No.748825

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第六十四話


 新年明けましておめでとう

 ございます!

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2015-01-04 17:53:32 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:4924   閲覧ユーザー数:3596

 

 ~左翼戦線~

 

「おらおら、邪魔だ!邪魔する奴は冥土の土産にこの馬孟起の槍を喰らっていきやがれ!!」

 

 馬騰軍の先鋒である翠はさらにその先頭に立って迫り来る五胡の兵を斬り倒していた。

 

「まったく、翠義姉様は…皆、翠義姉様に置いて行かれないように気を付けて」

 

 後を追う雫はため息をつきながらも何とか翠を追いつつ敵中を突破していた。

 

「…やっぱり翠を先頭にしたのは間違いだったかねぇ?あれだけ一人で突っ走るなと念を押

 

 しておいたのに…はぁ、私が現役の内にあの性格だけは何とかしておかないとならんな」

 

「…娘を育てるというのも大変なものなのだな」

 

 さらに後方から追尾する葵はげんなりとした顔で呟き、それを横で聞いていた樹季菜は苦

 

 笑混じりにそう言っていた。そして…。

 

「うぉ~っ!斗詩、見ろよあれ!さすがは錦馬超だよなぁ…ああ、やっぱ戦は突撃だよなぁ。

 

 あたいもうずうずして来たぁ!!」

 

「ダメだよ、文ちゃん!私達は馬騰軍と朱儁軍が突破した後の制圧が役目なんだから!」

 

「それは分かってるけどさぁ…そうだ!制圧は斗詩と七乃に任せるから、あたいはあっちに

 

 加わるってのは…」

 

「それは却下ですね~斗詩さんはともかく、私の武力なんてたかだか知れてますから、もし

 

 猪々子さんに抜けられたら、麗羽様を守り切れるかどうか保障はありませんからね~」

 

 さらに、その後ろから進んでいた袁家両軍の先頭を行く猪々子が突撃したがっているのを

 

 斗詩と七乃の二人でなだめすかして(?)いたのであった。

 

 

 

 ~右翼戦線~

 

「うりゃりゃりゃりゃーーーーーっ!!鈴々にとってお前ら程度なんか、ちょちょいのぷー

 

 なのだ!!」

 

 劉備軍の先鋒である張飛が縦横無尽に暴れていたのだが…。

 

「さすがは鈴々ちゃん、その調子でガンガンいっちゃ…」

 

「桃香、あのままじゃ張飛ちゃんが孤立するだけよ!」

 

「ははは、はい、先生!!星ちゃん、鈴々ちゃんの援護を!!朱里ちゃん、愛紗ちゃんにも

 

 う少し鈴々ちゃん寄りに動くように伝えて!!」

 

「心得た!」

 

「は、はい!了解でしゅ!!」

 

 あまりにも一人で先に行き過ぎており、それを瑠菜に指摘された劉備がわたわたしながら

 

 も、関羽達に指示を出していた。

 

「はぁ~…桃香の奴、あれは鈴々の突出し過ぎを先生に指摘されるまで気付かなかった感じ

 

 だな。まったく、あの位言われる前に気付けよな…朱里達も軍師なら先生に言われる前に

 

 進言しなきゃダメだろうに」

 

 劉備軍の向かって右方向に展開していた公孫賛はそうため息をついてぼやきながら、自軍

 

 の方は普通にそつなく進撃させて普通に五胡を圧倒していたのであった。

 

「さすがは音に聞こえた白馬義従ね。実質、指揮を執るのが公孫賛殿一人だというのにあの

 

 見事さ…穏、亞莎、私達も負けてられないわよ!」

 

 そして、劉備軍の向かって左方向に展開していた蓮華は公孫賛軍の一糸乱れぬ進撃に感嘆

 

 のしながらも負けじと軍を進めていたのであった。

 

 

 

 ~中央戦線~

 

「はははははっ!この夏侯元譲の前に出て来た曹操様に刃向う愚か者共め!我が剣を喰らっ

 

 て冥土への土産としろ!!」

 

「神速と言われたこの張文遠の槍捌き、躱せるもんなら躱してみぃ!!」

 

「我が名は衛将軍北郷一刀様の一の家臣、龐令明なり!!漢に仇なす者共よ、我が槍の前に

 

 散れ!!」

 

