No.746039

ログ・ホライズン コミュ障奮闘記

カナリアさん

容姿端麗、文武両道。それらを体現する少年、西垣光輝。
そんな彼は重度の"コミュ障"で…

飛ばされた『エルダーテイル』の世界で、彼はどう変わっていくのか?
そして、そこでの出会いが彼にもたらすものとは?

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2014-12-26 11:41:32 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:892   閲覧ユーザー数:879

 

一話

 

初投稿ですので至らないところも多いですが、精一杯頑張ります。

 

 

辺りは日も沈み、暗くなり始めた頃。一人の少年が森の中に佇んでいた。月光が映し出す彼の姿は絵に描いたように美しい。

 

しかし、その姿は普通のものではなかった。まだいくらか幼さの残った、凛々しい顔立ち。スラリと長い手足。

 

そこまではいい。問題は、彼の身につけているものだった。

 

銀を基調とし、炎をあしらった武闘着に身を包み、その手には手甲がはめられていた。その鋭く、荒々しい中に美しさを兼ね備えた姿は龍の姿を彷彿とさせる。

 

彼の姿は、ゲームなどに出てくる武闘家のような服装をしていた。

 

「はぁ…いきなりこんなところに連れてこられるって……最悪だ…」

 

彼、西垣光輝ことコーキは気づけば緑溢れる街の中に佇んでいた。知らないようで知っている、そんな街並み。だけど、そう言う以前に彼は自室にいたはずである。

 

とあるゲームをするために。

 

頭の回転の速い彼は今の自分の姿と、今いる場所で、理解した。ここがどこなのかも、どんな場所なのかも。

 

「もしかして、ここは……エルダーテイル?」

 

そう、彼はゲームの中へ連れてこられたのだった。

 

 

 

 

 

「にしても…」

 

さて、ならばなぜ彼はこんな森の中にいるのか?

 

いきなりのことで錯乱し、 その場から離れたかった?このゲームの世界を楽しもうと、意気揚々と駆け出した?

 

…残念なから、どれも違うと言わざるを得ない。一番の理由はもっとくだらない、しょうもないものだった。

 

 

 

「なんで、知らない人があんなにいるんだ…!」

 

自分のような立場の人たちが数多く街にいたのだ。嘆き、叫びをあげる多くの誰か。

それを見て恐ろしくなったとか、そんな殊勝な神経はしていない。

 

それは至極簡単なこと。彼が、

 

 

 

 

 

重度のコミュ障だからだ。

 

親しい友人に身内ならいざ知らず、それ以外はからきしダメダメであった。

 

例え同じ学校のものでも、話したことのない人であれば平然と無視を決め込むレベル。そのことで心をへし折られた人数は数え切れない。告白して、答えも言わずに立ち去るなんていい方だ。最悪、約束自体をすっぽかすことがあるのだから…

 

曰く、知らない人(話したことの無い人)=相容れない存在というそうな。

 

そんな彼の容姿、能力と相まって《孤高の天才》《女泣かせ》などと一目置かれているが、単に人付き合いが苦手なだけである。だから、彼の友人なんて数えるほどしかいない。むしろ、友人がいることに驚きを隠せない。

 

「…!」

 

そんなわけで彼は周りの気配に敏感であり、すぐさま人の気配を察知し武闘家(モンク)のスキル、ファントムステップで移動した。

 

残像を残しながら、その卓越した身体能力による跳躍により木の上に移動していた。ただ人が来ただけでこの反応。もはや救いようのないレベルである。

 

「なんだよ、こんなところに誰が来るんだ…」

 

そう言って悪態を吐く。せっかく人気のないところに来たというのに、と。その顔には怒りの色が浮かんでいる。

 

誰がどこにいようと勝手なのだが、そんなものは関係ない。そう言わんばかりの態度だった。

 

 

 

だけどもし、彼がここから離れていれば物語は何の変化もないまま進行していただろう。

 

そう、彼が『この場に残る』という選択をした時点で物語に変化をもたらした。それは全体から見れば小さな、でも、とても大きな変化だった。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ!」

 

遠巻きに聞こえてくる荒い息遣い。恐らくは少年少女のものと思われるそれはだんだんと近づいてきていた。

 

「はっ!どこへ行くってんだ?子猫ちゃん達!?」

 

その後方からは男のゲスい声が聞こえてきた。それだけで大体の理由は察した。恐らくはPKだろう。

 

『めんどいな…早くどっか行かないかな』

 

そう思い、しばらく隠れていようと決める。もちろん、助けようだなんて微塵も思わない。

 

理由?そんなもの、知らない人だからに決まっている。彼はコミュ障なのだから、それ以上の言葉は必要ない。

 

そのうちどこかに行ってくれるだろう、そうなることを信じてーーーーー

 

 

 

 

 

 

五分経過

 

「いや、来ないで!」

 

「はっはっは!逃げろ逃げろ!」

 

………早くどっか行けよ、いつまでウロウロしてんだ…

 

 

 

 

十分経過

 

「クソ、いつまで逃げれば…」

 

「ほらほら、捕まっちまうぞ〜?」

 

 

 

 

………………………

 

 

 

 

 

 

 

いくら森の中だとはいえ、十分も回り続けるようなものではない。完全に故意であることを疑うレベルだ。いや、実際はその通りなんだろうが。

 

それが、彼の精神をガリガリと削っていく。それはもうすごい勢いで。

 

 

『なんだよ、アイツら…ふざけんなよ……!』

 

