【 (注)登場人物は全員男 の件 】
〖 徐州 下邳 晋軍陣営内 にて 〗
兵より連絡を受けて、怒りの形相で命令を放つ!
韓馥「後方より攻めて来るは……不埒な麗羽か! それに、黄河を渡河してこの陣営に攻め寄せるのなら……渡らせる前に潰せぇぇぇぇ!!」
晋兵「駄目です! 我等の隊が、かなり小隊に分けて分散したため、呼び戻すのに、刻が掛かり……既に渡河した部隊が、邪魔をしないように援護してております!!」
しかし、返ってきた返答は不定。 しかも韓馥の出した提案の為で………。
韓馥「おのれぇ! おのれぇ!! どうして儂の周りには、こうも役立たずが多いのだぁ!!! えぇい! 邪魔だ! 邪魔だぁ!!!」
自分の前で跪き報告する兵を、物のように蹴り飛ばし……念者衆や若衆の傍に行く。 手元には、例の『おにぎり』を持っている!
韓馥「お主達に命じよう! 儂の事を慕うのなら、コイツを食べて敵を打ち破れ!! 愛しの儂からの命令じゃ!! よもや断る真似なぞしまいがなぁ!」
絶対に断る事は無いと考えて、目の前に『おにぎり』を差し出す韓馥!
念衆者「─────そないなモン! 要りませんどすえ!」パシィ!
韓馥からの差し出した手を跳ね除ける念者衆!
韓馥「何をするんや! この恩知らずめがぁ!!」
念者衆「あんたは……ウチの事をどう思われとるのか知りません! どすが……このような危険な物を利用してまで、戦うなど考えておりません!
あたしは………このまんまで、貴方を守りたいと思うて!!」
涙目で語る念者衆に……さも……心配しているような振りを見せて迫る韓馥!
韓馥「馬鹿な事を申さんな! 主等が死なさんように配慮を!?」
念者衆「男の肉体ではなく、女の心で守りたいだけ……。 それに、あたし達で……あの食べ物の効果を調べ、自分の負担を減らそうとする臆病で慢心な考えに付き合うなんて……もう嫌ぁやぁぁ!」
今まで、何人かの兵が犠牲になった実験。 犠牲になった兵を見殺しにしても、愛する男を信じたかったが………遂に自分までにも手を伸ばすのか!?
しかも、可愛い妹分?達まで手に掛けようとする行為に、嫌気が走る!!
韓馥「ふんっ! 気付きおったか! だが……無理やりにでも喰わせてやる───『ドォォンッ!』グフッ───!?」
若衆「姉はん! 早ぉう逃げてぇ!!」
念者衆「貴女達も────早く来なさい!!」
強制的に食べさせる所を、何人かの若衆が体当たりして、韓馥を突き飛ばす!
その隙に……薄幸なる『男娼』達が逃走する!!
韓馥「────グオォォ! 追えぇ! 迎撃しながら捕まえろ!! 無理ならば殺しても構わん!! 逃せば……残った貴様達が試してやるぅわぁ!!」
晋兵「ぎょ──御意ぃぃ!!」ダァ!
約百人程の追討兵が掛かり、更なる苦虫を潰したような顔で、椅子に座ると指令を命じていた!
◆◇◆
【 爆弾発言 の件 】
〖 洛陽 宮廷内 表門 にて 〗
月「ただいま………戻りましたぁ──アップッ!」
宮廷に戻ってきた月達が、門より入ると『神速の速さ』で抱きつかれて、豊満な胸に顔が当たる!? その横より『天下に轟く武人』が月の頭を嬉しそうに撫でた。
霞「月えぇぇ───っ! ようやったぁ! ようやったなぁ!!」
恋「月…………偉い!」ナデナデ
月「えっ? えっ!?」
ねね「詠より早馬が来ておりましたぞぉ! 西涼の功勲第一と言うではありませんか! 君主自ら敵総大将を討ち取るなぞ、なかなかございませんぞ!?」
詠「連絡は入っていたようね。 それから、益州、交州も………無事鎮圧したと報告を受けているわ!」
霞達の熱烈な歓迎を受けて……目を白黒する月。 丁寧に情報説明するねね。その様子を見て……ニヤリと笑う詠。
そして、詠の後ろより三人の武人が現れて、一緒に入り込む!
