No.736585 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~soranoさん 2014-11-11 22:03:14 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1598 閲覧ユーザー数:1480 |
~温泉郷ユミル~
(……さっきの連絡は……)
リィンが傍にいるにも関わらずクレア大尉は目を閉じてジッと考え込んでいた。
「クレア大尉?何かあったんですか?」
「……リィンさん……いえ、どうかお気になさらず。隊員からの定時連絡で、少々個人的な情報を受けただけですから。」
「そうですか……?大尉もどうか無理しないでください。せっかくの休息日ですし。」
「ふふ、お気遣いありがとうございます。郷を敷いている守備も、今のところは盤石です。リィンさんも今は残りのⅦ組のメンバーとの合流や今後の事に集中なさってください。」
(もしかすると、大尉も疲れているのかもしれないな………)
どことなく疲れた様子を見せるクレア大尉を見たリィンはクレア大尉をリラックスさせる為にある事を提案した。
「大尉、もしよかったら息抜きに行きませんか?たとえば鳳翼館あたりでビリヤードとか。」
「そうですね……人員がある程度整って来た今、郷の守備も負担が減りつつありますし。ふふ、わかりました。ではお相手させていただきます。」
その後二人は鳳翼館に向かい、ビリヤードをプレイし始めた。
~鳳翼館~
「………………はっ!」
ビリヤードをプレイした二人だったがクレア大尉の番になるとクレア大尉は一突きで全ての球をポケットに落とし、ゲームはあっと言う間に終わった。
「全ての球を一突きでポケットに落とすなんて……!」
「上手く計算通りの軌道を通ってくれたようですね。……って、すみません。すぐにゲームが終わってしまいましたね。」
驚いているリィンに説明したクレア大尉は申し訳なさそうな表情をした。
「ふう、考えてみればこの手のゲームはクレア大尉の独壇場ですよね。勝負を挑んだ時点である意味負けが決まっていたというか。」
クレア大尉の言葉を聞いて冷や汗をかいたリィンは苦笑しながらクレア大尉を見つめた。
「ふふ、すみません。つい本気を出してしまって。………レクターさんだったらもっと上手に盛り上げたでしょうね。適度に運の要素なども絡ませながら。」
「はは……あの人はいかにも遊び慣れていそうですしね。俺がもう少し上手ければちゃんとお相手できたんですけど。」
レクターの事を思い出したリィンは苦笑しながら答えた。
「ふふ、でしたら勝負は止めて私がお教えしましょうか?」
「いいんですか?」
「コツのようなものは多分、伝授できると思います。リィンさんもフォーム次第でいくらでもスコアを伸ばせるはずですし。」
「えっと、それじゃあお言葉に甘えて。」
こうしてリィンはクレア大尉に手取り足取りビリヤードを指導してもらうことになった。センスに関わるような難しい説明もわかりやすく噛み砕いた上で優しく、丁寧に教えてくれ……リィンは短時間で驚くほど上達することができたのだった。
「―――お見事。これで9番がポケットに入りましたね。」
「ええ、練習とはいえノーミスで達成できたのは始めてです……!はは、これも大尉が丁寧に教えてくれたおかげですね。」
ポケットに全ての球をノーミスで入れられた事にリィンは興奮した様子で言った後クレア大尉を見つめた。
「ふふ、リィンさんの飲みこみもとても早かったですし。まだわからないところがあれば何でも聞いてくださいね?私も教え甲斐があるというものですし。」
「クレア大尉……はは、大尉はやっぱり優しいですよね。」
「え……?」
リィンがふと呟いた言葉が不思議に思ったクレア大尉は呆けた。
「その、士官学院の特別実習にしたって、何度も手助けしてもらいましたし……今回だって同行してくれた上に郷の守備まで引き受けてくれている。ときどき鉄道憲兵隊や”鉄血の子供達”という立場を忘れてしまいそうになるというか……いつも陰ながら支えてくれて、本当に感謝しています。」
「……ふふ、滅相もありません。私も士官学院の出身ですからどうしても気にかけてしまって……多分、先輩風を吹かしたいだけなんだと思いますし。」
リィンに改めて感謝されたクレア大尉は苦笑しながら答えた。
「はは……そうだとしてもありがたいと思います。俺には妹達しかいませんが……もし姉さんがいたらこんな感じだったのかもしれませんね。」
「…………………」
リィンの話を聞いたクレア大尉は目を閉じて考え込んだ後突如リィンの身体を抱きしめた!
「ク、クレア大尉……!?」
(ええっ!?一体何故リィン様を……)
(あら♪まさかこんな展開になるなんてね♪)
(ふふふ、とても興味深い展開ですね。)
(……もしかしたらリィンのさっきの発言で決して忘れられない過去を思い出したのかもしれないわね。)
クレア大尉の突然の行動にリィンは驚き、その様子を見ていたメサイアは信じられない表情をし、ベルフェゴールとリザイラは興味ありげな表情をし、アイドスは静かな表情で見守っていた。そしてクレア大尉はリィンから離れた。
「……えっと……?」
「……ふふ、すみません。大した意味はありませんから。どうかお気になさらないでください。」
「は、はあ……」
クレア大尉の言葉を聞いたリィンは戸惑いの表情で返事をした。
「私は、これからもみなさんをお手伝いするつもりです。亡くなった宰相閣下の遺志を継ぎ、あくまで鉄道憲兵隊の一員として……ですが、Ⅶ組の味方である事は変わらないと思っていますから。」
「クレア大尉……その……ありがとうございます。改めてよろしくお願いします。」
クレア大尉の真意はわからなかったが、それ以上は聞く事が出来ず……二人はそのまま無言で郷の高台へと戻り、別れるのだった。
そして翌日、ユミル出発の時が来た………………
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第356話