No.745331 真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第六十二話2014-12-23 21:49:32 投稿 / 全11ページ 総閲覧数:4779 閲覧ユーザー数:3530 |
~荊州・襄陽にて~
「それは間違いないのだな?」
「…はっ、我らが長におかせられましては、蔡瑁様が味方に付いてくれた暁には劉琮様に
荊州を、蔡瑁様には徐州を与えるとの仰せでございます」
五胡からの使者と話しているこの男こそ蔡瑁である。蔡瑁は死期の迫っている劉表の後
継ぎに自分の妹の子である劉琮を据えて、自分が外戚として実権を振るわんと画策して
いたのだが、劉表の嫡子である劉琦は病弱でこそあるものの、その人柄と聡明さを慕う
者も多くなかなか実を結ばず、内心焦っていた所に五胡(劉焉)から味方に付けば劉琮
の跡目相続を後押しするだけでなく蔡瑁自身にも領土を与えると誘いを受け、ほとんど
それに乗る事に心は傾いていたのであった。
「しかし、我らだけが漢に対して反旗を翻した所で、周りが全て敵ではこちらも動きよう
が無い。その辺りはどうされるおつもりか?」
「ご心配なく…蔡瑁様が決起されると同時に各地に潜む者達が一斉に立つ算段となってお
ります。その数はおよそ三万、北方にほぼ全ての兵を集結させている漢の連中にはその
数に対抗する事も出来ますまい。我らは北方の連中が戻ってこれないように足止めをし
ておりますので、その間に蔡瑁様が荊州を乗っ取り洛陽を陥とせばもはや奴らに手も足
も出す事も能わずという事になります」
蔡瑁はその返答を聞き、満足気に笑う。
「そうか、ならば我らはそちらに味方する事を約束致そう…但し、努々先程の条件をお忘
れめされぬようにな」
そして数日後、劉琦を幽閉した蔡瑁は劉表配下の諸将を招集し、五胡の味方をして荊州
並びに洛陽を攻める事を宣言したのであった。しかしその次の日…。
「申し上げます!洛陽よりこちらに向かう軍勢あり!その数およそ八万!!」
その報告に蔡瑁は青ざめる。
「ど、どういう事だ!?何故我らが敵になった事が知られているのだ!?大体、漢の兵力
のほとんどは北方に行っているのではなかったのか!?」
蔡瑁はそう慌てふためきながらも、何とか配下の諸将を集めて迎撃態勢を取ろうとした
のだが…蔡瑁の呼びかけに集まったのは二割にも満たない有様であった。さらに…。
「申し上げます!孫策の軍勢約三万、東の境を超えて進軍中!!」
「西より劉璋軍が進軍中、その数約一万五千!!」
洛陽に呼応するかのように東西からも攻め寄せて来た為、蔡瑁達はさらなる混乱に包ま
れるのであった。
・・・・・・・
「皆、良く来てくれたな。蔡瑁の奴め、こちらの動きに対応出来ずに籠城しおったわ」
二日後、集まった諸将にそう言っていたのは、こちらの鎮圧軍の指揮を任された王允で
あった。ちなみに他の面々は…王允の補佐として史那、馬騰軍より仄、董卓軍より真桜、
孫策軍より孫策・冥琳・祭、劉璋軍より黄権・桔梗(焔耶は一刀達と共に北方に行って
おり、桔梗は洛陽より仄達と共にこちらに来ている)、北郷組より李厳・稟である。
「しかし、此処まではうまくいきましたが…問題はこれからでしょう」
「確かに蔡瑁だけならば、このまま城を打ち破ってしまっても問題は無いかと思いますが、
劉表様・劉琦様・劉琮様が中におられるので、あまり追い詰めすぎると人質にする可能
性も否定出来ません…さすがにそこまですれば自分の身とて無事に済まない事位、蔡瑁
とて認識はしているでしょうが」
冥琳と稟のその言葉に皆は少し考え込む。