 それぞれの軍の先鋒である夏侯惇・霞・沙矢は一糸乱れぬ連携で五胡を押し込んでいた。

 

「今の所、三人に問題は無さそうだな」

 

「はい、このまま行けば大丈夫そうですね…正直、霞さんが頭に血が上ったりしないか少し

 

 だけ心配だったのですけど」

 

「でも春蘭がちょっとだけ心配ね…大丈夫だとは思うのだけど」

 

 先鋒の動きを見ながら進軍していた俺達は何とか問題無く進んでいる現状にとりあえずは

 

 安心していた。華琳は夏侯惇さんが暴走しないか少しハラハラしているようだが。

 

「…輝里、第二陣の蒲公英に沙矢の右方向に少し隙間があるからそこを抑えるように指示を」

 

「既に蒲公英には指示済ですのでご安心を」

 

「そうか、さすがは我が軍師だね」

 

 俺がそう褒めると輝里は少し照れたような顔をしていた。

 

「詠ちゃん、こっちも…」

 

「分かってる、既に華雄に霞の補佐に付くように指示したわ」

 

「桂花!」

 

「はい、秋蘭が既に向かっています」

 

 月の所も華琳の所も問題無さそうだな。

 

 

 

「皆さすがじゃの~…さすがなのは結構なんだが、俺の出番は無いのか?」

 

「義真さんは後ろでドーンと構えていてくれれば大丈夫ですよ」

 

「ふぅ…戦の最中に俺が皆に任せて後ろで待機する日が来るとはなぁ。まったく、年は取り

 

 たくないものだ」

 

 義真さんはそう言ってため息をついていたので、俺達は苦笑いするしかなかった。

 

「さて…そろそろ仄達は着いた頃かな?」

 

「そういえば、もうそろそろですね」

 

 ・・・・・・・

 

 その頃、別働隊を任じられた仄達はというと…。

 

「皆、あそこや。あれに見えるんが敵の本陣や」

 

「あれですね…」

 

「へぇ…確かに結構近くまで来とるなぁ」

 

 及川の先導で一刀が指示したポイント、敵の軍勢を後方から間近に臨める場所へと軍を進

 

 めていた。

 

「ならば此処で僕らが敵陣を落とせば一気に決着って事だね…これはおじさんも燃えてくる

 

 よねぇ」

 

 李厳は何時ものように軽口を言っていたが、その声は緊張からか少し震えていた。

 

「でもやはり向こうも分かっているようですね…あれが及川さんの言っていた向こうの抑え

 

 の兵ですね」

 

「でも、これだけの兵で突っ込めば大丈夫だろうさ」

 

「ふふ~ん…まあ、それもそうやろうけど、此処はウチに任せてもらおうやないか!」

 

 皆が敵に攻撃をしかけようとするのを押し留めるように真桜が言い出す。

 

 

 

「そういえば試したい物があるとか言ってたよね?何を持って来たの?」

 

「ふっふっふ…すぐ準備するさかい、ちょっと待っててくれんか」

 

 ・・・・・・・

 

 そしてしばらくして。

 

「さあ、準備出来たで!」

 

 真桜が自信満々で用意してきたのは、鉄の筒に台座を付けた物体であった。

 

「何これ?」

 

「ふっふっふ…よくぞ聞いてくれました!これこそ、この間言っていた陛下によって封印さ

 

 れていた新兵器、その名も『轟雷砲』や!しかもこれには『豪天砲・弐式』で使った仕組

 

 みも加わっとるさかい、いわば『轟雷砲・改』やな!!」

 

「轟雷砲とはまた随分ご大層な名前だが、一体どういう兵器なんだい?」

 

「それは見てのお楽しみっちゅう事で…いっちょぶちかましてみせますんで見ててください」

 

 真桜は轟雷砲の筒先を敵陣に向け、腰に下げていた細い縄に火をつけて筒の上部にある穴

 

 にそれを差し込む。

 

 その瞬間、轟音と共にその筒の中から鉄の玉が飛び出して敵陣の真横に落下する。

 

 そして落下と同時に大音響と共に大量の土砂が噴き上がり、それがはれるとそこには大き

 

 な穴が開き、それに巻き込まれたとおぼしき敵兵が多数倒れていたのであった。

 

 当然、それを喰らった五胡の兵達は大混乱となり、我先にとその場から離れてしまい陣形

 

 を保つどころでは無くなっていたのである。

 

