猫語を教えてもらう条件として一刀達の仲間に加入した明命。
旅の支度には時間がかかると思われたが、念願のお猫様との会話が出来る!と猛スピードで支度を整え、屋敷の外で待機していた一刀達と合流する。その速さに普段冷静沈着の稟もどれだけ速いのですか……目を丸くしていたのが印象的だった
こうしてまた1人個性的な面子が加わり一行は汝南を目指す。汝南までの道中は手持ち無沙汰の為、早速明命に猫語の指導を行っている最中だ
一刀「おし、基本はいまの通りだから実際に話してみようか。さっき知り合いになった猫に手伝ってもらうから」
明命「はい!一刀様!にゃにゃにゃーご?」
猫「にゃーにゃーフシャー!」
明命「はぅぅ~どこか間違えたでしょう」
一刀「いまの明命の発音だと、お前の体醜いってなってたかな」
明命「はぅわ!仲良くするどころか喧嘩売ってました!一刀様~代わりに謝ってもらえませんか?また引っ掻かれたら立ち直れないです」
一刀「意外と精神力弱いのね。わかった、代わりに謝ってみるよ。『にゃあ~?にゃーなご~?』(彼女も悪気はなかったので今回は許してもらえませんか?)
猫「ナーーーー」(仕方ねえな~次はないぞ)
一刀「今回は許すけど次はないぞだってさ」
明命「あぅぁぅ、道は険しいです。」
稟「なんと言いますか……他人から見たらかなりの変人ですね」
こんな感じで明命の猫語講座は難航していた。
猫語で話している姿は自分の親友達で見慣れている稟も、この光景には思わずツッコミを入れてしまう。猫に土下座する少女の図は第三者から見たら異常と言えるだろう。周りに人が居らず、この姿を見られる心配が無いのが救いだったりする
愛紗「むしろこれ以上の変人を捜す方が大変じゃないですか?猫に土下座する人物は……大陸広しと言えど、明命しか居ないと思います。もちろんそんな変人に付き合えるのも一刀様だけと確信しています」
一刀「最近愛紗の発言も遠慮が無くなってきたよね」
幽州からの旅でこの空気に慣れたのか、ツッコミしないと話しが進まないと学習したのか……旅を始めた頃の初々しい愛紗の姿はどこにも無く、ボケには容赦なくツッコミを入れる程成長?を遂げていた。基本的にボケが多い一刀陣営ではツッコミ役は貴重な存在だ
明命「一刀様はいつもこんな感じなのですか?」
稟「いつもですね」
愛紗「私が出会ってからずっとこんな感じですね」
明命「もっと偉い人かと思いましたが、そんなことなかったんですね」
一刀「俺が偉かったらみんな出世しまくりだよ。俺なんか全然才能ないからね」
明命「そんなことありません!一刀様には猫語があります!」
明命の慰めてるのか、貶しているのかよくわからない発言で場が落ち着いた。
明命はそんな気は一切ないだろうが、今の発言だと猫語しか喋れない無能め!と言った感じに聞こえるかもしれない
稟「猫語は置いておいて、謙遜すぎなのも嫌味になりますよ。一刀殿」
愛紗「そうですよ!あのような武をもっておいて、なにをおっしゃっているんですか!」
明命「一刀様そんなに凄い武なんですか?てっきり稟さんと同じく文官の方で、愛紗さんが護衛かと思いました」
一刀「明命が純粋な分なんかずっしりくるね。泣けてきた・・・」
明命も武を齧っている者として、武人が身に纏っている武人の雰囲気と言うのを若干ではあるが感じ取れる。愛紗からは武の頂に立つ程の実力を感じ取っているのだが、一刀からはそんな雰囲気が感じ取れなかったため、稟と同じく文官側だろうと思い込んでいた
これでも武には力を入れて来た一刀にとってはショックを受けると同時に、要注意されずに済むからこれでも問題無いか・・・と瞬時にポジティブな思考に切り替わっていた
稟「そんなに言うのでしたらここで手合わせしたらどうですか?」
一刀「それも悪くないんだけど、春蘭や霞達みたく戦闘狂じゃないからな。必要に迫られた時以外はあまり振るいたくないんだよね。俺の代わりに愛紗が戦ってみたらどうかな」
