No.717369

クロスリンク・プロブレム ミクの試練! 第4話 侮蔑の悪魔・後編

enarinさん

☆皆さん、現在連休中かもしれませんので、秋の夜長に、ボカロ小説でも、どうですか?

○ボーカロイド小説シリーズ第13作目の” クロスリンク・プロブレム ミクの試練!“シリーズの第4話です。
○ちょっと現実にありそうな問題と、それとリンクするファンタジーの世界、それらをクロスリンクさせたお話です。
○ちとオカルトも入りますが、そこら辺は今の流行って事で…。

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2014-09-14 17:48:25 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:655   閲覧ユーザー数:655

(舗装劇場・廊下(異空間))

 

 ミクは、眉間にしわを寄せて、じっとベルゼブブを睨み付けていた。

 

ミク:こっちの世界の事だとしても、私の家族に非道なことをしたお前を、私は絶対に許さない!

ベルゼブブ:・・・我々はお前と対峙するために存在している。その態度で大丈夫だ、問題ない。かかってくるがいい

ミク:言われなくても、たたっ斬ってやるわ!!

 蠅の王にして、魔王と呼ばれるベルゼブブは、やはり余裕なのか、言葉に焦りがなく、ひるみもしなかった。

 

ミク:でっやー!!!!!

 

 ミクは神威の力と技量を信じて、刀を上段の構えに保ちながら、一気にベルゼブブとの間合いを詰め、後方に振り上げてから、ベルゼブブの真っ正面で、一気に振り下ろした!! 一刀両断の構えである!

 

 ズバッ!

 

ミク:やった! 会心のアタリ! 真っ二つよ!

 

 ブーン!

 

 それは全く持って“意外な反応”だった。真っ二つになったベルゼブブは、大量の子蠅に分離して、四散し、ミクのかなり前方まで後退してから、全てが合体して、元のベルゼブブに戻ってしまった。

 

ミク:そ・・・そんな・・・そんなのズルいわ!!!

ベルゼブブ:実戦にズルもなにもないわ。我がだてに“蠅の王”、“魔王”と呼ばれておらぬわけ、わかったか?

 

ネル:ミク! 落ち着け! さっきとはワケが違う!

ミク:・・・核(コア)があるはず・・・この手のRPGじゃあ、弱点はコアって相場が決まっているのよ!

ベルゼブブ:・・・実戦とゲーム、果たして相違がないと言い切れるかな?

ミク:見たところ、さっきの分離では“子蠅”しかいなかった。ならば“どれかの子蠅”がコアのはず!

 ミクは一歩下がって、しっかり足を踏ん張って、そして1つ前にやった“かまいたち”に任せようと思ったのだった。

 

ベルゼブブ:ほぉ、“下手な鉄砲も数打ちゃ当たる”作戦か

ミク:コアが解らないなら、“全部斬り捨てれば”いいのよ!

 

 ミクは先ほどの“アスタロート”との戦いほど無茶苦茶ではないように、刀を振り回した。同じように、自動発射しホーミングし回避不可能の「かまいたち」を、無数に刀から発射した!

 

ベルゼブブ:ふふふ、やってみるがいい

 

 ミクのかまいたちの数発で、先ほどと同じようにベルゼブブは多数の子蠅に分離し、更にかまいたちは、その子蠅をホーミングしていって、斬り捨てていった!

 

 シュッ! ズバッ! シュッ! ズバッ!・・・

 

 ボト・・・ボト・・・

 

 次々に真っ二つにされて、地面に落下していくベルゼブブの子蠅。

 

ミク:はぁ・・・はぁ・・・どうよ! これならどれかのコアも真っ二つよ!

 

 しかし、ミクは魔王の本当の怖さを知らなかった。真っ二つにされた子蠅の中から、大量の蛆(うじ)がわき、無数の蛆は再び子蠅になって、斬り捨てられた子蠅の肉体を持って、一カ所に集まり合体していって、いとも簡単に元のベルゼブブへ戻ってしまった。

 

 ミクはあまりのことに刀で支えながらも膝を突いてしまった。

ミク:そ・・・そんな・・・

ベルゼブブ:人の子の“想像”にそぐい、ゲームとやらの仮想空間で“便利に”設定されたような存在ではないのだよ、現実は。もう解ったと思うが、とりあえず言っておこう。お前の“刀”でも“かまいたち”でも、我は倒せない。そして“コア”もない

ミク:この力では勝てない・・・

ベルゼブブ:私も“防御一辺倒”ではないぞ。例えばこんな事もできる

 

 ベルゼブブは右手の杖をかざすと、体の一部の子蠅をミクの方へ数匹飛ばし、ミクの真上で停止させた。

 

ベルゼブブ:消化液だ

 

 どろ・・・どろ・・・じゅーーーー

 

ミク:きゃあああ!!!!

