第二話 美羽
俺は今、玉座の前にひざまずいている。これから来るであろう袁術なる少女と命をかけた交渉のために。
張勲さんは、袁術を呼びに行っている。もうすぐ来る、おれの知る三国志では暴政のために衰え、滅んでいったが、一時期は皇帝を名乗ったこと。そしてそこまで至るまでの知略と謀略は測りきれない。
やってやるさ、かつて俺も口先の魔術師の異名をとった男。舌戦で袁術をまき、死刑を中断させてやる。
・・・
・・・・・
・・・・・・・
一刻がたった。まだ来ない。二刻、三刻・・・・・・・
「何で来ないんだあああああああ!!!!!!」
俺は、そう叫びたかった。心の底から。
袁術side
「七乃~もうちょっとだけ眠らせたも~」グ~
「もう、お嬢さま。あとどれくらい待ってればいいんですか~?」
「ん~ん。・・・・あと一刻だけ・・・」
「だめですよ、どうせ延ばすにきまっているのですから。ほーら、起きてください。」
「う~~~ん・・・・」
「今日は、昨日捕まえた男の処分をどうするか、お嬢様の意見を聞きたいのですよ。」
「~~昨日、なんのことじゃ~?」
「もうお忘れになったのですか?昨日、お嬢さまとあつ~い口付けを交わしたあの男ですよ。」
・・・・・
ガバ!!!
「なっ!!!///、なんじゃと~~~~!!!!」
「あ、やっと起きた♡」
「どういうことじゃ、七乃!」
「どうもこうも、思い出したのではありませんか?お嬢さま。」
「思い出したのじゃ!!・・妾は昨日流れ星に願い事をいって、それから流れ星が落ちてきて、あの白い男がそばに落ちてて、近づいた時につまづいて、そ、そして妾は、妾は・・・///!」
「すご~い、普段大切な事項は3歩いたら忘れるのに、こんなことだけ覚えているなんて!さすがです、お嬢さま。よ、さすが袁家の長、エロいぞ、このマセガキ♪」
「とうぜんなのじゃ!!・・・ってどうしてあやつのことで妾が意見しなくちゃならんのじゃ!?あんな奴、処刑にきまっておるじゃろうて!」
「う~ん、それがいろいろと事情が変わりまして。」
「事情?」
なんじゃろうな?
「はい、つきましては玉座の方で説明させていただきます。」
「うむ」
一刀side
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
まだ来ない。・・・・
もう六刻はたった。一刻が約15分(江戸時代位の単位。)くらいだから一時間半ほど待たされている。文章だけでは分かりづらいが、俺は玉座の前でひざまずいている。つまり正座なのだ。いいかげん限界が近い。足の感覚がなくなってきた。非常にまずい。
とその時、張勲さんと金髪の女の子が現れた。女の子は普通に玉座に座りこんだ。
「表を上げよ。妾が袁術じゃ」
こうして、おれの命をかけた舌戦が始まろうとしている。
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
・・・結論から言おう。俺は助かった。それどころか今じゃ美羽、袁術の側近になった。
あのとき、俺は・・・
回想
「表を上げよ。妾が袁術じゃ。」
俺は顔を上げた。そこには、年端も行かない女の子が座っていた。王の気品こそあれ威厳などという言葉はまったくもってなかった。
「やっぱり、処刑じゃ。」
えええええええええええええええ!!ちょ、ちょっと!
「美羽さま、人の話をちゃんと聞いてくださいね♪事情が変わったって言ったじゃないですか?」
ナイス、張勲さん。GJだよ、あんた!
「事情を聞いてそれでも処刑というならお止はしませんけど♪」
おいおいおいおい!!