「でも、このまま城を囲んでいても…真桜、そういえば前に蒲公英があなたの絡繰で城壁
を破壊した事があったって聞いたけど、それは持って来てないの?」
「蒲公英も仄に何を言ってんねん…確かにあれなら城壁に穴を開ける事位出来るやろうけ
ど、あれはその城壁を破壊した件で陛下の命令で封印されとるんや。今からまた洛陽に
戻って、陛下の許可を貰うて封印を解いて、あれを持ってまた此処に来るんは骨やで」
仄の質問に真桜はそう残念そうに答える。
「確かに今回の襄陽征討にあまり時間はかけられません…今、洛陽に残っているのは最低
限の守備部隊のみ。此処で変に足止めを受けて、がら空きに近い状態の洛陽を狙われて
は危険ですからね」
稟の言葉に場の空気が少し重くなる。
「なら、どうするのよ…もう劉表達の事なんかどうでもいいんじゃない?蔡瑁みたいな奴
にこれだけ良いようにされてる程度の連中なんか助ける価値なんか無いわよ」
「雪蓮、それは度が過ぎた発言だ」
雪蓮がとんでもなく物騒な事を言い出したのを冥琳がたしなめると、雪蓮は『それじゃ、
私知~らない』といった顔でそっぽを向いてしまう。
「確かに雪蓮の言う事にも一理はあるのかもしれないが…それはあくまでも最後の手段だ。
出来るだけ劉表殿達の事は助け出す方向で進めなくてはなるまい」
「確かに最初から人質を見殺しにするような事は避けた方が良いからねぇ」
王允の言葉に李厳が同意の意見を述べる。
「ならば、どうするのじゃ?城を攻略するにしても、このままでは長期戦になってしまう
のは確か。一刻でも早く落とす為には少なくとも城門か城壁を何とかせねばならんじゃ
ろう?儂の豪天砲でもあれに穴を開けるのは少々難しいぞ」
桔梗が豪天砲を持ち上げながら問いかけると、再び皆に沈黙が流れたのだが…。
「えっ?やっぱ、それって豪天砲やったん?もしかしてとは思うとったんやけど、見た目
が少し違うとったから今まで聞かへんかったんやけど」
真桜が少し驚いた感じでそう聞いてきたので、皆の眼が一斉にそちらに向く。
「ああ、確かにこれは豪天砲じゃ。巴郡に来た行商人から手に入れてな、そのままでは少
し使い難かったので少しばかり手を加えたんじゃが…何故お主は豪天砲を知っておるの
じゃ?」
「知っとるも何も、それ造ったんはウチや。前に武器の行商やっとる人から変わった武器
を造ってくれ言われて造った物なんやけど…まさかこないな所で再会するって思わんか
ったわ~」
真桜はそうしみじみと言ってから、何かを思いついたような顔をする。
「そうや!厳顔はん、それ一回ウチに貸してもうてもええですか?」
「…構わんが、何に使うつもりじゃ?」
「ふっふっふ…それにウチの新たな細工を施せば、あないな城壁の一つや二つ軽~く壊せ
るようになるんですわ!」
真桜はそう自信満々に言っていたが…凪や沙和から色々と彼女の絡繰の失敗話を聞いて
いる皆の眼は少し懐疑的な物であった。
「何や、ウチの腕が信じられへんいうんですか?」
「信じぬというわけでは無いのだが…折角の武器が変な風になってしまうのではないかと
少しばかり思っただけでな」
「絶対、ぜ~~~ったいに壊したりなんかしまへん!!だから此処は一つ、ウチに任せて
ください!!」
そう言って懇願するように言い切る真桜の眼に嘘が無いのを感じたのか、桔梗は豪天砲
を真桜に差し出す。
「分かった、じゃが必ず良い物に仕上げるのじゃぞ?」
「任せてください!!そんなら今から改造しますさかい、完成するんは明日の朝いう所に
なります」
「ならば、その改造が終わり次第に攻撃を再開する!各自、出来るだけこの間に身体を休
めておくように!」
