No.738251

模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第28話

コマネチさん

第28話「推参!!パーフェクトユニコーン!!!」
違法ビルダー…そう呼ばれるビルダーにアイは襲われた。そしてその声はアイと知り合いのビルダー、フジミヤ・レムだった。更に彼女は所属チーム『エデン』のメンバーと対立している様だった。

2014-11-19 21:57:32 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:981   閲覧ユーザー数:912

昼時、とあるファミレス、店の端に設けられたボックス席に三人の男と一人の女が座っていた。

雰囲気からか、テーブルの上の注文したであろうコーヒーやお茶にはどれも手が付けられていない、友達同士の談笑にしてはピリピリした空気だった。

 

「今月に入って違法ビルダー……、アイツが勝手にバトルに割り込む回数はどんどん増えてるよ」

 

「段々抵抗が無くなってきたんだろうね。最初は自分が悪いことしてるんだろうけど、慣れた分感覚がマヒしてきた」

 

女、アズマ・ヨウコが言うとハガネ・ヒロが答えた。次にヨウコはゼデルに問いかける。

 

「今日、本人の家には?」

 

「行っては見たけどよ。出かけてていねぇ。いても居留守使われて家にゃ入れてくれないだろうな。大学の講義もうまい事会わないようにしてるみたいだし」

 

頬杖をつきながらゼデルは答えた。

 

「つまりどっちとも会える事は出来ないと……」

 

「そういうこった」

 

次にヨウコは黒髪の青年、マスミに聞く。

 

「で、全然首回ってないけどどうするのよ。今まで通りこのままアイツのバトルに介入し続けるつもり?」

 

「もちろんだよ」

 

即答するマスミ。ハァ、とヨウコはため息を吐く

 

「即答してるけどアンタね、向こう全然取り合ってくれないのよ?もう説得したって無駄なのは増えてるバトル回数見て分かるでしょ?」

 

「でも、こうするしかない。バンダイの方に問い合わせてバトルに違法ビルダーのデータが入れない様にしても、

向こうは暫くすればそのプロテクトの網をかいくぐってまたバトルに入り込む」

 

ヒロも話に入り込んだ。

 

「ねぇヨウコ、何も僕たちは全部の違法ビルダーを相手にしようってんじゃないよ。あくまで彼女を……

フジミヤさんを違法ビルダーからやめさせるのが目的だ。これは身内の問題なんだよ」

 

「ハァ……身内ってそもそも関係ないビルダー襲ってるのに、それで片づけようとするっておかしくない?顔見知りのアイちゃんまで襲われたのよ?」

 

再びため息の後、ヨウコは一気にまくしたてた。

 

「それに……全部身内の問題だけで片付けようとするのもアタシは納得いかないよ?!

アイちゃんの時に聞かれた事、話しても良かったのに秘密にして、場合によってはアイちゃんも協力してくれるかも……」

 

「ダメだ。これはボク達だけの問題だ。ボク達だけでやるんだ」

 

マスミが口を開いた。その言葉には絶対に曲げないという意思がこもっていた。

が、いつも同じセリフを聞かされている上に納得がいかない答えだ。ヨウコには逆効果だったようだ。ヨウコは席を立つ

 

「そればっかり言うんだったらもういいよ、あたしはあたしの考えでやるから」

 

「どこに行くんだ?ヨウコ」

 

「せめてアイちゃんには何があったか言うべきでしょ?そこから先は気を付けて位しか言えないかもしれないけど」

 

「おい!待てよヨウコ!」

 

「止めても無駄よゼデル、皆のフォロー役はいつもの事だけどね、本心も分からない奴の尻拭いなんて冗談じゃないわ」

 

「ここの勘定ワリカンじゃなかったのか!?」

 

「空気読んでよアンタ!!」

 

「わ!悪かったよ!」

 

更に怒り心頭したヨウコは店を出る。ゼデルも冗談を外したのを理解するとヨウコを止めようと店を出てった。

 

「……解ってるよ、ボクのやり方が間違いだって……でもボクが止めなきゃいけない理由があるんだ……」

 

マスミの男は俯きながら呟いた。

 

 

所かわってこちらはアイの方、いつもの様にナナやムツミ達と一緒に下校してる最中だった。ただ一つ違った事を除いて……

 

「アイ、大丈夫?」

 

「ぅん……」

 

アイは右肩をナナに、左肩をムツミに組み合った状態で歩いていた。(タカコは後ろでカバン持ち)アイの眼の下には濃いクマが出来ている。

 

 

「またガンプラ作りで無理して……」

 

ムツミはアイの顔を見ながら言った。アイがこうなったのは単純に寝不足だ。先週違法ビルダーに襲われて以降、

家に帰っては睡眠時間を削りながら新しいガンプラを作ってたわけだ。

 

