No.752819

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

ショッピングモールの攻防

2015-01-21 14:11:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:9649   閲覧ユーザー数:1603

『チィ、邪魔すんじゃねぇよガキャアッ!!!』

 

「くっ…!!」

 

狼男―――ルーパスの爪で剣を弾き返され、一歩後退するディアーリーズ。しかし後ろには真優と幼い子供がいる為、これ以上後ろに下がる訳にはいかない。

 

『ゴミクズな人間風情がよぉ、俺に楯突こうたぁ良い度胸してんじゃねぇか、あぁ!?』

 

「そのゴミクズを、甘く見ないで貰いたいですね!!」

 

『その態度がうざってぇんだよクソガキがぁっ!!』

 

ルーパスが爪を振るい、何本もの斬撃がディアーリーズに襲い掛かる。ディアーリーズも負けじとレオーネで攻撃を受け止め続けるが、ルーパスの攻撃速度が速過ぎて上手く反撃の隙を突く事が出来ない。

 

(くそ、上手く隙を突ければ良いのに…!!)

 

『オラオラオラオラオラァッ!!! カスはとっとと死ねば良いんだよ、ヒャハハハハハハハハハッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら、カスなお前も死ぬべきだよなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ!? んだと―――ごべぁっ!?』

 

真横から飛んできたBlazの飛び蹴りが、ルーパスの顔面に見事炸裂。吹っ飛んだルーパスは洋服コーナーの中に頭から突っ込み、Blazはディアーリーズ達の前に着地する。

 

「Blazさん…!」

 

「たく、お前一人で突っ走ってんじゃねぇよ、ただでさえ広いんだからな。支配人から言われた事をもう忘れやがったのか?」

 

「うぐ……すみません。殺されかけてる人を見ると、いても立ってもいられないもので…」

 

「お前なぁ……ま、そこがお前の良いところって奴か?」

 

『やってくれんじゃねぇか屑共がよぉっ!!!』

 

「「!」」

 

散らばった洋服の中からルーパスが再び飛び出し、振るってきた爪をBlazが大剣で防ぐ。

 

「おうおう、また無駄に沸点低そうな奴が出てきたな。ちったぁカルシウム取りやがれカルシウム」

 

『カルシウムだぁ? 良いぜぇ、テメェぶっ殺した後にテメェの骨で取ってやらぁ!!!』

 

「上等だ、腹壊しても知らねぇぞワンちゃんよぉっ!!!」

 

互いに挑発しながら、激しい攻防を繰り広げるBlazとルーパス。その一方で、ディアーリーズは真優の右腕の傷を治癒魔法で治療していた。

 

≪リカバー・ナウ≫

 

「…よし、これで治りました」

 

「あ、えっと…」

 

「初めまして、僕はウルティムスです。他に怪我はありませんか?」

 

「い、いえ、大丈夫です。この子も無事ですから…」

 

「そうですか、それは良かった」

 

ディアーリーズは真優と子供の頭を撫でてから、ルーパスとBlazのいる方向へと振り返る……この時、真優が思わず顔を赤らめていた事にディアーリーズは気付かない。

 

「「「「「オォォオォォォオオォォ…」」」」」

 

「く、まだゾンビ共が…!!」

 

≪ジャイアント・ナウ≫

 

ディアーリーズ達の前には、再びゾンビの大群が出現。ディアーリーズは真優と子供を守るように構えるが、その直後に何体かのゾンビが巨大な右手に押し潰され、更に数体のゾンビが射殺されて細切れにされる。

 

「やれやれ、本当に足が速いですねディアさんも」

 

「ぜぇ、ぜぇ、やっと追いついた…!」

 

「全く、少しはアタシ等の事も頼って頂戴よ!!」

 

「刃さん、テレンスさんと楓さんも……よし、出でよ(アデアット)十字架(クロス)!!」

 