 

 

 当然の事ながら、その混乱はそれを見ていた味方側にも少なからず起きてしまっていたの

 

 であるのだが…。

 

「何よあれ…一刀、あれは一体何なの!?」

 

 それを見ていた華琳の顔にも驚愕の色が浮かんでおり、無意識に俺の袖を掴んでそう聞い

 

 てくる。

 

「詳しくは真桜に聞かなきゃ分からないだろうけど…まさか大砲を造りだすとは」

 

「大砲?」

 

「ああ、大きな鉄や銅の玉を火薬で遠くに飛ばす兵器だ。本来ならこの時代で生みだせる物

 

 では無かったはずなのに…」

 

 華琳の質問に俺はそう答えたのだが、俺にも少なからず混乱があったせいで『この時代』

 

 と言ってしまった事に気付いていなかった。しかし華琳がそれを聞き逃すはずもなく…。

 

「この時代…?一刀、今あなたは『この時代』って言ったわよね?どういう事?あなたは天

 

 の国から来たのではなく、未来から来た人間なの!?」

 

 しまった…『未来から来た』というのだけは秘密にしてきたのだが、つい口が滑ってしま

 

 ったか。

 

「華琳、それについては後でちゃんと話す。今は五胡との戦いに集中しよう」

 

「分かりました。でも一刀さん、終わったらちゃんと話してくださいね。華琳さん、今ので

 

 五胡は混乱してます。今は前進あるのみです」

 

「…そうね。一刀の話は後でゆっくり聞く事にしましょうか」

 

 華琳が答える前に月がすっと話に入ってくる…これは完全に釘を刺されたな。

 

 俺は心の中の焦りを一旦しまって皆に指示を出す為にその場を離れた。

 

 

 

 そして一番混乱していたのは言うまでもなく五胡であり…。

 

「何だ今のは!?」

 

「雷が落ちたのか!?」

 

「でも今日は晴れてるぞ!?」

 

「それじゃ…漢の連中は雷をも自在に操るとでもいうのか!?」

 

「そういえば…確か、漢には天の国から来た御遣いとかいう奴がいるって噂を前に聞いた事

 

 があるぞ!」

 

「天の怒りだ…天の神が漢を攻めた俺達に怒りの鉄槌を下したんだ!!」

 

「やっぱり…だから俺は最初から漢を攻めるなんて嫌だったんだ!!」

 

「逃げろ…もう終わりだ、このままいたら俺達は皆あの雷に焼かれるぞ!!今すぐ此処から

 

 逃げるんだ!!」

 

 そう言って一人が逃げ出すと、その波は一気に五胡の全軍にまで波及してもはやその混乱

 

 は五胡全軍にまで波及していったのであった。

 

「逃げるな!逃げる者は斬るぞ!!」

 

 五胡の将は懸命にそれを押し留めようとするが、

 

「うるせぇ、ならお前が死ね!!」

 

 逆に激昂した兵士達になます斬りにされる始末となり、それを止める事はもはや誰にも出

 

 来る事は出来なかったのであった。

 

 

 

「なんや、えらい敵さんが混乱しとるなぁ?」

 

「まあ、あれだけの物が自分の間近に来ればああなるよね…」

 

「これならもう俺達が突っ込まなくてもいいんじゃないのか?」

 

「李厳さん、そういうわけにもいきませんよ。向こうが態勢を整える前にもっと突き崩して

 

 後に続く一刀さん達の負担を減らしておかないと…」

 

「それもそうか…ならば一気に五胡をたたみかけるぞ!!李典、君はもう一発それを敵陣に

 

 打ち込んでくれ」

 

「はいな!任せとき!!」

 

 轟雷砲の威力に半ば呆然としていた仄達もようやく我に返ると、逃げる五胡の追撃に入っ

 

 たのであった。

 

 二万を超える軍勢が現れた事で、何とかそこに踏みとどまっていた五胡の兵も一斉に逃げ

 

 腰になる。しかも、そこに轟雷砲がもう一発発射された事で大半の兵が戦意を失い我先に

 

 と逃げ出していったのである。

 

 ・・・・・・・

 

「どうしたというのだ!何が起きている!!先程の轟音は一体何なのだ!!」

 

 所変わって五胡の本陣では前線の兵が一斉に逃げ出して来る上に、前線で何が起こったの

 