??「戦勝祝の酒も……トーゼン出来てるんだろう!? 霞!」
霞「当たり前やないやろか! 白菊の姐はん、奮発したモン、用意してまんねんよって!」
??「あたしさぁ! 酒より食いもんの方が、良いんだけどな!?」
??「たんぽぽもぉ─────!!」
ねね「恋殿とねねが吟味した山海の珍味ですぞ!? 不味いなんてほざきましたら《ちんきゅうとるねーどキック》が炸裂決定ですな!」
洛陽に帰還したのは月達だけでなく、馬寿成一族も含まれていた。
★☆☆
〖 宮廷内 別室 にて 〗
今、慰労会と言うささやかな宴会が始まっていた。
主催兼主役の月は、皇帝陛下の急な呼び出しで出掛け、恋も丁度動物達の世話をする刻限のため、後ろ髪を惹かれる思いを全体に漂わせながら猫屋敷へ………。 華雄は当然……護衛で月と一緒に向かった。
霞「どうやった!? 鮮卑、羌、南匈奴の奴らが百万の軍勢で来たでと聞いてるけど……? 何ぞ姐はん………物足りまへん顔してねんよ?」
白菊「……今回は西涼に、百万の強者で来るって、聞いてたんだがなぁ……何時も以上に歯応えが無い連中で、勝負に勝ったという感触がねぇ~んだよ?」
翠「あたしもだぁ! 敵を少し攪乱して、その後すぐに将と対決で『はい終わり!』でよぉう!? 手応えなかったもんだから憤懣がぁ!」ガツガツ!!
蒲公英「だって~二人共脳k……じゃなくて名のある武人だも~ん! 今回……たんぽぽ的には楽だったよ! 匈奴や羌賊等が馬を使わずに戦うのなんて、初めてだったから、凄~く驚いたぁ!!!」
詠「颯馬の見解でね……相手の長所を潰す策を使ったのよ!」
白菊「ほぅ!? ───例の『天の御遣いの軍師』か?」
詠「颯馬曰わく『 鮮卑、羌、南匈奴の共通の強みは、騎馬を巧みに操る戦闘術! それなら、その長所を奪いましょう! 』と………」
白菊「へぇ~? なかなか面白い事考えるじゃないかぁ!? それで、詠は……どう思ったんだい?」
詠「ボクは、白菊達の騎馬戦術を知っていたから反対したのよ! 騎馬戦に障害物は禁物! 騎馬が足を取られれば……死活問題に繋がるから。 …そうしたら大丈夫だからって……こう言って……詳細に説明してくれたわ……」
『 障害物を一石三鳥で使いますから、馬寿成様が攻める頃には……無くなっているでしょうね。 片付けられていますから 』って……
それを聞いて……白菊が目を細める。
白菊「敵の長所を潰して、あたしらの長所を生かすねぇ~!」
詠「具体的には、こんな提案だったわよ!!」
白菊の剣呑な様子を気付かずに……詠が自慢げに説明をする!