 

 ベルゼブブの子蠅の口から放出されたのは、蠅の消化液だった。ミクは咄嗟に鎧を着ている背中で防御したので、頭部直撃は免れたが、鎧の一部が溶けてしまった!

 

ベルゼブブ:そして、防御しかできないお前に、こんな事も出来る

 

 今度はかなり多くの子蠅を分離させて、子蠅が羽ばたく時に出来る風を一点に集中させて、中型の竜巻を発生させて、ミクに直撃させた!

 

 ビューーーーーン!!!

 

ミク:きゃああ!!!!!

 

 竜巻はミクを後方にかなりの速度で吹き飛ばし、ゴロゴロ転がらせてしまった。当然転がっている時にミクは何度も頭部を地面に打ち付けてしまった!

ミク:う・・・・いた・・・・

 

ネル:ミク!

ハク:大丈夫ですか!?

テト:( ゚ Д ゚!)

 

 3人の妖精はさすがに心配になったのか、ミクの元に駆け寄った。ミクもかなりのダメージを追ってしまった。

 

ネル:大丈夫!?

ミク:う・・・さっきとは・・・全然違う・・・人間型に変身できる位・・・強かったのね・・・

ネル:斬り捨てることもできないし、コアもない・・・じっとしていると子蠅の消化液の餌食・・・どうすりゃいいんだ!

 

ベルゼブブ:ブレイクスルー出来なければ、ここで死ぬだけだ。実にシンプルな答えだよ

ミク:うう・・・情けない・・・あ、あれ? そのパネル、黄緑色に光っているクリスタルがあるのね? どんな力なの?

ネル:え!? ああ、これは、さっきのアスタロートを倒したことで開放された力で、『女神・イシュタル』の力を宿して、悪魔を退魔させた英雄“めぐみ”の力だよ。女神って言うくらいだから、退魔能力と回復能力を持っていると思うけど、能力は・・・え? “サンクチュアリ”・・・つまり、“聖域”だって

ハク:戦闘向けのスキルじゃないわね

テト:σ(・´ω・`*)

 

ミク:『聖域』・・・聖なる領域・・・私たちに使うなら“回復”っぽいけど・・・!

ネル:なんか、わかったの?

ミク:その力、頂戴!

ネル:え!? でも今は戦闘で・・・

ミク:その力、使えばたぶんアレよ、ベルゼブブは、現実はゲームとか架空の延長ではない、って言ったけど、“コンセプト”が同じなら、応用できるはず!

 

ネル:わかった、じゃあ、照射するよ!

 

 カチッ!

 

 ネルはアスタロートの時と同じように、六亡星のパネルに付いているクリスタルの1つ、“黄緑色のクリスタル”、を輝かせて、光をミクに当てた!

 

ネル:能力召還! 女神・めぐみ!

 

 ピカーーーー!!!!

 

 ネルが当てた光がミクの体をたどった軌跡の通りに、黄緑色のアイドル服を着て、アクセサリーのゴーグルを付けた、若い女性の姿に変わっていた。

ミク:これが・・・女神『めぐみ』の力・・・

ネル:正直、これでどうやって戦うのか解らないけど、さっきも言ったとおり、この能力で使えるスキルは“サンクチュアリ”だけ。回復には使えると思うけど・・・

ミク:道具も使い方次第かもって事よ!

ネル:?

ミク:まずは私の回復に使うわ

 

 ミクは、ちょうど“噴水”になるように、上に両手をかざして、スキルを唱えた。

 

ミク:サンクチュアリ!!

 

 ミクの両手の手のひらから、白く輝く光が放出されると、物理学に反するように、ある程度の高さで上昇を止めて降下してきて、ミクはその光を浴びる事になった。

 

 パァァァァ

 

ミク:ああ、気持ちいい! 体力も精神力も回復したみたい!

 

 その光景をベルゼブブは静観していた。

ベルゼブブ:人の子ものんきなものだな。回復しても同じ事なのに

ミク:さーて、私も気持ちよくなったから、せっかくだ、アンタも気持ちよくさせて上げるわ!

ベルゼブブ:はぁ?

 

 ミクは何を思ったのか、両手を前に突き出し、手のひらをベルゼブブに向け、スキルを唱えた!

