No.72462

亞莎と御遣い様 3

komanariさん

3話目です。

またまた、調子に乗って連日投稿してしまいました。

えぇ。今回は、前作での急展開の理由をあえて説明せずに、一刀の手紙をメインで書きました。

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2009-05-08 01:20:14 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:11129   閲覧ユーザー数:8976

家に帰った私をお母さんはいつものように笑顔で迎えてくれました。

 

「おかえりなさい。亞莎さん。孫策様への謁見はどうでしたか?」

 

まだ一刀様からの手紙を開いていなかった私は、何も答えられず、ゆっくりと家に入りました。

 

「・・・?亞莎さん?どうかしたのですか??」

 

いつもと様子が違うことに気がついたお母さんは、そう聞いてきました。

 

「あ、あの・・・」

 

私が答えに詰まっているのを、お母さんは静かに待ってくれていました。

 

「そ、孫策様の、お城に・・・・お城に行ったら・・・・こ、これを・・・・・」

 

私はなんとかそこまで言って、お母さんに手紙を差し出しました。

 

「?お手紙・・・ですか??・・・・・っ!!」

 

手紙を受け取ったお母さんは、裏に書いてあった「北郷一刀」という名前を見て、一瞬はっとした表情をしました。

 

「こ、これは、か、一刀さん・・・・からの手紙なんですか?」

 

「・・・・(コクン)」

 

お母さんの質問に私は頷いて答えました。

 

「中身は、もう見ましたか??」

 

「・・・・(フルフル)」

 

首を振って答えると、お母さんはもう一度手紙を見まわしていました。

 

しばらくそうした後、お母さんはふぅーっと大きく息をついて、私の方を見ました。

 

「・・・それでは、ご飯を食べてから、二人で読みましょうか。」

 

「・・・はい。」

 

お母さんの提案にそう答えた私は、お母さんと一緒に食卓につきました。

 

「・・・ふふふ。これでこの前のような失敗はせずにすみますね。」

 

そう言って笑うお母さんの笑顔で、手紙のことで緊張していた私は、ふっと力を抜くことができました。

 

「はい。」

 

私も少し笑顔になりながら、ご飯を食べました。

 

 

 

「・・・さて、お手紙を見ましょうか。」

 

食事を終えた私たちは、二人並んで座って、ゆっくりと手紙を開きました。

 

 

~一刀の手紙~

 

 

親愛なる亞莎ならびにお母さまへ

 

突然のお手紙ですみません。亞莎もお母さんも変わらず、お元気ですか。

 

まず、二人に突然消えてしまったことを謝ります。

 

俺も何がどうなったのか分からないのですが、お母さんに文字を教えてもらっている最中に、急に周りが真っ白になったと思ったら、俺はいつの間にか、知らない場所にいました。

 

どうしようか途方にくれていると、劉備さん・関羽さん・張飛ちゃんの3人に出会い、そこが幽州の啄郡にある五台山の麓であることを教えてくれ、そして「天の御遣い」として力を貸してほしいと言われました。

 

「天の御遣い」なんて聞いたこともなかったから、どういうことなのか聞いてみたところ、管輅という占い師の、「流星とともに「天の御遣い」が現れて大陸を平和にする」という占いが広まっているらしく、俺がそこに現れた時も流星が落ち、その落ちた場所に俺がいたのだということでした。

 

はじめは、早くお母さんと亞莎のもとに帰ろうと思って、その話を断ろうとしました。

 

でも、4人で近くの町まで行くと、その町が黄巾党に襲われた後で、しばらくしたらまた襲ってくるだろうと町の人たちがみな怯えていました。

 

劉備さんたちは、自分たちだけで戦ってくれる人を集めて、黄巾党を倒そうとしていましたが、なかなか人が集まってくれないようでした。

 

それでも3人は自分たちだけでも戦いに行くと言って、町の人たちに黄巾党が陣を敷いている場所を聞きまわっていました。

 

このままでは3人とも死んでしまう。

 

そう思いました。

 

知り合ったばかりの人たちだけど、そうなってしまうことが、俺は許せませんでした。

 

なので俺は、「天の御遣い」という役割を演じることを引き受けました。

 

俺自身は自分のことを「天の御遣い」だなんて思っていないし、早く心配させてしまっているだろう二人の所に帰りたかったけど、どうしても、3人を放っておくことができませんでした。

 

3人は俺の申し出を受け入れてくれて、それから再度町の人たちに協力を求めたところ、「天の御遣い」の噂が広まっていたこともあってか、何とか戦ってくれる人たちを集めることができました。

 

そうして、集まった人たちと黄巾党を討ちに行き、関羽さん・張飛ちゃんの活躍もあって、見事黄巾党を倒すことができました。

 