その言葉の意味するところ。簡単なことだ。彼らはだんだんと彼のいる木の方に近づいていた。

 

「へへへ、ここまでうまくいくとはな……」

 

その声に気づき、下を向く。動揺していたために気づかなかったが、さっきから近くに誰かの気配がしていたのは……そういうことか……

 

ブチンッ

 

その時、彼の中で何かが切れた。いつまでも遠くに消えず、更にはこちらに接近してくる始末。その上、知らない奴が下にいたのだ。

 

彼らに悪気があったわけではないし、たまたまなのだろうが。

 

いい加減、我慢の限界だった。

 

「…殺す」

 

こうして、とてつもなく理不尽な理由で行動を開始した。もちろん悪いことはしているのだから当然の報いといえばそうなのだろうが。その動機はとてもじゃないが褒められたものではなかった。

 

「お前ら……」

 

なんのためらいもなく、木の上から飛び降りる。冒険者の身体をもってすれば簡単なことなのだろうが、いきなりこんなことをするのはかなりの勇気がいるだろう。彼の場合は、狂気のなせる技なのだが…

 

軽い着地音を残し、即座にスキルを発動する。今度は逃げるため、隠れるためではなく、獲物を刈り取るために。邪魔者(知らない人)を排除するために。いや、視界から(物理的に)消すために。

 

そしてそれは、これまで隠れていた武士(サムライ)の男に向けて放たれた。

 

「残念で「さっさと失せろや!!」クペッ!?」

 

 

 

 

ドゴンッ!

 

 

そんな、とてつもなく重い一撃が鎧の大男の腹部に突き刺さった。

 

ワイバーンキック

 

読んで字の通りの飛竜のごとき蹴りで武士の男が身体をくの字に曲げながら、吹き飛んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、こうなっちゃったの?」

 

突然の異世界に連れてこられただけでも今日という日は不幸だというのに。その上、さらなる不幸が積み重なった。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ!」

 

私、ミノリは弟のトウヤと共に森の中を駆けていた。後ろから迫る、脅威から逃れるために。

 

「はっ!どこへ行くってんだ?子猫ちゃん達!?」

 

始めたばかりで二桁にも満たない自分達よりも、遥かにレベルが上の冒険者。そう、私達は今狩られる立場にいた。目的は、私たちの持つ所持金やアイテムだろう。

 

 

 

いわゆるPKというもの。そのために、私達は殺される運命にある。

 

 

その恐怖が私達を突き動かす。逃げて、逃げて、逃げ続けて…森の中を延々と回り続ける。もはや街がどこにあるのかも分からない。それほどがむしゃらになりながらも、駆け続けた。

 

そして、どれほど時間が経ったのだろう?一分なのか、十分なのか、それとももっと長かったのか。

 

辺りから嫌な雰囲気が漂い始めた頃。

 

訳も分からぬ内に終わりを告げた。私達が捕まった、というではない。それは突然のできごとだった。

 

「お前ら……」

 

トッ、という軽い音がして、木の上から銀色の武闘着に身を包んだ人が降ってきた。その姿が一瞬ぶれた時には…

 

 

「残念で「さっさと失せろや!!」クペッ!?」

 

私たちの進行方向に隠れていた大男に蹴りをお見舞いしていた。銀色の武闘家の手によって、恐怖の鬼ごっこは終わった。だけど……

 

 

 

「神殿送りにしてやる…そして、後悔しろ……!己の愚行を……」

 

どっちが、悪者なんだろう…

 

少しだけ、本当に少しだけど、心配になったのは内緒の話だ。

 

「…………」

 

隣では、弟のトウヤも心配そうな顔をして見ていた。

 

「助かった、のかな?」

 

「…さあ?」

 

 

そんなやりとりがあったことを、目の前に佇む少年が気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

吹き飛んだ男の方を見ながら、彼は考えていた。

 

見た目、ブチ切れているようだが頭は実に冷静そのものだった。

 

『目視できる限りで三人。それに他にも何人か潜んでやがるな、魔術師が…』

 

彼は、ここまでの短い間にそこまでの考察をしていた。

 

人の気配を察知できるとはいえ、どうやって魔術師がいることを看破したのか?

 

それは、彼らの灯している明かりにある。今いる二人はどう見ても盗剣士(スワッシュバックラー)。それに今吹き飛ばしたやつは武士。魔法の魔の字もないような奴らがどうやっているのか、なんて分かりきっていることだ。

 

『まぁ、そんなことは些細なことか…』

 

敵の増援がいるというのにこの余裕。実際にこの程度ならどうとでもできるのだろうがそれ以上に…

 

『どうやって

、料理してやろうか……』

 

 

 

もはやなにも言うまい。ただ、哀れなPKに神の祝福があらんことを……

 

「お前ら全員グチャグチャに叩き潰してやる…」

 

銀で統一されたその姿は大変美しいのだが、呪詛のような言葉を発する彼が全てを台無しにしていた。

その銀の輝きが、更なる威圧感を与えていた。

 

完全にスイッチの入った彼を、止められるものはこの場にいなかった。

そんな彼の様子は、ばっちりミノリ達も見ているわけで。

 

『私達、助かるんだよね……』

 

中学生に心配される始末である。

 

 

 

 

頑張れコーキ!

負けるなコーキ!

君の未来は明るいぞ!!

 

 

 

 

 

多分……

 

 

あとがき

 

勢いで書いているのでおかしなところがいっぱいですが、生温かい目で見てくだされば。

こんなんですが、よろしくお願いします。

 

 
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