「アイ、土日なんて完全に引きこもって作ってたからね」

 

「だ……大丈夫だよ……まだ私17だよ?これ位……」

 

絞り出した声でアイは答えた。それでも今日の朝は元気だったが、時間が経つにつれてこの有り様だった。

 

「よく言うよ……帰りの時なんて完全にフラフラだったじゃない……」

 

「フジミヤさんが襲ってきてから、一週間経つけど……なんだったんだろうねアレ」

 

ナナが言う。あのバトルの後、挑戦者からは何のアクションもなかった。当日そこにいたビルダーは暫くは違法ビルダーに警戒していたが

日数が経つにつれ、何事もなかったかのようにいつものバトルに戻りつつあった。

 

「うぅ……分かんないよ……。現実離れした展開ばっかりで今となっては本当にあったのか?って感覚すら沸いてきたもの」

 

アイは眠い目に耐えながら、しかししっかりとした意志で答えた。彼女にとっても無視できる話題ではない。

 

「やっぱそうなっちゃうよね。アタシもなんかそういうイベントだったんじゃないかって思ったりしてるもん」

 

「でも一応警戒してるけどね。またあんなのが襲ってきても大丈夫な様にユニコーンを改造してたんだ」

 

うってかわって自信を持った顔でアイは言う。「ユニコーンの改造」以前電車の中で言ってた言葉をナナは思い出した。もう随分立つ。

 

「あ~もしかして前言ってた奴?」

 

「ボク達にはよくわからないけど……、寝不足の原因がそれって事だね……」

 

「ぅ……まぁそうだね」

 

アイがたじろきながら答える。ムツミの小言が飛んでくると思ったからだ。「別に悪くは言ってないよ」

と、ムツミもアイの考えを読みとり答えた。

 

「結構時間かかったから凄いのが出来そうじゃない?アタシとしても完成が楽しみだわ」

 

「ありがとナナちゃん。もう本体は完成したしほぼ改造完了だよ。後は背中の追加武装だけだね」

 

「でも……その前に休んだ方がいいんじゃないの……?まともに歩けないんだし……」

 

心配するムツミにアイは答える。

 

「大丈夫だよムツミちゃん、自分の体のことは自分が一番よく知ってるもの」

 

「そんなフラフラで言われても説得力ないよ……」

 

「アイちゃん、今日一気にラストスパートかけるわけ?」

 

「そりゃね、あーでもちょっと帰る前にガリア大陸によってかないと」

 

「?何か塗料でも買うの?」

 

ナナの問いに、アイは答える前にスマホを取り出してメールを見せた。

 

「ううん、コンドウさんから連絡が来たの。私に会いたい人がいるって」

 

そうこう話してる内に模型店『ガリア大陸』に四人は来た。

 

「おぉヤタテ、待ってたぞ」

 

「こんにちはコンドウさん、誰か来たんですか?」

 

「もしかしてまた挑戦者とか?」

 

「そういうんじゃないよ。話たい事があるんだってある人がね」

 

「あたしがハセベさんとコンドウさん通じて呼んでもらったんだ」

 

コンドウが言い終わると同時に、店の奥から一人の女性が現れた。サイドテールの長身の女性、その人は……

 

「ヨウコさん!」

 

意外な来客にアイが声を上げた。

 

「あー!前ヒロさんのチームメイト!」

 

「ご名答。ゴメンね、こんな回りくどい方法で来てもらって」

 

「俺もいるぜ」

 

ゼデルも現れる。ヨウコを止めようとしたが結局説得できずここまでズルズル来てしまった様だ。

 

 

「前の変な外人さんだね~。でも二人だけ?ヒロさんは?」

 

タカコがまだいないかと見回す。彼女自身以前試験開けで会った仲だ。

 

「今日はアタシ達だけだよ。ちょっとヒロ達とはギクシャクしちゃっててさ」

 

「ここに来た理由って、やっぱり違法ビルダーに関してですか?」

 

「まぁね。こないだはヒロ達がロクにワケも伝えなかったわけだし、……それに、あたし達の不始末となると……ね」

 

そのヨウコの口ぶりにアイとナナはヒロ達と関係があると思った。

 

「通信ではワケありみたいに感じましたけど……やっぱり……あの違法ビルダー、貴方達のチーム『エデン』のレムさんなんですか?」

 

「それは……」

 

「た!大変だアイちゃん!」

 

アイの問いにヨウコが言おうとした瞬間、店員のハセベが遮った。慌てて走ってきたのだ。

 

「ハセベさん!?ちょっと今いい所なのに……」

 

「それ所じゃないんだ!また前みたいに変なビルダーが割り込んできた!同じようにアイちゃんを出せと言ってきてるんだよ!」

 

このタイミングで?とナナが顔をしかめる。

 