愛紗「私がですか?私は構いませんが……なぜ私なのですか?」
一刀「愛紗なら俺が戦う所を間近で見てるし、戦いながら俺はこんな感じだった!って伝えられるかなと思って」
愛紗「なかなか難しい注文ですが……一刀様の頼みは断れません、引き受けましょう」
明命「では、愛紗さん相手します!」
愛紗「うむ、少し離れた場所で行おう。その方が派手に動けるしな」
愛紗は青龍偃月刀を、明命は魂切を手に持ち一刀と稟の邪魔にならないところまで移動して手合わせと言う
名の訓練を開始する。
稟「それで一刀殿、どうやって呂蒙を捜すつもりですか?」
一刀「それがまったく考えてないんだよね、明命みたいに猫で釣れるわけでもないし情報も少ないんだよね」
何か考えて行動してるかと思えば何も考えていなかった……稟はガックリと力が抜ける感覚に襲われる。
こんな事なら風か桂花にも来てもらえばよかったと若干後悔する稟だった
稟「行き当たりばったりじゃないですか。無駄なところにばっかり知恵を使ってないで、本題に使って欲しいものです」
一刀「そんな無駄な事ばかりに知恵使ってるかな……?呂蒙の特徴は目つきが悪い女の子って事なら知ってるんだけど」
稟「そんな抽象的な特徴でどうやって見つけ出すんですか。彼女が噂になるほどの人物でないと、そんな特徴だけでは呂蒙まで辿り着けません」
一刀「まぁまぁ、時間はあるのんびり捜そうよ」
どこか抜けているというかお気楽というか……そういう部分はどんなに能力を上げても変わらない。そんな所も一刀の長所だと解っているのだが、もう少し危機感を持って行動して欲しいというのが稟の本音だ
稟「そのなんとかなるっていう姿勢は変わりませんね。私達に厄介が回ってきてないので文句はありませんが……」
一刀「そんなに稟達に厄介事持ち込んでたっけ?」
稟「自覚無しですか。天の国の知識を発案しても、だいたいは我々軍師達に対応策は丸投げだったでしょ?」
一刀「そう言われてみれば……否定出来ない部分が」
稟「ですが、今じゃ自ら考え自ら行動して成果を上げてます。上げすぎて十常侍に目を付けられたのは失策でしたが。今のあなたは立派に人の上に立つ才覚を備えています、むしろ本当に旗揚げして覇を唱え、華琳様をお迎えしてもいいと思います」
稟に褒められる事が滅多に無かった一刀は驚きと、褒められた事に対する喜びと自信が沸き上がっていた。もちろん修正すべき点をしっかり指摘するのが郭奉孝と言う女の子だ
一刀「華琳が上に立ち、俺が支える立場でもいいんだけどね」
稟「前と違って今じゃ一刀殿は華琳様の”兄”なのですから。それに話を聞く限り、兄に甘えている華琳様では恐らく一刀殿の上には立たないと思いますよ」
一刀「甘やかしすぎたかな……いや、あんな愛らしい華琳と一緒に過ごしてるんだ。駄々甘になっても仕方ないと思うんだ!」
そこまで力説されても、今の華琳に会った事のない稟は判断のしようがない。だが、華琳様好きー!を公言している稟にとって、素直に甘えてくる華琳を眺めるのもまた一興。その華琳に会うべく、いち速く地盤を固める決意を新たにする
愛紗「ただいま戻りました。明命はまだ荒削りでしたが、私とは違い手数と素早さで翻弄するタイプですので、指導できる方がいれば相当のびると思います」
明命「あぅあぅ、全然敵わなかったです。猫語と一緒に鍛錬も頑張ります!」
一刀「武芸の鍛錬と猫語は同列で語るのね……明命には明命専用の戦い方があると思うからそれを身につけていこう、俺も手伝える時は手伝うから」
見たところ愛紗は手加減無しで戦ったのか、明命が結構へこんでいる。それでも愛紗の全力を受けて怪我が掠り傷が少しだけとなのは流石の一言。しかも愛紗の言っている通り明命の真骨頂は身軽さとスピード。今回のように真正面からのぶつかり合いでは無く、奇襲などを織り込んだ戦いならば明命に軍配が上がるだろう、それほど明命のポテンシャルの高さは魅力的だ
明命「はぅわ!一刀様が教えてくださるんですか!私がんばります!」
