No.743665

いぬねこ!5~杜松さん誕生日SS2014~

初音軍さん

雪v美希です。あんまりすれ違いそうにない二人ですがちょっとだけすれ違わせてみましたが、どうなりますことやら(イラスト)→http://www.tinami.com/view/743667

2014-12-15 00:09:22 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:613   閲覧ユーザー数:613

いぬねこ!5 杜松さん誕生日SS 2014

 

 雪ちゃんは誰にでも同じように接して、私のことなんて本当は好きじゃないんでしょ!

とか。思ってもいないことをつい口走って雪ちゃんの家を勢いで出ていってしまう。

 

 寒い中走り出して気付いたら上着を着るのを忘れていたから一気に寒く感じてきた。

道のりはわかるから今すぐにでも戻りたいけれど。

 

「雪ちゃんのバカ…」

 

バカは私の方だ。あんなこと言ってすぐ戻るなんて恥ずかしいというくだらない

意地のせいで途方に暮れているところ・・・足音が聞こえてきて音をしたほうに

視線を向けると見知った顔と会った。

 

 その相手は人懐っこい表情が驚きに変わり慌てたような言葉で着ていたコートを

私にかけてくれた。

 

「あらあら大丈夫ですか?杜松さん」

「犬神さん・・・」

 

 それはとても暖かくて犬神さんの匂いが少しだけしたような気がした。

犬神さんに誘われて他に行く場所もない私は頷いて犬神さんの隣で歩きながら話をした。

少し気になってはいるようだったけど、事情を聞こうとかはしてこなかった。

 

「いつもよりよく喋りますね。気を遣ってくれてるのです?」

「ううん、寒いから」

 

「ごめんなさい」

 

 そりゃ寒いのを誤魔化すためにいつもより体を動かしたり喋ったりするわけだ。

納得しながらそう遠くなかった犬神さん家へお邪魔することになった。

帰ってすぐに暖房を入れてお茶を淹れて持ってきてくれた。

 

 お茶を飲んで体の芯から温まった私は傍にいたわんこの頭を撫ででているところで

ようやく犬神さんが割りと軽い口調で聞いてきた。

 

「で、どうしたんです?」

「えっと・・・ですね・・・」

 

 私はケンカに至るまでの話を犬神さんに少し遠まわしな表現で話した。

正直話しながらまとめている内に自分で、これは痴話喧嘩じゃないかと思っていた所に。

 

「それは痴話喧嘩ってやつなんじゃ」

「わかってますよ!」

 

 普段犬神さんに言ってきている私にとってそう言われるのはけっこう堪える。

悔しさとかじゃなくて、なんというか気恥ずかしさが過ぎてたまらなくなるというか。

 

「顔真っ赤にしちゃって、杜松さん可愛いですね」

 

 ちょっと悪戯めいた笑顔を私に向けて言う犬神さんに軽くイラッとすると

その空気に気付いたのか苦笑しながら手を横に振って違うというリアクションをとった。

何が違うというのだろう。少しモヤッとしながらも犬神さんは嬉しそうに指を立てながら

話し始めた。

 

「つまり、牛若先輩が他の女の子にも似たような態度を取ることに嫉妬してたんですね!」

「まぁ・・・その通りですが」

 

 ズバリ指摘されて、ものすごく良い顔をしながらドヤ顔をしている犬神さん。

しかしその後私にはハードル高めのことを言い出してきた。

 

「ならいつもより激しいアピールすればいいんじゃないですか?

特別扱いしてもらえそうなほど勢いよく。たとえば押し倒すとか!」

「前に一度似たようなことしましたけど、軽く流されましたよ・・・。しかも笑われて」

 

 その時はその気持ちが一気にしぼんでしまって顔がずっと熱かったっけ・・・。

あまずっぱ苦い思い出である。

 

「だから今度はもっと迫真っぽい感じの雰囲気で押すといいのですよ。

杜松さんが必死にアピールすれば牛若先輩も気付きます!」

「そんなもんでしょうかね・・・」

 

「あとそれくらいしてくれないと・・・私の操が・・・」

「え、何か言いましたか?」

 

「いいーえ!何でもないですよ」

 

 最後の言葉が聞き取れなくて私は犬神さんに聞きなおそうとすると必死に

何も言ってないと言い張る犬神さん。怪しい・・・。

けど試すにはちょうどいいかもしれないと私は思っていた。

問題は実行に移せるかどうかである・・・。

 

 

**

 

「雪ちゃん!」

「あら、美希。おかえり~」

 

 見知らぬコートを着た私を暖かい笑顔で迎えて私を抱きしめてきた雪ちゃん。

軽い感じでどこにいたのか訊ねてきたので犬神さんのとこへいったのだと言うと

納得するように頷いていた。

 

「よかったわ、犬神ちゃんの所で。みきかわいいから変な男に攫われてないかと

心配だったわ」

「そんな顔してないけど」

 

「ううん、ずっと心配だったわ。ついさっきまでね」

 

 余裕のある笑みに再びイラついてくる私。

・・・なんでその余裕ある大人のような対応に私はイラついているのだろう。

雪ちゃんは見た目も雰囲気も大人で私はまるで正反対・・・。

 

 いつも姉妹のように見られて、ひどいときは親子みたいだと思われて。

私は焦っていたのかもしれない。隣に並んで歩いていきたいのに

どんどん引き離されていくような気がして。

 

「美希?」

「雪ちゃん…」

 

 小さい時は私の方がしっかりしていてお姉さんみたいだったというのに…。

 

 ドサッ!

