No.73637

真・恋姫無双外伝~覇王の願い~帰還編vol.2『夢の続き』

真・恋姫無双(魏ED)のアフターストーリーです。
展開としては少しゆっくりめかもです。
一刀はあの世界へ戻れるんでしょうか(`・ω・´)

1話⇒http://www.tinami.com/view/73594

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2009-05-14 22:47:43 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:25805   閲覧ユーザー数:20293

【一刀】「・・・・っ!」

日常となっていた剣道の練習。

竹刀が空気を切る音。

ドンと踏み込む音のひとつひとつが、一刀の集中を後押しする。

 

夏の蒸し暑い道場では、中に入ることもためらいがちになるが

それでも部屋でじっとしているよりは遥かにましだった。

それでも、さすがにその中では練習などできるはずもなく

窓を開け、風をいれる。とにかく空気を入れ替える。

その間に道着へと着替える。

 

 

【一刀】「はっ・・・!」

練習をはじめてから、すでに何十回だろう。数えるのも面倒に感じるほどの素振りを繰り返す。

【一刀】「・・・・。」

こんなところでも、向こうにいた証がある。

主に精神を鍛えるためのものから、確実に相手をしとめようとするものにかわっていた。

己の動きに注意していたものが、相手の動きを意識するようになった。

 

 

【一刀】「・・・ふう」

端にかけておいたタオルで汗を拭う。

少し、休憩しようと外にでる。

暑いなかでも、室内から外にでると少し涼しいと感じた。

何を思うでもなく、ふと目線をあげた。

快晴・・・と呼ぶには少し雲がかった、それでもまぶしいほどに晴れた空。

 

 

【一刀】「・・・いいかげんに・・しないと・・・・な。」

そんなことをつぶやいた。

いい加減にしないと。

いつまでも過去に向いているわけにもいかない。自分でもわかっている。

けど、もうすこしだけ・・・

そう言葉をつなぎ、練習に戻る。

踵を返し、道場の入り口へ向かう。

 

しかし、そこで足が止まってしまった。

 

 

人がいた。

身長は俺より少し低いくらいか。

金髪で白地の変わった服をきていた。

後姿だったため、それ以外はなんともいえない。

ただ・・・どこか懐かしい気がした。

 

 

【??】「北郷・・・貴様、ここでなにをしている。」

【一刀】「なっ・・・」

何故。

そう思うほかなかった。

【一刀】「えっと・・・どこかで会ったことあったかな。だとしたら、ごめんなさい。」

その人の背格好から同じ年頃くらいだろうと予測する。そのためか無意識に敬語ともタメ口とも言えないような言葉遣いになる。

【??】「・・・・そうか、こちらではまだだったか。・・・ちっ」

その人は振り返りながら、何か不満そうにそう言い捨てた。

【一刀】「・・・・?」

意味がわからない。このひとは何を言っているんだ・・・。

【??】「ふん・・・・なんだそのふぬけた顔は。それほど外史での生活が楽しかったか。」

また、わからない。そもそも会話が成り立っていない。

【??】「以前はあれほどの覚悟を見せ、終端すら乗り越えた貴様が・・・」

【一刀】「もう少し、わかるように言ってくれないか?」

あまりわけのわからない事を続けられるのも、時間の無駄だとおもい、口をはさんだ。

【??】「・・・・・・いいだろう。俺とて、貴様の忌々しい顔をいつまでも見ていたくない。」

【一刀】「・・・・・・」

 

 

 

 

 

【??】「一度しか言わん。北郷、もう一度あの世界へ行け。」

【一刀】「・・・・・は?」

【??】「向こうへの鍵は俺が開けてやろう。今日の0時にもう一度ここへ来い。」

【一刀】「ま、まてまて!あの世界ってどういうことだ。・・・というか、なんで俺のこと知っている!?」

【??】「・・・・・貴様に振り回されるのは・・・これで2度目だ。」

そう言うと、その人は歩き出した。

【一刀】「お、おい!」

わけのわからない事だけ残して、逃がすわけにはいかない。

その人を止めようと腕をつかもうとした。・・・・・が

【??】「さわるな!」

触れようとした瞬間、突風のようなものが起こり、俺は身を守ろうと後ろにさがった。

突風がおさまったのを確認し、俺は守りの体勢をといた。

前を見ると、そこには何も無かった。

 

結局、わけがわからないままだった。

あいつは何が言いたかったのか。

そもそも、誰なんだ?