「それで、七乃。その事情とはいったいなんなのじゃ?」
張勲さんは、おれが乱世を静める天の御使いかもしれないこと。昨日の流れ星は俺と関係しているということ。俺が、違う世界からやってきたこと。とにかく、このまま殺すのはもったいないかもしれないと進言してくれた。話は三刻ほどかかった。・・・しかし
「くーすぴ~・・・・」
幸せそうな寝息を立てた君主さまがそこにいた。
「お嬢さま、起きてください。お嬢さま。」
「お、七乃。話は終わったのかえ?」
「はい、ですが、お嬢様いったいどんな話だったのか、覚えてらっしゃいますか?」
「も、も、もちろんじゃ!あの男をどういう処刑方法で殺そうかという話じゃろ?」
まったく聞いてなかった。
「ふう、ちゃんと人の話を聞かないと今度からハチミツ水を作ってあげませんからね。」
「ほあ!そ、それはいやなのじゃ!七乃、ちゃんと話を聞くから、許してたもれ!」
袁術はなみだ目&上目づかいで張勲さんに言い寄ってきた。
「はぁーーン!いいんですよ、お嬢さま。私も少しいじわるが過ぎましたねお許しください。お嬢さま」
「いいのじゃ、妾も悪かったのじゃから。こちらこそ許してくれるかえ?
「お嬢さま!!」
「七乃!!」
二人は熱い抱擁を交わした。
・・・・涙が出てきた。いろんな意味で。
結局、袁術は話を理解したのか、してないのかわからなかったが俺の処刑だけは取りやめてくれた。
袁術は天の国(もうそれでもいいやと思った)のお菓子や食べ物。娯楽などいろいろ聞いてきた。とくに携帯電話には顔を輝かせ、おれがこっちでは使えないというと涙目になって言い寄ってくる。こんな袁術を見ててとても心が和やかになっていた。
あまりにも悲しそうだったから、手品てがらに科学の最先端の技術を見せてあげた。携帯のカメラで袁術を撮ってあげた。ピロロ~ンと音が鳴った瞬間、体をこわばせたが、大丈夫となだめてあげた。写真を見た時の袁術の驚きようはなかった。そしてとても感動してくれた。
せっかくだから、張勲さんとのツーショットも撮ってあげた。二人ともとても喜んでくれた。
・・・・というより、張勲さんも将軍なのなら少しは警戒してもいいのに。というよりなんだこのノリノリな性格は!?
ちなみに俺の携帯はso○t b○nckの最新型。
光電池をもつ永久機関。そのうえ、ステレオにも負けない重低音と音量をだすスピーカー。
翻訳ボタンを押すと自分の会話を相手の言語に合わせてくれる自動翻訳機搭載。
撮った写真をその場でプリクラ化できる機能。
その他、アンテナからぺンも出せる、すり合わせるように使えばハサミにもなる、開くとき、ホチキス変りもできる。まさに一家に一台の携帯電話なのである。
袁術との会話は時間がたつほど楽しかった。自分が処刑されるかされないかの状況だったというのに。
袁術と楽しくお話をしている最中
グ~~~~!!!
誰かのおなかの音が王室のなかでこだました。・・・袁術だった。
「うう~~///!おなかがすいたのじゃ!七乃、夕餉はまだかの?」
「ご心配なく、すでにご用意させていますよ。すぐに出来上がりますから、あちらのお部屋でいただきましょうね。」
「うむ!そうじゃ、一刀も妾に相伴せい!七乃、いいじゃろ?」
「はい!もちろんいいですよ。」
夕飯をごちそうになった。正直食いすぎた。この世界の料理には少し不安があったが、味付けも、見た目も、匂いすら現代風だった。昼飯を食べてなかったから余計にうまく感じた。
・・・・・でも、一口食べただけでわかる。ここはやっぱりおれの知らない世界なのだと。どんなに味付けが美味しくても、どんなに見た目がきれいでも、どんなにおいしそうなにおいを出しても、その土地でそだった作物にはその土地の土の味、土のにおいがするものだ。
俺は、食事をしながら少し不安になっていた。
死刑はまのがれた。でも状況が良くなったとは言えない。なんせ、俺はこの世界では左も右もわからないのだから。
ここから出て行っても行くあてなんてない。お金も使えない。文字も読めない。ひとりで生きていきすべがない。先のことを考えれば考えるほど不安になっていく。
「ど、どうしたのじゃ、一刀?七乃の作った料理が口に合わなかったのかの?」
「い、いや、違うよ。これからのことを考えていると不安になってきて。」
「なんじゃ?妾に忠誠を誓うのがそんなに不安かえ?」
「え!?」
「お主はもう、妾の大切な部下じゃ!そうすると決めたのじゃから、そうなのじゃ!」
俺は、張勲さんの方を向いた。アイコンタクトが通じたのか軽く首を縦の振ってくれた。
「そ、それとも、一刀は妾といるのがいやなのか?」
「そんなことはない。君はとてもきれいだし、どこかに行くあてなんてないんだ。だから、しばらく、お世話になります!」
「き、きれい!?・・・う、うむうむ、よきに従え!。」
こうして、俺はしばらく、袁術のもとで暮らすことが決定した。
食事が終わり、しばらくして張勲さんがおれの部屋に案内してくれた。
「ここがあなたの部屋になりますから必要な時はその鐘を鳴らしてくださいね。近くの侍女が来ますから。」
「はい、本当にいろいろありがとうございました。このお礼は必ずします。」
「いえいえ、あのような嬉しそうなお嬢さまを見るのは、久しぶりです。こちらこそ本当にありがとうございます。じゃ、おやすみなさいね。一刀さん」
張勲が部屋から出ていくと、急に眠気が出てきた。今日は楽しいこともあったがその分疲れてしまったようだ。
寝る前に用をたそうと厠に足を運んだ。その途中、すすり泣くような声が聞こえてきた。
(なんだ!幽霊か!?超コエ―!)