「随分とタイミングがいいわね。アイが今いるって見抜かれてんのかしら」

 

「むしろあたし達の方がつけられてたかなぁ」

 

「あー否定できねぇなこりゃ」

 

やっちゃったかも、という顔をするヨウコとゼデル。

 

「でも無視するわけにもいきませんよ!私出ます!」

 

アイは鞄からガンプラを取り出す。前回使用したユニコーンだ。

 

「だったらあたし達も一緒に参加させてよ。もしかしたらあたし達が呼んじゃったかもしれないし、それに……ちょっとアイツには言いたい事あるしね」

 

ヨウコとゼデルも同時参加の名乗りを上げる。アイは快く承諾した。

 

「アイ、未完成とはいえ、家にある奴は取ってこないの?」

 

しかしナナはどうにも心配な様だ。アイに確認を取る。

 

「大丈夫だよナナちゃん。今日はゼデルさんもヨウコさんもいるし、それに一度戦った相手だし、もう向こうのトリックは解ってるもの」

 

トリック、頭を破壊すれば再生能力を持った違法ビルダーのガンプラはその能力を失い、停止するというものだ。

ナナは不安げな表情を見せるがアイはいつもの笑顔で返した。

 

「……」

 

Gポッドに入るアイの表情を見ながら、ナナはなにか考える。

 

「ねぇムツミ、ちょっといい?」

 

「?」

 

そしてナナはムツミに話しかけた。

 

そしてバトルが始まった。今回のフィールドは夜間のブリュッセル、ベルギーの首都にしてOVA『ガンダムWエンドレスワルツ』の決戦場所。

クリスマスの夜(という設定)。雪が積もり静まり返った街に三機のガンプラが街の中心、広場に降り立つ。

アイのユニコーン(アームドアーマーVNは今日は装備してない)、ヨウコのヴェルデバスター、ゼデルのブルデュエルだ。

二機とも『機動戦士ガンダムSEED C.E.73-STARGAZER-』に登場したバスターガンダムとデュエルガンダムの発展機だ。

 

「エンドレスワルツの決戦場所かぁ、本編じゃ物凄い数のサーペントが出て来たけど……」

 

「こっちでもそういう流れになるってわけね」

 

ヨウコが返すとアイに前方を見る様促す。

アイが見ると建築物とほぼ同等の高さの機体がそれぞれ三方向の大通りから押し寄せてくる。

機体は前回アイが戦ったジェノアスKカスタムだ。それも一体二体ではない。見えた機体の後方からも幾つもの同じ機影が見えた。

 

「こんな狭い通りでご苦労なこった!」

 

ブルデュエルに乗ったゼデルが毒を吐くと同時に、ジェノアスのうち一機が右腕のバズーカを撃ってきた。散開しかわすアイ達三機。

 

「前と同じでこれも無人機ってわけですか!?」

 

アイは独り言と相手への問いかけを同時に口にしたがその答えは帰ってこない。

 

「チッ!」

 

アイ達3機は散開したまま、一機ずつそれぞれの大通りを高速で低空飛行で飛ぶ。Gポッドから見える景色、機体の左右で建物が高速で横切る中、

進行方向にいるジェノアスKカスタム達もアイ達を迎撃すべく撃ってくる。

 

「待ち伏せならもっとわかり辛くして下さいよ!!」

 

アイは砲撃を左腕のアームドアーマーDEで受けながら、右腕のビームマグナムで習いを定め撃つ。

狙いはジェノアスの頭部。前回の戦いでそこを破壊されると再生できないと解ったからだ。

ビームマグナムはジェノアスの頭部を胴体ごと飲み込み簡単に破壊、その後ろで並んでいたジェノアスも巻き込んだ。

頭部を破壊されたジェノアスはそのまま倒れ込む。無論律儀に一列に並んでいたわけではないので撃ち漏らしたジェノアスが倒れた機体を飛び越え再び撃ってきた。

 

「次から次へと!!」

 

 

一方ヨウコ達も似た様な状況だった。

こちらも相手の頭部を撃ってはいるがいかんせん数が多すぎる。

 

「あぁもうしつこい!アイツこんなに陰険だったっけ!?」

 

ヴェルデバスターに乗ったヨウコが愚痴ると同時にジェノアスも撃ってきた。かわすヨウコ、だが爆発は建物を巻き込み。さらに爆発を大きくした。

 

「人数が多いだけに今日の貧乏くじはデカいの引いたかな?でも!」

 

爆風の中からヴェルデバスターが飛び出す。自機の両手にはパヨネット(銃剣)を展開させたビームライフルが二丁。目の前には左右にジェノアスが二機並んでいる。

 

「いっつも損な役回りばかりなんだもの!」

 

