No.736336

ごちゆり3 千夜vシャロ

初音軍さん

ブログで思いついたのを書いてみたもの。原作を読んでいると千夜はココアにもシャロにも矢印がはっきりとついているように見えます。行動の遅い早い細かさや鈍感さによって未来が変わってしまいそうなほど。そういうのがこのSSに表現できていればいいなと思いますw

2014-11-10 15:07:18 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:803   閲覧ユーザー数:803

【千夜】

 

―こんなにドキドキするのはいつぶりかしら…―

 

 ココアちゃんがチノちゃんの家でお世話になって、私たちと出会ってから

周りの人たちの雰囲気が少し変わっていった気がする。

前も元気で明るい空気もココアちゃんを通じて出会いが増えて仲良くなって。

明るくも鈍くなっていた動きがよくなって私は心から笑えるようになっていた。

 

 こういう気持ちにさせてくれるのはシャロちゃんだけだったんだけど

今では親友と呼べる子たちとも笑い合って話せるようになった。

 

 最近では特にココアちゃんは私の中で特別な存在になりつつあった。

そんな気持ちこそばゆい中、ちょっと不満そうにシャロちゃんが

私の顔を覗き込んでいた。

 

「な、なに?」

「何? じゃないわよ。今勉強教えてあげてるのに上の空で」

 

「あぁ、ごめんなさい」

「はぁ・・・またココアのこと考えてたでしょ」

 

「どうしてわかるの・・・シャロちゃん!?」

 

 もしかして私に対するやきもち、やきもちなのね!と少し興奮気味に

考えていると至って普通の反応が返ってきた。

 

「だって何かあるとココアの話題じゃない。もう慣れたわ」

 

 すぐ呆れたような顔をして勉強の続きを再開した。

長いこと一緒にいたけれど少しも私のこと想ってくれてないのかしら。

そう思うと少し寂しく感じられた。

 

 このまま報われない気持ちを抱えているならいっそ。

私の中で浮かんだのはココアちゃんの私に向けた笑顔だった。

 

 彼女はいろんな人に平等に優しくしてくれて本音でぶつかってきて。

それが周りを冷や冷やさせたりもするけどとても和やかな子で

ついつい惹かれてしまう空気を持っていた。

 

 ほかの子に限らず私もつい目で追っていたりなるべく一緒にいたりする。

傍にいると心安らぐような気持ちにさせてくれるから。

怖いことにあれほどシャロちゃんしかいないと思い込んでいたことが

一気にひっくり返されるくらい私の中で変化が出ていた。

 

 シャロちゃんにとってのリゼちゃんのようなものだろうか。

まさか自分にもこういうことが訪れるとは思いもしなかった。

 

「ふぅ・・・」

 

 シャロちゃんの部屋で二人で勉強会。黙々と勉強を続けていたせいか

少し肩に凝りを感じて休憩を取った。

 

「お茶淹れるわね」

「あ、私も一緒にいくわ」

 

 シャロちゃんが立ち上がって台所に向かうと私も一緒になって行った。

とはいっても家自体が狭いから歩いてすぐそこにあるから別に一緒に

行かなくてもいいんだろうけど、私にとっては大事なことだから。

 

 あれだけ一途に想っていたのがなくなりそうで怖かったから。

 

「千夜」

「千夜!」

 

 シャロちゃんは大きい声で私の名前を呼んでいたことにしばらく後に気づく。

そこには強気だった表情から少し不安気な顔に変っていて

私にしがみついてきた。

 

「シャロちゃん・・・?」

「怖いのよ・・・千夜がココアに取られそうになって」

 

 まるで私の気持ちがそのままシャロちゃんに伝わってように同じ言葉が

可愛らしい唇から出てきてドキッとした。

 

 もしかして・・・と思ったけれど、それからは私の考えていたのとは

違う言葉が飛び出してくる。

 

「千夜がココアのこと好きなのはわかるけど、私は昔から千夜の

ことが好きだったのよ!」

「・・・!」

 

 苦しそうに吐き出されるその言葉は何年も押し込んできて

その反動で言ったような重くて力強い言葉だった。

 

 私と・・・同じ気持ちだったのね。

 

 小さい頃から一緒にいるからって言わなくても通じることが

あると勝手に思い込んでいた。

 

 そうだ、ココアちゃんの言葉が私に響いたのも隠すこともなく

思ったことを素直にすぐに感情を出すところに魅力を感じていたんだ。

 

 それをあんなに内気なシャロちゃんが私にしがみつきながら

言うほどだなんて・・・。私の中でシャロちゃんの存在が昔みたいに

いいえ、昔以上に愛おしい気持ちが膨らんできた。

 

「私もよ」

「え・・・?」

 

「私も小さい時からシャロちゃんのこと特別だって思っていたわ。

最初は妹みたいだった気持ちも大きくなるにつれ特別に。

そう今のシャロちゃんみたいに」

「千夜・・・」

 

「長いこと一緒にいて行動して何でもお互いのことがわかってるって

思っていたけれど、違うわね」

 

 怯えるように私の顔を見てシャロちゃんの顔色が変わった。

私は頬を赤らめてこれ以上ないくらい愛らしいと思うシャロちゃんを

見ながら微笑んでいたから。

 

「私も大好きよ、シャロちゃん」

 

**

 

「あれ、でもシャロちゃんてリゼちゃんのこと好きだったんじゃない?」

「あぁ、あれは・・・憧れっていうかほらアイドルとかに対して思う

感情よ!言わせないでよ!」

 

「うふふ、そうだったのね」

 

 最初に感じていた私の不安は今のシャロちゃんに移ったかのように

そのまんまで私は思わず声に出して笑っていた。

それを見てシャロちゃんは怪訝な表情で私を見てきて、

私もココアちゃんを見習って思ったことをシャロちゃんにそのまま

伝えた。

 

 照れくさくてちょっと気恥ずかしいけれど以前の私たちよりも

ずっとずっと、関係を深くできた気がした。

 

 関係の距離感も実際の距離も大きく縮んで、ね。

 

「今日はシャロちゃんと一緒に寝ちゃおうかしら~」

「なんでわざわざこんな狭い場所で」

 

「だめ?」

「い、良いに決まってるでしょ!?」

 

「ふふっ」

 

 一度離れそうになった気持ちは離れかけていた一つの心と一緒にくっついて

強く結びついてもう離れない。

 そこまで安定して初めて私の心は一か所に落ち着くことができた。

気持ちを伝えられるようになった私はもう迷わない。

 

 シャロちゃんが私のことを嫌になるまでずっと一緒にいるから。

 

 その日の夜。一緒にベッドに入ってシャロちゃんの温もりと匂いが大好きで

ちょっとくすぐったくてとても幸せな一日だった。

 

 もう少しで眠りそうってときにシャロちゃんの寝顔を見ながら

握った手に少し力を込めて私は願った。

 

 シャロちゃん、ずっと一緒にいようね・・・って。

 

お終い


 
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