No.728114 ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY27 ベリルVSヴォイドやぎすけさん 2014-10-05 18:06:23 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:949 閲覧ユーザー数:939 |
前回のあらすじ
順調に記憶結晶を回収しながら、先へ進んでいくベリル。
平原を超え、林の中で最後のテラーメモリーを発見するが、そこにはすでに先客がいた。
チェデルキンと名乗る不格好雪だるま型のピエロは、何らかの目的でアスナの記憶結晶を狙っていた。
取り敢えず道化の小男を出し抜いて結晶を回収し、その後で怒り狂うチェデルキンと対峙する。
だが、あまりに芸の無いチェデルキンに呆れ果ててその場を去ろうとするベリルだが、それを侮辱と捉えたチェデルキンの攻撃で火の海にダイブさせられてしまう。
しかしベリルはスカルリーパーで炎を無力化、チェデルキンの首を握り潰してへし折る。
何やら意味深なこと喚いていたチェデルキンは、とどめを刺されて黙ると同時に爆発を引き起こし、ベリルもろとも爆炎の中に消えた。
STORY ⅩⅩⅦ ベリルVSヴォイド
ベリル視点
チェデルキンの爆発から2分後、周囲に舞っていた土煙がようやく晴れてくると、爆風で吹き飛ばされた更地の中央に俺は立っていた。
ベリル「やれやれあの風船もやし、やっぱり服の中にガス仕込んでやがったな。危うく火傷するだったぜ」
などと嘯いているが、全身を覆う乳白色の鎧甲に傷は無く、その所有者である俺自身もまた無事ある。
だが、全く問題がないというわけではない。
着ていた衣服が全て、先程の爆発で焼失してしまったのだ。
今はスカルリーパーが全身を覆っているが、この鎧甲の下は裸というわけである。
ちなみに結晶を入れていたポーチは、奇跡的に無傷だ。
結構気に入っていた衣服の焼け焦げた残骸を拾い上げ、ため息交じりそれを見て再び捨てた。
ベリル「仕方ねえ。そろそろ真面目にやれってことかな?」
ウインドウ画面を開き、着慣れた自分の装備を新しく付け直す。
服が具現化し始めたと同時にスカルリーパーを圧縮、キーホルダーに戻した。
現れたのは白を基調にしたシャツと黒い革パンツ、その上には前のものより明るい青のロングコート。
黒い革のブーツと指出しのグローブを付け、最後に愛用の日本刀を取り出す。
白い柄巻と鞘、そこに金の柄頭と鍔という一般的な日本刀だが、全体的にかなり使い古された感じがあり、古の名刀といった印象を見る者に与えることだろう。
それを腰に差し、次いでコートの裾をはためかせながら振り返った俺は、まだ残っているテラーメモリーをスカルリーパーで手早く破壊した。
ベリル「これでよし。あと、一応確認」
どうにか無事だったポーチから、結晶を取り出してみる。
密林で回収した銀の結晶、プラントにあった水色の結晶、そして先程風船もやしから取り返した赤い結晶は全て健在、傷もない。
それらが無傷なのを確認した俺は、結晶をポーチに戻す。
ベリル「んじゃ、行くとしますか」
ポーチと武器のキーホルダーを新しいベルトに吊し、残る夜空の剣を回収するため街を目指して歩き出した。
軽く歌いながら、モンスターしかいない街を歩く。
ベリル「い~くつもの空を描~いた・・・ここはきっと・・・儚い心乱して・・・」
陽気な歌声を響かせているが、その間にもモンスターは襲ってくる。
無論そいつらは、曲のリズムに合わせた斬撃で斬り裂いていく。
ベリル「夢でた~かく飛んだ~躰はどんな、不安、纏っても、振り払っていく~」
軽快な曲調の歌に合わせて、血飛沫が飛び散り、分断された怪物の死体が宙を舞い、鎧騎士の残骸が砕け飛ぶのだから、なかなかシュールな光景だろう。
だがこうでもしないと、相手が弱過ぎて退屈してしまうのだ。
