―帰ってきなさい・・・待っていてあげるから・・・帰ってきて・・・―
ああ、そうだな
帰らなくちゃな
俺、待たせてるんだから
ちゃんと、みんなの・・・
華琳のところへ・・・・
「絶対、帰るからな・・・・華琳」
【卑弥呼】「では、はじめるぞ」
【貂蝉】「いくわよん」
鏡の前に立つ俺に二人が手を掲げる
【卑弥呼】「ふぬぅぅぅぅぅうぅぅううう」
【貂蝉】「うっふううううううううん」
鏡から光があふれる。
違う、光を吸い込んでる。
光を放っているのは・・・俺だ
柱のように空から・・・天井を突き抜けて降りてくる。
一瞬浮いたかと錯覚するほど、身が軽くなった。
やがて、視界がブラックアウトする。
意識はあるのに、視界がきかない。
異常な出来事なのに、ひどく落ち着いている。
というより、何も考えられない。俺はただ眺めているだけだ。
そして、地に足が着く感覚を覚える。
一瞬下を確認し、前を向く。
すると、視力が戻ったのか、景色が広がる。
人がいる。
変な三人組に襲われている。
どこか見覚えのある景色
襲われていた人が、槍を持った女の子に助けられている。
何か話をしているうちに、女の子が2人、近寄ってきた。
3人の子と何か話をしている。
何かは聞こえない。だから、近づこうとした。
手を伸ばす。
触れるであろう瞬間。
――――ザァァァ
一瞬にして燃え去った景色
何が起こったかわからないまま、新しい景色が見え始める。
二人の女の子が砦の前で戦っている。
人の領域を超えた剣戟の嵐。
それはどれだけ続いていたであろうか。
二人の女の子はそれがずいぶん楽しそうだった。
しかし、一人の女の子は砦から放たれた矢をその瞳にうける。
それは尋常ではない光景だった。
それでも、彼女はその誇りを失わず、戦った。
――――ザァァァ
またしても燃え尽きる景色。
灰となったその断片に触れることもできず、ただ消えていく。
新しい景色。
それは黄色い布を纏った者達との戦争。
敵として、強大だった彼らを率いていたのは
あまりにも弱い少女達だった。
ただ、皆に歌を聴いてほしい。
その願いとはまったく違う方向へ歩み続ける。
彼女らをその道から救ったのは
覇道を歩み続けるひとりの少女。
―――――ザァァァ
【一刀】「・・・・・・」
何も言えず、ただそれを眺めていく。
自分が触れた景色全てが燃え尽きていく。
次の景色はなんなのか。
振り返る。
―――――ザァァァ
今度は視線を向けただけで燃えていく。
やがて、あちこちから、何かが燃える音がする。
【一刀】「あ・・・・・・・・」
消えていく。
ほとんど強制的に飲み比べさせられた・・・
また、消える。
落とし穴にはめられ、策士本人まで一緒にはまった・・・・
消える。
付き人なんて名目で、パシリ同然の日々・・・・
消える
何かあると、すぐにその大剣で追い回された・・・・
消える・・・・
一緒に覇道を歩んだ。寂しがりやの女の子・・・・
【一刀】「か・・・・り・・・ん・・・」
【卑弥呼】「ふぬぅ・・・よもやこれほどまでに膨大な意思だとは」
【貂蝉】「ふぅぅん!・・・さすがご主人様ってところかしら」
いろんな意味で人を超えた二人でも、汗が見え始める。
すでにかなりの量の記憶を消している。
【卑弥呼】「貂蝉よ・・・なにも全て消さずとももう十分ではないのか?」
【貂蝉】「・・・・・そうね。でも、ご主人様の望んでいるのは終端ではないのだから、ここで終わるわけにはいかないのよねん」
【卑弥呼】「ふむむ・・・では、いたしかたないか・・・」
【干吉】「いえ、その必要はありませんよ」
【卑弥呼】「なにやつ!」
【左慈】「我らの侵入など予測済みではなかったのか。貂蝉」
いつから、そこにいたのか。
貂蝉、卑弥呼の向かい側に立つように二人はいた。
