No.757302

真・恋姫無双 ~今度こそ君と共に~ 第6話

こちらの投稿も久しぶりとなります。

そして今回、また外史譚から1名登場します。

では第6話どうぞ。

2015-02-09 14:27:12 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:8314   閲覧ユーザー数:6357

包(魯粛)が一刀に仕え始めると精力的に行動を開始した。

 

まずは一刀が提案した物を作る為、人集めを開始、その人を集める為にはお金や米が必要なのだが、ここは今まで商人として信用と実績がある包が出すということで確実に集めることができた。

 

そして集めた人材をそれぞれ分けると、一刀は予め指導していた者に教え込み、その指示通りに生産等を始めた。

 

一刀が提案した物とは紙の生産や千歯扱き(米や麦を脱穀する農具)や備中鍬、シャベルなど農具の開発、そして菜種粕や草木灰、魚粕、貝殻を使っての肥料の改良を行い農作物の収益向上に努めた。

 

その結果、これらの商品が売れ、更に改良した生産物や農作物の質が向上して以前より高価で売れるなど、その結果地域の住人の暮らしは以前と比べ良くなり、一刀の評判もそれと合わせ上がっていった。

 

それと平行して一刀や雪蓮を慕う者も続々と集まってきた。

 

これを見て冥琳がある提案をした。

 

一刀の官位取得の話である。

 

「ふむ…これだけ人が集まれば、何時までも一刀を無位無官にさせておくのは拙いな」

 

「何で拙いのよ?」

 

元々地位には拘っていなかったが、今の環境にすっかり落ち着いてしまった雪蓮は何故という顔をしているが、冥琳はそれを諭す様に言う。

 

「雪蓮、少々腑抜けてないのか?よく考えてもみろ。今のままで幾ら人数が集まっても所詮侠のままだ、それなら県令や太守の地位でも受けた方が、今後の仕事もやりやすくなるだろう?」

 

冥琳の考えではこの先訪れる黄巾党の乱において、このまま義勇軍として参加するよりも先に官位を戴いて官軍として参戦すれば、無位無官の者よりも地位が上がりやすくなるという思惑があった。

 

「それは……確かに冥琳の言う通りね」

 

「でも県令や太守の地位は簡単に貰えるの?」

 

冥琳の説明を聞くと雪蓮も漸く納得したが、それとは別に一刀は疑問の声を上げる。

 

それは当然の事であった。一刀は以前の外史で孫呉独立の際に勢力微弱で苦労してきたのだから、そんな何処の馬の骨とも分からない人物に行き成りそのような地位が貰えるのかと。

 

「それは私と包に任せておいてくれ」

 

だが冥琳と包は何やら自信ありげな表情を浮かべている。それを見て一刀は冥琳らに目算があるのだろうと判断して

 

「分かった。二人に任せるけど無理したら駄目だからね」

 

「ああ、分かっているさ。包と相談してやるさ」

 

「ええ、そんな事は私らに任せておいて」

 

二人は一刀の心配を余所に自信ありげに答えたのであった。

 

するとしばらくして一刀の元に勅使がやって来て、正式に居巣県(揚州)の県令の地位を受けた。

 

流石の一刀のこれには驚いた。

 

「本当に来たけど…どういう方法を使ったの?」

 

一刀は冥琳と包の手腕を感嘆したが、流石にどういう方法で官位を取得させたのか聞いてみた。

 

「理由は簡単だ、包が今まで商人として取引した相手の中で何人か賄賂を要求した者がいる。まあ仕方無しにそれを払ったのだが今度はそれを利用させて貰った」

 

冥琳は包の賄賂相手に逆に脅しを掛け、一刀の官位獲得に動く様に要求したのであった。

 

「だけど、それをしたら相手に恨みを買うんじゃないの?」

 

「それは心配しなくていいわよ。成功したら魯家が資金を出して協力すると言ったら喜んで動いてくれたわ」

 

包は海千山千の商人らしく、ちゃんと飴と鞭を上手く使い分けていた。

 

それを聞いた有力者も馬鹿では無く魯家が背後にいるとなれば、その力添えで中央への出世が可能と考え喜んで動いた結果、無事一刀の県令の地位を受けることができ、協力した有力者も魯家のバックアップがあったお蔭で後日、官位が上がり別の土地に異動となったのであった。

こうした経緯で一刀が県令に就任すると、街の区画整理や今まで高く複雑だった税を四公六民に一本化、更に悪徳役人の排除、商業の自由化として楽市楽座を行うなど民の評判も更に上がり順風満帆かと思ったのだが、ある問題が上がっていた。

 

今後に備え人材の確保であった。

 

現状では一刀や雪蓮、冥琳、包で仕事を何とか賄っているが何れ、勢力が拡大した場合、慌ててそのような有為な人材をすぐに確保することが難しい。

 

だから今の内に一刀は

 

“能力のある者なら身分を問わず採用、そして地位も与える”

 

という方針を打ち出した。この方針により町人・農民、更に流民であろうと、とにかく能力があればそれなりの地位が与えられるのだが、採用の武官担当が普段お気楽モードであるが『小覇王』と呼ばれた雪蓮、文官部門がかつての『呉の大都督』で美周嬢と謳われた冥琳だから、この二人を満足させる実力者はそうそういるはずが無い。だから採用の基準のレベルが自然と高い物となっていた。

 