刃が変身したクリムゾン、更にテレンスと楓も合流した事で余裕が出来た為、ディアーリーズはすかさず左腕を巨大な鉤爪に変化させる。

 

「僕は奴等を殲滅します、真優さんとその子の事をお願いします!!」

 

「OK、任されたよ!!」

 

「気を付けろよ!!」

 

「では、私はそちらに加勢させて貰いましょうか」

 

「はい!! うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

真優と子供を二人に任せ、ディアーリーズとクリムゾンはそれぞれの武器で襲い来るゾンビを片っ端から斬り裂いていく。ゾンビ自体も動きが鈍い上に耐久力も高くないが為に、殲滅にはそう時間もかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘルズファングッ!!」

 

『ごぶ、げはぁ!? ぐ、テメェ…!!』

 

一方で、Blazとルーパスの戦闘も更に激化していた。Blazのパンチとアッパーを連続で喰らったルーパスが後方に下がりながら石柱を爪で斬り裂き、崩れる天井の瓦礫をBlazの大剣で次々と弾き飛ばされる。

 

『屈辱だぜ!! テメェみたいなグズな人間が、この俺様に楯突くなんざよぉ…!!』

 

「そのグズな人間に追い詰められてる奴が言っても、何の説得力も感じねぇなぁ!! このまま尻尾巻いて逃げても良いんだぜ!?」

 

『図に乗るなよ、白髪頭ァッ!!』

 

「ぬ、ぐおぉぉぉぉぉぉ……デッドスパイク!!」

 

ルーパスの咆哮が周囲に巨大な衝撃波を放ち、吹っ飛ばされたBlazは大剣を床に突き刺し、吹っ飛ばされる勢いをどうにか殺し切ってから大剣を真上に斬り上げ、獣のような衝撃波をルーパスのいる方向に飛ばして爆発を引き起こさせる。

 

『ガルルルルァッ!!』

 

「!? ぐぉわ!?」

 

しかし爆風の中から飛び出したルーパスは、勢いのままBlazの左肩に噛み付いた。ルーパスは噛み付いたままその歯を強く食い込ませ、Blazの表情が苦悶な物に変わる。

 

「ク、ソ…がぁあっ!!!」

 

『ぐぉおっ!?』

 

壮絶な苦痛に耐えながら、Blazは左手でルーパスの腹部を殴りつけて壁まで吹っ飛ばす。その後は血の流れる左肩からルーパスの折れた歯をズブリと抜き取り、足元に放り捨てる。

 

(くそ、思ってたより厄介だな……こうなりゃ起動させるしかねぇか…?)

 

Blazの右掌から赤黒いオーラが溢れ出す中、壊れた壁の中からは口から血の流れているルーパスが飛び出す。

 

『クソッタレが、俺の自慢の歯を折りやがったな……ぜってぇ潰スッ!!!』

 

「はん、とっとと来いや犬ッコロが」

 

『クソ人間ガ、死ンデ後悔シヤガレェッ!!!』

 

(ちぃとキツいが、やるしかねぇか…!!)

 

先程までよりも更に凶暴化したルーパスはその目を赤く光らせ、吠えながらBlazに向かって駆け出す。Blazも全身から赤黒いオーラを放出し、大剣を大鎌に変形させてから迎え撃つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ショッピングモール外部では…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「シュアァァァァァァァッ!!」」」

 

「えぇい、しつこい!!」

 

≪Red break lancer≫

 

ラディチェスの繰り出して来た食人プラントを、ロキの放った赤い槍状のエネルギーが駆逐。少し離れた位置ではレイモンズが食人プラントの牙を盾で防御し、剣で茎を斬り裂いて回っている。

 

『いい加減喰われてくれませんかねぇ? どうせ人間、生きてるだけ意味の無いゴミ生物だろうがよぉ?』

 

「悪いな。俺達は素直に喰われるつもりは無い」

 