自分の頭の中で必死に記憶に検索をかけてみてもわからない。

なぜ俺の知らない人間が俺の名前を知っている。

ここがもし、華琳達のいた魏の町ならまだ理解できる。

だが、ここは俺の世界。俺の知名度なんて皆無に等しい。

もうひとつ、気になることがあった。

『あの世界』『外史』

明らかに日常では使うこと無い単語。

専門的な職業についていれば、あるいはありえるかもしれない。

しかし、俺は今ただ学生であり、そう言った単語はまず使わない。

使うとするなら、その意味はひとつしかない。

俺にとってここではない世界。

それは、あそこ以外ありえないのだから。

 

 

 

空の色が蒼からやがて朱へと変わり始める。

俺は寮へもどる途中だった。

学園から伸びる並木道を歩いていた。

葉擦れの音が心地よく響いている。

昼間はあれほど、おかしな出来事があったにもかかわらず、こうして落ち着いて帰路につけるのは

やはり、向こうでの非日常の連続の経験があってのことだろう。

目線を上へとあげる。

朱と蒼の狭間で紫色の空が混じりあっていた。

空を見ているうちに、いつの間にか足が止まっていたことに気づいた。

ずいぶん、足が重くなったように感じる。

ーもう一度あの世界へ行け。-

やはりどこかで気になっていた自分がいた。

【一刀】「何者・・・なんだ・・・」

確証はないが、やはりあいつの言っていた世界と俺の求める世界は同じな気がした。

都合のいい解釈だとは自分でも考えた。

いきなり知らない人間が、違う世界へ連れて行ってやると言っていたのだ。

普通に考えて、胡散臭いことこの上ない。

だが・・・

それでも

そんなものにすがってでも

今の俺は求めていた。

そう、0時と言っていた。

ならば、そのときにでももう一度聞き、判断すればいい。

そう言い聞かせ、寮へと戻る。

 

最近は何も考えようとせず、早めに寝ていたせいか

夜の時間のたち方がずいぶん遅く感じた。

自炊の夕食をすませ、時間を待つ。

時計は11時を指していた。

【一刀】「少しはやいけど、いくか。」

立ち上がり、部屋をでた。

寮の階段を降りている途中で、自分が制服のままだったことに気づいた。

【一刀】「・・・ちょっと期待しすぎだろう。」

自嘲ぎみにつぶやいた。

やはりあそこに帰る時は制服のほうがいい。

そうして、学園へと続く道を歩く。

 

 

 

月の明るい夜だった。

こんな時間に学園にくるなんて、肝試し以外なにが思いつくか。

当然のごとく校門はしまっている。

・・・・普段ならば。

【一刀】「・・・・フランチェスカのセキュリティって大丈夫なのか。」

今日・・・今に限って門は堂々と開門していた。

何故かは、あまり考えないようにしよう。

学園に入り、昼間の場所へ向かう。

離れになっている道場の入り口が見えてきたところで、昼間の男が見えた。

だが、今度は彼以外にももう一人、黒髪の男がいた。

【???】「どうやら、貴方の予想通りだったようですよ。」

黒髪の男の声が聞こえた。

【??】「・・・」

金髪の男はやはりどこか不満そうにしていた。

【一刀】「・・・説明はしてもらえるのかな。」

【???】「・・・いえ、今の貴方に話したところでおそらく理解にすら至らないでしょう。」

【一刀】「どういう意味だ?」

【??】「言ったはずだ。これで2度目だと。前回貴様が理解し、行動にうつるまでどれほどの時間がかかったと思う」

【一刀】「・・・ならひとつだけ。聞いてもいいか?」

【???】「答えるかは、こちらが判断しますが。どうぞ」

【一刀】「あんた達が言っている『あの世界』ってのは・・・・その、俺が以前いた・・・」

【???】「ええ。あの三国志を基盤とした世界。我々は『外史』と呼んでいますが。貴方にはもう一度あの世界へ行っていただきたい。」

安心、といっていいのだろうか。だが、どこかほっとした気持ちになった。

【一刀】「でも、なんで俺があそこにいた事を知っている?俺は誰かに話した覚えはない。」

【???】「それも・・・今は説明したところで理解は不可能でしょう。ただ我々はあそこの関係者であることは事実です。」

理解できないだろう。そう言われては何も言えない。

だが、俺にはそう悩ましいことでもなかった。

はっきりしたのだ。

もう一度、会えると。

この2人が誰なのか、気になるが、その答えもいつかわかる。そんな気がした。

今はただ・・・・

 

帰りたかった。

 

【一刀】「・・・わかった。今はいい。あっちに関わりがあるっていうんなら、そのうち向こうでも会うんだろう。その時でもいいさ。」

【???】「ええ。では、そろそろはじめましょうか。」

【??】「いいだろう。」

そう言うと、2人は鏡をとりだした。

鏡を地面に置き、月の明かりにさらした。

ビシッ

鏡に突然ひびがはいった。

それとほぼ同時にひびの入った境界から光があふれ出す。

【一刀】「な・・・っ!!」

それは、地面から太陽が生まれたような光。

とても直視していられるものではなく、俺は目を閉じた。

真っ白だった視界は、やがて漆黒へとかわり、同時に俺の意識まで吸い込んでいく。

遠のいていく意識の中で、ただひとつ『終端』。

そう耳に残った。


 
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