No.741011

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第403話

2014-12-01 22:48:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1501   閲覧ユーザー数:1384

 

 

 

12月13日――――

 

~パンダグリュエル・貴賓区画~

 

「……………………」

 

後は速やかに内戦を終結させ、あるべき秩序を取り戻すだけなのだ。そうすれば全てが戻ってくる。君達の学院生活も、妹御や皇女殿下の平穏な日々もね。

 

ま、今は冷静に状況を見極めることね。そして答えを出す事ね。

 

外の景色を見つめていたリィンはカイエン公爵とクロチルダの言葉を思い出した。

(貴族派が一線を越えた結果、内戦が勃発したのは確かだ……だが、これ以上内戦が長引いて苦しむ人々が増えてもいいのか……?クロウとも和解できるし、エリスや殿下を解放できるなら……―――そんな単純な話じゃない!考えるんだ、リィン・シュバルツァー。何とかみんなとは再会できたけどエリスと殿下は捕まったままだ……この状況で、俺に何ができる?いや――”俺達”はどうしたいと思っているんだ?)

「フフン。悩んでるみてーだな。」

リィンが考え込んでいるといつの間にか部屋に入って来たクロウがわざとらしく開けた扉をノックした。

 

「………………………何の用だ……?」

クロウの顔を見たリィンは呆けた後厳しい表情で問いかけた。

「そんな顔をするなって。お前の事だから、クソ真面目にあれこれ考えてるかと思ったが……案の定だったみてぇだな。」

「っ……余計なお世話だ。……こんな所で油を売っていいのか?貴族連合軍の”蒼の騎士”……ずいぶん活躍してるそうじゃないか。」

「ま、人気者は辛いってヤツだ。お前が仲間になってくれりゃあそのあたりの負担も半分にできる。というわけで、迷ってないでとっとと決めちまえよ。」

「って、そんな簡単に決められるわけないだろう……!そもそも、誰のせいでこんなに悩んでいると―――」

軽いノリで問いかけたクロウの言葉に呆れた後怒鳴ったリィンはクロウが片手に持つバスケットが気になった。

 

「なんだ、それ?」

「メシだよ、メシ。ちょっとばかり早いが早めのランチにしようぜ。」

そして二人はそれぞれ向かい合う形で座って食事を始めた。

 

「ハンバーガーにフライドポテト、オニオンリング……てっきり、昨日の夜みたいな宮廷風の料理かと思ったよ。」

リィンはテーブルに置かれたジャンクフードの数々を見て目を丸くした。

「なんだ、そういうのが好みか?だったらコックに頼んでちゃっちゃと用意させるか。」

「いや、その必要はない。ハンバーガーも美味しそうだしありがたくご馳走になるさ。」

「おう、喰え喰え。」

ハンバーガーを食べ始めたリィンはある事に気付いた。

 

「これは……普通のハンバーガーじゃないんだな。白身魚のフライを挟んでいるのか。」

「フィッシュバーガーってやつだな。なかなかイケるだろう?」

「ああ、タルタルソースもちょっと珍しい味付けで……モグモグ……いや、これは凄く美味いな。昨夜の立派な料理よりも個人的には好きなくらいだ。」

「お気に召したようで何よりだ。久々に厨房で腕を振るった甲斐があったぜ。」

「え……これ、クロウが作ったのか!?」

自分が食べているランチを目の前の男が作った事にリィンは驚いた。

 

「ま、さすがにシャロンさんの足元にも及ばないけどな。俺の故郷―――”ジュライ”のソウルフードみたいなもんだ。」

「あ…………」

クロウがふと呟いた言葉を聞いたリィンはオズボーン狙撃の後にクロウと対峙したクレア大尉の言葉を思い出した。

 

帝国解放戦線リーダー、”C”―――いいえ、旧”ジュライ市国”出身、クロウ・アームブラスト!

 

「…………」

「そういや、ヴィータのやつが妙な”実況”をしたみてぇだが……ちょうどやり取りを見ていたのか。」

「ああ……ジュライといえば、8月の特別実習でB班が向かった北西の経済特区……クロウは……自分の故郷に行ってたんだな?」

クロウの言葉に頷いたリィンは複雑そうな表情をした後真剣な表情で尋ねた。

 

「ああ、偶然にもな。街並みも結構変わっちまったから少しばかり戸惑ったが……懐かしかったのは確かだぜ。」

「……………………―――ずっと、気になっていたんだ。クロウがどうして”帝国解放戦線”に入ったのか。どんな事情で、オズボーン宰相にあれほどの憎しみを向けたのか。」

「……………………」

リィンの疑問を聞いたクロウはリィンから視線を逸らして黙り込んでいた。

 

「―――教えてくれ、クロウ。クロウが辿ってきた道……ジュライがどういう場所で、クロウがどう過ごしてきたか。士官学院に入って、会長たちと知り合うまで何をしていたのか。」

「ハッ、野郎の過去なんか詮索したって面白くねぇだろ。そういうのは、Ⅶ組の中の気になる子くらいにしとけよ。やっぱりアリサやセレーネか?ラウラか?委員長やフィーあたりか?それともプリネやツーヤ、エヴリーヌか?おっと、まさかミリアムってことは―――」

「知りたいんだ、クロウ。今度こそ………50ミラの利子代わりだ。それを知らない限り、俺は、俺達は先に進めないと思うから。」

「…………お前…………」

リィンの意思を知ったクロウは真剣な表情でリィンの目をジッと見つめた後立ち上がって窓へと近づき、外の景色を見つめ始めた。

 

「クロウ……」

「言っておくが、そんな大層な話じゃねえぞ?お前の過去に較べりゃ、こんなモンかっていうくらいの平凡で、ささやかな昔話……それでもいいのかよ?」

「ああ……それが知りたいんだ。教えてくれ、クロウ。」

「……ったく。……ま、よくある話さ。歴史の教科書あたりにはそれこそ幾らでもありそうな……そのまま忘れ去られちまってもおかしくないような話だ―――」

リィンの言葉に溜息を吐いたクロウは自分の過去を話し始めた…………

 

 


 
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