あり得ない話ではない。いま自分の陥っている状況も十分にあり得ないのだから。
「うっひぐ、ひぐ、~乃~どこじゃ~」
泣いている物体は月明かりに照らされようやくその正体を見せることになる・・・・袁術だった。
「ひっ!!だ、だれじゃ!?」
「そんなに驚くなよ、おれだよ、一刀だよ。」
俺の声が聞こえると袁術はほっとしたように安心した顔を見せ、抱きついてきた。
「どうしてこんなところで、泣いているんだ?」
「ひぐっ、厠に行きたくて、ひっぐ、七乃を待っておったのじゃ。で、でも我慢できなくて、着いたのはいいものの、こ、怖くて帰れなくなったのじゃ~」
必死にしがみついてくる少女、とても震えていてよっぽど怖かったのだろう。
「じゃあ、俺がお前の部屋まで連れて行ってやるよ。」
「ほ、ほんとかえ?」
「ああ、俺の初任務だ。お姫様を無事に部屋まで送り届けてやる。あ、でも俺、お前の部屋どこだか分らないんだよな~。道案内を頼めるか?」
「あ、あたりまえじゃ!部下を導くのも君主の務めじゃ!」
「じゃ、手を離しちゃダメだからな。」
「う、うむ!」
この時代に、蛍光灯なんてあろうはずがない。蝋燭の火の光を頼りに歩くというのは、現代人である俺でも少し怖かった。本当に出そうだし・・・
しばらく歩いているうちに普通の通路よりも広い通路に出た。
「おお、あの部屋が妾と七乃の部屋じゃ。」
「よかったな、無事について。」
「うむ、ほめてつかわす!」
「ははは、どういたしまして。じゃあ、俺は戻って寝るわ。お休み、袁術。」
「・・・・美羽じゃ」
「え」
「妾の真名じゃ、よく七乃も読んでおるじゃろう。」
「あ、ああ。でも真名って何?」
「自分の認めた相手にしか呼ばせぬ神聖な名前のことじゃ。今日のお礼に妾の真名を呼ぶことをゆるすぞ!」
「ああ、ありがとう。じゃあ、改めて。お休み、美羽。」
「うむ!お休みじゃ、一刀。」
あれ、・・・俺の部屋はどこだっけ?
あとがき、
袁術ルートを見てくださってありがとうございます。
つきましては、皆さんにアンケートを取りたいのですが、
次の話くらいに、孫策を出そうと思っているのですが、その後の話に少し戸惑っています。A,B,C、の中から選んでください。
A、結局、孫策のクーデターを止められず、美羽との逃亡劇に決め込むか
B 呉の将軍たちを一刀の種馬パワーで籠絡させていくか
C 王道にクーデターを防ぎ、そのまま天下統一に向けて足を進めるか
もちろん、全部考えていますけど、どれにするか迷っているのです。
どれがいいでしょう。ちなみにCはかなり難しいのでできれば選んでほしくないような・・・・
すみません。
次回もまた見てくださいね。
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こんばんわ、ファンネルです。
美羽ルート第二話です。
自分で書いてて美羽に萌えまくってしまいました。
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