 

「美希!?」

「雪ちゃんのバカ!」

 

 今日何度目の「バカ」だろうか。私はカッとなってほぼ無意識に座っていた雪ちゃんを

床に押し倒して顔の傍まで近づいていた。

 

「泣いているの・・・?」

「・・・!」

 

 私は想いが溢れて気付かないうちに感極まって涙が出ていたみたいだった。

そんな私を見て驚いた表情を浮かべる雪ちゃん。

そして私の頭に手を回して優しく引き寄せた。

 

「そんな顔見せられたらドキドキしちゃうでしょ・・・」

「雪・・・ちゃん・・・?」

 

「美希のこと不安にさせちゃったかしら? だとしたらごめんなさい」

「う、ううん・・・」

 

「私にとって美希は特別なのよ。特別すぎて・・・ちょっと慎重になっちゃったかしらね」

 

 大切にしすぎたみたい、といって少し距離が開けられるようになって私は雪ちゃんの

顔を覗くと普段冷静にしている雪ちゃんの頬が紅潮していた。

そして目の色が変わってまるで私を狙っているような、そんな目だった。

 

「美希、じっとしていてね」

「うん・・・」

 

 少し目を細めて、再びゆっくりと引き寄せられて雪ちゃんの唇が私のと触れて

柔らかさと暖かさが伝わってくる。

 少し熱っぽい吐息を混ぜながら私たちはキスをした。

一瞬私の体は力が入り強張るようになるがすぐに程よく解れて

チュッという音を立てながら徐々に舌を入れて相手を求めていく。

最初は雪ちゃんがリードする形でしていたキスも、このままじゃいつもと同じだと

私は気持ちを強くしてドキドキしたまま雪ちゃんを強く求めていく。

 

「ん・・・んぁ・・・美希・・・激しい・・・」

 

 ちゅっ……くちゅっ…ちゅぱっ…

 

「黙ってて…ん…雪ちゃん…」

 

 合間に一言一言を伝えながらお互いの気持ちを高めていく。

私を見つめる目が小さいときのように瞳が潤んでいって体の大きさに似合わず

とても可愛かった。

 

 どれくらいの時間そうしていたのだろう。そこから先も勢いのままやって

すっかり疲れた体をベッドに預けて、二人して疲れきったようにぐったりしていた。

 

「美希・・・すごいわ・・・」

「ふふっ、まだまだ雪ちゃんには・・・負けないのです・・・」

 

 息があまり整わないから言葉が途切れ途切れだけど、すごく充実した気持ちで

相手を見ることができた。汗をいっぱいかいて大きい呼吸して大きな胸を上下させてる

雪ちゃんの姿がとても愛おしかった。

 

 そんなことを考えていると雪ちゃんと視線が合ってお互いちょっと気恥ずかしそうに

笑い合った。

 

「私ね。そうやって一生懸命何かをしている美希が好きよ」

「私も・・・いつも私を見てくれている雪ちゃんが大好き」

 

 時間が経って少し体力が戻った私たちは汗を流すために一緒にお風呂に入りにいった。

大きめな浴槽に二人で入りながらこれまでのこと、外に出た後のことを詳しく話した。

どんな話もいつものように余裕のある反応をしつつもこれまでとはちょっと違う

表情をしながら話を聞いていた。

 

「じゃあ今度犬神ちゃんにお礼を言わないとね」

「うん…」

 

「じゃあ、私も。美希が出ていった時にね、これまでにないくらいうろたえちゃって」

「えっ、嘘…」

 

「嘘じゃないわ、今はすごく寒いし薄着で出ちゃうし。さっき言った通りに美希って

魅力的だから変なのに変なことされてないか気にしちゃってね」

「じゃあ、その姿見せてくださいよ…!」

 

「いーやっ」

 

 雪ちゃんは微笑みながら人差し指を立てて私のおでこを軽く小突いた。

それと同時に湯気で溜まった水滴がぽちゃんと音を立てて浴槽に波紋を描く。

 

「でも、よかったわ。私の傍に戻ってきてくれて。美希がいないと

私は私じゃなくなっちゃうわ」

「さすがにそれは大げさでしょう? でも、私も似たようなものかも」

 

「ふふっ、美希は本当に可愛いわね」

「もう・・・!」

 

「後…美希を可愛がってくれた犬神ちゃんにもお礼しないとね…」

「え、今何か言いました?」

 

「ううん、独り言~」

「ええ~、気になることを~」

 

 明らかに聞き漏らす距離じゃないのに不思議な力が働いて本当に私には

雪ちゃんの言葉がはっきりとは届かなかった。だけど、いつかはわからないけれど

犬神さんが大変な思いするのかもという感覚はあった。

 

 いずれにしろ私と雪ちゃんの距離は小さい時やこの間とも違う距離間で。

私は雪ちゃんに眼を逸らさずに言った。

 

「これからもよろしくね。またケンカするかもだけど、私の傍にいてね」

「うん、私の方もよろしくね。美希」

 

 二人でお湯の中で手を繋いで確かにそこにいる実感を味わいながら時間を過ごした。

この日は結局雪ちゃんの所でお泊りになって、予め用意してくれていた料理とケーキを

見せられて少しテンションが上がった。

 特に雪ちゃんの料理はすごく美味しいから。

そういえば色々ごたごたして忘れていたけれど今日は私の誕生日だったっけ。

 

 ケーキの上に乗っているプレートを見て明らかに子供用として置いてあるソレを巡って

舌の根もかわかない内に雪ちゃんとケンカしたのだけれど最初の時と違って嫌な気持ちは

そんなには残らなかった。

 

 ずっとこんな風に二人でくだらないことで悩んで熱くなって気持ちをちゃんと

伝え合っていきたいことを強く思った。

 

 傍でずっとこうして暖かくいられるように…。

 

お終い


 
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