No.74457

真・恋姫無双外伝~覇王の願い~帰還編vol.12『忘却』

真・恋姫無双(魏ED)のアフターです。
そろそろ佳境に入ってきましたね。
さて、一刀はどうなるのか

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2009-05-19 12:40:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:15770   閲覧ユーザー数:13036

 

 

 

 

 

朝。

その朝はやけに肌寒くて

意識がもどれば身震いし、耳に生暖かい息が感じられるほどで・・・・

 

 

・・・。

 

 

 

【一刀】「・・・ん・・・」

【貂蝉】「んぅぅぅぅ」

【一刀】「うぉわぁっ!」

 

 

文字通り飛び起きた俺は現状を把握しようと頭をフル回転させる。

寝ていた俺をまたがるようにして、貂蝉が俺を見下ろしていた。

後数秒、起きるのが遅れれば人として何かを失っていた気がする。

 

【一刀】「・・・寝てる間は近づくなって言っただろ?」

 

【貂蝉】「だけど、ご主人様ってばすごくうなされてたんだもの」

 

【一刀】「そ・・・そっか・・・」

 

それでも、あれはどうかと思うが・・・まあ、いいか。

 

 

 

【卑弥呼】「それで、一刀よ。さっそくで悪いのだが心の準備のほうはできたか」

 

【一刀】「ああ、卑弥呼もきていたんだっけ」

 

【卑弥呼】「うむ」

 

【一刀】「・・・うん。行こう」

 

 

 

 

二人と神殿の中へ入っていく。

 

やはり・・・というべきか、そこはこの時代には似つかわしくないデザインだった。

 

カツカツと足音のなる廊下を抜け、やがて大広間へと出た。

 

【一刀】「ここ・・・・」

 

【貂蝉】「じゃあ、はじめましょうか」

 

そういうと、貂蝉と卑弥呼は前へ歩き出す。

 

その先に見えたのは祭壇。

 

その中には鏡があった。

 

 

 

 

その鏡の前で目を閉じる。

 

むこうに戻ってから、最悪だな。

 

本当にさ

 

正直に言えば、嫌だよな。

 

ものすごく嫌だ。

 

だって、怖いだろ?

 

恋人との記憶全部、消されちゃうんだからさ。

 

しかも

 

俺にはそれだけじゃない。

 

そう

 

記憶を消したところで、それはまた外史としての形を取り戻すだけ。

 

その上で尚、この世界は終端へ向かう。

 

何がいけなかったんだろう。

 

何がだめだったんだろう。

 

形はおかしくても

 

好きな人がいちゃ、いけないか?

 

好きな人の願いをかなえちゃだめなのか?

 

好きな人と・・・一緒にいちゃ、いけないのか・・・?

 

そんなことが頭の中で巡り巡る。

 

文句をあげればきりがない。

 

だけど、

 

俺は守りたい。

 

うん、守りたいんだ。

 

俺の・・・・みんなの居場所を。

 

 

 

 

だから―――

 

 

 

 

 

―二人とも・・・頼みが・・・ある―

 

 

 

 

 

 

 

それは、とても静かで、

 

小さな紙を少しずつ燃やすように

 

それでも

 

ゆるやかに

 

確実に始まった。

 

 

 

 

 

 

成都――

 

 

 

【関羽】「桃香さま!」

 

【劉備】「ん?愛紗ちゃん、どうしたの?」

 

関羽が血相を変えて広間に駆け込む。

 

【関羽】「それが、物見からの報告で、南蛮のほうよりかなり巨大な光の柱がたっていると」

 

【劉備】「光の柱?それってなにか起こるの?世界の滅亡とか?」

 

【関羽】「いえ・・・そこまでは・・・ただ、あまりにおかしな事態なものですから・・・」

 

【劉備】「落ち着こうよ、愛紗ちゃん。もし、何か起こるんだとしても、みんながいるんだから大丈夫だよ。」

 

【関羽】「桃香さま・・・・」

 

【劉備】「ね?」

 

【関羽】「はい!」

 

 

 

 

誰も気づくことなく。

 

静かに。

 

ただ消えていく。

 

ただ、関わりが薄かった。

 

それだけかもしれない

 

それだけで人の脳は容赦なく、その存在を抹消する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建業――

 

 

【孫策】「冥琳、みた?」

 

【周瑜】「あの光の柱のことか?」

 

【孫策】「ええ・・・なにかの前触れかしら」

 

【周瑜】「たとえそうでも、騒いだところで詮無き事。あれは明らかに我々が手を出せる代物ではない」

 

【孫策】「そうなんだけどね・・・なんていうか、見てるだけってのは性に合わないのよ」

 

【周瑜】「ふふ・・・」

 

【孫策】「なによ~」

 

【周瑜】「いや、別に」

 

【孫策】「ちょっと冥琳~~~」

 

 

 

 

 

 

ただ、この一瞬

 

この瞬間のものは

 

だれが望んだものだろう。

 

人々の心よりただ消え去るひとつの存在。

 

 

 

―――――。

 

 

 

それはあまりに優しく

 

あまりに儚い。

 

それ故に、燃え尽きようとする記憶は

 

彼女らにとって、静か過ぎた

 

 

 

 

 

しかし、それを待ち望んでいたものにとっては

 

城が崩れていくほどのものだったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

【華琳】「帰ってきなさい・・・・か、ず・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【華琳】「・・・・ん」

 

体がずれる衝撃で目が覚めた。

 

眠っていたようだ。

 

うたた寝なんて久しぶりだ。

 

でも、妙にすっきりしている。

 

さきほどまで、中庭でなにかしていた。

 

なんだっけ。

 

ぼーっとして、思い出せない。

 

ただ、ぼーっとしていただけなのか。

 

自分がそんな無駄な時間をすごすとは思えないけど、

 

思い出せないのだから仕方ない。

 

【華琳】「あれは・・・」

 

振り返ると、南のほうで筋が一本。

 

いや、光?

 

それが空を割っていた。

 

なぜか見入ってしまう。

 

【桂花】「華琳様~」

 

桂花の声が聞こえた。

 

【華琳】「・・・桂花?」

 

【桂花】「あ、こちらでしたか。・・・・華琳様!!?」

 

え?

 

【桂花】「どうぞ、これをお使いください!」

 

そう言って布を手渡してくる。

 

【華琳】「え?」

 

桂花が何をしているのかわからない。

 

その布をどうしろと?

 

と、手を顔にあてて思案する。

 

だが、答えはすぐにでた。

 

手が濡れていた。

 

 

 

でも、どうして・・・・

 

 

どうして、泣いているんだろう・・・・・

 

 

 

 

 

 

 


 
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