No.746958

【真・恋姫†無双if】~死を与えることなかれ~12話

南無さんさん

こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます。
今年最後の投稿です。今年は更新が遅れた時が多々ありましたが、
何とか失踪せずにすみました。
来年は月1~2ペースを目標としたい所存です。
さて今回はこれまでの冥琳の心情です。回想ではないですね

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2014-12-30 01:42:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6130   閲覧ユーザー数:5095

 

~冥琳視点~

 

 

孫呉兵 「天命我らにあり!!曹操の弱兵共よ。戦況は定められた覚悟せよ!!」

 

曹軍兵 「何の、まだ勝負は決していない

     劣勢の時こそ我が武を輝かせる時、孫呉よ、まだ曹軍の牙は折れてはいない!!」

 

 

戦場で交錯する様々な想いが軍旗に宿り、照覧せよと言わんばかりに輝いて見えた。

 

そして、その御旗の下、大勢の烈士達が雌雄を決しようと争っている。

 

戦況は孫呉優勢。私は流れを奪われまいと戦況を見定める。

 

だが、頭の片隅で、それとは別にどうしても北郷の事を考えていた。

 

 

 

『…冥琳。それよりも伝えなくていいのか?

 曹操の大軍勢が迫っているんだろう』

 

 

あの時の私は表面では平静を装っていたが、内心ではどうしようもない

 

悲しみに溢れていた。どう抗っても変えられはしない死と言う決定事項。

 

なんて残酷な運命なのだろうと。だが悲しみを抱きつつ軍師の性と言うべきか、

 

北郷の言に疑問を抱き口に出してしまっていた。

 

 

『何故、曹操軍襲来の報を知っていたのか』

 

 

この件を知っていたのは城に常駐していた将兵と帰還した諜報兵のみ。

 

更に言えば北郷と雪蓮が居ない時に報告されたのだ、それ故に、北郷の耳に

 

入るはずはなく、知るという事に関しては絶対に不可能だった。

 

では、一体何故知り得たのか。私は問いたいという気持ちがあったが聞く事が出来なかった。

 

目の前には運命を決められた男、背後には大軍を率い我ら父祖伝来の地に迫っている覇道の王君。

 

将と言う立場から戦に集中せねばならぬ身であり、その為、答えを聞くには余りにも余裕がなかった。

 

 

『だ、大丈夫。まだ燃え尽きたりはしないさ。

 …ごめんな、冥琳。俺に残された時間がもう僅かなのを皆に伏せてくれて』

 

 

全くだ。死すると知っていて、それを隠す。私でなければ首を縦に振らないだろう。

 

だが、同じ穴のムジナと言うべきか、お互い侵食されている身、故に理解できたのであろうな。

 

けれどな、頭ではわかっていたが、心では止めたかったのだと今になってそう思う。

 

 

「右翼、突出し過ぎだ!!部隊との調和を考え敵兵を駆逐せよ!!」

 

「はっ!!」

 

 

『今までありがとう…冥琳』

 

 

感謝などされたくはなかった。号令が始まる際に一刀を送り終え演壇を下りる最中、

 

私は頭を下に向け、心の内なる感情を押し殺した。

 

悲しみを悟られる訳にはいかない。そうでなければ、北郷が貫いた孫呉への忠義が、

 

将への愛情が全て無駄になってしまうから。私が平静を保たなければ水泡になってしまう。

 

だから、私は瞬時に表情を引き締め、荒野に君臨する大樹の様に心をどっしりと構えた。

 

それが北郷の望みでもあり、孫呉の為でもあるのだから。

 

 

「…公謹様」

 

 

一人の兵がこちらにやって来た。この者は私の右腕で北郷の様子を窺う任を与えていた。

 

決して私以外に報告、任務内容を口外するなと言う命令を添えて。

 

 

「どうであったか?」

 

「それが、公謹様らが戦場に赴いた際に北郷様が御倒れなられたとの事、

 しかし、今は御目覚めになられ尚香様に支えられながら

 物見櫓におられ、戦況を窺っております。しかし、そのお顔は著しくありません」

 

「そうか。…小蓮様の様子はどうであった?」

 

「…何かに堪えている、その様に感じました」

 

 

…告げたのか北郷。もう、この戦は終焉に近いのだな。

 

 

『冥琳。恐らく俺の死期はこの戦が決着がついた時だ。それは十中八九間違い無い。

 だから、その時になったら皆を俺の前に集めてくれ』

 

 

…何故だ北郷、何故、自分の死期がわかるんだ。それは天の御使いの力なのか。

 それなら、天の御使いとは一体何だと言うんだ。

 

 

「…公謹様。北郷様は」

 

 

…いかん。私がこの様な態度では兵の士気に関わる。

 

 速やかに気持ちを切り替えなくては。

 

 

「…疑念を抱いては勝てる戦も負けてしまう。

 今は戦に集中せよ。それが、出陣できなかった北郷の為になる」

 

「………はっ、了解致しました」

 

 

よく口が回る二枚舌だな、自分でも嫌になる。

 

…北郷の様子を伺わせたのは失策であったか?

 

奴は表情に出す者ではないし、流言といった心配はないが、

 

…どうやら、まだ動揺しているらしい。

 

だが、私はそれでも、知らなければならなかった。

 

 

「北郷………」

 

 

その名を呼んでも私の心模様は変わる筈なく、空に溶け込んでいった。

 

だが、今は変わらずとも立ち止っている時ではない。

 

私には果たすべき義がまだ残されている。

 

 

 

 

―――――私は、私は成すべき事をなすぞ。北郷…!!―――――

 

 

 

 

 

 

 


 
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