す事もまた……前に進む事の一つだよ」
_回想終了_
「(先生……それが『今』なのかな……この子たちが?…先生以外で優しいと感じたこの子たちが……)」
拓也が考えを纏めてる時に霞から声を掛けられた。
「やっぱり、話せへんか??」
「………何時までも、立ち止まってたら……先生に笑われるよね……」
「ん??何??」
霞には、拓也の呟いた言葉の意味が分からなかった。
「ううん、なんでもない、話すよ……全部」
「え??あ…ああ、うん」
「出来れば、他言無用にして欲しい」
拓也がそう言うと全員(月、詠以外)が座り話を聞く体制をとった。
_過去のお話_
あれは、僕が七歳の頃、何時もどうりに学校へ行き、友達と遊んでいた時の事だった。
些細な事で友達と取っ組み合いの喧嘩になった。その時に僕は思ったんだ。
―――――お前なんて、消えちゃえ―――――
そう……思った時だった。突然、友達は胸を押さえて苦しみだし、数秒後その場に倒れ動かなくなった。
僕はまだ、自覚も無く、倒れた友達に近づき何度も声を掛けたが……動かない……
僕は怖くなって近くに居た大人に助けを求め、そのまま病院に行ったが、その友達は当に亡くなっていた。
医師達も警察達も理由は分からず、僕は何度も取り調べを受けていた。
考えられる原因である僕は、現代最新医学の機材が置いてある場所で何度も、検査や調査と言った実験を行われていた。
同じように喧嘩をさせられたり、体に薬を投与させられたり、実験は様々だった。
それから原因が分かったのは10ヶ月後だった。
僕は自分の持つ高密度の氣のような者で相手を包み、相手の体の全機能を停止させる……そう言うものだった。
そして僕の危険性を知った医師や警官達は国に報告し、国は世界に告発した。
そして世界が僕に下した結果は、死刑または終身刑……用は危険なので飼い殺しにしようとの事だった。
僕はそれを聞かされ、怖くなりそこから逃げ出した……
僕は逃げ出し色んな所へ逃げたが……名も、顔も公表されている…何処に行っても、回りの人たちは離れていった。
そして世界は、僕を殺す事を罪にしないと…その上賞金を出すと公表した。
その額はとんでもない物で、行く先々で僕は命を狙われる者となった。
そして僕は逃げ出して向かった先は一つだった。
楽しい思い出のある家に僕は向かった。
母さんなら……父さんなら、助けてくれる!!そんな子供の考えだった……僕は、甘かった…
夕方、もう日は沈みかけている時に家に着いた。
そして、中に入り僕は母さんに助けを求めた。
「母さん!!助けて!!皆が僕をっ!!――――――っ!!」
家に入り助けを求め、リビングに入った。
そこには、母さんが驚いた表情で僕を見ていた。
「どうして、……拓也が??…此処に……いるの…??」
「えっ??に、逃げてきたんだ!!皆!怖くて!」
僕は一度俯いたが、直ぐに顔を上げた………
だがそこには、母さんの……まるで、死んでいる者を見るような瞳で僕を見ていた。
「か、母さん??」
僕が母さんを呼ぶと表情は戻り、前に見ていた母さんのようだった。
その日、僕は家で休む事にし、久しく自分の部屋に入る。
「今日はもう疲れたでしょう??ゆっくり休みなさい」
「ありがとう、母さん」
僕は部屋に入り、ベットに倒れこんだ。
―――――そして、深夜――――――
僕は布団に顔を埋めながら眠れずに居た。
夕方に見た、母さんのあの目が忘れられずに……
そんな時、僕の部屋の扉が開き、誰かが入ってきた。
「………拓也……」
母さんの声だ………
僕は少し安心してしまって居た―――――だが、次に放たれる言葉を聞き僕は――――――
「…拓也…どうして……戻ってきたの……どうして………生まれてきたの……」
「(――――――っ!!??)」
え?母さん?今……なんて??…どうして…生まれてきた??