ーーーーー
① 布の滑り台と地面の凍結で、竹槍が地面を滑り匈奴兵達に打撃を与える! 《『飛滑竹槍の計』による打撃 》
② 竹槍が残り、尚且つ地面が滑りやすいため、騎馬で攻めるのは不可。 竹槍や遺体を回収。 《 敵、騎馬攻撃選択を取り消し 障害物除去 》
③ 敵、再度攻撃! 攻撃は日が当たり氷が溶ける頃を狙うため、滑り台に使用した布を外し、氷結場所をさらけ出して、敵を混乱に陥れる! 《 布に寄る氷解の遅延工作、敵の攻撃妨害工作 》
④敵、撤収間近に忍びを紛れ込ませ、敵陣営の馬を暴れさせ、混乱を状態を作り出し、そこを馬寿成様に攻撃して貰う! 更に、陣営内にある竹槍を燃やし音で混乱を齎す。 《 混乱に寄る士気低下、疑心暗鬼誘発 》
詠「だ、だけど……ボクだって軍師だから! だから、補完できるところは、補完したのよ! 敵の再攻撃のところで!!」
③ 詠の策『氷結地縛の計』……匈奴達の履く靴が、獣の革を加工した物だと知っていたため、颯馬に提案! 弓兵を多くして損害を強いる事にする! 更に、攻めて来る匈奴に向かい、水をかけて寒さで妨害する事を献策する!
ーーーーー
翠「一つの策だってすげぇのに、その策が連動していくなんて……あたしの頭じゃ付いて行けないぜぇ───!?」
蒲公英「たんぽぽも、悪戯する時に考えるよ……。 だけどねぇ、複数になると相手の思惑が二つあるから、対応する時は倍以上時間が掛かちゃうのに! どうして、複数の罠が連続で発生できるの!?」
詠「それは、『附和雷同』的な要素があって──」
白菊「うむっ! 決めた! 決めたぞぉ!!」
霞「何が決めたんや!? 姐はん!!」
白菊「『天の御遣いの軍師』を馬一族の婿に迎えよう!!」
『はあああぁぁぁぁ────!?』
この瞬間、白菊を除く最大音声の『斉唱』が、宮廷内に響き渡ったそうな。
◆◇◆
【 大戦前の静けさ の件 】
〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗
小太郎「颯馬様! 御報告ですぅ!! 晋軍が官渡を出て、此方に向かっています! 兵数約三十万! 到着が明後日になるかと───!!」
翌朝、鶏洛山付近で軍義を初めて一刻も経たぬうちに、晋軍が此方に向かったとの報を貰う! 董卓軍が八万……相手は約四倍だな。
辺りの地形を一通り見渡して、持久戦に相応しい場所を決め、直ぐに命令を発した! これぐらいの差なら、撃破は可能だ!
俺は、目の前に集まっている将に、命令を出した!!
ーーーーー
颯馬「光秀、信長は鶏洛山の中腹に陣地を構築!」
光秀「はいっ!」
信長「ふっ! 任せるがいい!」
ーーー
颯馬「姉さんと一存は、土嚢作りの監督! 一存は運搬にも、力を発揮すれば助かるな! 丁度、愛紗も見ているし………」
愛紗「へっ!?」
一存「よおっしぃ!! いいとこ見せる機会、正に到来だぜぇ!! 鬼十河の力は、戦だけじゃない事───見せてやる!!!」
長慶「任されよう!」
ーーーー
颯馬「左近、鹿介殿は、兵の指揮と陣地の左右に囲いを準備して貰いたい! 連れてきた牛を入れておきたいから!」
左近「ふふっ! 何やら企んでいる顔だな! 任されてやる!」
鹿介「───必ず!」
ーーー
颯馬「凪と愛紗は、大将と軍師の護衛!」
凪「お任せ!」
愛紗「………………はいっ!」
ーーー
颯馬「明命、亞莎! 二人には………策の実行を命じたい! そして、実行後、すぐに雪蓮の下に帰還するんだ!!」
『はいっ! …………って、えええっっっ!!』
颯馬「あっ! 孫呉には居ないはずだから……官渡の鳥巣辺りに居るから、其方に向かって───」
明命「待って下さいっ!! 何故! 私達だけ外されるのです!?」
亞莎「私達の力が足りなくて────『 違う 』──じゃあ何故!?」