『偉そうに言ってんじゃねぇぜ? なら精々楽しく踊り狂えや!!』

 

「へぇ、踊りか。楽しく踊るなら大歓迎だ」

 

ラディチェスが口から放つ毒液をかわし、鞭のように振るわれる何本もの植物をロキは宙に舞いながら回避。基本的に宙に舞った人間は可能な動きが制限されてしまうのだが、宙に舞いながらも身体を捻って植物を回避し続けるロキに、そんな常識は通用しない。

 

「ロキ君、大きく飛んでくれ!」

 

「ん? 何だレイモ…ぬぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

『んなぁっ!?』

 

茨の槍を盾で弾き返したレイモンズが剣を振るい、巨大な斬撃を放って食人プラントを次々と薙ぎ払っていく。宙に舞っていたロキも危うく当たりそうになるがギリギリで回避し、ラディチェスも食人プラント達が一撃で薙ぎ払われた事に驚きを隠せない。

 

「あっぶねぇ……おいコラ、危うく俺も斬られるところだったぞ」

 

「あぁ、すまない。君なら問題なく回避出来るだろうと思ってね。普段ならこんな戦い方はしないんだけど」

 

「それは信頼されてるって事で良いのか? イマイチ不安なんだが」

 

「おや、それが出来ない君じゃないだろう?」

 

「…喜んで良いんだか、怒るべきなんだか」

 

ロキとレイモンズが並び立ち、飛来する毒液を魔力弾で相殺。ラディチェスは面白くなさそうに何本もの蔓を伸ばして二人を攻撃する。

 

『生意気なんだよ屑共め、蟻が象に歯向かうんじゃねぇよ!!』

 

「残念だが、俺達は蟻じゃない。れっきとした人間だ」

 

「そして悲しい事にね、諦めが悪いのも人間の特徴さ」

 

『ッ…クソッタレがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 

ラディチェスは口内に毒ガスを溜め込み、それを放出する事で二人の行動を制限しようとする。

 

その時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪そこまでだ。撤退しろ、ラディチェス≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『!?』

 

「「…!」」

 

突如、彼等の脳内に念話が響き渡ってきた。

 

『んな……おいパリス、このまま無様に引き上げろってか!?』

 

≪アルカルド様の命令だ、文句は受け付けない≫

 

『…チッ!!』

 

「!? うぉっと!!」

 

「む…!!」

 

ラディチェスは舌打ちしてから改めて毒ガスを口内に溜め込み、それを二人に向かって放出。ロキとレイモンズは周囲に防御魔法を張る事で毒ガスを防ぐ。

 

『今回はここで引き上げるとしよう……だが!! テメェ等はいずれ必ず俺達ヴァリアントが叩き潰してやる、それを忘れない事だな!! ケケケケケケケケケケケケケケケケ!!!』

 

そう言い放った後、ラディチェスは地面に潜る形でその場から姿を消す。毒ガスが晴れた後は食人プラント達もいなくなり、ロキとレイモンズは防御魔法を解除する。

 

「逃げられたか……にしても、今の念話は…」

 

「奴の仲間だろうね。念話だけで姿を見せない辺り、警戒心は強そうだ―――」

 

-ゴゴゴゴゴゴ…-

 

「「!?」」

 

二人が話していたその時、突然地面が大きく揺れ始めた。何事かと思った二人が周囲を見渡し、そしてすぐに地震の原因に気付く。

 

「な、ショッピングモールが…!?」

 

「崩れかけている…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オイオイオイオイ、何ナンダヨこの揺れはよぉ!?』

 

「うぉっとっと…!?」

 

ショッピングモール内でも、一同は異変に気付いていた。凶暴化していたルーパスも突然の地震でひとまず正気に戻り、Blazも何事かと周囲を見渡す。

 

≪ルーパス、お前では少々分が悪過ぎる。すぐに帰還しろ≫

 

