第44話 開戦
アスナSide
現在は午前11時25分、あと35分で戦いが幕を開けるんだよね…。
この
行く末そのものは彼がどうにかすると言っているけれど、だからと言って手を抜くことはしない。
キリトくんは全力で来る、それに対してわたし達も全力で迎え撃つ、それだけ。
「ママ、準備はできましたか?」
「大体の準備は終わらせたよ。あとは
『クロッシングライト』、SAO時代に使っていた愛剣の『ランベントライト』が生まれ変わった姿でいまのわたしの愛剣の1つ。
この戦いは大切なものだから、本気で挑まないといけない、だからこそわたしもこの子を使うことを決めた。
「さて、そろそろみんなのところに…あれ、アイテム配信のお知らせ?」
「どんなものでしょうか?」
どうやらクエストアイテムらしくて、ウインドウを開いてアイテムを押すと自動的にストレージへ入った。
そこから送られてきたアイテム『明光の首飾り』を選択すると説明が出てきたのでそれを読む。
『グランド・クエスト[神々の黄昏]中の専用アイテム。
飛行不可能な現在の状況において、このアイテムを装備することで飛行可能な状態になる。
この装備は破壊されることがない』
なるほど、これを装備すれば飛行可能になるのね。
その代わり、これを装備している間は他の装飾アイテムは外さなければならないのね。
「飛行可能になる装飾アイテムでも、他の装飾で強化を図り、
または最初から飛行を想定していない作戦の場合は諸刃の剣に成りかねない」
「使い所を決めないといけませんが、ママ達なら大丈夫な気もします」
それでもわたしは最初から使うのは控えておこう。使うとすれば、キリトくんかボスが相手の時ね。
首飾りはストレージに収めたまま、わたしはソファから立ち上がる。そろそろ、行かなくちゃね。
「よし……行こう、ユイちゃん!」
「はい、ママ!」
イグシティの方の自宅から出て、わたし達は中央広場にある作戦本部に向かった。
中央広場に来てみると仮設のテントが出来ていて、
サラマンダーの将軍を務めるユージーン将軍や何度も会ったことのあるカゲムネさんが居て、他にも各種族の幹部の人が来ている。
そこには現在シルフ領の主都スイルベーンの主館でスタッフを務めているレコン君の姿もある、シルフから派遣されたんだね。
「ユージーン将軍、お疲れさまです」
「ああ、キミか。いや、大したことではないさ。
いまのところ変化はないが、油断大敵という感じだな。配置に関してはこれを見てくれ」
「ありがとうございます」
将軍が示したテーブルの上の地図を見て現在の各地での配置を確認する。
まず、主な防衛拠点である各種族の主都にはそれぞれ領主達が防衛部隊を率いて拠点防衛を行う。
さらに各領地内の街などにも部隊を配置し、迎撃を行う態勢になる。
さらにアースガルズの各街や宮殿、ヨツンヘイムの街であるミズガルズ、
アインクラッドの始まりの街や各階層の主要都市にもそれぞれのギルドやプレイヤーが配置している。
そして、この最終防衛目標である世界樹には各種族から選出された幹部や精鋭達、
大規模ギルドに加えてレネゲイドのソロプレイヤーなども多く参戦し、防衛にあたることになっている。
勿論、わたし達も迎撃に出るけれど、基本的にはこの本陣から転移結晶で移動する形になる。
防衛戦だから基本の対応はこんな感じになるかな。
転移結晶や回廊結晶の使用そのものは可能だけど、敵陣地への転移は不可能になっているらしい。
現にオーディン側のわたし達はスプリガン領地への転移が不可能になっているから。
結晶と飛行装飾が重要になってきそうだよね。
敵モンスターに関しては各自で対応だけど、ボスはこちら側のNPCやレイドパーティーによる連携での対処。
それにキリトくんがどんな戦略をしてくるかも未知数、常時警戒態勢ね…。
「確認しました。それにしても、どのように侵攻してくるかが問題ですね…」
「そうだな。周囲にポップして襲ってくるのか、何処か出現地点が固定しているのか、
戦法を取ってくるのか、どれも解らない上に防衛戦な以上はどうしても後手に回る」
こればかりはどうしようもないことだけど、気を付けるしかないね。
「臨機応変に対処するしかないですね……っと、時間の方はどうですか?」
「現在午前11時55分、あと5分だな」
「では、そろそろ?」
「うむ、頼む」
時間も迫るところあと5分となり、わたしは作戦本部内の中央に立つ。