颯馬「二人には、援軍の要請をお願いしたいのさ! 今の俺達の仲間で、大陸の地形が分かるのは……四人! そのうち、凪と愛紗は別の用事を頼んだ! だから、二人に役目を頼みたい!!」
亞莎「それでは、私達の力不足で離脱させられる訳ではなく!」
颯馬「………うん! 雪蓮に状況報告を伝えて来てくれるように……と!」
亞莎「は、はいっ!」
明命「でも、それなら、私と風魔様で行えば……確実に早く連絡も!」
その時、小太郎の目がギロッと明命を見つめ、ボソッと呟く。
小太郎「────余計な事を言わないのが、長生きの秘訣ですよ?」
明命「すっ、すいません!!」
結構小声なんだが、明命には聞こえていたようで、涙目で謝っていた。
颯馬「小太郎は、別の罠を仕掛けて貰うんだ! 天の国の罠をね……!」
そう言って、小太郎の頭を優しく撫でる颯馬だった。
◆◇◆
【 オトメ救出戦 の件 】
〖 徐州 下邳 曹操軍陣営付近川岸 にて 〗
義弘「渡河できた者達は、すぐに前方に行き隊列を整えて、敵の攻撃に備えて! 異変があれば、直ぐに私に連絡するように──────!」
曹兵「た、大変であります! 前方より美少女と化け物達が晋軍に襲われて……? いや、討伐されて………? えーと、戦闘中です!!」
義弘「何でよりによっても……面倒な異変が来るのよっ!?」
星「むっ!? もしや『筋骨隆々の男が女装したような者と、私のような美少女が、一緒に晋軍に襲われている』と言う判断でいいのか!?」
曹兵「はっ! 見事な御明察、その通りで御座います!」
歳久「………サラッと自画自賛をしていたようですが、それは、まぁさて置いて……。 星は、その者達を知っているのですか?」
星「───すまん! 先に援護に向かう! 事情は後だ!!!」ダッ!
歳久「はぁ……全く……仕方ありません。 私も弓兵百人連れて援護に向かいます! ひろねぇは人数が集まり次第、隊を二つに分けて進撃して下さい!」
春蘭「では、私が一方を率いる! その方が敵の駆逐も早かろう!」
義弘「へぇ~? 結構やるわねぇ! 武力一辺倒の将だと思っていたのに!」
春蘭「ふんっ! 華琳様は元は敵だろうが、自分の懐に入る者は大切に扱う立派な方だぞ! 私だって……助けられる者が居れば、助けてやりたい! それだけだ!!」
『……………………………』
春蘭「な、なんだぁ! その沈黙はぁ!! な、何か言えぇぇ!!」
歳久「別にありませんよ! おやっ? 人数が揃いましね!! それでは、お願いします! 終わりましたら道雪殿達を援護しつつ、晋軍を叩きますので───!」
義弘「了解! 行くよ──! 皆!!」
春蘭「待てぇ!! 私も行く! 全軍、駆け足!!」
歳久「………春蘭。 貴女は私達の知る三国志『夏侯元譲』で間違いないのですね。 本当に………不思議な世界です!」
★☆☆
念者衆「てええぇぇいいぃぃ!」
美麗なチャイナドレスのような物を着用し、一丈(約2㍍)の棍を振り回す!
晋兵「ボゴォォ!」バキッ!
晋兵「アベラァ────!」ブワッ!
晋兵「う………ウップッ!!」チラリ!
あまりの振りの速さで、人の目には止まらないため、何人かが吹き飛ばされる! 中には、スリットから見える魅力溢れる太股に、寒気(決して歓喜ではない。読みはカンキだけど……)した者も……少なくない。
追ってきたのが、若衆寄りだからってあるけど………。
他の若衆も剣や槍を持って抵抗するが、多勢に無勢。 逃走側二十人、追手側百人! 完全に包囲もされ、何人かの若衆が人質に取られ、身動きが完全に出来なくなった。 諦めて連れて行かれるしか無い……と観念した時。
星「大将が大将なら………兵も兵………!」
春蘭「卑怯者共がああぁぁぁぁ!!」
晋兵「グゲエェェ────!!」
晋兵「グワァァァ!!」
念者衆『─────!?』
若衆『あ───────っ!?』
突如乱入する槍遣いと大剣遣い!! 人質を取る晋兵達を倒すと、若衆を仲間の下へ突き飛ばし、群がる晋兵達へ入り込む!!
