No.733553

がちゆり-古谷楓誕生日SS-2014-

初音軍さん

イラストと違い中身はかえはなです。
ちょっとした恋話にするにはちょっと年齢あげる必要が
あって一人称を名前にするのが地味に大変でしたw
ちょっとでも楽しんでもらえれば幸いです♪

2014-10-30 00:15:33 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:860   閲覧ユーザー数:860

がちゆり 古谷楓 誕生日SS 2014

 

【楓】

 小学生になってから小さい時と違って人との付き合いが多くなってきた頃。

前ほど花子お姉ちゃんと一緒に遊ぶことはなかった。

 

 それでも他の人たちが見たら十分なほど楓と花子お姉ちゃんの距離感はすごい

近いという。ではこれまでもっと近くに感じたのは何だったのだろう。

 

 友達とか姉妹みたいな感じとは今思うと少し違っているように思えた。

何でそういうことを思いついたかというと、友達と別れて家に戻る途中。

ふと公園に寄ってみようと思ってたどり着いた時のことだった。

 

「花子お姉ちゃん?」

「…」

 

 後ろ姿がやけに寂しそうなお姉ちゃんを見て声をかけるが返事が戻ってこない。

心配になった楓は花子お姉ちゃんの傍に近づいて俯いていた顔を覗き込んだ。

 

「花子お姉ちゃん!?」

 

 びっくりした楓が見たものは。普段見たことのない…いや、おそらく一度も

見たことのない花子お姉ちゃんの泣き顔。声を押し殺すように泣いていたのだった。

 

「楓…」

「どうしたの…?」

 

 まだ小学生の楓には中学生のことは難しくてわからないかもしれないけれど

花子お姉ちゃんのためなら何かしてあげたいと思って強く願い出た。

 

「花子お姉ちゃん。とりあえずそこにあるベンチに座ろ?」

「うん…」

 

 近くのベンチに指を差してお姉ちゃんを連れていくと、ポケットに財布入って

いたのを思い出してベンチの近くに自動販売機に向かって花子お姉ちゃんが好きそうな

ジュースを買って戻った。

 

「はい、これ」

「ありがとう、楓」

 

 戻った頃には少し収まったのかほんのちょっとだけ表情を緩ませていた。

だけどそれは楓に心配させないように作った表情のようにも見える。

 

「何かあったの?」

「うぅ…」

 

 楓が聞くと最初はなんでもないと言おうとして途中で悩んだ顔をして再び少しだけ

傾けて考えるように俯いた。そして再び顔を上げて楓の方を向いた時、花子お姉ちゃんの

表情を見てドキッとした。

 

 悲しがっている時に不謹慎かもしれないけれど赤らめて涙を溜めてるその顔は

とても綺麗で見惚れてしまった。

 

「ん、ちょっと櫻子とね…」

「ケンカ?」

 

「うん、今回ちょっと根深くて悩んでるし…」

 

 原因はくだらないんだけどねって苦笑しながら話してくれる。

本当に内容はいつも通りで最初見たほど深刻に考えるようなことではないように感じる。

楓が覚えた違和感に気づいた花子お姉ちゃんは少し明るい表情を浮かべて笑った。

 

「あぁ、櫻子に対しての悩みなんてどうでもいいし」

「えぇっ、どうでもよくはないよ!?」

 

 どう返せばいいのかわからずに勢い良く言葉を返すと花子お姉ちゃんは楓の頭を

撫でながら愛おしそうに見つめていた。

 

「楓の顔を見てたらどうでもよくなったし」

「あんまりよくないけど…花子お姉ちゃんが元気になれば」

 

「まぁ、本当は別に悩んでることもあるけど…」

「それを先に言ってね!?」

 

「あはは、必死になってる楓可愛いし」

「んもう、誤魔化さないでよ。花子お姉ちゃんのこと心配なんだから…!」

 

「ごめんごめん」

 

 楓が真剣に見つめると花子お姉ちゃんは苦笑しながら頬を軽く掻いて言い方を

考えながら空を眺めていた。

 

「学校で好きな人の話が出てね。花子は尊敬の意味を込めて撫子お姉ちゃんの名前を

出したんだけど、そういうのじゃなくて恋愛的な意味で。と友達に訂正されたんだし」

 

「う、うん…」

 

 一気に大人の話っぽくなって子供の楓は表情を変えないようにしながらも

脳内では、わたわたとうろたえていた。

 

「それで改めて考えると浮かんだのが…その…楓しかいなくて…」

「え!?」

 

 ということはその、楓が花子お姉ちゃんにそう思われてるってこと!?