イメージするのはいつも隣に居てくれる愛しい人の姿、戦場での彼を想像して集中し、声に出す。
「作戦本部に通達します。ギルド『アウトロード』サブマスターのアスナです。
これより、一時的にですが私に指揮権が与えられます、どうかご容赦を」
作戦本部に居た他の種族のスタッフやギルドの人達が真剣な表情で聞いてくれている、これなら続けても大丈夫ね。
「連絡員は闇魔法の《月光鏡》を発動し、主要防衛拠点との通信を開始してください」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
各地との通信を担当する連絡班に指示を出し、同時に通信を可能にする魔法《月光鏡》を発動していく。
すると次々に鏡が展開されて扇状になり、通信状態になった。
「一時的に指揮権を与えられているアスナです。戦闘前の各地の状況報告をお願いします」
『シルフ領サクヤだ。いまのところ変化の報告はない、どうぞ』
『こちらケットシー領アリシャ。こっちも特に変化なしだヨ、ドウゾ~』
『プーカ領のフェイトです。現状に変化なし、どうぞ』
『ノーム領ガイアース。いまのところは問題ねぇぜ、どうぞ』
『サラマンダー領のモーティマーだ。こちらも同じく、変化なし……どうぞ』
『インプ領クラウド。問題無い……どうぞ』
みんな以外とノリが良いと言うかなんというか……ともかく、ここまでは大丈夫そうだね。
『こちらウンディーネ領のアリアです。スプリガン領との境に敵戦力を確認しています。
スプリガン領の者だけでなく、ソロプレイヤーや中小ギルドも居るかと…』
『レプラコーン領コテツじゃ、こっちでもスプリガン領との境界に戦力を確認しておる。
内容はウンディーネと同じじゃろうがな」
やっぱり、領地の境目に戦力を向けているよね。
勿論、こちらも平原とスプリガン領を繋ぐトンネルの前に戦力を集めているから早々に突破される可能性は高くはないはず。
それに午前11時になった時には両軍ともに相手拠点には入れなくなっているから、スパイはともかく侵入されていることはないはず。
ただ、ヨツンヘイムとアースガルズ、アインクラッドに関してはその限りじゃないから既に侵入されている可能性は大きい。
『アインクラッド第1層始まりの街、MTDのシンカーです。
こちらに変化はなし、街中での敵勢力は発見していませんが、やはりフィールドには潜伏しているようです』
シンカーさんの報告に揃ってやはりという表情になる。
いまに限ってフィールドは完全に中立地帯だからね、より一層の注意が必要。
『こちらアースガルズ主要都市ユーダリルより、アウトロードのティアです。
大きな収穫として報告があります。既にクエストNPCによる戦力が集結しています。それも結構な数ですよ』
ティアさんからの報告に作戦本部や各地で安堵の息が漏れる。
相手にボス達が居ることはみんな知っていることだったし、
かといってこっちに味方が居るのかは分からなかったもの、ホッとして当然だよね。
あとはヨツンヘイムだけだね…。
『はいはい、こちらヨツンヘイムのミズガルズより、同じくアウトロードのシャインだ。
良い報告と悪い報告、1つずつあるけどどっちから聞く?』
「良い報告からお願いします」
『あいよ、良い報告は
その言葉に再び安堵の息、丘の巨人族が味方ならヨツンヘイムでの霜の巨人族との戦闘は少しはマシになる。
問題はもう1つの悪い報告、よね…。
『んで、悪い報告……既に『スィアチの館』より第一級警戒対象を確認している。
対象の名は〈
今度の報告にはみんながざわめく。動揺するほどのことではないとはいえ、いきなりボスが出てきているなんて。
でも、これで場が引き締まったと言える、安堵で油断している状態は良くなかったからね。
「分かりました、みなさん報告をありがとうございます……ユイちゃん、時間は?」
「あと、30秒です!」
「各員に通達します! 全防衛側プレイヤーに一斉メッセージの送信、内容は『戦闘準備最終確認』、
またグランド・クエスト開始と同時に『戦闘開始』とも!」
「「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」」
ここに居る連絡員とスタッフと幹部、通信中の人員も含めて一斉に指示を出し、メッセージが送られた。
そしてカウントダウンが現れた。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0!