そのまま銃剣で左右のジェノアスの胸上部を突き刺す。そして銃剣上部についていたビームライフルを撃つ。

場所的にそれはジェノアスの頭部を撃ち抜いた。

 

「ついでで憂さ晴らしさせてよね!!」

 

逃げるのをやめたヨウコはヴェルデバスターを振り向かせ、後部より接近してくるジェノアス達を全身の火器を一斉に放ち、迎え撃った。

 

 

「人気者は辛いぜ!うおりゃあ!!」

 

ゼデルの方はブルデュエルでジェノアスの大群を恐れずに突っ込んだ。

ブルデュエルの両手のビームサーベルを敵の数を恐れずに振り回す。ジェノアスの方もビームサーベルで受けようとするが、

大抵の機体は受ける前に頭部を切り裂かれる。

無計画に見えるかもしれないがブルデュエルの戦い方はしっかり頭部を狙っていた。

少しすると後方でジェノアスが三機撃ってきた。援軍だ。

 

「ゴキブリかテメェら!」

 

ゼデルはブルデュエルの左肩からクナイ状の投擲武器を取り出す。

『Mk315スティレット投擲噴進対装甲貫入弾』だ。投げようとするが直前に機体に何かの衝撃が走った。

 

「うおっ!なんだ!?」

 

背部からジェノアスが一機組みついていた。そのままジェノアスはブルデュエルのコクピットを突き刺そうとビームサーベルを取り出す。

 

「不意打ちたぁ卑怯だぜ!!」

 

ゼデルは機体背部のスラスターの全力で吹かす。大出力のスラスターはジェノアスを簡単に吹き飛ばす。

ブルデュエルはそのままの勢いで、前方のジェノアス三機に突っ込むブルデュエル。

 

「食らいやがれ!!」

 

三機のジェノアス目掛けてスティレットを投げつけるブルデュエル。スティレットはジェノアス各機の頭部に一本ずつ当たり爆散。その場でジェノアス三機は沈黙。

と、先程吹き飛ばしたジェノアスが衝撃のダメージを再生しつつ、バズーカをブルデュエルに向ける。まだ生きていたのだ。

 

バンッ!

 

撃った音が響くがブルデュエルは無事だった。ジェノアスが撃とうとする直前にブルデュエルのハンドガン、

正式名称『リトラクタブルビームライフル』でジェノアスの頭部を撃ち抜いていたのだ。

 

 

数分して、大体の敵を倒した三機は散会した場所に戻ってきた。

 

「こっちは大体終わりましたよ」

 

「こっちもね。でもまだバトルは終わってないって事は……」

 

「いるんだよな。まだ向こうの真打ちがよ!」

 

その瞬間、三機のGポッドに警告音が響いた。同時に真上からミサイルとビームの雨が降り注ぐ。とっさに三機はかわす。

 

「前回とは打って変わって調子がいいじゃない?ほとんどのわたしのジェノアスを破壊するなんて」

 

「?!あの機体は!!」

 

アイは叫んだ。何故なら上空にいたのはアイが以前戦った機体。ユニコーンガンダム四号機『デュラハン』だからだ。

そして聞き覚えのあるその声は……

 

「その余裕の態度、レムゥゥ!」

 

アイの隣にいたゼデルが怒りの声を上げる。

 

「ゼデル。今回はヒロ達はいないのね、まぁあの二人がいないのは意外だったけど」

 

「そう言うって事はあたし達をつけていたわけじゃないって事?」

 

ヨウコがデュラハンのビルダーに疑問を問いかける。さっきヨウコ自身が言った通り、

自分の所為でここに違法ビルダーを呼び込んだんじゃないかという不安があったからだ。

 

「指示があったってだけだよ。あなた達は邪魔以外の何物でもないもの」

 

「随分な言い方じゃねぇか!それが俺達仲間に言うセリフかよ!」

 

「……仲間だからこそ、わたしは置いて行かれたくないだけだ……っ!」

 

言い終わらないうちに、ヴェルデバスターがデュラハンを撃った。かわすデュラハン。

 

「……ヨウコ!」

 

「だからってこんな方法とって本気でどうにかなるって思ってるわけ!?アンタが誰にも迷惑かけないなら……

正しいってんならヒロもマスミも止めようとしないわよ!」

 

明らかに怒気を込めた声でヨウコが言う。

 

「その通りだ!!無駄に多いジェノアスは俺たちが破壊したぜ!もうお前は一人同然!とっとと降参しやがれ!」

 

「一人?誰が?」

 

そう言うとデュラハンの全身から赤い光が溢れた。アイ達はとっさに目を覆う。

 

「何これ!?目くらまし!?」

 

「今更こんなもんで!」

 

「!待ってください!!機体の反応が!」

 