 

ミク:サンクチュアリ!

ネル:ちょ! ミク! なにやってるんだよ!

ハク:相手を回復してどうするの!

 

ベルゼブブ:まぁ、もらえるものは貰っておくか

 ピカァァァ・・・・・・シューーーーーーー!!!!!

 

ベルゼブブ:なっ!!!!!!! 肉体が・・・消えていく!!!!

 

ミク:道具も使いよう。私は人間だけど、今は悪魔を倒す側で、聖属性だと思うから、ヒーリングで回復するけど、貴方は悪魔。正反対の属性の存在に、聖属性の回復スキルを使ったら・・・・あなた、そういうゲームやったことないでしょ?

 

 ジューーーーー!!!!!!!

 

ベルゼブブ:か!体が!!!!!

 

ミク:教えて上げるわ。反対属性の相手には“ダメージ”になるのよ! それも相当効果のあるスキル!

 

 ジュワーーーー!!!!!

 

 ベルゼブブの肉体は表面からボロボロ溶けて消滅していった。

 

ベルゼブブ:わ・・・われが・・・こんな事で・・・滅ぼされてたまるか! 分離!

ミク:それを待っていたわ!

 ベルゼブブは無数の子蠅に分離して、光から逃れようとした。しかし、それは逆に最も危険な事だったのだ。ミクは腕をグルグル回転させて、光の軌道を子蠅が飛んでいるエリアにまんべんなく設置したのだった。子蠅になったことで、光との接触面積が逆に増えてしまったため、ベルゼブブ本体だけなら“表面上”だけだったのに、子蠅では“完全消滅”にまで効果が発展してしまったのだった。

 

子蠅達:ぬぉおぉぉぉぉぉおおお!!!!

ミク:焦ったわね! 貴方のその能力が、逆に致命傷になったのよ!!! 消えろ!!!!!

 

 ギューーーーーーーーン!!!! ジュワーーーー!!!!

 

 ミクの光で子蠅の数はどんどん減っていった。そして遂に、残り1体だけになった。その時、ミクは何を思ったのかサンクチュアリを中断させた。

 

子蠅:・・・悪魔に情けを掛けるのか?

ミク:いえ、あんたから、聞ける範囲で情報を聞き出そうって事よ。勿論、終わったら、無慈悲に消し去るわ

子蠅:・・・人間にしては面白い。それにお前には話しておかなければならない事項もあるにはあるからな

 

 こうして、戦闘は最終段階に入って、会話戦に変わったのだった。

ミク:まず、あんた達“悪魔”は、一体なんなのよ。少なくても私の世界では、“人間の悪意や所行の象徴”って、ゲームの攻略本に書いてあったけど

子蠅:その通りだ。こちらでは更に拡張されて“それらが具現化した物”になっている。最もお前のような“特殊な存在”でないと、我々と会話も接触もできないがな。出来ない連中にとっては、“悪魔の囁き(ささやき)”により、悪魔と契約するまでの存在で止まるがな

ミク:あんたは、上位の悪魔だと思う。人間の姿にすら変身することができるから

子蠅:ああ、そうだ。魔王だからな。しかし、それをも倒す“お前”は、『人の子にして、修羅の子』なのだろうな。だからこそ、“あの方”、が希望を託して、我々に命を下したのだろう

ミク:はぁ? 『あの方』?

子蠅:深くは語れないが、言っておくべき事とは、我々“悪魔”の事だ。おまえにとって、我々は忌々しい存在だと思っているだろうし、それでいいのだ。しかし、ここはお前の元の世界とクロスリンクしている世界、そして、今回のリンレンの事でよくわかっただろうが、この世界で我々が関わった事例は、お前の世界でのお前の家族が抱えている、“他人に言えぬ悩み”だ

ミク:そ、それは心から理解したわ! 知らなかった私にも家族として責任がある事を!

子蠅:いや、“人に言えぬ悩み”であるから、お前が何でも知っていると、むしろ異常だ。だからこそ、あの方が危惧して、我々を使い、そこの3妖精がお前をこっちに召還するような策を講じたのだ

ミク:なんでわざわざ・・・。現実世界に干渉すれば、それで済む事じゃないの

子蠅:あの方だけでは現実世界に手を出すことが出来ない。クロスリンクしているこの世界とクロスリンク元の世界を繋ぐ、お前の活躍が必須条件だったのだよ

ミク:その“あの方”の力で、こっちの世界に干渉して、クロスリンクさせればいいじゃないの!

