No.731974 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~soranoさん 2014-10-23 00:09:32 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1767 閲覧ユーザー数:1562 |
~ケルディック~
「ケルディック……特別実習で来て以来か……メンフィル帝国領になった話は聞いているけど……」
「隣のエレボニア帝国領が内戦の真っ只中ってのもあって、徘徊している兵士達の数も多いな……ま、これなら”貴族連合”のスパイとかも動きにくいだろ。」
「やれやれ、それで気を抜いてちゃ世話ないわね。」
トヴァルの言葉を聞いたセリーヌは呆れた。
「お兄様、ここにツーヤお姉様がいるのですのよね?」
「ああ、臨時領主を務めているプリネさんの護衛だから、いるはずなんだが……―――あ。」
そしてセレーネに尋ねられたリィンが答えたその時、ある建物―――ギルドから出てきたツーヤを見て呆けた。
「お姉様ッ!」
ツーヤの無事な姿を見たセレーネは嬉しそうな表情でツーヤに駆け寄って抱き付き
「セ、セレーネ!?無事である事は知っていたけど、こうして直に会えて本当によかった…………」
「わたくしもお姉様の無事な姿をこの目で見れて、本当によかったです……!」
セレーネに抱きつかれたツーヤは驚いた後安堵の表情で自分を強く抱きしめているセレーネの頭を優しく撫でた。
「久しぶり、ツーヤさん。―――いえ、ルクセンベール卿とお呼びした方がいいでしょうか?」
「リィンさん。フフ、あたしはまだ士官学院を退学していませんから、以前と同じ呼び方で構いませんよ。それで、貴方は遊撃士の……確かトヴァルさん、でしたよね?」
リィンに話しかけられたツーヤは苦笑した後見覚えのない人物―――トヴァルに視線を向け
「ああ、こうして直に会うのは”カレイジャス”以来だな。リィンの母親――――ルシア夫人に”依頼”されて、リィンに協力している。それで早速で悪いんだが、情報交換を始めねぇか?」
「”依頼”でリィンさんに……何やら色々と事情がありそうですね。―――わかりました。落ち着いて話せる場所―――領主の館に案内するのであたしについて来て下さい。」
トヴァルの話を聞いたツーヤは目を丸くした後、リィン達を促し、ツーヤの先導によってリィン達は領主の館に案内されると驚くべき光景―――多くの市民達が領主の館の門の前で列を作って並んでいる姿をその目にした。
「これは一体……」
「―――ケルディックの商人や市民達です。恐らく明日から始まるメンフィル帝国領内での”検問”に必要な”通行証”を今の内に貰っておく為に並んでいるんだと思います。」
領主の館の前で並んでいる人々に驚いているリィン達にツーヤは静かな表情で答え
「へっ!?」
「”通行証”、ですか?」
「おいおい……何でまたそんな事を始めたんだ?まさか内戦が原因か?」
ツーヤの説明を聞いたリィンは驚き、セレーネは戸惑い、トヴァルは真剣な表情で尋ねた。
「……その件については後で話します。―――お疲れ様です。後ろの方達はあたしの客人と身内ですので、通して大丈夫です。」
トヴァルの疑問に静かな表情で答えたツーヤは門番の兵士達に話しかけ
「ハッ!」
門番達は敬礼をした後、門を開き、リィン達は館内に入り、ツーヤの先導によって客室の一室に案内された。
~領主の館~
「立派なお部屋ですわね……」
「領主の館を見た時から思ったけど、一体いつ頃できたんだ……?」
「館自体が完成したのはケルディックがメンフィル領になって、領邦軍の詰所だった建物を急ピッチで大幅に改装して大体1ヵ月くらいでできたそうだぜ。」
客室内で戸惑っているセレーネとリィンにトヴァルは説明し
「フフ、さすがは遊撃士ですね。さて、それではそろそろ本題に入ろうと思うのですが……―――何故ユミルにいるはずのリィンさん達がケルディックに?」
ツーヤは遊撃士の持つ情報量に感心した後真剣な表情になって、リィン達に話を促した。
「実は―――――」
そしてリィン達はツーヤと情報交換を始めた。
「………そうですか。あたし達もリィンさん達に合流して協力したい所なのですが……生憎ケルディックの防衛の為に、現在ケルディックから長期間離れられない状況ですのでリィンさん達と合流することはできません。あたし達と違って自由な立場で、今は本国にいるエヴリーヌさんに関しても”有事”の際にすぐに動ける即戦力として必要な為、リィンさん達の手助けをすることはできません。―――すみません。」
「そうか…………」
「お姉様……」
「Ⅶ組の中でもダントツの実力を持つアンタたちが合流できないのは痛いけど、そういう事情があるのなら仕方ないわね。せめて”執行者”の中でもトップクラスの実力を持つ”剣帝”が加わってくれたら、今後戦う”敵”の事を考えると助かるんだけどね……」
「……そうなったのも、やっぱり内戦の影響か?」
直接協力できない話をツーヤの口から聞いたリィンは残念そうな表情をし、セレーネは辛そうな表情でツーヤを見つめ、セリーヌは溜息を吐き、トヴァルは複雑そうな表情で尋ねた。
「ええ。内戦の影響のないメンフィル帝国領なら安全と思ったエレボニア帝国の難民達がメンフィル帝国領に避難してきている状況で、このケルディックにも多くの難民達がエレボニア帝国領から避難してきています。その影響で様々な問題が起こっていて……その解決の為の政策を練る為や難民が増えた事によって増えた膨大な数の様々な書類関係の処理をする為に臨時領主を務めているマスター―――プリネさんやレンさん達は多忙の身なんです。」