その後、町に戻ると町の人々から、役人が逃げてしまったから県令になってくれと頼まれました。

 

たぶん、戦う前の俺だったら、それを断って、すぐにでも二人のもとに帰ろうとしたでしょう。

 

でも俺は、自分の目で戦いを見てしまいました。

 

演技であったとしても、俺の存在によって戦いに出て人が傷つき、倒れていく姿を、俺は見てしまいました。

 

その責任を、負わなければならないと思い、俺はそのお願いを受けました。

 

でも、いつかその責任が果たせた時には、二人のもとに帰れるように、劉備さんと連名で県令の仕事を引き受けました。

 

県令が二人いるというのも変なのかもしれませんが、俺がいなくなれるように、今から下準備です。

 

それからは、県令の仕事などに追われて、お手紙を書く暇もありませんでした。

 

もっと前からお母さんに字を習っていればよかったと後悔したことも、今ではいい思い出です。

 

俺たちはその後、領内の黄巾党を討伐したり、壊された町を直したりしていました。

 

途中で新しい仲間ができたり、いろいろなことがありましたが、そうしている内に、俺たちは幽州ではそれなりに大きな勢力になっていました。

 

そうして、反董卓連合への檄文が俺たちに届きました。

 

俺たちは、話し合いをしてその連合に加わることになりました。

 

新しく増えた仲間が、他にどの国が参加するのか調べてくれた結果。孫策さんたちも参加するということがわかりました。

 

もしかしたら、亞莎もその中にいるのではないかと思いましたが、そうでなかった時のために、今、この手紙を書いています。

 

もし、この手紙が意味を成しているのなら、それは亞莎に会えなかったということだから、少し残念に思いますが、それでも、危険な戦いに亞莎が参加しなくて良かったっと、そうも思っています。

 

あ。俺も、戦いには参加するけど、基本的に最前線に出て戦うなんてことはしてないので安心してください。

 

本当はそうしたいのですが、力のない俺がそんなことしても、周りに迷惑がかかるだけだし、それに、亞莎やお母さんにも会えなくなってしまうので、そんなことはしません。

 

 

もうじき、連合の陣地につきます。

 

亞莎に会えるにしても、会えないにしてもこれだけは伝えておきます。

 

 

 

どんなに時間がかかっても、

 

どんなに大変でも、

 

絶対に亞莎の、そしてお母さんのもとに帰ります。

 

俺の帰る場所は、二人のもとだと、俺はずっと思っています。

 

 

それでは、亞莎とお母さんが健やかであることを願っています。

 

また、お会いする日まで。

 

 

 

 

追伸。

 

この戦いが終わったら、二胡を習おうと思います。

二人のもとに帰れたときには、「燕になりたい」を弾けるように頑張ります。

 

 

北郷一刀

 

 

 

 

~亞莎視点~

 

一通り読み終えた私たちは、しばらく無言のまま、一刀様の書いた手紙を何度も何度も読み返していました。

 

「・・・ふふ。『俺の帰る場所は二人のもと』ですって。一刀さんたら、こんなにうれしいことを書いた手紙をくれるなんて・・・。きっと、前にも増していい男性になっているのでしょうね。」

 

しばらくしてから、お母さんがそう言って笑いました。

 

「きっと・・・、きっとそうだと思います・・・」

 

私も、少しうれしくなって笑っていました。

 

「ふふ。よかったですね、亞莎さん。婿殿がかっこよくなって帰ってきますよ。」

 

そういたずらっぽく笑うお母さんに、私は思わず顔を赤らめました。

 

「そそそそ、そんな!わわわわ、わた、私が、一刀様を、むむむ、婿にいただくなんて・・・」

 

必死で否定している私を見て、お母さんはさらにいたずらっぽい笑顔をして言いました。

 

「あらあら。では、一刀さんに嫁ぐのですか?・・・それもいいかもしれませんね。今や一国の主なんですから、すごい玉の輿ですね。」

 

「―ッ(///)!!!」

 

あまりの恥ずかしさに声が出ずに、私は袖で顔を隠しました。

 

「あ。でも、一刀さんは『二人のもと』って言ってくれていますから、亞莎さんが嫁いだときは、私も一緒に連れて行ってくださいね。」

 

そうお母さんは、楽しそうに言いました。

 

「お、おおお、お母さんっ!!」

 

私がなんとか、そう抗議の声をあげると、

 

「うふふ。」

 

と、お母さんはいたずらっぽく笑いました。

 

「・・・そう言えば、亞莎さん。」

 

しばらく、そうして笑った後に、お母さんが私に尋ねました。

 