最初は冗談かと思っていたら花子お姉ちゃんの楓を見る目が本気にしか見えなかった。

懸命に楓に伝えた花子お姉ちゃんの表情は熱を帯びたように赤らめていて

緊張に耐えられなかったのか、徐々に体をすくめさせて手や腕で顔を隠していく。

 

 楓は花子お姉ちゃんに対してそんな風に考えたことはなかった…けど。

改めて言われると嫌な気分はしないし、どこか気持ちのどこかに引っかかってた部分が

取れたような気がした。そう認識した途端、楓の胸が高鳴って顔が熱くなっていく。

 

「ご、ごめん楓。聞かなかったことにしてほしいし」

「そ、そんなことできないよ…!」

 

 楓と視線を合わせるのも辛そうにして立ち上がる花子お姉ちゃんの腕を楓は

思い切り掴んで離さなかった。

 

「楓…?」

「楓もよくわからないけど、多分花子お姉ちゃんと同じ気持ちだよ。

だってこんなにもドキドキしてるんだから…!」

 

 掴んだまま楓は花子お姉ちゃんの手を自分の胸元に押し付けながら言った。

花子お姉ちゃんの手の柔らかさや温もりが伝わってきて余計に音が大きくなる。

 

「楓…ドキドキしてるし。それに…けっこう成長してるし」

「え、注目するべきはそこ!?」

 

「ふふっ、冗談。冗談だし…。嬉しい…とても」

 

 花子お姉ちゃんの表情から翳りが少し減った気がした。泣きながら笑って

それから…楓を抱きしめてくれて頬を摺り寄せてきた。

 

 その時にお姉ちゃんからいい匂いがして胸がキュッとして

楓も花子お姉ちゃんの背中に手を回した。

 

 その話をした友達は小学生の頃から一緒で腐れ縁だと言っていたけれど

その人も花子お姉ちゃんのことが好きだったのかもしれない。

 

 相手がいないか不安で仕方なくてちょっと意地悪しちゃっただけかもしれない。

だけど言葉の受け取り方が違ってちょっとしたすれ違いができちゃったのかな…。

 

「楓はやっぱり天使みたいだし…」

「え?」

 

「お姉ちゃんたちがずっと前に言っていたことを思い出してね…。

うん、楓と一緒にいるとすごく落ち着いて悩んでいたことが嘘のように晴れたし」

 

 言葉の通りに抱きしめていた手を放して再び楓と視線を合わせると

さっきまでの暗い部分はなくなっていて嬉しそうな笑みを浮かべていた。

楓が一番見たかった花子お姉ちゃんの顔に戻っていた。

 

「ありがとう、楓」

「うん」

 

「ほんとに花子でいいの?」

「いいよ」

 

 改めて確認しあった二人は顔を見合わせると思わず笑いが込みあがってきて

二人で大きく笑っていた。こんなに気持ちよく笑えたのは久しぶりだった。

 

「これでみさきちに見返してやれるし!」

 

 意気込みを強く持って花子お姉ちゃんは拳を握りながら言っていた。

 

 

 それから後日…、再び花子お姉ちゃんは楓のところに相談しに来たのだった。

 

 楓が想像していたのが当たったのか、今度は友達との関係が少しぎくしゃく

してしまったらしい…。

 

 花子お姉ちゃん、頭はいいけど自分のことになると鈍いんだなって思ってしまう。

でもそこが可愛いところだと思うけど。

 年上の人に対して失礼だけど本当に可愛く思えたのだった。

 

「楓、聞いてる!?」

「うん、聞いてるよ」

 

 あれから不安になることがあると花子お姉ちゃんは楓の手を握ることが多くなって

相談に来てる今もしっかりと手を握っている。

 花子お姉ちゃんから伝わる温もりがとても心地良くて楓はずっとその手を放したくない

と思いながら話を聞いていた。これからもずっと傍にいたいと思った。

 

お終い


 
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