No.72900

心・恋姫†無双 第四話

南風さん

今回も四話と五話の同時投稿です。この作品はオリジナル要素・オリジナルキャラが出てきます。苦手な方は申し訳ありません。

2009-05-10 19:30:34 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:13156   閲覧ユーザー数:10185

心・恋姫†無双 ~大陸動乱編~

第四話 ~理由~

 

二千の兵を引き連れ巴郡の城を後にして一日。

俺は、悲しいかな徐庶の乗る馬に同乗させてもらっている。

「馬の乗り方も帰ったら覚えましょう。」

「ありがとうございます、先生。」

俺よりも年下のしかも女の子の後ろに乗るという光景は男として耐え難い。

字も教えてもらって馬も教えてもらって・・・・・・何なんだろうな俺。

「どうやら目的地に着いたようです。」

 

悲しみにふけている俺の目の前に広がるもの、

 

それは、

 

地獄だった。

 

 

 

地獄、それは罪人が生きていた時に犯した罪の罰を受ける場所。

地の底にあり、鬼が色々な種類の地獄で罪人を燃やし切り裂く場所。

しかし、それは因果応報とも言えるかもしれない。

そんなことえお言っても、俺は地獄を良く知らないし、行きたいとも思わないけど・・・・・・

目の前に広がるものが地上の地獄だと俺には思えた・・・・・・

 

 

 

家が畑が人が燃えている。

 

生き物が焼ける臭いが辺りを支配する。

 

地面が赤く染まっている。

 

まるで、赤い雨でも降ったのかのように。

 

動くモノがない。

 

動かないモノなら沢山ある。

 

黒く焼き焦げているモノ。

 

人の形を失っているモノ。

 

大きい小さい関係なく等しく動かないモノが地面に転がっている。

 

そして、その転がっているモノに共通しているのは、

 

皆が手を広げていること。

 

ここに転がっているモノ、全てが助けを求めていたということの証。

 

 

 

不快だ・・・・・・・何が不快なのかわからない。

俺の胸にあるのは怒りや悲しみを通り越した不快な感情。

単純に手を合わせて弔うだけでは何も救われない。

俺は本当にそう思う。

なぜ俺は生きているのか・・・・・・とすら思ってしまう。

 

しかし、そんな状況にでも眉動かさない徐庶と兵達。

慣れているのだろうか・・・・・その表情からは感情は読み取れないが、兵達から伝わる空気は良いものではない。

「これが、賊の仕業です。・・・・・・・どう思いますか?」

「どうもこうも・・・・・・言葉で表現できるものじゃないよ。」

「・・・・・・私もです。・・・・・・・・・気持ち悪くありませんか?」

「なぜ?」

「慣れない人は兵であろうと気分を害します。」

「確かに良くはないよ・・・・・・・でもここで、吐いたり気分が悪いと行って倒れたらこの人達に悪い。」

「・・・・・・・強いのですね。」

「よしてくれ。」

 

 

 

地獄の中を通り過ごして見えたのは、陣だった。

その陣には魏と黄の文字。

魏はともかく・・・・・・黄?

 

兵に案内され天幕に入るとそこには魏延と見知らぬ女性が一人いた。

「あら、あなたが北郷一刀さん?桔梗から聞いてるわ。」

厳顔と負けず劣らずの豊満な胸の女性が近づいて来る。

「良い眼をしているわね。」

「あ・・・・・・ありがとうござます。」

「私の名は黄忠、一応この軍の指揮官よ。」

「よ、よろしくお願いします。」

この人が黄忠か・・・・・・・本当に何でもありな世界だな。

「貴様はいつまで鼻の下を伸ばしている、そこに座れ!」

「・・・・・・そんなつもりはないよ。」

魏延に促されて指定された場所に座る。

 

「では、早速軍議を開始しましょう。」

「ち、ちょっと待って。」

「どうかしましたか?」

「いや、軍議の席に俺がいていいのか!?・・・・・・何も知らないし。」

「何事も慣れですよ。」

「そうよ。それに桔梗からはそう言われてるわ。」

あの人は俺に何を求めてるんだ!?