「貴方の所為で……、貴方を…産んでしまったせいで所為で…私は……」
そん…な…、母さん……僕は……
「せめて、産んでしまった私の手で………………殺してあげる」
僕は怖くなり、布団から起き上がる。
すると、数秒前まで僕の頭があった所に包丁が突き刺さる。
「か、かあ……さん…??」
「貴方……起きていたの??しょうがない子……大丈夫…直に痛くなくなるから……」
母さんは包丁を抜き、腕を振り上げて、包丁を振り下ろす。
僕は、窓を突き破り外に出た。幸い僕の部屋は一階で、突き破った勢いで走り出した。
僕は足を止め、後を振り向くと、母さんがそのまま追いかけてきている。
周りは真っ暗で月の光だけがその場の明りだった。
「母さん!!どう…して…!!」
「貴方がいけないの!!貴方が生まれたから!!………だから!!私の汚名を晴らすには、
私自身の手で貴方を殺す他はないの!!これ以上私に恥をかかせないで!!!」
僕は、ショックだった。
母さんだけは……僕を守ってくれると思ったから…………
「僕の……存在は…恥?………」
僕の呟きは母さんには聞こえず、僕は再び走り出した。
――――世界の敵――――
「嫌だ……」
――――赦されない存在――――
「……違う」
――――世界の異物――――
「違う!!『俺は』!!」
走り続ける俺に追い付けず、叫びながら走ってくる母さん。
その姿は最早、親の姿ではない…………
「貴方を生んだ所為で私の人生は滅茶苦茶よ!!アンタなんか…」
もう、振り向かない……
ただひたすらに、走った。
「…死んでしまいなさい!!!!!!」
・
・・
・・・
・・・・
『あの女』と別れてから、約9年。
俺は、17歳になる年だった。
あれから、俺は色々な事を犯した。
殺人や窃盗、生きる為になら何でもした。
だが、その年の夏、変化は訪れた。
何時もは場所を転々としてきたが、病気にかかってしまった。
何時もなら近くの店に入り盗むのだが、生憎この付近は店が無く在るのは小さな針灸医だった。
病院なら薬の1つも有るのだろうが、俺には針灸医の事を良く知らなかった。
「ここに薬が有るかは知らないけど入ってみるか」
俺は中に入り辺りを見回した。
そこには………………
「ん??あ………TVで見た……コホンッ!!……」
「お前!!今すぐ薬を寄越せ!!通報でもしてみろ、その前に殺すからな!!!!」
そこには、白衣の若い男が居た。
「悪いね、此処には薬は置いてないんだ。消毒液くらいなら有るんだけど………
病気?どういう症状だい??良かったら見せてくれないか??」
「………嫌だ…、本当に薬は無いのか?…」
「うん、なんなら一緒に探すかい?と言うより、診察室を見たほうが早い。こっちだ」
第一印象は変なヤツ、だった。
俺の事知らない奴なんていない。それなのにコイツ、なんでこんなに普通に………
「此処が診察室だ……………どう??何にも無いだろう??どうにも儲からなくてね、こんな場所だから人も来ないんだ」
そこには、木で出来た机と寝台と針が置いてあると思う引き出しだけだった。
「…………」
「君の事は知っているよ……」
やっぱりコイツも………
「災難だったね。その力の所為で随分と苦労したんだろう??」
は??なにを言ってるんだ??この男は…
「アンタは怖くないのか無いのか?俺だってその気になれば、何時だってアンタを殺せるんだぞ!!」
「でも、君は殺しをしたい訳じゃないだろう??君の力が働いたのは9年も前の話だ。
それに、君はもう制御の仕方を分かってるじゃないか。」
「したくなくても!!襲って来るなら、殺すしかないじゃないか!!!!」
俺は泣きそうになっていた。いままでは誰も近づいては来ない。
でもコイツは、少しでも、ほんの少しだけだけど、『俺を』理解してくれていた。
「9年間……よく一人で生きてきたな………偉かったな」
「――っ!!??」
何でこの人は……僕を拒まない…
危険な存在なのに、怖いはずなのになんで………
「…………なぁ、行くところが無いなら、此処で暮らすか??」
「――っは!?な、何…言ってんだよ……」
「幸い此処には俺だけしか住んでない、人通りも大分少ない。それに、病気なら治してやれる。
これが一番の目的なんだが、君が普通に暮らせる場所を作ってあげたい」
「だから!!なんでそこまですんだよ!!他人の事なんてほっとけばいいのに……」
僕がそう言うと、彼は笑って答えた。
「生まれたからには、君は全ての感情を知る権利がある。怒り、哀しみ、喜び、憎しみ、楽しみ。
だから君は、絶望を知り、幸福になれ。」
…………………訳が分からない……なんで?……
「何でそこまでするんだ??」
「不平等ってのが嫌いなだけさ、俺は」
…たったそれだけの理由で??僕を庇うのか?………
「………フフッ、変な奴………」
ホント、変な奴………
笑ったのは何年ぶりだろう………でも、良い気分だ……嬉しい。
「そうと決まれば、先ずは君の症状を見せてもらおうかな??病気なんだろ??」
「うん……」
それから、その人に見てもらい針を打ってもらったら、凄く楽になった。
その人の名前は「本田 琥珀」と言うらしい、僕は先生と呼ぶ事にした。
それからの日々は今までとは違い、とても楽しく、とても……幸せだった。
それから2年たった時、この辺りが騒がしくなり。
先生が話を聞いて、慌てて返ってきた。
「拓也!!」
「どうしたの??先生??」
「君の足取りを追って国の連中が此処まで着たんだ!!」
僕は、その時ある事を考えていた。
「(やっぱり…此処まで来たんだ、先生には悪いけどそろそろ不味いよね)」
僕は考えをまとめて、先生に話を切り出した。
「先生」
「ん??どうした??拓也」
「僕は、此処から出て行くよ……」
僕の言葉に驚き、先生は「どうしてだ??」と疑問をぶつけてきた。
「僕を匿っている事がばれれば先生にも危害が及ぶ、それにもう十分、幸せだったから……僕は、もっと強くなれるよ」
「もう……決めたのか?」
「うん……ごめん…先生…有難う」
僕は裏口から出て、出来るだけ遠くに逃げた。
先生から離れるように…………
それから数日が経った時、僕の体に異変が起こった。
突如、体が光に包まれ、その途中で意識を失う……
・
・・
・・・
・・・・
「そして、気付けば此処の近くの荒野に倒れていた。……これが僕の過去、そして僕の力……」
ようやく話し終ったが、僕は俯いていて、前を向いていない……皆の顔を見るのが怖くて………………………。
あとがきです。
今回のお話はどうでしたか??
予告:拓也は生きる為に会得した『無手』で賊との戦闘に赴く。
「僕の力が守るために使えるのなら……」
と言う事で、次回!!
ではでは~~~~~~
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長かった…
お待たせしました。とりあえずしんどかったですwww
今回の感想も期待しています。