「この、一刀さんが追伸で書いている、『燕になりたい』というのは、何の曲なんですか??」

 

ふと、そう聞かれたので、私はつい素直にその曲のことを話してしまいました。

 

「あ。その曲は、一刀様と手を繋いで頂いたときに、一刀様が歌っていた・・・・はっ!!」

 

気付いた時には、もうすでに、ものすごい笑顔のお母さんが目の前にいました。

 

「あ・あ・しぇ・さん♪。お母さん。その話がもっと詳しく聞きたいです。」

 

さっきよりも増して、いたずらっぽい笑顔のお母さんが、そう言いながら近づいてきました。

 

「い、いえ。そ、その話は、その・・・そんなに、たいした話ではなくてですね・・・」

 

お母さんの背後に「面白そう♪」という文字が見えた気がして、私は後ずさりました。

 

「お母さんは、亞莎さんと一刀さんの甘酸っぱいお話、聞きたいですよ?」

 

そう言ってなおも近づいてくるお母さん。

 

「い、いえ。だから・・・、その・・・・」

 

なんとか、逃げようとしたのですが、壁についてしまい、もうそれ以上下がれませんでした。

 

「・・・さ。お話してください?」

 

そう、やさしく話しかけるお母さんの眼は、完全に好奇の目でした。

 

「ゆ、許してくださーいっ!!」

 

その叫びもむなしく、その日私はあの時の話を根掘り葉掘り、こと細かにしゃべらされました。

 

 

 

 

一刀様の手紙を読んだ日からしばらくして、孫策様が袁術を追放し、見事に孫呉を再建なさいました。

 

私は、その時の建業での働きを評価していただき、孫策様のお城に呼ばれました。

 

お城につき、孫策様に謁見すると、まず今回の仕事を褒めていただき、その上で褒美まで頂きました。

 

そのあと、孫策様は私に一刀様との関係についていろいろ聞かれました。

 

私は、一刀様が倒れていたところを助けたという話から、一刀様が消えてしまうまでのことを孫策様に話しました。

 

「ふ~ん・・・・。」

 

そう言って孫策様は少し考えこんだあとに、

 

「わかったわ。話してくれて、ありがと。」

 

と言ってくださいました。

 

「はい。」

 

私がそう言った後、一礼して退席しようとすると、

 

「あ、そうだ。呂蒙ちゃん。今度から、私の側仕えの軍師として、お城で働いてもらうから、よろしくね。」

 

と孫策様がおっしゃりました。

 

「え、えぇ!!?」

 

と驚いている私をあまり気にせず、孫策様は準備が出来次第、お城に引っ越してほしいとつづけました。

 

「あ、そうそう。もしよかったら、あなたのお母様も一緒にね。」

 

そう勧められたので、それらのこともお母さんに話すと、快く一緒に行ってくれると言ってくれました。

 

孫策様のお城には、姉(結婚して今は名前も変わり「鄧当」と言いますが、)もいるので、久しぶりに顔が見たいというのも、了解してくれた理由の一つでした。

 

 

そうして、お城に住むようになってからしばらくして、私は一刀様にお返事の手紙を書こうと思いました。

 

最近の出来事やお母さんの体の具合など、いろんなことをお母さんと一緒に書いて、私はその手紙を幽州へと向かう行商人さんに託しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして、曹操の軍勢が幽州に侵攻したという情報が私たちのもとに届きました。

 

 

 

 

 

あとがき

 

どうもkomanariです。

 

前回、あまりの急展開に対して皆様から多くのコメントをいただきましたが、今回の話ではそのことについて触れませんでした。

 

何で一刀が桃香たちの所に行っちゃったかという説明は、(納得していただけるものかはわかりませんが)最後の方でしたいと思いますので、それまでお待ちいただけると嬉しいです。

 

 

さて、今回初めて名前が出てきた亞莎のお姉ちゃんですが、「鄧当」という人は、史実だと呂蒙の姉の旦那さんで、呂蒙の育ての親だと言われてる人です。

 

何でお姉ちゃんにしたかというと、本当のお姉ちゃんの名前が分からないからです。

 

すみません。またまた強引な展開で・・・

 

予定ではお姉ちゃんはそんなに出てこないので(というかもう出番終了?)、別にいいかなって言う軽い気持ちで書きました。

 

その辺が引っ掛かった方がいらっしゃいましたら、すみませんでした。

 

 

こんな感じで続いてく、今回のお話ですが、はたして皆様のご期待にこたえられるか、とても心配です。

 

それでも、たくさんの支援してくださる方々、コメントしてくださる方々にお応えできるように、がんばって書きたいと思います。

 

それでは、今回も読んでいただき、ありがとうございました。


 
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