「つべこべ言わず、そこに居ろ!」

「・・・・・・・わかったよ。」

新手の勧誘か何かか・・・・・・。

 

「敵の数は一万、ここより北方五里のところに陣を敷いてるわ。」

「紫苑さんの兵数はいくつですか?」

「三千よ。」

「私達援軍は二千・・・・・・合わせて五千ですか。」

「どう思うかしら?」

「普通の盗賊相手なら二倍の数がいようと倒せるでしょう、ですが今回はそうはいきません。」

「そうね。あの黄色の布ですからね。」

「黄色の布・・・・・?」

「どうかしたかしら?」

「いや、何でもない。進めてくれ。」

「・・・・・・・・・。」

やはり北郷さんは知っている・・・・・だけど今回の目的はあくまで・・・・・・・・・・。

「焔耶さん、敵の陣の場所を詳しく教えてください。」

「わかった。敵はここに陣を敷いている。」

魏延は地図を広げて、地図の上に碁石を置いていく。

 

この時代、地図や紙は貴重品だ。

だからこそ、丁寧に扱う。

書庫を片づけしたときも竹簡や木簡が主だった。

 

敵の本陣は四方を小高い丘に囲まれた野にある。

しかも四方を囲んでる丘にも陣を敷いている。

「敵は高所を押さえていますね。」

「こちらの兵数が勝っていれば一点突破できるでしょうね。でも、今回はそうはいかないわ。」

「やはり、ただの賊ではなくなりましたか。」

「そうね、陣をしくだけの指揮官を得たのでしょう。」

「ふん、そんなもの私の武で蹴散らしてくれる!」

「そう簡単にはいきませんよ。」

沈黙が支配する。

 

「北郷さんはどう思いますか?」

「え!?それを俺に聞くのか!?」

三人の視線が俺に向く。

「そ、そんな俺は戦について何も知らないし・・・・・・。」

「何でもいいですから言ってくれませんか。」

「何でもねぇ~。」

そんな事を言われてもな・・・・・・。

 

 

 

「まぁ、用は敵をバラバラにさせるか・・・・・・奇襲とか偽者の報ながしてたりして。」

「そうですね、ですが今の状況だとどちらとも無理ですね。偽報をかけるにも敵がよくわかりませんし、奇襲をするにもこの丘から丸見えです。」

「だよね・・・・・・だったら敵本陣の指揮官を倒すか・・・・・・・・そうすれば後はただの烏合の集になるかな?」

「はい、それは確実ですね。」

「じゃあ、少ないけど部隊を分けて敵を引き付けて本陣に少数先鋭で落とすか。」

「それは犠牲が多くなりますし、賭けですね。」

「だろうね・・・・・・。」

 

「ですが今はその賭けに賭けるしかありません。」

「いいの!?」

俺の一言が採用されて、目を丸くする。

「私もそう思っていましたから。・・・・・・言わせておいて何ですが、策を言うということはその言葉の中で死ぬ人がいると言うのを忘れてはいけません。」

「・・・・・・・・・・わかった。自覚はまだわかないけど。」

「本当に強いですね。」

「そんなことはないさ。ただ・・・・・・俺も良くわからないんだ。」

「わからない?何がですか?」

「あぁ、俺がこの世界に呼ばれた理由・・・・・・あと何でこんなにも俺自身が落ち着いていられるのかもね。・・・・・・・初めてのはずなのに全てが味わった事のあるような感じがする。」

「何を言ってるんだ、貴様は。」

馬鹿か、みたいな眼を魏延が向けてくる。

「焔耶ちゃん、人の考え事を否定しては駄目よ。」

「・・・・・・すみません。」

黄忠に言われ魏延が小さくなる。

 

「では、詳しい事は徐庶ちゃんに任せるわね。」

「はい、わかりました。」

「じゃあ今日は解散。戦に備えてゆっくり寝ましょう。」

 

 

陣の端、一刀は仰向けになり星を見つめていた。

「・・・・・・まだ考え事ですか?」

そこに徐庶がやって来る。

「あぁ、何だろうな。俺は異質なんだって凄く理解した。」

「そうですね、違う世界の人間ですし。」

「それもあるけど、それとはまた違う異質かな。」

「体験した事があるってことがですか?」

「あぁ、そうだよ。それに理由がな・・・・・・。」

「こういう話があります。」

「ん?」

「北郷さんが違う世界から来たように、違う世界が沢山あるそうです。けど、それは決して交わることがない。そして同じ顔、同じ姿の自分がどの世界でもいるそうです。それは違う人生を歩んでいますが魂は同じです。つまり心が繋がっていると言う事。北郷さんのその感じはそこから来ているのでないでしょうか?」