そして王允の指示により、この場は解散となったのだが…。
「よっしゃ!此処で豪天砲と再会出来るなんて、幸運やで!!これで、封印されたあれも
うかばれる言うもんや!ふっふっふ…腕が鳴るでぇ!!」
真桜は一人、まるで何かにとり憑かれたかのような笑みを浮かべていたのであった。
そして次の日。
「じゃじゃーん!これこそがウチの最高傑作、名付けて『豪天砲・弐式』や!」
真桜が得意満面で改造した豪天砲を持ってくる。
「弐式…何処がどう変わったというのじゃ?儂の眼には前と何も変わっていないように見
えるが?」
「ふっふっふ…確かに見た目はそんなに変わってまへん。しか~し!この弾丸を打ち出す
所に秘密があるんですわ!!」
真桜に言われて桔梗がそれを見ると…弾丸を打ち出す所の内部に螺旋のような物が刻ま
れていた。
「これは何じゃ?中に何やら奇妙な線が刻まれているが?」
「よくぞ聞いてくれました!弾丸をこの螺旋の中で回転させる事によって、より遠くに、
より正確に標的を打ち抜くんですわ!!しかもその威力も前に比べておよそ十五倍はあ
るっちゅう優れもんなんです!!これならあないな城壁の一つや二つ、簡単に壊す事が
出来ます!!」
「そ、そうなのか…まあ、お主がそこまで言うのなら一度試してみようか」
桔梗は半信半疑ながらも弾丸を装填して城壁に向かって豪天砲を向ける。王允達もそれ
を固唾を飲んで見ている。
「よし、行くぞ…発射!!」
桔梗は気合いと共に弾丸を打ち出す。そして、弾丸が城門に当たると同時に大音響と共
に門が崩れ落ちる。
それを目の当たりにした敵味方双方がそのあまりにもの威力に、驚愕の表情を浮かべた
まま凍り付いていた。
「ふっふっふ…どうや!見たかウチの最高傑作の威力を!さあ、向こうが態勢を立て直す
前に攻撃や、王允様!!」
「そ、そうであった…皆、何時までも呆けている場合では無い!すぐに通路の確保じゃ!
それと厳顔はもう一度ぶっ放してさらに風穴を開けろ!!」
真桜からの言葉にいち早く我に返った王允の号令で一斉に兵がなだれ込む。蔡瑁側の兵
も防ごうとはしたものの、二度目の桔梗からの砲撃によって城壁にまで穴が開くと完全
に戦意を喪失し、大半が逃げ出すか投降してきたのであった。
・・・・・・・
「王允様、劉琦様と劉琮様をお連れしました」
それから半刻後、残すは蔡瑁達の立て籠もる楼閣のみとなり、その包囲を完了した王允
の下に史那が劉琦と劉琮を連れてやってくる。
(ちなみに劉琦は城内の外れの一角に幽閉されていた為、王允達がなだれ込んだと同時に
劉琦派の者達に助け出され、劉琮は蔡瑁が混乱のまま存在すら忘れ去られた状態で放置
されていたのを史那が保護したのであった)
「うむ…久方ぶりじゃの、劉琦殿。捕まったと聞いた時には心配でしたが、お元気そうで
何よりでした」
「…この度は、誠に申し訳ありませんでした。しかも王允様にまでご心配をおかけさせて
しまうなど…汗顔の至りでございます」
劉琦は本当に申し訳無さそうに身体を縮こませながら謝罪の言葉を述べる。
「そして…そちらが妹君の劉琮殿ですな?」
そう言って王允が劉琮の方へ視線を向けると、劉琮は小さく悲鳴を上げると同時に劉琦
の後ろ側に隠れてしまう。
「ほっほっほ、どうやら儂は劉琮殿に嫌われたようじゃの」
「も、申し訳ございません…妹はずっと城の奥にばかりいて、まともにしゃべった事があ
るのは父・義母を除けば私と蔡瑁だけなもので…」
「そうであったか…だからこそ蔡瑁も神輿にし易かったのかもしれぬがな。まあ、それは
良い。今は蔡瑁の事が先じゃ…劉表殿がいないという事は蔡瑁に囚われておると考えて