 か把握出来ない状態であったので、さしもの劉焉も混乱を隠す事が出来ずにいた。

 

「長、どうやら漢の軍勢の中には雷を自在に操る者がいるとの事です」

 

「…雷を自在に操る?どういう事だ?」

 

「先程の轟音のした所には雷が落ちたとおぼしき大穴が開いていたとの事」

 

 

 

「そんなバカな話があるか!そのような物、何かの間違いに決まっている!!もう一度確か

 

 めてまいれ!!」

 

「しかし、既に兵の大半は恐怖の為に退却を開始しており、それを制止しようとした者が逆

 

 に殺される始末。もはや我らにも止める事は出来ませぬ」

 

「そんなバカな…此処までやってきた事があの轟音一つで終わるというのか?この劉君郎が

 

 この程度で終わるというのか!?」

 

 劉焉は怒りの余りにそう叫んでいたのだが、それを聞いた周りの将兵達の動きが止まって

 

 自分の方を向いている事にしばらく気付いていなかったのであった。

 

「…どうした、何を見ておるか!?」

 

「…今、あなたは自分の事を『劉君郎』と言ったように聞こえましたが?」

 

 その返答にようやく劉焉は自分の失策を悟る。

 

「劉君郎と言えば、我らが長に殺された者のはず…何故、その者が今此処に長の鎧兜を付け

 

 ているのだ!!」

 

「つまらぬ言いがかりはよせ!今はそのような些末な事に関わっている場合では…」

 

「些末な事ではない!今我らが此処に来ているのはお前が命じたからだろうが!!我らが長

 

 の命とあればと此処まで来たが…お前が劉焉だというのであれば、もはや我らがお前に従

 

 う謂れも無いという事だ!違うと言うのであれば、今すぐにその兜を外して我らに顔を見

 

 せてみろ!」

 

『そうだ!顔を見せろ!!』

 

 

 

 劉焉の周りにいた五胡の兵達はそう劉焉に迫っていたが、

 

「申し上げます!漢の軍勢がこちらに迫って来ております!!」

 

 その報告を受け取ったと同時に、劉焉を一瞥してそのまま去っていってしまう。

 

「待て、待たぬか…待ってくれ!!俺を一人にするな…しないでくれ!!」

 

 劉焉はそう言いながら兵達にとりすがるが、兵達は完全に見捨てているばかりか、逆に汚

 

 い物でも扱うかのように蹴飛ばされる有様で、四半刻もすると劉焉の周りには完全に誰も

 

 いなくなっていたのであった。

 

「そんな、何故こうなったんだ…何が悪かったというんだ!!」

 

「この期に及んでまだ自分の愚かさに気付かないとはさすがは劉焉、相変わらずの馬鹿馬鹿

 

 しさだな」

 

 この状況に天を仰いで一人ごちていた劉焉は、背後からかけられた声に驚いて振り向くと

 

 そこにいたのは…。

 

「久しぶりだな、劉焉」

 

「ま、ま、まさか、まさかまさかまさかまさか…劉宏なのか!?何故だ、何故お前が此処に

 

 いる!?お前は死んだのでは無かったのか!?」

 

 現れたのが空だった(ちなみに兜を外して素顔を見せている)ので、劉焉の顔は驚愕の色

 

 の染まっていた。

 

「はははっ、何を驚いているか!地獄の邏卒の代わりに黄泉の国からお前を迎えに来てやっ

 

 たんだ!私の他にそれにふさわしい者など何処にもいないだろうが!」

 

 対する空はそう言って笑っていた。

 

 

 

「おのれ……おのれおのれ!この俺がお前如きにやられてたまるか!!俺は劉君郎、皇帝に

 

 最もふさわしい男だ!!」

 

 劉焉はそう叫びながら剣を抜いて空に斬りかかるが、

 

「甘い!!」

 

 空が斬馬刀を一閃させると劉焉の剣はその右腕ごと宙を舞い、劉焉は無くなった右腕の部

 

 分を抑えながらその場に倒れこむ。

 

 そこに葵達が軍を進めてやってくる。

 

「空様、来ておられましたか…劉焉、さすがのお前も此処までだな。これまでお前が犯した

 

 罪の大きさをその身で思い知れ!!」

 

 葵はそう言って槍を構えるが、

 

「待て、こいつは私の獲物だ!手をだすな!!」

 

