No.752631

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

外伝~癒しの演奏会~前篇

2015-01-20 12:53:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1378   閲覧ユーザー数:1264

 

各地を回っていたリィン達は七耀教会のシスター見習いでもある士官学院生―――ロジーヌの依頼を受ける為にケルディックの礼拝堂にいるロジーヌを訪ねた。

 

~ケルディック・礼拝堂~

 

「Ⅶ組の皆さん……お越しいただいてありがとうございます。依頼を見てくださったみたいですね?」

「ああ、ケルディックの為に演奏の催しを考えているそうだな。」

「その件で、僕に何か相談したいこともあるらしいね?」

「ええ、そうなんです。皆さんもお忙しいでしょうが、御力を貸していただけませんか?」

リィンとエリオットの言葉に頷いたシスター―――ロジーヌは懇願するかのような表情でリィン達を見つめて尋ねた。

 

「ああ、勿論協力させてもらうよ。」

「そうだね……ケルディックの為に何かできる事があるのなら。」

「私も同じクロイツェンの民として協力は惜しまぬつもりだ。」

ロジーヌに協力する事を決めたリィンとエリオット、ラウラはⅦ組を代表して答えた。

 

「皆さん……ありがとうございます。―――あの焼き討ちの日から数日……町の復旧は少しずつ始まっています。メンフィル帝国から支援物資が届いたり、復旧にもギルドの方達やイーリュン教の方達と協力して手伝って頂いて。」

「ふむ、たしかに町の復旧は進んでいるようだ。」

「ギルドもできる限り協力しているみたいね。」

ロジーヌの話を聞いたラウラとサラ教官はそれぞれ頷いていた。

 

「ですが……やはり町の皆さんは心に深い傷を負われているみたいで。町が焼かれた光景が目に焼き付いて眠れない方などもたくさんいらっしゃるんです。」

「あれからたった数日だからな……」

「無理もないです………あれほどの惨状でしたから。」

「犠牲者は出なかったけど、ケルディックの人達は辛い思いをしているのでしょうね……」

「多分、完全に痛みが治るのはずっと先の事でしょうね……」

「……………………」

ロジーヌの話を聞いたリィン達がそれぞれ重苦しい雰囲気を纏っている中、ユーシスは辛そうな表情で黙り込んでいた。

 

「そんなみなさんの心の傷を少しでも癒して上げたくて……一生懸命考えたんですが。この礼拝堂で”演奏会”のような催しができないかと思いまして。」

「演奏会……」

(演奏…………?)

ロジーヌの口から出たある言葉を聞いたエリオットは目を丸くし、ロジーヌの言葉によって何かを思い出しかけたゲルドは不思議そうな表情をした。

「はい、今年の夏にトリスタの教会で行われた催しもとても素晴らしかったですから。あの時のような演奏会ができれば町のみなさんを元気付けて差し上げられるんじゃないかと。」

「なるほど……それでエリオットに相談を。」

「……うん、やってみる価値は十分にあると思う。音楽は人の心を癒してくれる……僕も今まで何度も励まされてきた。ケルディックの人達の傷は深いだろうけど、僕らが頑張れば少しは癒してあげられるはずだよ。」

「ああ、そうだな。ケルディックで演奏会を実現するために、なんとか動いてみるとしよう。」

「リィンさん、皆さん……ありがとうございます!」

リィンの答えを聞いたロジーヌは明るい表情で感謝の言葉を述べた。

 

「ふふ、そうと決まれば何から手をつけるかだが。」

「必要なのは演奏する『場所』……そして『奏者』と『楽器』だね。それらをどう揃えられるかで、演奏できる曲も決まってくると思う。この礼拝堂は十分な広さがあるし、場所はここで問題なさそうだけど……」

「奏者と楽器か……どちらも一から揃えていくのは難しそうな感じだな。学院祭のときと違って、俺達が練習する時間は作れないだろうし。」

「うん、ある程度心得があって、楽器の用意もある方々に協力を頼む必要がありそうだ。エリオットや吹奏楽部の者達は頭数に入れて差し支えなさそうだが。」

「うん、僕も一応バイオリンを持ってきているしね。吹奏楽部はまだ全員揃っていないけど……後で僕が声をかけておくよ。欲を言えばプリネとツーヤにも手伝って欲しいんだけど………」

「……クロイツェン州の統括領主や治安維持の関係の仕事で忙しいあの二人を参加させるのは難しいだろうな……」

エリオットの言葉に続くようにユーシスは複雑そうな表情で呟いた。

 

「そうだね……それと、ルーレにいる顧問のメアリー教官やバリアハートのプリネと契約しているアムドシアスさんにも声を掛けたい所だね。」

「ええ、いいセンでしょうね。あとは、君のお姉さん―――フィオナさんも帝都でピアノ教室をやっているのよね。あたしも前に聴いたことがあるけど、彼女の実力なら申し分ないはずよ。」

「たしかに……身内で思い当たるのはそれくらいですね。他にも協力してくれそうな奏者がいればいいんだが………(……そう言えばバリアハートの中央広場で”あの人”を見かけたな。彼にも声をかけてみたほうがいいかもしれない。)」

「楽器の方も何とかしなくてはな。とにかく、心当たりを一通りあたってみるとしよう。」

「演奏場所についてはこちらでなんとか確保してみますね。ケルディックの皆さんのために……どうかよろしくお願いします、皆さん。」

「うん、任せておいて!」

その後リィン達は各地を回って自分達の知り合いである吹奏楽部に所属している奏者達や旅の音楽家、メアリー教官やプリネ達に事情を説明してアムドシアスに演奏会に参加する協力を貰い……更にピアノはフィオナが双龍橋で見かけたピアノを使う事になり、ピアノを管理していた鉄道憲兵隊に頼むとケルディックまで持って来てもらえる事になり……全ての準備が整った後ロジーヌに再び話しかけた。

 

「ロジーヌ。もしかして演奏会の場所を準備していたのか?」

「皆さん……ええ、演奏会の場所を準備していたんです。教壇を運び出したらちょうどトリスタの演奏会と同じくらいのスペースが確保できました。」

「あはは、本当だ。これならピアノもちゃんと置けそうだね。」

「ああ、奏者が集まっても演奏するには十分だろう。」

「あ……それでは?」

「ああ、奏者と楽器の段取りを無事につけられたよ。演奏会の準備が整い次第、改めて迎えに行く手筈になっている。」

「本当ですか……!?ありがとうございます!ふふ、皆さんにお願いしてやっぱり良かったですね。」

リィンの答えを聞いたロジーヌは嬉しそうな表情で声を上げた。

 

「あとは演奏会の準備を仕上げるだけだな。」

「ああ、そろそろ双龍橋からピアノも到着する頃だ。協力して運び込んだり、町の人達にも呼びかけをしないとな。」

「そうだね、吹奏楽部のみんなも事情があって来られないプリネとツーヤを除けばちゃんと揃っているし……あはは、なかなかいい演奏会になりそうな気がするかな。」

「では、そろそろ演奏会の準備を始めますか?」

「ああ、さっそく始めよう。エリオットたち奏者が最高の音楽を奏でられるようにしておかないとな。」

「あはは、よろしくね。」

「フフ、では気合を入れて取り掛かるとするか。」

こうしてリィン達はロジーヌと協力して演奏会の舞台の準備を始めた。まだ怪我人なども残っている中、静かに作業は進められ……しばらくすると、鉄道憲兵隊から双龍橋に置かれていたピアノも届けられた。

 

 

 


 
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