一刀は自分を打ち負かした愛紗が勝てない相手だと言っている人物。そんな人物から猫語だけじゃなく、武芸まで教えてもらえると明命は嬉しさでぴょんぴょんと飛び跳ねていた
一刀「なんでだろ・・・いまの明命見たら尻尾をパタパタ揺らしてるのが思い浮かんだんだが」
稟「奇遇ですね。私もそう思いました」
犬っぽい行動をとった明命を見て一刀はとある人物の事を思い出していた……
蜀の忠犬・愛紗、呉の忠犬・明命、そして魏の忠犬代表は間違いなく凪だろう。この3人が集まれば忠犬部隊が編成出来るかもしれない……もし凪を迎える事が出来れば3人に犬耳のカチューシャを付けさせて過ごさせようかと下心丸出しの思考が一刀を支配する。それに伴い一刀の笑顔が邪悪な物に変貌する
明命「一刀様が怪しい笑顔してます」
稟「あのときの一刀殿はろくなこと考えていないので放っておきましょう。相手にするだけ時間と労力の無駄です
呂蒙の捜索を始めてから既に数日間経過するが、呂蒙本人どころか呂蒙を知っているという情報にすら辿り着けないでいる。これ以上呂蒙1人の為に時間を費やす訳にはいかず、今日発見出来る事が出来なかったら諦めるしかないという空気が蔓延していた
愛紗「見つかる気配がありませんね」
一刀「おかしいな……確かに汝南郡出身のハズなんだが」
明命「もうどこかに仕官してしまったのではないですか?」
稟「もう諦めて荊州に向かいますか?」
明命の言う通り、既にどこかの君主に仕えていたらこの捜索は無駄だろう、稟の言う通り捜索を打ち切って荊州に向かった方がいいのかもしれない
一刀「そうだなあ・・・このまま進展なければ諦めて・・・ん?なんか街中が慌しいがなにかあったかな?」
明命「私が様子を見てきます!」ッサ
そう言い残すと明命は姿を消して騒がしい事情を探りに動き出す。
数日前に戦った愛紗は明命が姿を消す時に捉えきれず、いつの間に消えたんだと驚きを隠せないようだった
愛紗「明命が消えるのを見切る事が出来ませんでした……わずか数日であそこまでの動きが出来るとは驚きです」
一刀「こればっかりは明命の素質がよかったんだけどね。明命以外の人物が今の技術を身につけようとしても簡単にはいかないさ」
稟「あのように情報収集できるのは今後大きく役に立ちますからね。孫呉が情報を速く入手できてた理由がよくわかります」
明命「お待たせしました!どうやらこの汝南に山越の軍が攻めてくるようです!」
稟「山越が距離のある汝南を攻めてきたのですか・・・?なぜこんな遠くの汝南を……」
一刀「山越って春秋戦国時代の会稽に存在した越国の末裔だっけか?」
稟「その通りです。博学になられて嬉しい反面、私など必要ないのではないかと思えてきますよ」
一刀「俺はいくら勉強したといっても本職の軍師には勝てないさ。だから昔もこれからも期待してるよ、神算鬼謀の郭奉孝さん」
稟「そのようにおだてられてもなにもしませんからね」プイ
明命「稟さんお顔真っ赤です!照れてますか?」
愛紗「なんだかんだ言いながら稟も乙女だな」
稟「うるさいですよ!それよりも状況はどうなってますか!?」
一刀の紛れない本心をまっすく受けて思わず稟は照れて顔を背ける。以前も一刀に頼まれることは多々あったが、こうして主従としての立場で頼られるのも悪くないようだ。それを見ていた愛紗と明命は、稟の頬が少し赤くなっているのを見逃さず、イジリを開始する。愛紗はもちろんの事だが、明命も順調にこの空気に毒されている
明命「(あ、逃げました)山越軍およそ5千が一直線にこちらに向かっているようです。対してこちらは太守軍3千と、武勇に優れた女性が500の義勇軍を率いて参戦するようです」
一刀「その武勇優れた女性が呂蒙かな?彼女は孫呉に仕官する前は武勇一辺倒の武将だったと聞いているし、確信しに行きたいな」
稟「ならその義勇軍を援護しつつ山越軍を撃退しましょう。私達の目的は義勇軍のみなので、汝南軍はこちらの邪魔をしない限り無視の方向で進めましょう」