などと馬鹿をやりながらも、寄り道などはせずに真っ直ぐに目的地を目指す。
この街を訪れた俺が最初に向かった場所であり、教皇を撃ち、モンスターと化した騎士団員を何人も殺し、そして
ようやく聖堂前に辿り着いた俺は、前回とは違って今度は扉から中に入った。
微妙に黴臭い聖堂内を奥に進むにつれ、煌々した明かりが見えてくる。
中では教団員の制服を着た1人の男が、壇上に腰を下ろしていた。
演出用のピンスポットライトの光の下で俯いている。
それがプラントの資料で見たヴォイドという男だとすぐにわかった。
教団員の中で長髪の男は、ヴォイド以外にいなかったからだ
俺が堂々とした足取りで壇上に足を上げると、古びた木製の床をブーツの硬いソールが打つ音が聖堂内に響き渡る。
それに気付いたヴォイドは、振り返りながらゆっくりと立ち上がった。
ヴォイド「速かったな。やはり騎士たちでは貴様を止められなかったか」
ベリル「退屈な奴らだったぜ。もっとマシな
ヴォイド「愚か者を成敗するにはあれがちょうど良い」
ベリル「それで止められないんじゃ意味ねえだろ?まあいいか。それより、俺の探し物はどこにある?」
ヴォイド「夜空の剣だな。この聖堂の地下だ。だが・・・」
俺を指差して話していたヴォイドは言葉を切ると、眩い光に包まれその身体をゴキブリのような異形のものへと姿を変えた。
ヴォイド「それを欲するならばこの私、天使長ヴォイドを倒していくが良い!」
変身と同時に右手に携えた巨大な剣を左右に振り回し、それを天に突き出すと同時に芝居がかった口調で続けた。
三流役者さながらの三文芝居を見て俺は笑い、ヴォイドに合わせるように芝居じみた言い方で答える。
ベリル「いいだろう・・・天使と戦うなど、この身に余る光栄だ」
背中の剣に手を掛け、腰を落として構えた。
ベリル「さぁ始めよう。楽しいショータイムだ」
俺が言い切ると同時に、ヴォイドが大きく上段に構える。
決して鋭いとは言えない太刀筋の斬撃を、俺は右斬り上げで弾き上げた。
そのまま剣を返して斬り払うと、反射的に防御体勢に入ったヴォイドの手から防御に使われたフロッティが無残に砕け散る。
間髪入れずに剣を風車のように回して斬り刻み、続く真下からの斬り上げでヴォイドを叩き上げた。
真っ直ぐ天井を目指して打ち上げられたヴォイドを追って俺もジャンプ、高度を合わせてそこで滅多斬りにする。
右袈裟、左払い、右斬り上げからの回転斬り、そして上段斬りがクリティカルヒット、吹き飛んだゴキブリ人間のHPを二丁拳銃の連射でさらに削り取る。
隅に追いやられる形になったヴォイドは、どうにか体勢を立て直すと、自分の前にバリアを展開して銃弾を防いだ。
ヴォイド「こ、この・・・行け、騎士たちよ!」
ヴォイドが呼ぶと、床に展開された魔方陣から、ヴォイドのものと同じ剣を構えた鎧騎士が2体飛び出す。
金属の翼を広げた騎士は、手に持った剣で俺を斬ろうと襲い掛かってくるが、俺は余裕の表情でその攻撃を全て捌いてやる。
捌き終わったタイミングでちょうど剣が砕けたので、騎士たちは盾ごと真っ二つにして斬り伏せた。
ベリル「
動かなくなった鎧の残骸を蹴り飛ばし、手招きしてヴォイドを挑発。
ヴォイド「おのれ!!」
怒りで身震いするヴォイドは、羽ばたいて飛び上がると空中で身を縮めて巨大な魔方陣を作り出す。
再び呼び出した巨剣の切っ先を俺に向け、それを中心に複数の魔方陣を展開してエネルギーを収束させていき、やがて魔方陣が弾けると、ヴォイドの持つ剣の刀身が怪しげな光に包まれて、テラーメモリーのものとよく似た黒い電撃を迸らせた。
ヴォイド「これは貴様にも防ぎきれまい」
ヴォイドは勝利を確信した者の目で俺を見ると、剣を突き出して勢いよく突進してくる。
だが俺は不適な笑みを浮かべてから、剣を背に戻してスカルリーパーを両手両足に装備。
ベリル「防ぐ必要はねえ」