――ぶおぉ~~~~~~~~~~んっ!!!
「戦闘開始!」
「「「「「「「「「「おおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」
カウントが0になり鳴り響くヘイムダルの角笛『ギャラルホルン』、そして私の号令と共に全員の雄叫びが聞こえた。
この世界の運命を決める決戦が、開戦した。
アスナSide Out
No Side
『アルヴヘイム・オンライン』全土にヘイムダルの角笛である『ギャラルホルン』の音が響き渡った。
それは北欧神話において世界の終末を示す神々の黄昏、ラグナロクの始まりを告げる音色である。
巨人の血を引く悪神と名高いロキが自身の息子と巨人族を率いて、神々とその眷属達に戦いを挑み、世界は崩壊していく。
最終的には幾つかの世界が消え、幾つかの世界は残ることになるが、それはまた神話の中の話である。
そして、この『アルヴヘイム・オンライン』でも、世界の命運を掛けた戦いが始まった。
世界樹の上にある街『イグドラシル・シティ(通称:イグシティ)』、そこにはオーディン軍のプレイヤー作戦本部がある。
グランド・クエストとして[神々の黄昏]が開始された直後、
作戦本部にて一時的に指揮権を預かっているアスナや各種族の幹部の元に一斉に状況報告が行われていた。
「シルフ領より報告! 領地内にて姿を消していた狼型Mobがポップし始めたそうです!
また、予想通りアンデッドMobもポップしているそうです!」
「サラマンダー領より、同じ内容の報告が上がっています!」
闇魔法の《月光鏡》を使用している派遣スタッフ達が次々に報告を上げていく。
シルフやサラマンダーだけでなく、他の種族にアインクラッドやヨツンヘイムとアースガルズからも同様の報告がくる。
だが、ある2ヶ所だけは悲鳴に近い声で報告を上げる。
「ウンディーネ領より報告! 領地境界線の斥候部隊、並びに防衛部隊ほぼ壊滅! それにより、第一次防衛線突破されました!」
「同じくレプラコーン領! 領地境界線斥候部隊、防衛部隊壊滅! 第一次防衛線突破されました!」
「バカなっ、一体どうやって!?」
ウンディーネ領とレプラコーン領と《月光鏡》で通信している連絡員の報告にユージーン将軍が驚愕の声を上げる。
周囲にも動揺が広がる中、彼女だけは動揺することなく落ち着いたままに凛として問いかけた。
「落ち着いてください。まだ第一次防衛線を突破されただけです、防衛線は立て直すことが出来ます。
アリアさんとコテツさんに部隊の再編と第二次より前への防衛線の再構築を伝達してください。
それからアルン高原のスプリガン領と繋がる洞窟の防衛部隊には警戒を高めるようにと」
「「「は、はいっ!」」」
「他の地域にも警戒をより一層深めるように伝えてください。それと敵部隊の突破方法はなんですか?」
2種族の領地と洞窟前の防衛部隊の連絡員達はすぐさまアスナの指示に従い、他の者達も警告の伝達を行う。
そして防衛線を突破された部隊から報告が上がった。
「敵戦力は境界線ギリギリに大規模に部隊を展開していた模様。