愛紗「稟も何気に辛辣だな」
稟「兵力を持たない我らが、目的以外のために身を危険に晒す必要もないということですよ」
一刀「それでも目の前で殺戮はやらせたくないし、出来る限り助けよう。愛紗、明命いけるか?」
愛紗「私はいつでも大丈夫です」
明命「私もいけます!」
一刀「よし、なら愛紗は義勇軍と合流後前線で好きに暴れていいよ、なにか指示があれば明命を向かわせる」
愛紗「わかりました。では先にいってきます」
一刀「明命は義勇軍を率いている彼女と合流し、呂蒙か確かめてくれ。もし呂蒙なら彼女の近辺で働いてくれ、彼女に何かあったらこれまでの労力が無駄になるからな」
明命「かしこまりました!では失礼します」
一刀「稟はどうする?街で待ってるか?俺と一緒に戦場にいくか?」
稟「私だって何度も戦場に出ています。いまさら山越ごとき怖がりはしませんよ」
愛紗に続き明命が戦場に身を投じる、残されたのは一刀と非戦闘員の稟の2人
稟には安全なところに居て欲しかったが、稟が戦場に赴く事を望むなら一刀はその意志を尊重する事にした。下手に1人で残すぐらいなら目の届く範囲に居てくれた方がいいかもと考え直した結果だが
一刀「わかった、でも俺の側から離れないでくれよ?」
稟「わかりました、いまの一刀殿の武を見させてもらいますよ」
一刀「まあ俺は前線に出ないつもりだから見せられるかわからないけど、期待は裏切らないよ」
太守「敵は蛮族の山越軍だ!真正面から叩き潰してやれ!」
呂蒙「お待ちください、我らのほうが兵数は少ないのですよ!それなのに正面から突っ込むつもりですか!?」
太守「義勇軍ごときがわしに意見するでないわ!お前達は最前線で向かえ討て!」
呂蒙「私達だけで5千の兵を受け止められません!太守様の軍と連携して迎え撃ちたいと思います」
太守「ええいうるさい小娘が!いいからわしの命令に従え!」
呂蒙「・・・わかりました。すぐ向かいます」
太守「まったく駒は駒らしくわしの役に立てばいいのだ、わしらはあやつらが戦闘してしばらくしたら突っ込むぞ」
太守に提案を却下された呂蒙は自分が受け持つ義勇兵の下へと戻ってきていた。
太守の命で最前線に赴く事となったが、どう考えても自分達だけでは追い払う所か踏み潰されるのがオチだ。この世を正すために集まってくれた兵士達をこのような場所で死なせたくない……しかし太守の命に逆らえば太守軍と山越軍を同時に相手しないといけないような状況に陥る可能性もある、そんな絶望する彼女の下に後の世で軍神の名を冠する少女とそれに匹敵する少女が助太刀に登場する
呂蒙「うぅ~さすがに私の兵500では勝てませんよ」
愛紗「いきなり話しかけてすまない、貴公が呂蒙殿でよろしいか」
呂蒙「はひ!わ、わたしがりょもうです!」
明命「あなた様が呂蒙殿ですか!わが主の命を受け呂蒙殿と義勇軍を助太刀いたします!」
愛紗「明命追いついたか、私は敵軍に突っ込むが明命はどうする?」
明命「私は呂蒙殿の近辺で敵を迎え撃てと指令がきていますので、この場で戦おうと思ってます!なにかあればお知らせにいきますので、こちらは任せてください!」
愛紗「わかった、蛮族共に私の恐ろしさを覚えさせてやるさ」
呂蒙「あの~あなた達はいったいどなたですか?」
明命「その話は後ですよ!いまは山越を追い返しましょう!」
いきなり現れて話しを進めていく2人に困惑しつつも、自分達の加勢に来てくれたと解ると少しだけ気が楽になったような気がした。この2人からは自分とは比べ物に無い程の闘気を感じられたからだ。どこの誰が寄越してくれたのかは解らないが、これで勝ち目は増えたかもしれないと絶望しかなかった呂蒙の心に希望が生まれる
愛紗と明命が義勇軍に合流した同時刻、一刀と稟は義勇軍の少し後方で戦況を観察していた
一刀「稟気が付いたか?」
稟「えぇ、恐らく呂蒙殿は使い捨てでしょう。倒してくれればそれでよし、全滅するならそれでもよし、敵軍が疲弊したところで漁夫の利を得るつもりでしょう」