『はぁ!? ふざけんな、まだコイツ等をぶっ殺してねぇぞ!!』

 

≪アルカルド様の命令に逆らうつもりか?≫

 

『な、アルカルド様の……クソ!! おい、そこの白髪頭!!』

 

「白髪頭って言うな、せめて銀髪頭って言え!!」

 

『テメェはいずれ殺す!! それまで勝負はお預けだ!!』

 

「あ、おい待ちやがれ!?」

 

Blazが止めるよりも前に、ルーパスはその場から撤退。後を追おうとした直後に天井から瓦礫がいくつも落ちてきた為、Blazは仕方なく追跡を断念。そこにディアーリーズ達も合流する。

 

「Blazさん、急いで脱出しましょう!! このままでは建物自体が崩れます!!」

 

「くそ、本当に面倒だなこりゃ……脱出する方法あるのか!?」

 

「僕と刃さんのテレポートで、皆を転移させます!! 全員、僕達の傍に寄って下さい!!」

 

「お、おう!!」

 

「真優ちゃん、腕は大丈夫かい?」

 

「は、はい、私もこの子も大丈夫です…!」

 

「全員、集まりましたね?」

 

「よし……では、飛びます!!」

 

≪≪テレポート・ナウ≫≫

 

ディアーリーズ達は一か所に集まり、発動したテレポートによって崩れるショッピングモールから脱出する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな、建物が…!?」

 

「くそ、モンスター共と戦ってる最中になんて事だ…!!」

 

ショッピングモールの異変を感じ取り、一足先に外に脱出していたダニー達。彼等の目の前ではショッピングモールが少しずつ崩れていく光景が広がっていた。

 

「アイツ等、大丈夫なんだろうな…」

 

「ウルティムスの仲間も向かっている筈だ、問題は無いとは思うが…」

 

「彼等なら問題は無い筈よ? この私が一目置いてるんだもの。もし無事じゃなかったら全員にヘタレの称号をつけてやるわ」

 

((相変わらずだなぁ、葵さんも…))

 

葵の自信満々な発言にイザベルとフェイトが苦笑する中、一同の前に魔法陣が出現。そこにディアーリーズ達が一斉に転移してきた。

 

「脱出成功!!」

 

「ぷはぁ、助かったぁ!」

 

「ふぅ、どうなるかと思ったぜ…」

 

「まぁ、何事もなくて何よりだと思いましょう」

 

「「真優ちゃん!!」」

 

「はわわ…!?」

 

脱出出来た事で一息つく一同。その中でイザベルとジョージが真優の下に駆け寄り、イザベルは思いきり真優に抱きつき、ジョージは真優の頭をガシガシと撫でる。

 

「たく、心配させやがって!」

 

「本当だよ、一人で先に行っちゃってさ! 無事で良かったよもう!!」

 

「ジョージさん、イザベルさん……すみません、心配させてしまって」

 

「まぁ良かったじゃん! 真優ちゃんも無事だし、また一人民間人を助けられたんだし」

 

「そうそう、結果オーライって奴だよ!」

 

「結果が良くとも、無茶をやらかして良い理由にはならんがな」

 

「「うげ、ダニーさん…」」

 

「いくら人を助けようとしてもな、それで死んだら意味が無い。それは真優だけでなく、お前にも言える話なんだがな? ウルティムス」

 

「「う…」」

 

ダニーにギロリと睨みつけられ、思わず縮こまる真優とディアーリーズ。心当たりがある分、二人は反論すら出来ない。

 

「まぁまぁ、皆が無事に助かって何よりだ」

 

「! レイモンズ…」

 

「あ、ロキさん」

 

「おう、そっちも大変だったな」

 

そこにレイモンズとロキが合流。これでひとまず捜索部隊のメンバーは一か所に集まった。

 

「あらあら、随分と服が汚れてるわね。転移して脱出するなら、もうちょっと上手くやれる筈じゃない?」

 