それを大規模幻惑魔法によって姿を眩ませ、開戦と同時に同部隊が大規模魔法とエクストラアタックを敢行したとのこと。
それによって斥候部隊と第一次防衛線が壊滅して崩壊、既にそれぞれの最も近い街などが攻撃を受けているそうです」
「分かりました、報告ありがとうございます。引き続き各地からの報告を受けてください」
彼女の言葉を受けて連絡員達は通信を続行する。
アスナは一度息を吐くために僅かに後ろへ下がり、その間に各種族の幹部達が各地からくる報告を纏めていく。
「さすがの対応だ、感服したぞ」
「それほどでもありませんよ……それよりも、将軍は今回の策をどう思いますか?」
「グランディはアレで食わせ者だからいまの策を考えてもおかしくはないが、
ここまで真面目に取り組み実行するような奴ではないな…」
声を掛けるユージーンにアスナは謙遜するように対応したが、すぐさま開戦直後の襲撃について意見を求めた。
将軍はスプリガン領主のグランディではないかと考えるが、それも違うと考える。そこにアスナが言葉を紡いだ。
「ならやはり、キリトくんだと思います。いまの彼にとってこれはクエストというよりも戦争です。
本来の目的は別にありますが、彼は戦うことを楽しむ性がありますから。
勝つ為に全力で力を揮い、策を弄してくるはず……今回の策もキリトくんのものかと」
「キミが言うのならそうなのだろうな……しかし、ウチの兄も策士であると思っていたが、彼も相当な策士のようだな」
「SAOやALOを救った英雄、なんて周りは言いますけど…彼自身は物事の黒幕の方が向いていると言いますから」
2人によるキリトへの評価はなんというものか、とはいえキリト自身の自分への評価は高くなく、どこか過小評価するところがある。
そういう意味では周囲が多少過大評価しても問題は無いのだろう。
「ヨツンヘイムのアウトロード、シャインさんから直接報告が入っています」
「伺います」
そこで連絡員から声を掛けられ、アスナは直接対応することにし、
ヨツンヘイムで迎撃部隊に加わっているシャインからの報告を受けることにした。
『こちらシャイン、報告させてもらうぜ。
現在、出現した狼型Mob、アンデッドMob、
「というと?」
『アルン平原とヨツンヘイムを繋ぐ東西南北の四方の階段があるだろう?
奴ら、そっちに向けても侵攻してやがる。あの階段も防衛拠点になっているから、占領されれば上っていくぞ』
「増援は必要ですか? 必要ならば可能な限りは送れると思いますが…」
『あぁ、出来れば欲しいかな。まぁそこまで多くなくて大丈夫『敵襲だー!』ちっ、奇襲を掛けてきやがったか!』
「選出できる限りの増援を送ります、気を付けて」
『頼むわ、俺も前に出る!』
報告を受けていた中、シャインの居る場所から大声が響き渡った。
敵襲、しかも奇襲ということからプレイヤーだと理解できる。
それを悟ったアスナは増援を送ることを決め、シャインもまた迎撃に向かって行った。
「予備部隊を3つ、『回廊結晶』でヨツンヘイムへ送ります。地下の重要拠点であるミズガルズをまだ渡すわけにはいきません」
「同感だ。半日で決着がつくかもしれんが、一日二日掛かる可能性も少なくはない。早く終わるに越したことはないがな」