一刀「稟も同意見か、どこにいっても無能な太守しか居ないなぁ。汝南軍も同時に動くようであれば俺は出ないで済むと思ってたが・・・これは俺も前線にでないとダメかもな」
稟「いまは愛紗達の動きを見ましょう。愛紗達が敵の崩れたところで我らの最強を投入してケリをつけます」
一刀「まだ稟は見てないのに最強とかいっていいの?」
稟「風や愛紗、それに天下無双と呼ばれた恋が強いと言っているのです。私は信じてますよ一刀殿」
一刀「やれやれ、そこまで言われたらやらないわけにはいかないか。もし出ることになったら愛紗を下る。彼女と一緒に俺の帰りを待っててくれ」
稟「わかりました。いまは共に戦況を見極めましょう」
先ほどとは逆で、今度は稟が一刀に期待し一刀はそれに応えるべく静かに闘気を高める。
好きな子にここまで言われたらいい所を見せたくなるのが男である
愛紗「わが名は関羽!呂珂様の一番槍なり!死にたいやつからかかってこい!」
山越軍「小生意気な!全軍あの女に突っ込め!」
愛紗「ほぉ、構わず突っ込んでくるか!いいだろう、わが青龍偃月刀の餌食にしてやる!」
グサ...ザク....ブシャーーー
愛紗「どうしたどうした!貴様らから攻めてきたのにもう及び腰か!」
山越兵「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」
山越軍は5千の自軍にたった1人で挑むつもりか!と愛紗に向けて殺到した。
しかし山越軍が舐めてかかった相手はこの大陸でもトップクラスの実力を持つ関羽雲長、いかに数で勝ろうが、雑兵のみでは自殺行為でしかなかった。最初は勢い良く突っ込んでいた山越兵は愛紗のあまりの強さに及び腰になってしまった。それを見逃す程愛紗では無く、来ないならばこちらから出向くまで!怯える山越軍に1人で突入し、死体の山を築く
山越兵「ひぃぃぃ!ば、ばけもんだ!あのおんな」
山越将「数ではこちらがうえなのだ!数で攻め立てあの女の足場と疲れを奪え!」
怯える兵を鼓舞し、作戦を授かった兵士達は士気を取り戻し愛紗に向かう
愛紗「その意気やよし!だが居るの私だけではないぞ!」
そう、この戦場に居るのは愛紗だけでは無い。愛紗が受け持っている間に、明命と呂蒙も動き始めていた
明命「呂蒙殿、主が愛紗さんに気を取られているうちに軍の半分を敵後方に回り込ませ、迂回が完了したら前後で挟み込み殲滅しろと指示がきてます!」
呂蒙「わかりました、私では勝てるだけの作戦を出す知恵はありません、みなさん!周泰殿の言うとおり半分はただちに敵後方にまわりなさい!我々は行動を気取られないように矢で応戦します!狙わなくていいので敵軍にいる横行に連射をしてください」
敵にこちらの行動を悟らせないように半数を率いて陽動に討って出た明命と呂蒙だが、前線で鬼神の如く暴れまわる愛紗の邪魔をしないように援護するだけでも神経を費やしていた
明命「愛紗さんの気合が半端ないです。敵兵がどんどん減っていきます」
呂蒙「あれが一騎当千と呼ばれる人の武なのでしょうか。私にもああなれるでしょうか。」
呂蒙は援護している間も、たった1人で敵陣を縦横無尽に暴れまわる愛紗を羨望の眼差しで見つめていた。
これが名を轟かせる豪傑の領域なのかと……
明命「呂蒙殿!部隊が迂回完了したみたいです!」
呂蒙「見えるのですか!?よし、撃ち方!火矢を打ち上げて合図を送りなさい!私達は関羽さんによって隊列の乱れた敵軍に突っ込みます!みなさんいきますよ!」
義勇軍「うぉおおおおおおおお!」
明命「私もいきます!一刀様に訓練つけてもらっていますし、愛紗さんに負けていられません!」
愛紗の奮戦、呂蒙の巧みな用兵と明命の攪乱攻撃で義勇兵は山越軍を圧倒している、一刀と稟はここまで一方的に戦況が運ぶとは思っておらず、彼女達の実力と義勇兵の統率された動きに感心させられていた