【貂蝉】「あららん、左慈ちゃんに干吉ちゃんじゃないの。」
【干吉】「正直、北郷一刀がここまでしてくれるとは思っていなかった。良い方向に予測が外れましたね。」
【左慈】「まさか、我らの介入が可能な域まで外史の力を弱めてくれるとはな」
【卑弥呼】「ぬぅ・・・」
【貂蝉】「・・・・(まずいわねん。今邪魔されちゃうと手も足もでないわ・・・・)」
【干吉】「感謝しますよ、北郷一刀。残りの終端はわれらが」
鏡へと手を伸ばす干吉。
だが、
―邪魔はさせない―
【干吉】「な・・・・っ!」
触れようとした干吉の腕に紫色の電撃が走る。
【干吉】「馬鹿な・・・外側から外史に干渉するなど・・・」
【左慈】「今の声・・・まさか、貴様か!」
誰を指すでもなく、左慈は空中をにらみつけていた。
―彼は・・・俺が成せなかったことをするつもりだ―
―本当の意味で終端を乗り越えようとしている。なら、その邪魔をするものは俺が許さない―
【左慈】「くっ・・・・いつになっても・・・・どこまでも我らの邪魔をするのか!」
その声はどこまでも優しく、強く響いていた。
【卑弥呼】「なんだかよくわからんが、今のうちだ貂蝉!」
【貂蝉】「ええ、そうねん。・・・・」
二人の気が声に向いている間にさらに力をこめる。
【干吉】「どれほど邪魔をしたところで無意味なんですよ。もうこの外史は終端へと向っている。」
―それは違うな。終端とは人の手によって起こされるもの。外史が目指すものではない―
【左慈】「貴様と問答をするつもりはない!こうなれば、力づくでも起こさせてもらうぞ!」
そうして、再び左慈が鏡へと手を伸ばす。
電撃が左慈の体を襲う。
【左慈】「ぐ・・・なめるなよ。貴様程度の力でこの俺を止められるか・・・っ・・」
電撃にもかまわず、左慈の手が鏡に届く――――!
【左慈】「・・・・な・・・っ・・貴様・・」
だが、それを阻止するかのごとく、左慈の手首をつかむ。
【一刀】「・・・・・やめろよ」
【干吉】「北郷・・・かず・・と・・・」
【一刀】「・・・・・はぁ・・・はぁ・・・・・やめ・・ろ・・」
【左慈】「邪魔をするな!北郷!!」
左慈はいつか、一刀を吹き飛ばした突風を起こそうとした。
だが――
【一刀】「やめろって言ってんだろ!」
【左慈】「・・く・・っ」
一刀の強すぎる気迫の前に左慈がひるむ。
バッっと強引に左慈は一刀の腕を振りほどき、距離をとる。
【左慈】「北郷ぉぉッ!」
戦闘の構えをとり、一刀へ向かって拳をだそうとする。
【干吉】「待ちなさい、左慈!・・・わかっているのですか、北郷一刀・・・終端を迎えなければ、また今回と同じようなことがおきるのですよ」
【一刀】「ああ・・・わかってるさ」
【干吉】「ならば、貴方は正史を滅ぼすというんですか!」
いつになく、干吉が声を荒げる。
―――ドドドドド
だが、その時
地面が大きく揺れ始める。
【干吉】「これは・・・地震・・・・・?」
【貂蝉】「はじまったわねん」
【左慈】「なんだと・・・・貴様、何をした!」
【一刀】「もう・・・迷わないって決めたんだよ・・・」
【左慈】「俺が聞いていることに答えろ、北郷!!」
【一刀】「俺は・・・この・・・・」
―外史と正史を、切り離す―
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真・恋姫無双(魏ED)のアフターです。
何気に急展開すぎたかなと少し不安(´・ω・`)
予定では、次回最終話です。
今回が一刀の覚悟の見せ所。
そしてvol.2あたりからやりたかった流れにようやくつながりました。
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