大勢力であれば余裕を持って人材育成できるが、特に今は、勢力の基盤を決める大事な時期、中途半端な実力では重用することはできない。だから今までの試験の結果、一般的な力量の持った者の採用はあったものの期待していた将軍格や軍師格の採用は今のところ無かった。

 

そんな中、街中で文官・武官の募集の立て札を目にして立っているある女性がいた。

 

「ふむ……こんな田舎の街でも人材を求めているとはね…」

 

噂によるとここの県令は『天の御遣い』としてこの地に舞い降り県令に就任してから、領民から大層慕われているらしいし、確かにこの街の人を見ると本当に良い笑顔を浮かべている様に見えるよね。

 

それでここ以前来た時よりも街が盛んで活気がある。

 

「それにそろそろ路銀やお母さんに仕送る金が無くなりそうだからね~ 。まあ取り敢えず会うかどうかに情報収集しましょうか」

 

そして情報収集の為、一軒の飯屋に入り食事をしながら、そこの店主に一刀の噂や人隣りを聞いてみた。

 

「姉さん、旅の人かい。最初見た時、旦那がここらを仕切っていた孫策様と周瑜様を引き連れて、楽しそうに両手を組んで歩いてのを見て驚いたぜ」

 

「だから噂じゃ御使いの旦那、孫策様と勝負して勝って、孫策様が旦那の子分になった言う話らしいですぜ」

 

「本当かい?その話」

 

女性は店主を脅かさない程度に眼光を鋭くして聞く。

 

ここの雪蓮は侠として「血濡れの孫策」として名を上げていたので、腕に自信ある人物は雪蓮の強さは噂で知っていたのであった。

 

だから女性は雪蓮に勝った一刀に更に興味を持った。

 

「あっしも直接見た訳じゃないですから、飽く迄も噂ですぜ、噂。ですがここら大旦那の魯家の魯粛様も御使い様に仕えているから、強ち嘘じゃないと思いますぜ」

 

そして商人として有名な魯粛が一刀に仕えていると聞いて更に興味が湧いた。

 

「だけど旦那が県令になってから税が軽く、分かりやすくなったし、それに威張らねえところいいよな」

 

「それだけ皆が慕っていたら、仕官の希望者も多いんじゃないのか」

 

「ところが試験官がさっき言っていた孫策様と周瑜様だが、この二人がすげぇのなんので、今まで受けた者でまだ二人を満足させた者が居ねえという話らしいですぜ。お客さんも仕官するなら、相当頑張らねえとヤバいですぜ」

 

「それに丁度、あそこがいるのが旦那と孫策様、それに周瑜様が歩いていますぜ」

 

店主が遠く指した方に一刀たちがしゃべりながら、街を歩いているところであった。

 

(「ふ~ん。あの男、見た目はあまり強くなさそうね。それにもう一人の女は、何、あれ?何か罰を受けているみたいね……」)

 

その女性は一刀らの姿を見て、少々がっかりした様であったが、別に急ぐ用事も無かったので、取り敢えず一刀に会うだけ会ってみようと決めた。

 

「そうか、いい話を聞かせて貰った。邪魔したね」

 

「あぁ、別にかまいませんぜ」

 

女性は店主に礼を言って店を出て、一刀たちの方向に向け歩いて行った。

一方、一刀たちは

 

「ちょっと~冥琳、離してよ~一刀、助けて~」

 

「何を言っているのだ。お前の仕事は兵の教練だけやって終わりじゃないのだ、それ以外の書類仕事があるのだ、とっと城に戻るぞ!」

 

「雪蓮、流石にこれは助けられないよ。仕事をサボってお酒を飲もうとして……ハァ、そこのところは全く変わってないな…」

 

一刀たちが街に居た理由は、雪蓮が仕事をサボり酒屋で酒を飲もうとしたところ、一刀と冥琳が見つけその場で確保、そして城に連れて帰る途中であった。

 

そして一刀は雪蓮のサボり癖が以前と変わっていないことに苦笑していた。

 

一刀はここである事を思い出す。

 

「冥琳、病気の方は大丈夫か?」

 

「ああ前の世界とは違い、病の場所は既に知っているからな。一刀、もうあの時の別れの悲しみは、二度と味わいたくなど無い。だから、記憶が戻ってからお前の言う通り、早く医者に見て貰ったお蔭で、もうすぐ完治するらしい」

 

一刀は記憶が戻ってから念の為に、医者に冥琳の病を調べて貰ったところ、やはり兆候が出ていたが早期の発見であったため、既に完治の方向に向かっていた。

 

「ねぇ…本当に大丈夫なの?」

 

さっきまで騒いでいた雪蓮が心配そうに冥琳に声を掛ける。

 

「ああ心配ない…前にも言っただろう。今度こそ一刀の子供を産んでみせるとだからまだまだ死ぬ気はないし、雪蓮とのこの戦い負ける訳にはいかないからな」

 

冥琳は雪蓮の心配に感謝しつつ、強気な発言で雪蓮を挑発する。

 

「見てなさい冥琳、私も負けないわよ!」

 

雪蓮は冥琳に確保された状態で言い返すが

 

「負けないのは良い事だが、それをするならまずは仕事をしてからの話だな」

 

「え~~~!」

 

冥琳から正論を受けると叫び声しか上げれない雪蓮であった。

 

すると三人の前に先程の女性が現れ

 

「失礼するね、天の御遣いさん。私の名前は太史子義、貴方に勝負を挑みに来たわ♪」

 

三人は突然の乱入者に唖然としたのであった。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
37
6

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択