「ふぅ……」
額にかいた汗を拭いながら、医者の華佗が部屋から出てきた。
「どうだった?華佗」
外で待っていた俺は華佗に手巾を渡しながら訊ねた。
「あぁ。長いこと水に浸かっていたせいか、体温がやや下がり気味なことと、右足を捻挫していること以外は、恐らく問題ないだろう」
「良かった…」
比較的軽い診断に、ホッと胸を撫で下ろす。
黄河のほとりを探索中、沙和と真桜が倒れていた少女を発見した。
急いで陳留まで運び、たまたま逗留していた華佗に診てもらったのだ。
息はあったものの、ぐったりとして冷たくなっていたので心配していたが、どうやら思っていたよりずっと軽症のようだ。
「出来る限りの処置はしておいたし、そのうち目を覚ますだろう。そしたら精のつくものでも食べさせてやってくれ」
「あぁ、分かった。ありがとうな、華佗」
気にするな、と言いながら華佗は去っていった。
侍女を一人付け、俺はかつての居室で政務を進めることにした。
例え各地で異変が起ころうと、例えその調査中であろうと、書類仕事はなくならないのだ。
軍師として風が付いていてくれるが、それでも最終決裁者は俺なわけで…
政治家とか役人も、暇そうに見えて実は大変だったんだなぁ、と思う今日この頃だった。
…………
……
「隊長!たーいちょーーーーう!!」
「大変や!大変や!!」
ようやく集中してきたかな、という頃、バンッと力いっぱい部屋の扉が開かれた。
「お前らなぁ…ノックをしろと何度言ったら…」
「もう!それどころじゃないの~!」
「あの娘が、目を覚ましたんや!!」
そうか。倒れていた人…あの女の子が起きたのか。
「そりゃ良かった。じゃあ食事を出してあげてくれ。俺も後で…」
「だから、そんな時間ないの!」
「あの娘の様子がおかしいんや!」
グイッと二人に両腕を引っ張り上げられる。
「様子が?」
ただならぬ様子の二人に、さすがに俺も心配になる。
「分かったよ。それじゃ行こうか」
…………
……
コンコン、とちゃんとノックをして入室の意を告げる。
「失礼しまーす…」
中で着替え中だったりというハプニングに巻き込まれがちなので、ゆっくりと扉を開ける。
目に入ってきたのは、期待した…じゃなくて、想定された映像ではなく、寝台で上体を起こしている少女だった。
その少女の顔がこちらに向き、目が合う。
すると、どこか虚ろだった少女の目が大きく見開かれる。
いきなり男が入ってきたからビックリさせちゃったんだろうか?
「あー、えぇっと、俺は……」
「………、…ま?」
「え?」
今、何か喋ったような…?
「ご主人、さま…」
「……ご主人様?」
って言ったのか?
「ご主人様ーー!!」
と叫びながら、少女は俺目掛けて飛び込んできた。
「「なっ……!?」」
後ろにいた沙和も真桜も咄嗟のことに絶句する。
ドスン!
「ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様~~!!」
飛び掛られて尻餅をついた俺の胸に、少女は何度も頬ずりをしながらご主人様と連呼している。
「隊長…」
「またかいな…」
俺は少女の温もりと、沙和と真桜の冷たい視線を同時に感じることになってしまった。
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どうも、DTKです。
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、40本目です。
約一年で40本。
9日に1本ペースは、遅筆の自分からすればかなり優秀なペースですねw
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