「そうですね。半日くらいなら、適度な休憩を取ればいいですし」
そこが今回の[神々の黄昏]の不明瞭な点であり、明確な終了時間や勝利・敗北の条件が指定されていない。
それゆえにその点を思案している各種族領主や大中小ギルドのリーダー達はキリトに期待しているらしい。
しかし、それはあくまでもクエストの終了のことであり、クエスト中の戦闘に関しては両者共に負けるつもりはないようだ。
「ウンディーネ領、並びにレプラコーン領は防衛線を立て直し次第反撃に移るようにと伝達してください。
ヨツンヘイムのミズガルズへの増援も到着次第、即座に迎撃へ」
「「はい!」」
初手は後手に周ることになったが、動揺すること無く冷静に指示を出していくアスナの姿に周囲も安心している。
ゆえに周囲は憂いなく、素早く行動に移していく。まだ開戦して十数分、戦いはまだまだこれからである…。
それから数十分が経過し、クエスト開始から55分が経過した。
当初、スプリガン領からの先制攻撃を受け、ウンディーネ領とレプラコーン領との境界線に引いていた第一次防衛線が突破され、
最も近い街が占領されることになったが、それ以降ロキ軍であるスプリガンとプレイヤー達の侵攻は止まり、
奪った街を防衛拠点として防戦している。
それに伴い、侵攻が止まったことでオーディン軍のウンディーネとレプラコーン、
プレイヤー達は新たな第一次防衛線を構築し、そこから小競り合いを繰り返している。
小競り合いとは言っても指揮系統に入っていないソロプレイヤー同士のモノがほとんどだ。
オーディン軍の者達に至っては出現するMobの方に手数を割くため、侵攻が止まっているのはありがたいというもの。
しかしそれはここまでの話しだった。
作戦本部でアスナが中心となって各所の報告が纏められていく中、
午後1時となってから1分が経過したのち、報告が上がり出した。
『こちらアリアです! ウンディーネ領近海に第一級警戒対象の〈
同時に多数の水棲モンスターと水陸モンスターも出現、加えてロキ軍であるスプリガン達も再侵攻を開始しました!
スプリガン達の侵攻は第一次防衛線で迎撃中ですが、もう一方は入り江にて防衛中です!
いまのところは問題ありませんが、突破されれば主都が危険です!』
「クラーケンが……解りました、すぐに増援部隊を送ります!」
『お願いします……ですが、仕留めても構いませんよね?』
「それはもう、最優先でお願いします」
『承りました。私も迎撃に向かいますので、ここは他の者に「ヨツンヘイムより緊急報告です!」?』
《月光鏡》に映るアリアが出陣するべくウンディーネ領の作戦支部から移動しようとした時、
アスナ達の作戦本部でヨツンヘイムとの連絡員が声を張り上げた。
その声の大きさに全員がただ事ではないと思い、《月光鏡》の先に居る者達も真剣な表情を浮かべる。
『迎撃部隊が行動中なので自分が報告します!
午後1時になったタイミングで『スィアチの館』前に新たなモンスターの出現を確認!
〈
〈
〈
〈
以上8体が出現し、スィアチと共にミズガルズと階段へ侵攻中です!
