No.728655

紫閃の軌跡

kelvinさん

第7話 Ⅶ組

2014-10-08 01:17:45 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4172   閲覧ユーザー数:3803

マキアス・レーグニッツとユーシス・アルバレア……いわば、このエレボニアの地で起こっている<革新派>と<貴族派>の中核的人物に近しい二人の対立、というよりは同族嫌悪的な印象が拭えないこの言い合いの後……ユーシスと行動を共にしている者がいた……アスベルとルドガーの二人だ。あまり大勢いても逆に身動きが取れないし、後方からの攻撃もできるマキアスがいる以上、前衛・後衛のバランスは取れている。で、ユーシス、アスベル、ルドガーの三人はというと、

 

「成程。あれだけの啖呵を切る意味も納得できた……すこしはやるようだ。」

「そう言ってくれるとは感謝するよ。」

「だな。」

 

それぞれアーツも武術も平均点以上。なので、状況をお互いに把握できれば特に問題は無い。ともあれ、一通りの探索は済んだわけで、後は終点を目指すだけだ。そう言って呑気に歩いていると……終点の方から聞こえてくる剣撃の音。それと、何かの唸り声。そこから導き出される結論は

 

「どうやら、終点にとんでもない魔獣がいるようだな。」

「みたいだな……って、唸り声が重複して聞こえるんだが?」

「複数、二体以上は確定だな。」

 

意を決して駆け出すと、広い場所に出てすぐさま状況把握を始める。敵は複数……え?三体?

 

「なぁ、ルドガーさんや。これってナイトメアか?」

「むしろプロフェッショナルレベルじゃね?」

「その意見に同意。」

 

しかも、その内二体ほど飛んでますし……覚悟を決めて、アスベルとルドガーは武器を抜いて飛行している敵に向かって駆け出す。その光景を見たリィン達は驚いていたが、

 

「驚くのは後!今は目の前の敵に集中しろ!!」

 

これは実戦だ。気を抜けばこちらの命など容易く失われる。アスベルは太刀を振りかざし、振るうは八葉の一端。

 

「唸れ、空を斬る刃の型……六の型“蛟竜”が壱式……!!」

 

―――『竜爪絶閃』

 

振り下ろされる竜の爪の如き斬撃……それを翼で防ごうとするも、翼をもがれて落ちていく……そこに追撃を駆けようとするアスベルであったが、その時不思議な感覚が彼の中を通る。まるで、他の人と繋がったような感覚……

 

『着地して、低い姿勢になれば……追撃が入る』

 

着地して更に屈んだアスベルの頭上を通り過ぎたのは数本の矢……ここに来た面子の中で弓矢を使うのは、アスベルが知る限りにおいて一人しかいない。その人物を信じ、更なる追撃をかけるため、力強く地面を蹴り飛ばすように駆け出す。敵も無論反撃を繰り出すが、相手が悪かった。彼の持つ刃に灯る京紫の闘気の焔。襲い来る脅威を顧みることなく、彼はその刃を

 

「――――はあっ!!」

 

振りおろし、すぐさま飛び退くと……そこに幾多の炎の雨が魔物を襲う。それが途切れるタイミングを察して、彼は加速して……“消えた”。そして、魔物の背後に姿を見せた時には、その魔物の頭部が綺麗に切断されており、光となって消えていった。

 

そして、アスベルが視線を別方向に移すと……他の二体も光となって消えていくところを見ると、無事に倒せたようだ。アスベルは武器をしまい、先程の援護をしてくれた人物―――アリサの元に近づいた。

 

「ありがとう、アリサ。いいフォローだったよ。」

「どういたしまして……にしても、さっきのは何だったのかしら?」

「う~ん………(これが、多分『アレ』ってことなんだろうな)」

 

どうやら、他の面々も先程の光について疑問を浮かべていると、聞き覚えのある声がその答えを持ってきた。

 

「それが、ARCUSの真価ってワケ。」

 