「まぁ、色々とゴタゴタしてたもので…」

 

「ふふふ、まだまだお子様ね? やるなら私みたいに完璧にやらなきゃ!」

 

「「「アンタの場合は逆に参考にならねぇよ!!」」」

 

「あら、辛辣ね! 随分と生意気な口を利くようになったじゃない! 反抗期? これって反抗期なの!?」

 

「「「アンタと一緒にいたら誰でもそうなるっての!?」」」

 

葵とテレンス達がコント染みた会話をしている中…

 

「……」

 

ロキは一人、近くの瓦礫に座って考え事をしていた。

 

「どうしました? ロキさん」

 

「ん、刃か……少し気になる事があってな」

 

「気になる事?」

 

「あぁ。さっき、あのマンドレイクみたいな野郎と戦ってた時に念話が聞こえてな」

 

「念話?」

 

「恐らく、奴等の仲間だろうけどな。それにさっきから、何だか嫌な予感しかしなくてな…」

 

「? どういう事ですか…?」

 

「俺にも分からない……だがま、俺の気の所為であれば問題ないんだけどな」

 

ロキは立ち上がり、未だに騒がしくしている葵達の下へと歩み寄っていく。そんな彼の後ろ姿を、刃は黙ったまま見据える。

 

「何だ……一体何が起こるってんだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その嫌な予感は、的中する事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ドブシュウッ!!-

 

 

 

 

 

 

「「「「「―――え?」」」」」

 

刃物が肉を貫き、血飛沫の舞う音が聞こえてきた。

 

「!? ジョージ!?」

 

「が、は…」

 

それは、ジョージの心臓が巨大な槍に貫かれた音だった。レイモンズやダニー達が驚愕する中、刃は子供が見ないように子供の目を素早く手で隠し、ディアーリーズはジョージの下へと駆け出す。

 

「ジョージさ―――」

 

-ズドドドドドォッ!!-

 

「ッ!?」

 

しかしディアーリーズが手を伸ばそうとした瞬間、ジョージの全身が複数の槍で一斉に貫かれた。その内の一本はジョージの脳天を貫いており、彼を即死させるのに充分過ぎる程の威力があった。

 

「ジョージ!!」

 

「い…嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「気を付けろ!! 敵はまだ近くにいる!!」

 

「く、油断した…!!」

 

イザベルがジョージの名を叫び、真優は仲間の死に思わず悲鳴を上げる。ロキやレイモンズ達は即座に周囲を警戒し、葵は敵の殺気に気付けなかった悔しさから舌打ちする。

 

「!! いました、奴です!!」

 

「「「!!」」」

 

レイモンズの部下である男性魔導師シュナイズがある方向を指差し、一同がそちらに振り向く。彼が指差した方向、その先には…

 

『……』

 

建物の屋上にて、魔槍を構えている石像の怪物―――ガーゴイルの姿があった。

 

「ッ…アイツが…!!」

 

『…ふん』

 

ガーゴイルは魔法陣を通じて、すぐにロキ達の視界から姿を消す。ロキ達が悔しそうに歯軋りする中、ディアーリーズ達はジョージの下で治癒魔法をかけ続けていた。

 

「ジョージ、ジョージ!!」

 

「ッ……駄目です…生命活動が、停止しました…」

 

「!? そんな…!!」

 

「く、何て事だ…」

 

「…くそぉっ!!!」

 

しかしどれだけ治癒魔法をかけようとも、ジョージは指一本ピクリとも反応しなかった。レイモンズ達レジスタンスのメンバーは悔しそうな表情になり、ディアーリーズは地面を思いきり殴りつける。

 

「…嫌な予感ってのは、これの事を言うんですか? ロキさん」

 

「…出来れば外れていて欲しかったな、こんな予感は」

 

あまりに突然過ぎた仲間の死。

 

その場にいた誰もが、己の非力さを痛感してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、ミッドチルダ南部…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、行き倒れていたところを助けたという訳か……せい!!」