「へ?」
「難民の方達がメンフィル帝国領に避難してきた事によって起こる”問題”、ですか?」
「……ま、確かに色々あるだろうな。街の住民との諍いとか色々な問題があるだろうが……一番の問題は住む場所だろ。」
「後は着の身着のまま逃げて来ている彼らが生活費を稼ぐ方法や食料とかをどうやって手に入れるとかでしょうね。」
ツーヤの話の意味がわからない二人にトヴァルとセリーヌは説明した。
「あ…………」
「住居や食料に関してはメンフィル帝国が野営に必要なキャンプ用品、防寒具や毛布等、更には食料も無料で提供し、現在は難民の方達用の緊急住居も建造している最中でして……街のすぐ傍には難民達の集落ができています。」
「集落までできているという事はそれなりの人数がいるという事ですわよね?お姉様、一体どれほどの人数がこのケルディックに避難してきているのですか?」
「…………内戦が始まってから今日に到るまで、約1000人。」
「なっ!?せ、1000人!?」
「相当な数の難民達が避難してきているな……約500人いるレグラムの総人口の2倍だぞ。」
セレーネの質問に答えたツーヤの答えにリィンは驚き、トヴァルは真剣な表情で呟いた。
「内戦が始まった当初はそれほどでもなかったのですが……日数が経つ事に10人、20人と段々と増えて行き、今に到るのです。ちなみにエレボニア帝国西部ではここより内戦が更に激化しているようでして。このケルディックと同じメンフィル帝国領のセントアークに避難して来た難民達の数は現時点でおよそ5000人だと聞いています。」
「ご、5000人!?」
「ケルディックの約5倍ですわね……」
「ああ……それにしてもそれほどの人数をメンフィル帝国もよく受け入れてるな?」
「そうね。普通ならそんな大人数が避難してきたら、治安維持の為に自国領から追い出したりしてもおかしくないわよ?」
「まあ、メンフィル帝国は国は違えど”民”は守る方針ですし、幸いメンフィル帝国は広大な領土を持っている影響でお金、物資共に困りませんから。現在は遊撃士協会とも連携を取って、メンフィル帝国領土内で問題が起こった際、できるだけ早く解決できるようにしているんです。後はリベール王国にもメンフィル帝国領に避難してくる難民達の一部の受け入れを要請し、リベール王国からも良い返事が貰えていますので、近い内難民達の一部にはリベール王国に向かってもらう予定もあります。」
トヴァルとセリーヌの問いかけに頷いたツーヤは説明を続けた。
「そういやさっき、ギルドから出てきたが、まさか難民や検問の件とかが関係しているのか?」
「ええ。――――昨日起こったユミルの件のように貴族連合が雇った猟兵達や領邦軍に襲撃されない為に遊撃士の方達にも見回りの強化の依頼と、今後こちらが手が回らない時に起こる民達の問題解決の協力の依頼、そして急遽決まった検問についての説明の為にギルドに行っていたんです。」
「あ…………」
「………………」
「自国領が襲撃されたから、貴族連合に対する警戒心が一気に跳ね上がってるようね。」
「なるほどな……街を徘徊している兵士達の数が多いのはそういう事だったのか。そういや、”通行証”を発行している話だったが……まさかそれもユミルの件が関係しているのか?」
ツーヤの話を聞いたセレーネは辛そうな表情で故郷(ユミル)で起こった出来事によって他のメンフィル帝国領に迷惑をかけていると思って複雑そうな表情で黙り込んでいるリィンに視線を向け、セリーヌは静かな表情で呟き、トヴァルは重々しい様子を纏って呟いた後ツーヤに尋ねた。
「はい。元々エレボニア帝国領に隣接しているメンフィル帝国領での検問の件は内戦が始まって以降、本国でも議題に上がっていたそうなのですが……ユミル襲撃の報を聞いたシルヴァン陛下が即座に決定したそうです。民達には不便や迷惑をかける為、できればその手段は取りたくなかったとプリネさんや義母さんも肩を落としていました…………―――ちなみにプリネさん達が忙しいのは急遽決まった検問の為に必要な通行証の発行が理由でもあります。」
「………………」
「お姉様…………」
「ま、実際自国領が貴族連合に襲撃されちまったんだから、市民達の身の安全の為の予防策として当然の措置だな。ちなみにだが、その通行証とやらは遊撃士も持ってなきゃダメなのか?」
疲れた表情で答えるツーヤの様子を見たリィンは複雑そうな表情で黙り込み、セレーネは辛そうな表情でツーヤを見つめ、トヴァルは静かな表情で頷いた後尋ねた。
「いえ、遊撃士の方達については遊撃士協会に所属している証である”支える籠手”の紋章と本人である事を証明する遊撃士手帳を見せれば、通行証がなくても通すようにと兵達に通達してあります。」
「へえ?さっきから話を聞いていて感じたけど、メンフィルは遊撃士協会に対して随分と協力的なのね?」
「ああ……エレボニア帝国とは大違いだぜ。」
セリーヌの疑問を聞いたトヴァルは疲れた表情で頷き
「それと今朝マキアスさん達に通信で事情を説明した後、プリネさんが本来なら色々と必要な手続きを全て省略して発行した通行証をマキアスさん達に渡しておきました。」
「!!マキアス達だって!?マキアス達は今どこにいるんだ!?」
ツーヤの口から仲間達の話が出るとリィンは血相を変えて立ち上がって尋ねた。
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第317話