アイの慌てた声が響く、デュラハンが光ると同時に倒したはずのジェノアスが再び立ち上がった。頭部含めた損傷個所を再生して……

 

「なんで!?頭は破壊したのに!?」

 

「今回のはちょっと趣向が違うの。今までのは再生機能を持ったチップを積んでいたけど。今回はわたしの発した信号で再生機能のオンオフが切り替えられる仕様だよ」

 

「さっきの光か!」

 

「そういう事、じゃあまた全部相手してもらおうかしら?わたし含めてね!」

 

先程再生したジェノアス達は八方から真っ直ぐこちらへ向かってくる。アイ達の顔に焦りが見えた。

 

「だったらあなたを先に倒せば!」

 

「アイちゃん!?」

 

上空のデュラハン目掛け、アイがユニコーンで飛ぶ。そのままデュラハンを倒すつもりだ。

ビームサーベルを抜き、斬りかかるユニコーン。デュラハンもビームサーベルを抜き、二機は鍔迫り合いになる。

 

「レムさんなんでしょ?!チーム『エデン』のビルダーの!」

 

「……そうだよ。アイちゃん、わたしはフジミヤ・レム」

 

淡々とした声でレムは答えた。

 

「勝てないスランプがあったからって何故こんな事を!?まともなビルダーのすることじゃない!」

 

「……解ってるよ……、でもね……」

 

デュラハンはそのまま右肩のビームキャノンを正面のユニコーンに向ける、アイはすぐさま『撃つ気だ!』と判断、

 

「くっ!」

 

アイはユニコーンをデュラハンから離れ、ビームマグナムをデュラハンに向ける。狙うは頭部

 

「これで!」

 

「さっき言ったこと、覚えてない?」

 

「!?」

 

直後、ユニコーンのバックパックが爆発する、否、撃たれたのだ。アイは落ちるユニコーンで悟ったと同時に見た。

再生したジェノアスが撃ってきたのを。

 

「アイちゃん!!」

 

叫ぶヨウコ、そのままユニコーンは地表に激突する。

 

「ま・前と同じ方法でやられるなんて……!」

 

「くっ!レムゥゥ!!」

 

周囲から来るジェノアスを迎撃しながらゼデルは叫ぶ。蘇ったジェノアスは既にアイ達三人を囲みつつあった。

 

「そんな事してまで勝ちてぇのかよ!!そんなんで勝って嬉しいのか!?満足なのか!?答えろぉぉ!!」

 

「……満足なんて、するわけないじゃない」

 

攻撃はジェノアス達に任せながらレムは答える。意外な答えにゼデルは動揺した。

 

「何?!」

 

「これで勝ったってわたしの心は満たされないよ。でも、もう戻れないよ……。わたし、これじゃなきゃ勝てなくなってる。これで頼りにされるの気に入り始めてる

だんだん罪悪感が薄くなってきてるもの……」

 

徐々に気まずそうにレムは答える。

 

「だからって……子供みたいな事を!!」

 

アイはユニコーンを立ち上がらせると残った全身のバーニアを使い再びデュラハンに迫る。振るうビームサーベル

 

「遅いよ」

 

「っ!」

 

レムは難なくデュラハンのビームサーベルでユニコーンのビームサーベルを切り払う。舞うユニコーンのビームサーベル。

そのままデュラハンは空いた左腕のビームライフルをユニコーンの腹、コクピットに押し当てた。

「ここまでなの?!」と間近の銃に覚悟を決めるアイだったが……

 

 

「ちょっと待ったぁ!!」

 

その時だった。全ビルダーの目前のスクリーンに『乱入者あり』の文字が表示された。

「なに……?」と一瞬疑問に思うレム、

直後横から白い機体がデュラハン目掛けて凄い勢いで飛んできた。

 

「なっ?!」

 

そのままその機体はデュラハンに蹴りをかましデュラハンを吹き飛ばした。

 

「あぁっ!!」

 

「な!何だありゃ!?」

 

「サイコフレームの緑色の……ユニコーン!?」

 

ゼデルとヨウコが驚く。白い機体の正体はユニコーンガンダム・デストロイモードだった。だがただのユニコーンではない。

サイコフレームはメタリックグリーンに輝き、各部にはアヴァランチエクシアのパーツを流用したアーマーを着ていた。そしてアイはその機体に見覚えがあった。

 

「あの機体!なんでここに!?」

 

「あたたた!結構強烈ねこれ飛ばすの!」

 

「ナ・ナナちゃん!?」

 

そのユニコーンから通信が入る。相手はナナだ。

 

「この機体が必要かなって思ってアンタの家から持ってきたのよ。ムツミに頼んでさ」

 

「いやそりゃまぁ本体自体はもう仕上げてあるけど、無茶するなぁ」

 