「別の違う世界で俺がこんな人生を歩んだってことか。」

「そうです・・・・・・あと、呼ばれた理由はあります。それは今は言えない事ですが・・・・・・・・・それに・・・・・・私は北郷さんに会えて良かったですから。」

「・・・・・・・ありがとな。」

そうして一刀は徐庶の頭を撫でた。

「あぅあ~。・・・・・・っは!子ども扱いしないでください。」

「ごめんごめん。そういうつもりは無かったんだ。」

「うぅ~~~。」

夜空に笑い声が響いた。

 

 

 

夜が開けて、昼になった。

そして出陣することなり、俺は兵達の中に入れてくれと志願した。

「できません!」

「そうだ、貴様がいては逆に周りに迷惑がかかる。」

「悪いことは言わないわ。」

「・・・・・・・・・・俺が言った策で人が死ぬなら、俺はそれを見届けたいんだ。・・・・・・だから連れて行ってくれ。」

一刀は土下座した。

 

その姿に徐庶の心が折れる。

「・・・・・・では、北郷さんは紫苑さんと一緒に行動してください。」

「ありがとう。」

「これは責任重大ね。」

「すいません、我が侭言って。」

「そんな事言わないで。あなたの覚悟は受け取ったわ。」

「おい!」

「どうした?」

「ワタシは、まだお前と会って少ししか話してないが・・・・・・・・・・見直したぞ。」

「・・・・・・魏延。」

「うるさい!」

「いや、生きて帰ってきてくれ。」

「当たり前だ!」

 

そして俺たちは出陣した。

俺と黄忠さんは敵を引き付け役。

徐庶と魏延は奇襲部隊だ。

どちらとも上手くいかなければ全滅してしまう。

俺は馬に乗れないので、兵の後ろに乗せてらっている。

「あれが敵か。」

「そう、あれが私達が戦う敵です。」

「今から人が死ぬのか。」

「はい、互いに殺して殺されます。」

「わかった。」

「覚悟は出来ましたか?」

「はい、出来てます。」

「良い返事ね。では、行きましょうか。」

 

黄忠が手を高らかと挙げる。

そして、手をいきよいよく下げた。

「全軍突撃!!」

一つの小高い丘の敵に向けて動き出す。

今此処に戦いが始まった。

 

 

――敵本陣――

「敵襲!!」

敵の陣地にも緊張がはしる。

「アニキ、どうします。」

「ふん!どっちから攻めてきてる。」

「あっちの丘からです。」

「じゃあ、ある程度戦った後にそこの部隊を後退させろ。んで、他の部隊を移動させて完全包囲だ。」

「わかりました!」

「俺らに戦いを仕掛けたことを後悔させてやれ。」

「おおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

――奇襲部隊――

「こっちには気付いていないみたいです。」

「あとは紫苑さまとあいつが上手くやってくれるかどうかだな。」

「えぇ、おそらく全軍で包囲して本陣は後ろにさがるはずです。そうしたら一気に突っ込みますよ。」

「腕がなる!」

 

 

 

――黄忠部隊――

「黄忠さま!敵が後退していきます!」

「ではそのまま押し込みましょう。」

敵を押し込み、丘の上を占拠した。

そこに、

「伝令、完全に包囲されています!」

「そう、上手くいったようね。皆、ここからが正念場よ!気を抜かないで!」

「「「応!!」」」

「一刀さんもくれぐれも気をつけて。」

「わかってる。」

手が足が震える。

 

ここまで来るのに周りの兵が怪我をし、死んだ。

 

敵も殺してきた。

 

そして時には屍を踏んで、ここまで来た。

 

気持ち悪い。

 

何回も吐きそうになり意識がとびそうになるが堪えてきた。

 

自分のしたことを確かめるために。

 

 

 

――奇襲部隊――

「徐庶!」

「まだ少し待ってください。」

期を逃せば全員が死ぬ。

徐庶は期を逃さないように、戦場一心に見つめる。

そして、

「今です!!」

「よし、ワタシに続けーーー!!」

 

 

 

――敵、本陣――

「アニキ、後方から伏兵だ!」

「なんだと!?」

 

 