 空がそう叫ぶとしばらくジッと二人の事を見つめてから構えを解く。

 

「分かりました…翠、こいつはこの人に任せて私達は北方に逃げた奴らを追うぞ!」

 

 そしてそう翠達に指示すると、空に一礼して軍を北へ進める。

 

「ふん、お前一人で手柄を取るか…」

 

 劉焉は荒い息をしながらもそう毒づくが…。

 

「劉焉、もう良いだろう?お前の野望なんか、今更もうどうやったって叶うわけが無いんだ。

 

 此処で諦めてくれるのであれば、お前の命位ならどうにかしてやる。だから…」

 

 空がそう説得してくる。しかし…。

 

「ふっ、お前の口からそんなしおらしい台詞が聞けるとはな…だが、断る!!」

 

 劉焉はそれを拒絶する。

 

 

 

「俺はこれまでお前のやる事成す事全てに逆らって此処まで来た…今更お前に従えるか!!

 

 命を助けるというならそれでも構わんぞ…しかし、俺は生きている限りお前の邪魔をして

 

 やる、お前の娘達のやる事成す事に全て逆らってやるぞ!!例え誰も俺に従わなくなって

 

 俺一人になろうとも、俺は諦めんからな!!それが嫌なら今殺せ、すぐ殺せ!!お前は地

 

 獄の邏卒の代わりに来たんだろう?だったら俺を地獄に連れていけ!!じゃないと、いず

 

 れ後悔する事になるぞ!!」

 

 劉焉は口から血を吐かんばかりにそう叫ぶ。それを聞いた空はしばらく黙ったままであっ

 

 たが、斬馬刀を構え直して一気に劉焉の肩口から斬り下げる。

 

「ごばっ…くくくっ、これで良い、これで良いんだよ劉宏、どうせ俺とお前が相容れる事な

 

 んて未来永劫無いんだからな…俺は野望…を叶える事など……出来なかったが、こういう

 

 終わり方なら悪くも無いさ…さらばだ、劉宏…ごふっ!?」

 

 劉焉はそう言うと静かに地に倒れ、二度と動く事は無かった。しかしその顔は何処か満足

 

 しているようにも見えていたのであった。

 

「この大馬鹿男が…お前は最初から最期までただの馬鹿男だったよ」

 

 空はそう呟くと、劉焉の亡骸を抱えて一人何処となく去って行ってしまった。

 

 ・・・・・・・

 

「そr…李通殿がいない?」

 

 逃げていった五胡の追撃も一段落して軍勢を集結させた俺達に伝えられたのは、従軍して

 

 いたはずの空様の失踪という報告であった。

 

「はっ、何やら敵兵のような者の亡骸を抱えて一人で歩いている姿を見た者がいたとの事で

 

 すが、何処へ行ったかまでは…」

 

 

 

 

 

 

 

 敵兵の亡骸を…そうか、おそらくそれは劉焉だな。

 

「どうします、一刀さん?空様の捜索をした方が良いですか?さすがにこのままでは命様や

 

 夢様にご報告のしようも無いんじゃ…」

 

 月も同じ事を感じていたのだろうか、少し戸惑いと憂いの混じったような表情でそう聞い

 

 てくる。

 

「いや、やめておこう…おそらくそうしても見つける事は出来ないだろうし、空様もそれを

 

 望んではいないだろうしね。まず、今やる事は将兵達を無事に帰還させる事だ」

 

 俺が弱々しく首を横に振りながらそう言うと、月もわずかに頷いて兵達に指示を出す。

 

 ・・・・・・・

 

 数日後、戦後処理の為に残る義真さんや葵さんを残して俺達は洛陽への帰途へとついたの

 

 であったが…結局、空様が戻って来る事は無かったのであった。

 

 

                                       続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 とりあえず、これで劉焉との長い腐れ縁も終わりです。

 

 結局あっさりと終わってしまいましたが。

 

 一応これで漢をとりまく戦乱も終結した形になります。

 

 という事はこの外史もそろそろ終わりに近付いている

 

 という事でもあります。

 

 次回以降、拠点的な話を入れつつ最終回へと向かう予

 

 定です。

 

 とりあえず次回は今回の戦のその後になります。

 

 

 それでは次回、六十五話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 空様の出番はまだありますので。しばらくは出

 

    ませんが。

 

 

 

 

 

 


 
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