「とにかくアタシのGポッドに乗り換えて!こっちの機体だったら十分戦えるハズ!」

 

「ちょっとズルいかもしれないけど……わかった!」

 

「させないっ!!」

 

レムのデュラハンがそのままアイのユニコーンを破壊しようと全身の火器を撃つ。ユニコーンは左腕のアームドアーマーDEを構え、防御で精一杯だ。

 

「くっ!これじゃ乗り換えられない!」

 

「まだ諦めるな!」

 

「!?」

 

突如響いた声と共に現れたのはヒロのパーフェクトストライクとマスミのエクシアリペアだ。

 

「ヒロさん!マスミさん!」

 

「ここは僕達が引き受ける!ヤタテさんは早く機体を乗り換えて!」

 

「よくこのフィールドがわかりましたね!」

 

「今回はオンラインじゃなくて直にガリア大陸のGポッドで乱入しただけだよ!元々はヨウコに謝りたくて寄ったんだけどね!」

 

「くっ!ジェノアス隊!あの二機とユニコーンを破壊して!」

 

レムがジェノアス達に指令を出す。そのジェノアス達の攻撃を一手に捌くパーフェクトストライク。そしてエクシアリペアはデュラハンに斬りかかった。

 

「ボクの機体のデータコピーか!穏やかな気持ちじゃないよ!」

 

「アイ!今のうちに!」

 

「うんナナちゃん!」

 

アイとナナは機体を少し離れた場所で待機させる。そしてアイとナナはお互いGポッドを開けて機体を交換する。

 

「アンタのユニコーンはアタシに任せて!」

 

「お願い!」

 

急いでいたのか。制服のままのナナとすれ違い、アイは改造ユニコーンのGポッドに乗り込んだ。離れた場所では息を上げたムツミが見えた。

アイはムツミにサムズアップをしながらGポッドに入り込む。

 

「……いきなりの実戦になっちゃったけど……行くよ!『パーフェクトユニコーン』!!」

 

アイが叫ぶとそれに応える様にパーフェクトユニコーンの眼が、サイコフレームが輝いた。

 

 

一方こちらはヒロ達の方

 

「クッ!前以上の性能か!」

 

「そりゃデータだけとはいえ、ボクの作ったデュラハンだからね!」

 

「自慢になるか!」

 

エクシアリペアとパーフェクトストライクはデュラハンに押されつつあった。それからジェノアスもヒロ達の相手として加勢し、

数の暴力に押されつつあった。ヒロ達だけではない。

ヨウコもゼデルも同様だ。特にこちらは一戦していた為息切れも激しくヒロ達より戦力で押されていた。その分余ったジェノアス達はヒロ達に送り込まれていた。

上空ではデュラハンとストライク、リペアが戦い、ジェノアス達は下からストライクとリペアを狙い撃つという図式だ。

万が一ジェノアスの援護がデュラハンに当たってもデュラハンはすぐさま再生する仕組みだ。

 

「しかし動きが前よりどんどん良くなってるよフジミヤさん、スランプ解消できたなら戻ってきて欲しいけど」

 

「残念だよヒロ、わたし違法ビルダーをやってる時だけスランプを忘れられるみたい」

 

「懲りやしない……!お前を止めるまでは!」

 

「マスミ……まだそんな事を言って、責任を感じるのはいいけれど見苦しいよ。それに、あなたはあの事で責任を感じる、

つまりそれは悪いことをしたと思ってる。それ自体が間違いだとは思わないの?」

 

プライベート通信だ。レムの声はマスミにだけ繋がった。

 

「何を!?」

 

「私は今の状況が、正しいと思ってる。私としてはあなたは正しい事をしたと思ってるから放っておいてもいいと思うんだけど?」

 

「君という奴は!」

 

なおもジェノアス達はエクシアリペア達を撃ち続ける。その時だった。一筋の緑色の光が凄い勢いでデュラハンに迫っていた。レムはそれに気付く。

 

「あの光は……アイちゃん!?ジェノアス隊!撃ち落として!」

 

数機のジェノアスが光り目掛けてミサイルとバズーカで緑色の光に撃ちまくる。光は弾をかわし鋭角的に上昇、クッと曲がり幾重もの弾をかわす。

無論ただかわすだけではない。光の中から放たれた複数のビームはジェノアスを次々と撃ち抜いた。

 

「なんて機動性なの!?」

 

そのまま光はデュラハンにぶつかる。とっさにデュラハンはビームサーベルでその光を受け止めた。だがその勢いは凄まじくデュラハンをも押し出してしまう。

光は止まり光の正体が姿を現す。さっきナナが乗っていたユニコーンだ。肩部のアーマーからビームサーベルを出しデュラハンのビームサーベルを受け止める。

全身のサイコフレームは緑色に輝き夜の街を照らす。

 