一刀「武勇だけの将と聞いていたが、用兵もいいじゃないか。即席の義勇兵とは思えない程統率されているよ」
稟「えぇ、彼女はいずれ大軍を率いて指揮する立場にたつかもしれません」
一刀「これが『呉下の阿蒙に非ず』で有名になる呂蒙子明の片鱗か」
稟「初めて聞く言葉ですが、それはどういう意味なのですか?」
一刀「俺の世界での呂蒙が言われた言葉だよ。呂蒙は元々武一辺倒で前線で戦う武将だったが、孫権に学問を勧められると瞬く間に勉学を修めていったんだ。それで後に士別れて三日、即ち更に刮目して相待すべしと言われたんだ」
稟「鍛錬している者は三日も会わなければ見違えるほど変わるもの、同じ先入観で物事を見ずに、常に新しいものとして見よっと言うことですか。至言ですね」
一刀「いまでも充分兵を率いるには充分な才覚を持っているけどね。以前は彼女が成長しきる前に戦乱が終結出来た事は僥倖だったかもしれない。それと……稟そろそろかな?」
稟「そうですね、愛紗の独壇場に加え背後からの伏兵、明命の攪乱と将の暗殺、これで敵は完全に崩れていますので・・・これはもう一刀殿が出なくても壊走は時間の問題でしょう。一刀殿の実力は出来るだけ隠しておくに越したことはありませんので」
一刀「了解、じゃあとりあえず愛紗の所までは行くから離れないでね」
愛紗「なんださっきまでの勢いはどうした!私を討ち取るんではないのか!」
グシャ・ベキ・ボコ
山越兵「もうだめだ、逃げろおおお」
愛紗「逃がすか!」
一刀「愛紗止まれ!」
愛紗「一刀様どうしたのですか?」
返り血を浴びようが、決して青龍偃月刀を振るうのを辞めない愛紗だったが、主である一刀の声を聞いた瞬間にピタリと動きを止め、一刀の次の指示を待っている
一刀「逃げる兵は明命や呂蒙達義勇兵に任せるんだ。愛紗はまだこちらに向かってくる兵を叩きのめし、戦意を完全に殺ぐんだ。向かってくる者には容赦はするな」
愛紗「御意!」
愛紗がまだ戦意の残っている兵達の相手に移動し始めた頃、明命達は敗残兵の追撃に取り掛かっていた
明命「遅いです!」
ザシュ
呂蒙「はあぁ!」
グサ
明命「残っているのはもうほとんどいませんね」
呂蒙「あれだけ関羽さんが暴れていましたからね・・・それより関羽さんの背後に炎が見えるのは気のせいでしょうか?」
明命「はぅわ!私も見えるのです・・・おそらくあそこで一刀様と稟さんが手を繋いでいることが原因で嫉妬しているのではないかと」
そう、明命の言う通り一刀と稟はいつの間にか手を繋いでいたのだ。愛紗も手を繋いでいた事には当然気が付いていたが、まだ戦が終ってないために追求する事はしなかった。
しなかったのだが……稟への嫉妬心から今の愛紗は嫉妬神へクラスチェンジしていた
呂蒙「つまり、山越兵はあの状態の関羽さんから八つ当たりを喰らうと言う事ですか……全軍関羽さんから距離をとりなさい!巻き込まれてはダメです!」
嫉妬神「ほらほらほらー死んでしまえー!私も……私も一刀様と手を繋ぎたいのだ……私のジャマヲスルナー!」
山越兵「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」
明命「あれはさすがに同情します」
呂蒙「私もさすがに怖いです・・・」
嫉妬神に進化した愛紗によって山越軍は壊滅した。わずかに生き残った残兵は二度と黒髪の女に近づかないようになるほどの恐怖を味わい逃げ帰ったのである
ちょっと遅くなりましたが17話です
亞莎登場の話が浮かばずに時間かかってしまいました、すみません。
山越の話は史実でもあったことのようなので少し内容変えて使ってみました
次回が一刀と亞莎会合になります
予想数値化に書いていただいた方々ありがとうございます!
まだみなさんの印象が知りたいのでよろしければお付き合いお願いします~
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亞莎回になりますー