サラ・バレスタイン……<Ⅶ組>の担任であった。

 

「いや~、やっぱり最後は友情とチームワークの勝利よね。それに、其処の二人に関しては早速リンクまで出来ちゃうなんてね。うんうん。お姉さん感動しちゃったわ♪というか、アスベルとルドガーの二人はもう少し早く駆けつけられなかったのかしら?」

「こんな事態誰が予測できますか。」

「同感だ。」

 

これ以上いたら、ガチで本気を出さなきゃいけなかった……そんなことをしてみろ。数名ほどドン引きするぞ……とアスベルとルドガーはシンクロしたような結論に至っていた。

 

この後の教官に対する文句の数々……それを聞いたうえで、この面々が集められた理由……その一つがARCUSの『戦術リンク』である。互いの状況を常に把握し、互いを最大限に発揮させるためのツール……コンビクラフトと言った連携を誰にでもできるようにするというツールがあれば、軍隊という組織を最大限に発揮しうる……ただ、この機能は技術提供があったとはいえまだまだ開発途上……故に、適正値が高い面々しかいないのだ。

 

ただ、ここの面子というと……リィンとユーシス(五大名門)、マキアス(革新派中核人物の息子)、エリオット(軍人の息子)、アリサ(ラインフォルト社)、ラウラ(“光の剣匠”の娘)、フィー(猟兵団)……眼鏡の子は確かエマ・ミルスティンだったはず……金髪の女子生徒のほうは、ステラ・レンハイムと名乗っていた……あとは、アスベル(留学生+色々)、ルドガー(結社)という“訳あり”の面々ばかりである。そうした理由は“あの人”の影響が大きいのであるが。

 

このクラスへの参加は、強制ではない…辞退するのであれば、本来のクラスに配属とするという配慮もある…それに色々考え込む一同の中で、皮切りとなったのは

 

「アスベル・フォストレイト。Ⅶ組への参加を希望します。」

「同じく、ルドガー・ローゼスレイヴ。Ⅶ組に参加させていただきます。」

 

迷わない理由などない。事情があるとはいえ、折角の二度目の学生生活なのだ。これにはサラも喜んでいた……仕事押し付けようとしたら、彼に報告せねばなるまいが。そして、リィンらも次々と参加を表明するのだが……

 

(自らをしっかり鍛えないとな…自分の道を見つけるためにも……)

(精進せねばなるまい。そのためならば、どんな苦労もいとわない)

(複雑だけれど、参加しない理由がないわね)

(ま、がんばろ。程々に。)

(うーん、早まったかな?)

 

色々な目的……若干邪な考えが混じっているのは、気のせいだろう。うん。で、ユーシスとマキアスに関してもいがみ合う様な形でⅦ組への参加を表明した……暫くは、この問題で揉めることになるだろうことは明白であった。

 

「それじゃ、この場を以てここにいる12名の<Ⅶ組>全員参加を認めるわ。特別なカリキュラムが目白押しだから、覚悟しておきなさいよ。」

 

教官がそう話していた頃、上の方から彼等を見ている二人の人物。片方はヴァンダイク学院長で、もう片方は装飾品のついた優雅な服装に身を包んだ青年がいた。

 

「やれやれ、まさかここまで異色の顔ぶれが集まるとはのう。これは色々と大変かもしれんな。」

 

「フフ、確かに……―――ですが、これも女神の巡り合わせというものでしょう。ひょっとしたら、彼らこそが“光”となるかもしれません。動乱の足音が聞こえる帝国において対立を乗り越えられる唯一の光に――――」

 

ヴァンダイク学院長の隣にいる金髪の青年は静かな笑みを浮かべて彼達を見つめていた。

戦闘シーンに関しては、まだモチベーションが回復しきっていない+序盤である意味周回済みの面々が何人かいるという時点で……序章のボスが雑魚にしか成り得ません。なので、サッパリ目に。


 
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