「なんて輝きだ!」

 

「何?!このパワーは!」

 

「これがパーフェクトユニコーン!とっておきの私のユニコーンだよ!!」

 

「あなた!アイちゃん!!」

 

デュラハンは一旦距離を離すとジェノアス達を呼び寄せる。周囲からジェノアス達はPユニコーンに囲むように飛び上がる。

各々の手にはビームサーベルが握られていた。

 

「パーフェクト!?名前負けよ!やれ!」

 

「甘い!」

 

アイはPユニコーンの両肩からビームサーベルを最大出力で発生させぐるっと一回転させる。大型のビームサーベルはたやすくジェノアス達を切り裂き腹部を真っ二つにし、落とす。

 

「なっ!?」

 

「観念しなよ!もうあなたに勝ち目はない!」

 

そのままユニコーンとデュラハン二機は鍔迫り合いになる。

 

「嘘よ!まだ私は負けてはいない!!」

 

「往生際の悪さも強さの一つなのかもしれないけれど!」

 

パワーでデュラハンは押し切られ、そのまま持っていた左腕を切り落とす。

 

「ひっ!?」

 

「それだけじゃ勝てやしない!!」

 

撤退しようとするデュラハン、Pユニコーンにミサイルポッドを撃ちまくるが全て両腕の火器で撃ち落される。

直後爆風の中を凄まじい速さでデュラハンを追いかける。

逃げ切れないと判断したレムはデュラハンを、両腕のライフルをPユニコーンに向ける。しかし遅かった。

すでにPユニコーンはビームサーベルを振り上げていた。

 

 

「これでぇぇっ!!」

 

次の瞬間にはデュラハンは背部ごとX字形に切り裂いた。

再生するか?とアイは神経を尖らせる。と、そこへヒロから通信が入る。

 

「アイちゃん!違法ビルダーの機体は再生核の部分から広がる様に再生する!再生の為蠢いてる部分を破壊するんだ!」

 

ヒロの言葉を頼りに切られたデュラハンを見るアイ、再生に動いてるパーツはあった。デュラハンの背中に設けられたビームキャノン。

アイは即座にビームマグナムを向け放つ。キャノンをビームが飲み込み破壊、これにより核を破壊されたデュラハンはようやく撃墜扱いになった。

直後司令塔を潰されたジェノアス達も機能を停止。リーダー機を倒した事によりバトルはアイ達の勝利で終わった。

 

バトルが終わった後、アイ達は事のいきさつをマスミ達から聞いていた。

 

「あの日、僕達がアイちゃん、ナナちゃん、ツチヤさんの三人とガンプラバトルをしてから暫く後、

僕達行きつけのホビーショップで荒らしのビルダーがいると聞いてね。駆けつけてみればそこに居たのは……」

 

「違法ビルダーになったフジミヤさんだったって事ね」

 

「そういう事よ、それ以降止めようとしたんだけど全然聞かなくて、説得かねてバトルに乱入って流れになっちゃったわけ」

 

「そのままドロドロの展開になっちゃったって事ですか」

 

「そうだな。あいつらは優れたビルダーのガンプラデータを集めてデータを複製をどんどん作っている。今回のマスミのデュラハンもその要領だったわけだぜ」

 

「ありがとうムツミちゃん。ムツミちゃんとナナちゃんがPユニコーン持ってこなかったら負けてたよ」

 

「フフッ。今日の立て役者はボクって事だね……」

 

珍しくノリ良く答えるムツミ、調子乗らない、とツッコミを入れるナナ

と、その時二階にハセベがドタドタと駆け上がってきた。

 

「た!大変だよアイちゃん!」

 

「ハセベさん?なんですか今度は?!」

 

「さっきバトルに乱入してきた荒らしのビルダーからメールが来たんだ!ここで顔を合わせて直接バトルしようって!!」

 

『ハァッッ!!?』

 

何故こういう展開になったとその場にいた全員が声を上げた。

下に降り、パソコンに表示されたメールをアイが読む。内容はこうだ。

 

「二回もやられるとは思わなかった上にマスミ達まで来た。このままじゃこれから先も邪魔されるのは面倒だ。

だから明日の午後七時、直接ガリア大陸に来た上で貴方と対戦したい。ただしこれで私が勝ったらもうエデンのメンバーは私に関わらない事。……ってあります」

 

「挑戦状のつもりかよ。いくらなんでも急すぎる上に一方的すぎるぜ。」

 

呆気にとられたゼデルが言う。猪突猛進な彼ですらそのメールの態度には呆れた様だ。そしてその場にいた全員が同じ様な心境だった。

 

「もう、前みたいに皆でチーム組むの……出来ないのかな」

 

ヨウコが諦めるかのように言う。だがその言葉を認めない人間が一人いた。

 