歳久「…………鏃を外した矢を二十放ちなさい! 射てぇ!!」
晋兵「て、敵襲だぁ!! む、迎え討つぞ!!」
晋兵「弓兵が居る! ここは一時退却『 逃がすかぁ! 馬鹿者共!! 』ギャアアアア─────!!」
大陸で名の馳せる武人が二人暴れ回り、尚且つ矢を射かけられている中、目的が果たせられ無ければ戻るしかない!!
されど、背を向けば大剣遣いの将に、怒声を伴った攻撃を浴びせられる!
そして、最後には─────!
義弘「私を忘れるなぁ!! 全軍───突撃ぃ!!!」
『うおおぉぉぉ────!!』
────こうして、念者衆と若衆は曹孟徳の庇護下に入った!
◆◇◆
【 第二回爆弾発言 の件 】
〖 洛陽 宮廷内奥 金糸私室 にて 〗
金糸「…………………」
銀糸「月……! 西涼の反乱鎮圧、大儀であったと……皇帝陛下より御言葉である!」
月「はっ!」
金糸の私室に呼ばれた月は、皇帝陛下である金糸より礼を賜る。 あくまで内密な事であり、正式な儀式は一日掛かるらしい。
そのため、友人でもある月の働きを祝いたいとの意向で、ささやかな儀式を開いた訳である。
銀糸「華雄! 人払いを頼む! 但し、お主は残ってくれ!」
華雄「御意!」
内密な儀式とはいえ、侍女等数人の傍仕えがいるため、外に出て貰う。 出入り口で、華雄が仁王立ちになり、侵入者が入らないよう警備に付いた。
銀糸「月よ……。 貴女は、今回の反乱を何と思う? 正直に申して貰いたい。 今、この部屋の中は……御姉様や華雄、そして月だけ。 どんな苦言でもいい。 思った事を…………話してはくれないか?」
月は……ジッと伏せていたが、決意を定めて顔を挙げる。
月「臣、董卓『すまん、すまん! 普通でいい。 友として聞きたいのだ!』はぁ……では、お話し致します。 今回の件ですが…………」
月は、最後に勝敗を付けた、南匈奴左賢王『劉宣』の事を話す。
最後の対峙した際、月の顔を見て驚愕の顔を浮かべた後、双眼より滂沱の涙を……何筋も落とした。 年の頃、七十近い老英傑が───?
そして、馬に乗り月に突撃してきたのだ。弓を射れる状態にしてある体勢の中で………。 降伏を拒否してまで、自殺同然の行為を何故行ったのか……分からなかった。
後に、白菊より『劉宣』は、元は漢王朝の臣だと知り……唖然とする!
そして経緯を調べて分かったのは、張譲の謀で南匈奴へ送られた事。 当時の皇后が董太后だった事。 そして、漢王朝の持つ………腐敗の根深さ!!
月「私は、漢王朝を、皇帝陛下を、友達を見捨てる気など一切ありません! しかし、あまりにも………『漢王朝』のしてきた罪の多さに……私は……どうすればいいか……分からないのです!!」
金糸と銀糸は……双方顔を見合わせ頷く。
二人の考えも同じだった。 自分達の生まれる前の事だから、当然知らない!
しかし、皇帝と言う位を継承したからには、その責務も同時に継承される。 関係無いからでは済まされない。 何故なら、その責務の最終責任者は『皇帝』と言う位だったのだから。
銀糸「私達も考えた………。 漢王朝、既に枯れ果てた古木に、民や国を守る力は無い! 誰か、力ある者に『皇帝』の座を明け渡す。 禅譲をしようと思っているのだ!」
月「しかし、そのような……力がある人物が………」
銀糸「居るであろう! 目の前に!」
月「えっ!? ええぇぇぇ──────っ!?」
銀糸の目線は、自分を見ていた事に気付き……盛大に驚く月。
銀糸「天の御遣い達に慕われる月なら、間違いないと思うのだが───!」
金糸「コクコク!」
月「わ、わわわっ、私では無理ですぅ! 辞退しますぅぅ!!!」
銀糸「皇帝の命は絶対よ!」ビシィ!