良いのじゃな?」
王允がそう聞くと劉琦は少しうつむいたまま押し黙ってしまう。
「どうした?何かあるのですか?」
「おそらくなのですが…父は既に身罷っているものと」
「…それはどういう事です?」
「私が蔡瑁に囚われた時、既に父は危篤状態にありました。蔡瑁は私を捕らえる事しか頭
に無かったようですし…おそらく、今頃は既に」
・・・・・・・
劉琦の予想は当たっていた。
劉琮を自分の下にいない事を知った蔡瑁が最後の手段と劉表の寝室に向かうと、そこに
は既に事切れて幾日か経ったであろう劉表の遺体が横たわっていただけであった。
「そんな…バカな…これではもう俺には何も無いではないか…ただの反逆者ではないか…」
そう弱々しげに呟く蔡瑁の耳には、立て籠もっているこの楼閣に攻め入って来る軍勢の
声が何処か他人事のように聞こえていたのであった。
「そうですか…襄陽攻略も無事に終わって何よりです。劉琦殿と劉琮殿も無事に陛下が保
護されているので、これであちらの方は一件落着ですね」
王允さん達が襄陽を攻略して七日後、北方にいる俺達にもその朗報が届けられ、それを
聞いた皆の顔にも安堵の色が浮かんでいた。
「結局、蔡瑁はどうなったんだ?」
「何でも平民の格好で逃げようとしていた所を見つかって捕えたそうよ。まあ、そう遠く
ない内に斬首でしょ。まったく、ああいうのは何でそう何時も何時も往生際が悪いのや
ら…ボクには理解出来ないわよ」
俺の質問に詠がそう答えながら何やらブツブツ文句を言っていた。
「でも、蔡瑁ってバカだよね~。劉焉が味方に引き込もうと使者を送ったのなんかとっく
にこっちは知っていたのに。もしかして焔耶レベル?」
「確かにバカとしか言いようが…って、蒲公英!私と同じレベルって、それ褒めてないだ
ろう!?」
「しかし、真桜のその絡繰は凄いなぁ~。その城門を一撃でぶっ壊したっちゅうのをウチ
も一度見てみたいわ~」
「沙和はとりあえず真桜ちゃんの絡繰が失敗しなかったのを聞いて安心したのぉ~」
「おいおい、真桜だってたまには成功してるだろう?」
安堵したからか、皆が好き勝手言っていたが…まあ、たまにはこういう事でリラックス
するのも悪くはないか。
「さて、これで後顧の憂いが無くなった所で…私達は五胡との決戦に挑みます。この戦い
で、すべちぇ…オホン、全ての決着を付けるつもりですので、皆さんもそのつもりでい
てください!」
『応っ!』
月の言葉に皆が一斉に答える。
遂に五胡との最終決戦…否が応でも緊張感で身が震える。
「ふふ、一刀さんも震える事があるんですね」
「これは武者震いってやつだよ、輝里」
「そうですか?ならそういう事にしておきましょう…さあ、一刀さん、私達も」
「ああ、出陣準備だ!!」
そう言いながら俺は北の空を見上げていたのであった。
続く。
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
何とか此処まで書けましたが…どうにもうまくいきません。
今年中に何とかもう一話行けたら良いのですが。
とりあえず次回はようやく五胡との最終決戦のお話です。
一話で終わるかは不明ですが。
それでは次回、第六十三話にてお会いいたしましょう。
追伸 Collector’s Boxを買うべきか買わぬべきか…
悩み中です。
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緒戦に敗れた劉焉が後方を攪乱する為に
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