 

『ピギャッ!?』

 

「そういう事だ。ご丁寧に、携帯食料を全部食われちまったがな…ふっ!!」

 

『グルゥッ!?』

 

「それはドンマイとしか言い様が無いな。何だったら、後で俺の分の食糧分けようか…ふんっ!!」

 

『ガァッ!?』

 

「あぁ、すまないな支配人…っと!!」

 

『グゲェッ!?』

 

「何、どうって事ないさ。それぐらいなら…な!!」

 

『ギシャァァァァァァァッ!!?』

 

げんぶは赤と銀色のカラーリングをした戦士―――仮面ライダーZX(ゼクロス)に、支配人は仮面ライダー斬月に変身したままモンスターを退治して回っていた。その後方では特にする事の無いフィアレス達がモンスターの肉を回収して回り、白野は二人の戦いを見て目をキラキラ輝かせ、逆にティーダと琥珀は二人の戦っている光景を見て唖然としてしまっていた。

 

「…おいおい、もしかして皆して化け物揃いなのか?」

 

「失礼な事を言うね、私は一応天使なんだよ!」

 

「…フィア、そういう問題じゃない」

 

「まぁ、普通じゃない事は否定しないよ。私達も、その点については自覚しているつもりだ」

 

「は、はぁ……もしかして、他にもあんなに強いのがいるんですか?」

 

「うん、いっぱいいるよ。コジマ粒子が大好物で男の娘な奴、効率しか考えようとしない奴、ウイルス実験が大好き過ぎるマッドな奴、何でも食べちゃう大食いな奴、マイペースで悪戯好きな奴とかたくさんね!」

 

「コ、コジ…何だって?」

 

「へぇ~皆凄いんだねぇ~」

 

フィアレスがティーダ達に説明している中、ZXと斬月はそれぞれ必殺技を繰り出そうとしていた。

 

「とうっ!!」

 

≪ロック・オン!≫

 

ZXはポーズを取ってから大きく飛び上がり、斬月は無双セイバーにメロンロックシードを装填する。

 

≪一、十、百、千、万……メロンチャージ!≫

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『『『ギギャァァァァァァァァッ!?』』』

 

「ZX…イナズマキィィィィィィィィィィック!!!」

 

『グォォォォォォォォォォォ…!?』

 

斬月の無双セイバーがゴブリンの大群を次々と斬り裂き、ZXの赤い雷を纏った飛び蹴りがゴーレムの頑丈な身体を粉砕してみせる。しかしそれでも周囲のモンスター達は数がなかなか減らずにいた。

 

「ふん、数が多いだけの雑魚共が…」

 

「だがちょうど良い。食料用の肉がたくさん手に入る」

 

ZXと斬月が背中合わせになり、そこにモンスター達が一斉に襲い掛かろうとしたその時…

 

 

 

 

 

 

≪サラクアームズ! 蛇龍・見参!≫

 

 

 

 

 

 

「ハッハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「みにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「「!?」」

 

上空から、ZEROの変身した仮面ライダードラークが出現。その手に捕まっていた凛が悲鳴を上げる中、ドラークはZXと斬月の目の前にズシンと轟音を立てて着地してから凛を地面に放り捨て、凛は「ぎゃん!?」と悲鳴を上げて地面に叩きつけられる。

 

「な、その掛け声……ZERO!?」

 

「楽しそうじゃねぇか……俺も混ぜろよ!!」

 

「ちょ、おい待てZERO!!」

 

「きゅぅぅぅぅぅぅ…」

 

斬月の制止も聞かないまま、ドラークはサラクブレードを振り回してモンスター達を駆逐し始めた。ZXと斬月が唖然としている中、気絶した凛を回収するべくフィアレス達が駆け寄って来た。

 

「あれってZEROさん? あの人もアーマードライダーになったんだね」

 