さらに、
名だたるボス達の名が告げられていき、その数に戦慄を覚えていく作戦本部の面々。
加えて多くの邪神型Mobの報告にはアスナでさえも戦慄せざるを得ないでいる。
だが、同時に彼女は悟った、いままではほんの序章であり、これからが本番であると。
――ウンディーネ領・近海
「進めぇっ進めぇっ、我が眷属達よぉっ! 神々に従う羽虫共を蹴散らし、叩き潰せぇっ!」
ウンディーネ領の近海に現れたクラーケンは入り江に近づいていた。
彼が率いる海のモンスター達は続々と侵攻し、入り江を突破してすぐ側にある街の攻略もプログラムされているのだろう。
入り江に布陣している部隊は既に迎撃を開始し、Mob達の侵攻を阻止しているがそれもクラーケンが到達するまでの時間の問題である。
だがそこに、空間を通ってある人物が現れた。
「状況はいまのところ拮抗しているようですね」
「アリア様!」
「相手が水棲のモンスターである以上、水魔法や氷魔法は通用しないでしょうけれど、
同じ水魔法でも捕縛魔法である《流水縛鎖》ならば動きを止められるはずです。
そこを直接攻撃や雷魔法で仕留めましょう。すぐに援軍も来るはずですから安心してください。
クラーケンを倒してしまうのもいいかもしれませんけど」
アリアの落ち着いた物腰はアスナとティアに似た物があるが、彼女のそれは2人以上とも言える。
アスナの凛とした落ち着きとティアの優しさのある落ち着きと違い、そこに馴染むかのような自然な落ち着きだからだ。
そんなアリアの姿があるからこそ、ウンディーネの部隊やオーディン軍についたプレイヤー達も安心していられるのだろう。
「では、これより指揮は私が取ります。力を存分に揮い、敵に思い知らせてあげましょう」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
――ヨツンヘイム・スィアチの館
「行くぞ、ハティ! 我らが敵を食い破るぞ!」
「勿論だ、スコル! 我らが前に敵などない!」
「「続け、誇り高きフェンリルの血筋を引く者達よ!」」
フェンリルに及ばずとも十分な巨体を誇るスコルとハティが雄叫びを上げ、狼型Mobを引き連れて北方の階段へと進撃した。
「スィアチよ、オレ達は南方へ行くぞ! ヘル様が戦場に立てぬ以上、オレが暴れる!」
「随分と息巻いているな……だが嫌いではない、我も同行しよう」
胸元を血に染めたヘルの黒き番犬は死者を引き連れて南方の階段へ向かい、スィアチも巨人達を連れてその後を追った。
「我は東方へ飛ぶ。最も離れているが飛べばすぐに済む」
「ならば我も続くぞ。翼は無くとも着くことなど容易い」
黒き竜のニーズヘッグは翼をはためかせて、黄金の竜であるファフニールはその巨体を揺らしながら東方の階段へ向かった。
「俺は西に行くか……付いて来い、シンモラ」
「妾は常に貴方と共にありますとも」
炎の巨人族の筆頭であるスルトは燃え盛る剣『炎剣レーヴァテイン』を手にしながら、
妻であるシンモラと共にムスペル達を引き連れて西方の階段へ進軍を始めた。
「よし、では
「ああ、構わない。さて、アイツらの反応が楽しみだ」
フェンリルは共に居る1人の漆黒の妖精に声を掛け、声を掛けられた者も笑みを浮かべて応えた。
直後、彼らは凄まじい速さで世界樹の根に侵攻を行った。
終末の戦争はまだ始まったばかりである…。
No Side Out
To be continued……
あとがき
というわけで始まりましたグランド・クエスト[神々の黄昏]です。
今回は前哨戦ということでみなさんのアバターの登場はまだですが、次回から少しずつ登場していくと思います。
まぁ最後の方で一気に豪華なボス達が出現するという凄まじい状況になりましたが、
ヨツンヘイムに配備されている戦力には『アウトロード』の男性陣がいますけどねw
とはいえ、ロキ軍の数が数だけにどうなるか、というところですけどね・・・(黒笑)
なんにせよ、開幕はこんな感じでした~w
そう言えばアニメの方がキャリバー編に入りましたが、トンキーの登場に自分感激しました! みなさんもきっとそのはず!
さらに言うなれば明日奈さんのサービスシーンでニヤニヤしてしまったというw
理由ですか? 勿論、和人とのお風呂での絡みを想像したからですがなにか? 他になにかありますかな?
ゴホン・・・さて、もう1つ自分的に嬉しかったのは今回のサブタイトルが「湖の女王」だったことですね。
自分の『聖魔の剣』の第6話も同じサブタイトルですからこれには嬉しくなりましたね、アニメ放送前なだけにw
それでは今回はこの辺で~・・・。
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第44話です。
ついに神々の黄昏が幕を開けます、神々と巨人達の戦争の開戦です。
どうぞ・・・。