――黄忠部隊――

「動いたわね。私達も本陣にこのまま突撃を仕掛けます!」

「「「応!!」」」

仲間を救うために、この戦いを終わらせるために軍が動く。

だが、

「うわっ!」

俺と相乗りしていた兵が弓で射抜かれ俺は落馬してしまう。

「ご無事ですか!?」

「俺は大丈夫だ。それより君こそ大丈夫か!?」

「これしきの傷、心配することはありません。」

矢は左肩に深く刺さっている。

「そんなこと無いだろう!・・・・・・ほら、おぶされ!」

「そんなことをしては、あなたも死にます!」

「それがどうした!!」

「・・・・・・・・。」

「救える命を見捨てることはできない。」

兵は俺におぶさってきた。

「走るぞ!」

「はい!」

俺は走った。

敵に囲まれる前に、せめて戦場を脱出しなければならないと思ったからだ。

しかしここは丘の上。

今は敵、味方共に乱れている。

この機を逃したらそれこそ逃げられない。

 

こういう時は剣道の体力づくりに感謝だな。

まだ息はきれてない。・・・・・・・いける!

 

しかし、目の前に黄色の布の兵が現れる。

「こんな場所で何してんだ?」

「戦場での馴れ合いは命を無駄にするだけぜ。」

「それにしても、いい着物着てるな。」

「じゃあ、殺して服を奪うか!」

血走った眼で、得物を俺たちに向けてくる。

「くそ!」

「私をおろしてください!本当に死にますよ!」

「うるさい!見捨てはしない、そう決めたんだ!」

「・・・・・・・・・・。」

「喧嘩は駄目だぜぇ~、二人とも殺してやるから安心しな!!」

凶刃が俺に向けて振り下ろされる。

 

ドシュ!

 

「ぐえ!?」

俺に向かっていた男の額に矢が刺さっている。

・・・・・・ドサッ

そして、そいつは何も言わないモノになった。

 

「え・・・・・・?」

「あらあら、大丈夫。」

はるか彼方、馬にまたがる女性が一人。

「黄忠さん・・・・・・。」

黄忠は弓を構えると、

ぎゃ! うわっ!? かはっ!

俺たちを囲んでいた兵が一度に三人倒れる。

皆が皆、急所を射抜かれている。

 

この距離で、しかも一瞬で三発!?

 

弓というのは矢を放つまで動作がある。

だから、隙が生じるし連続では打てない。

けど、それを黄忠はやってのけたのだ。

そして、気がついたら俺たちを囲む敵は皆、この世に別れを告げていた。

「もう、無茶をしずぎよ二人とも。」

「ご、ごめん。」

「すみません、紫苑さま。」

 

「・・・・・・・・・へぇ~黄忠に真名を許されてるんだ。」

「あ・・・・・・はい。」

「その子は将来有望なの。」

「じゃあ、頑張ったかいがあるもんだ。」

一刀は笑顔を担いでいる兵に向ける

「////」

その光景を見て黄忠はとある事を確信するのであった。

「あらあら。」

 

「ご無事ですか!?」

遅れて、多数の味方の兵が現れる。

「えぇ、この者の手当てを。」

「っは!」

怪我を負った兵は味方に担がれる。」

「えっと、北郷さま。・・・・・・このご恩は一生忘れません。」

「気にするな。」

そして運ばれていった。

 

「何も聞かないのね。」

「だって、ここに黄忠さんがいるってことは勝ったって事だろ?」

「えぇ、焔耶ちゃんが敵将を討ち取ったわ。」

「皆は無事?」

「策は成功し、こちらにも思った以上に損害は少ないわ。」

「そうか、よかった。」

一刀はその場にへたり込む。

「どうかしました?」

「ははは・・・・・腰が抜けた。」

「あらあら・・・・・。」

俺はそのまま黄忠さんに運ばれたのだった。

そして、俺の無茶な行動が二人の耳に入ったらしく戻った瞬間、

「何をしてるのですか!!」

「お前は馬鹿か!!」

こっぴどく怒られた。

 

こうして俺の初陣は幕を下ろした。

 

 

 

第四話 完

 

 

キャラ設定

黄忠

真名は紫苑。

ゲームの設定のままでいこうと思いますが、エロは少なめで。

娘の璃々もいますよ。出番があまり・・・・・・・というかかなり、少ないですけどね!

 

 

 

 

 

予告

こうして俺の初陣は終わった。

 

けど、城に戻った俺は急遽成都に連れて行かれることになる。

 

益州の都で俺が見たものは・・・・・・・

 

次回 心・恋姫†無双 ~大陸動乱編~

第五話 「劉璋」

 

「我が劉璋だ。」

一刀の眼にはどう映るのか。

 


 
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