「おいおい、誰だよアイツに戦極ドライバーなんて与えたのは……うん、間違いなく竜神丸だな。アイツ以外の犯人なんて誰も思い浮かばん」

 

「クソが、狩りを邪魔しやがって…………ん? 俺、今何を…」

 

斬月が呆れている一方、ZXは自身がいきなり違う口調になっている事に気付き困惑する。幸いにも、その事は周りのメンバー達には聞かれなかったようだ。

 

「とにかく、ティーダ達は肉を運んでくれ。ここに置いてたら巻き添え食らって肉が台無しにされちまう」

 

「あ、あぁ、そうさせて貰うぜ」

 

「ぼ、僕も手伝います」

 

ティーダと琥珀は確保したモンスターの肉を運び、暴れているドラークから遠ざけていく。どうしたものかと溜め息をついた斬月はドラークの暴れている方へと振り返り……そして戦慄する。

 

「な、アイツ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、調子に乗るなよ雑魚の分際で」

 

目の前にいたオークを蹴り倒した後、ドラークは戦極ドライバーからサラクロックシードを取り外し、代わりに別のロックシードを取り出す。

 

≪スイカ!≫

 

「今すぐ喰い尽くしてやる…!!」

 

≪ロック・オン!≫

 

取り出したロックシード―――スイカロックシードを開錠し、戦極ドライバーに装填。そしてすぐさまカッティングブレードを倒す。

 

≪ギュイィ~ン! スイカアームズ! 大玉(おおだま)・ビッグバン!≫

 

≪ヨロイモード!≫

 

「ガッハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

ドラークの真上のクラックからは、緑色のスイカらしき巨大なアームズが出現。ドラークは跳躍してそれの中へと飛び込み、人型ロボット―――スイカアームズ・ヨロイモードへと変形。丸いスイカに5本のスイカバーらしき爪の生えた武器―――スイカクローを両手に装備したまま、モンスターの大群へと突っ込んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!? スイカアームズ!?」

 

「アイツ、スイカのロックシードまで貰ってやがったのか…!! 皆、逃げるぞ!! ここにいたら巻き添えを喰らいかねない!!」

 

「了解…!」

 

「うむ、そうした方が良さそうだな」

 

「はぁ!? おい、アイツは味方じゃねぇのかよ!!」

 

「いや、一応味方なんだが……ハッキリ言えば、見境の無い戦闘狂(バトルジャンキー)だ」

 

「また凄いタチ悪いですね!?」

 

「良いから走れ!! あとモンスターの肉はなるべく確保しろ!!」

 

「「そしてとんでもない無茶振り!?」」

 

「うわ~お、これまたカオス」

 

「あぅぅぅぅぅぅ…」

 

ZXと斬月は変身を解除し、フィアレス達と一緒にその場から撤退しようとする。しかしスケートをするかのように滑走して来たドラークがモンスター達をスイカクローで次々と撃破していき、そこから流れるように別の形態へと変形する。

 

≪ジャイロモード!≫

 

「クハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

 

-ドドドドドドドドドド!!-

 

 

 

「「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」

 

「「「「「「あ」」」」」」

 

スイカアームズ・ジャイロモードが放った無数の弾丸が、退散しようとしたティーダと琥珀に命中。流れ弾を受けてしまった二人が黒焦げになって倒れても、ドラークはモンスター達の駆逐をやめようとしない。

 

「オラオラどうしたぁ!! トロい奴は全員喰っちまうぞぉ!! ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

「…げんぶ」

 

「あぁ……黙祷」

 

げんぶの声と共に、支配人達は巻き添えを喰らってしまった二人に対して黙祷。そんな中でも、ドラークはハイテンションの状態でモンスター狩りを楽しみ続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「げ、解せぬ…ガクッ」」

 

「あ、まだ生きてた」

 

「いや、早く治癒魔法かけてやろうよ…」

 


 
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