月「こ、この中では──私事ですぅ! だから無効なんですよ!!」
★★☆
『ハァ~! ハァ~! ハァァ~~!!』
一刻後(約二時間)、双方で荒く息をしながら溜め息を吐く二人の姿が。
銀糸「ハァハァ……本当に月ったら強情ね。 詠が嘆くだけあるわ!」
月「だ、誰だって……禅譲する……なんて言われば、お断りします!!」
銀糸「………誰も……月みたいな人なら……良いんだけどね。ハァ───!」
銀糸が深~い溜め息を吐き出すと、金糸が前に進み出て月の手を取り、申し付けた。
金糸「月……有願事! 金糸銀糸統率兵戦場行! 我皆是知苦願!!」
(月……お願い! 私達も兵を率いて戦場へ行きたい! 皆の苦労を知りたいの!)
手を取られた事もそうだが、皇帝直々に『お願い』をされたため、緊張感で固まる月。 普段でも、そう喋るのは銀糸ばかりなのだから、余計である。
銀糸「皇帝陛下からの命令ですよ! これは、私達の総意! 華雄にも頼み、了解を得ています! だから……董卓軍総帥の董卓に下すの! 『最後の戦に、錦の御旗を立て皇軍と明かし、晋を討て!』…………と」
月「に、錦の御旗? とは………?」
華雄「颯馬達の天の国では、皇帝陛下が味方に参加した場合に棚引く、我々の牙門旗と同じだそうです。 漢王朝が我々の正式な後ろ盾して下されば、士気は鰻登りに上がりましょう!
月様! どうか、皇帝陛下方の御参加……許可を願います!!」
華雄の言に考える事があったようで、目を閉じ一瞬考えたのち、真剣な趣で金糸に尋ねる!
月「陛下……! 一つ……御質問を!」
金糸「コクコク!」
月「戦場は……遊技場みたいな所ではありません! 生死が別れる苦界の場、贅沢は一切無し、兵と同じ生活をし、苦難を共にし勝負を挑む場所です!」
金糸、銀糸『………………………』
月「今回の戦いは、大陸の存亡が掛かっている重大な戦い! ですから……万が一の時、陛下を見捨てても勝利を得る為、動く事があるかも知れません! その覚悟は────御座いますか!?」
華雄「──────!?」
金糸「是!」(はいっ!)
銀糸「皇帝とそれに連なる血筋を、甘く見られては困る! 私達は何回も確認し合い、それなりに訓練も行ってきた。 この日の為にな! だから、私も参戦させて貰う! おっと、勿論──私も是だ!」
二人の意見を聞き……思いっきり溜め息を吐く月。
月「はぁ~! 皇帝陛下も銀糸様も頑固ですよ! 絶対──私より!!」
銀糸「何を言うか! 月の方が頑固だ!!」
金糸「月友達我々関連、似友達当然!」
(月の友達である私達が、友達に似るのは当然だもの!)
華雄「恐れ多いですが……陛下の性格を受け継いだとも………」
金糸「非此不! 遭遇前朕、詠曰性格同様!」
(それは違うわ! 私に会う前から、あの性格って詠が言ってたし!)
華雄「はっ………ははははっ」
華雄が苦笑したその時、宮廷内に声が響き渡った!
『はあああぁぁぁぁ────!?』
陛下達は『ビクッ!』と動いたが………月だけ『ピクッ!』と違う擬音が響き、青筋が浮かんでいたそうな。
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
三連休の内に作ってしまうつもりが……忙しくて諦めました。
夜も忙しくなる為(お祭りの準備)、仕事の昼休みに完成させました。
誤字脱字も一通り確認しましたが、ありましたら教えて下さい。
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義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。