拳を握り締め、右手を引き絞ってストレートの姿勢で構える。
直後、突っ込んできたヴォイドに対し、俺は大きく踏み込んだ。
こちらを貫かんとする鋭利な刃を紙一重で躱しながら、手甲で覆われた腕を突き出して、ヴォイドの腹部に直撃させる。
俺とヴォイドの持つ2つの推進力が相乗効果を生み出し、食い込んだ拳がヴォイドの外皮を駆け抜け、硬く重いその身体を大きく吹き飛ばした。
ベリル「さすがは天使様だ。そこらの雑魚なら粉々になってるとこなんだが、原形を留めてるとはな」
少々落胆しながら、客席の1つに座る格好になっているヴォイドに近付いた。
吹き飛ばされたヴォイドはすでに人間の姿に戻っていて、もはや戦うことは出来そうにない。
ヴォイド「なぜだ?これほどの力を持ちながらなぜ、ききき教皇様の考えを理解しない!?」
不意に、ヴォイドが怯えたような目で俺を見ながら問い掛けてきた。
俺はスカルリーパーを戻しながら、軽い口調で答えてやる
ベリル「理解はしてるつもりさ。ただ、共感出来なのさ」
ヴォイド「馬鹿なっ!!力こそ絶対の正義!それを知っているからこそ貴様はこれほどの力を有するのであろう!?」
見開いた目をこちらに向けて、俺の言葉が信じられないとばかりに喚いた。
ベリル「【力こそ正義】か・・・間違ってはいないな。ただ、お前らの考える力と俺の考えるってのは、たぶん別物だぜ」
ヴォイド「何・・・!?そそ、そそれは一体、な、ななんだというのだ!?頼む、教えてくれ・・・」
一瞬ハッとした表情を見せたヴォイドがメモを取る手を止め、狼狽した様子で懇願するように俺に詰め寄って来る。
ベリル「そうだな・・・ヒントは人間なら誰でも持ってて、色も形も無いが重みはものだ」
ヴォイド「形は無いのに重みがある・・・つまりは液状もしくは霧状の何かか・・・?い、一体何だ・・・?」
ベリル「残念ながら、この先を教えるわけにはいかないな」
いそいそとメモを取り続けるヴォイドの眉間に、俺は右手で構えた
ベリル「あの世でゆっくり考えな」
1発の銃声とともに撃ち出された弾丸がヴォイドの頭部を貫き、声にならない悲鳴を上げて崩れ落ちたヴォイドはピクリとも動かなくなった。
俺は銃をホルスターに戻し、ふと考えてみる。
ヴォイドが俺の問いの答えに辿り着くまで、どれほど時間がかかるのだろうかと。
奴は科学者だ。
それ故に答えを複雑に考え過ぎて、逆に時間がかかるかもしれない。
だが、俺の答えは至ってシンプルなものだ。
ともすれば小学生ですら知っているかもしれない。
時にはどんな武器よりも強い力を持つが、口にすれば途端に安っぽくなってしまう不思議なもの。
ベリル「まあ、あと30年もすれば、いい加減気付くだろ」
とは言っても、答えを導き出したとして、今度はそれを知るまでにどれほどかかることやら。
などと考えながら廊下を進み、舞台裏の隠し通路からエレベーターを使って地下へ降りる。
しばらくして到着した聖堂の地下には、巨大な円形の空間が広がっていた。
真っ直ぐに続く通路の先で、直径100m以上はある青い魔方陣が展開している。
そのちょうど中央に、俺の求めていた漆黒の剣は突き刺さっていた。
夜空の剣は、魔方陣と同じ青いオーラに包まれ、石の台座から刃を半ばまで露出させて鎮座している。
ゆっくりとそれに歩み寄った俺は、その柄を掴み勢いよく台座から引き抜く。
その瞬間、展開していた魔方陣が縮小していき、やがて完全に消滅した。
俺は、ぶんっ!と音を立てて夜空の剣を振り切り、手応えを確認する。
ベリル「軽いな・・・」
思っていたより軽い剣をゆっくりとかざし、それを見て思わず呟いてしまう。
だがすぐに気を取り直した俺は、夜空の剣を肩に担いでその場を後にした。
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夜空の剣を回収するために向かった先で待っていたのは・・・