「そんなことないよ」

 

ヒロだった。

 

「確かにフジミヤさんは、あぁ負けず嫌いで一人で突っ走るところがあるけれど、それでも人の痛みが分からない人じゃないよ」

 

「そうですよ」

 

アイもそれに続いた。

 

「私にはレムさんがどういう人間かはわかりません。でも皆がこうしてまで止めようとしてるって事はそれだけ大事な存在だったって事じゃないですか」

 

「アイちゃん……そうだよ、元に戻れるって信じようよ」

 

「アイ……アンタ結構酷い目に合されたのによくそんな事いえるわね」

 

「いいでしょナナちゃん。行き詰ったのがきっかけで、そのまま友達も失うなんて嫌すぎるもん」

 

「別に悪く言ってるわけじゃないわよ。てことはやっぱ挑戦、受けるわけ?」

 

「うん、受けるけどチームは……」

 

アイはヒロ達に向き直る。ヒロとマスミはアイの次に言う言葉を理解した様だ。

 

「だったら僕を同じチームに入れて欲しい!フジミヤさんの眼を覚まさせたい!」

 

「元よりそのつもりでしたよ。よろしくお願いします」

 

結束を表すかのように握手をするアイとヒロ。次にアイはマスミの方に向く

 

「マスミさん……。前に言いましたよね。『この件には関わらないで』って、でももうそんな状況じゃないと思います。だから……」

 

「うん……、こうなってしまってはボクもそのつもりだよ。向うから来てくれるなら尚更だしね」

 

半ば諦めたようにマスミは答えた

 

「助かります。よろしくお願いします」

 

「でも……これだけは覚えておいて欲しい。アイツの目を覚まさせるのはボクじゃなくちゃいけないんだ。レムとの対決はボクに譲ってほしい」

 

「おいマスミ!お前この期に及んで何言ってんだ!!」

 

マスミの言葉に食って掛かるゼデル

 

「これだけは譲れないんだ」

 

「よくは解りませんけど。いいですよ」

 

「助かるよ。アイちゃん」

 

会話を見ていたナナはマスミの態度に腑に落ちなかった。

 

「フクオウジさん……なんか前と感じ違って見えるわね」

 

ナナの独り言にヨウコが反応する。

 

「あ、やっぱりそう見えるナナちゃん?」

 

「ヨウコさん、はい、なんか前は変な発言多かったけどずっと明るい人だったのに」

 

マスミは狙ってやってるのか。自然にやってるのかは解らなかったがいわゆる中二キャラだった。

しかし今日の彼からはそんな雰囲気は微塵もない。ナナにはそれがなんだかひどく寂しく見えた。

 

「レムとマスミって幼馴染みだからね。だからかな?レムが違法ビルダーになったので一番ショック受けてたみたいだし、

だからこそ自分の手でどうにかしたいって気持ちなのかな。ま、あいつの態度のおかげで今日あたし達がこっち来る原因になったけど」

 

苦笑しながらヨウコは言った。

 

「仲間すら歪めちゃうものなんだ……だからこそ、明日は勝たなきゃいけないですね」

 

「そうね……明日の午後七時か……」

 

ヨウコは明日来るであろう激戦に苦戦への不安と、もしかしたらレムが元に戻ってくれるかもしれないという期待を胸に抱いていた……。

 

 

 

そして違法モデラー達のいるとあるゲームセンターのGポッドにて……

 

「私の送ったメールはうまく届いた様ですね」

 

「みたいね。それにしても機体はどうするの?あのユニコーン相手じゃ、デュラハンのコピーデータでも役者不足だと思うけど?」

 

「フフ……折角の舞台です。新型で挑みたいじゃないですか?」

 

口元を釣り上げ笑う黒髪の少女、

 

「新型?」

 

「えぇ、今日まで一週間期間を空けた甲斐がありました。

あなた達優秀なビルダーがデータを集めてくれたおかげで、もう間もなく完成するんですよ。

コピーでない、私達のオリジナルの機体が……あなたには私と共にその新型に乗ってもらいます」

 

『私と共に』その言葉がレムの頭にひっかかった

 

「あなたもその勝負に出るというの」

 

「はい、テストも兼ねますから、それに……チャンスですもの、ヤタテ・アイに屈辱の涙を与える……フフッ」

 

待ち遠しそうに笑う少女、レムは少女をひどく不気味に感じた。

 

もう三か月近く経っちゃったよ……お久しぶりですコマネチです。

今回出すユニコーンの改造が難航してしまい遅くなりました。待っていた方々、申し訳ございません…

この章ももうすぐ決戦となります。もう大体の準備は済んでますので今週か来週に次を投稿する予定です。ではまた

 

おまけ「タカコとムツミ」&「マスミとヒロ」


 
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