子蠅:あの方の力は、布石を置くこと。つまり“クロスリンクさせて現実世界を変える”事が出来るのは、実質、お前だけだ。だからこそ、我々がこちらの世界に影響を与えて、お前に現実の世界で起こっていることを知らせ、こちらの世界をブレイクスルーさせて、現実を変えさせるようにし向けたのだよ

ミク:ちょっと待って! アスタロートは明らかに間一髪で助けられたし、お前は時間を止めた直後、“計画を邪魔された”って言っていたじゃないの! 今の話と、完璧に真逆じゃないの!

 

子蠅:我々はお前に試練を与える存在。だから、あの方が設定した我々の計画は、お前がやるべき事を邪魔する事。我にしても、アスタロートにしても、これからお前が会うだろう両親の分身それぞれに干渉している悪魔にしても、同じ事だ。お前が我々の試練にうち勝てるような“強さ”を身につけていなければ、“お前の事をお前の家族を救える器ではない”、と判断して、あの方も諦めるつもりらしい。世の中、それほど、甘くはないのだ。・・・さて、結局、語れる範囲を大分オーバーしてしまったが、ここまでが我々の会話の限度だ

 

 チャキ!

 

 ミクは両手の平をクロスさせて、最大級の出力で、サンクチュアリを放つ用意をした。

 

ミク:これだけ教えてくれた相手を消滅させるのは、人道的にどうかと思うけど、“あの方”の事、お前達の存在意味の事を考えても、こうするべきなんだろうね

 

子蠅:そうだろうな。我々に完全消滅はない。お前だけでなく、他の家族の一員が同じ境遇になった場合、我々も選別されて召還されるのだ。必要があらば、な

ミク:でも、私はもう、会いたくないわ。リンレンに貴方がした事は、許されることではないわ

子蠅:そうだろうな。我としても、我を討ち滅ぼすような奇異な力を持つお前に、もう会いたくない。さっさと消し去ってくれ

ミク:ええ、さようなら

 

 バシュ!!!!! ジュ!・・・・・

 

 子蠅はあっけなくサンクチュアリの光によって、消滅してしまった。

 

 シューーーーーン

 前と同じように、ミクの姿は元の学生服の姿に戻った。そして、3つ目の“純白色のクリスタル”が光り出した。

 

ネル:新しい力がまた宿ったみたいだね。えっと、「魔神・バアルを宿している“ミキ”」への変身が可能になったんだ。残りの灰色のクリスタルは3つか

 

ミク:次は誰?

 

 ミクは4つ目の灰色のクリスタルをのぞき込んだ。そこには、メイコ母さんの姿が映っていた。しかし、いつもの服ではなかった。

 

ミク:メイコ母さん?・・・この服は“スーツ”・・・って事は、OL・・・いや、もうちょっと役職が上の会社員かな

ネル:えっと、名前は“咲音メイコ”ですね。“酒井不動産”の秘書をやっているそうです

ミク:“咲音”・・・また名字が違うのね

ハク:では、“酒井不動産”までワープします!

 

 ビューーーーーン!!!!

 

 ハクの声と共に、前と同じように4人の姿は消えていった。

 そして消えたと同時に、時間停止が解けて、止まっていた物が動き出した。

 

リン、レン:・・・・あれ?

リン:私たち、何やっていたんだっけ?

レン:漫才やったんだよね、で、今が帰りで・・・

 

 リンレンの後方から、リンレンのマネージャーが駆け込んできた。

 

リン:あ、マネージャーさん

マネージャー:もう、ロードローラーズのお二人さん、帰るなら言って下さいよ。今日のトリやって、疲れているんでしょ?

レン:あ、僕たち、そういえば、トリだったんだっけ

マネージャー:そうですよ! 今や、漫才界の売れっ子コンビ! 自覚持って下さいよ!

リンレン:すみません。あ、あの、お詫びに、今日は私たちが奢りますから、焼き肉でも食べましょうか!?

マネージャー:お! いいですね! 食べましょうか!?・・・・・って! 今日のギャラ、落としてますよ!

 

 リンレンの前には、お金が入ったギャラ袋が落ちていた。

 

リン:うわ! 危なかった!

 

 リンは分厚いギャラ袋を広い、カバンに閉まった。

 

レン:じゃあ、行きましょうか!

 

 こうして、リンレンとマネージャーは、意気揚々と、焼き肉屋さんに出かけたのだった。

 

(続く)

 

CAST

 

ミク:初音ミク

リン(鏡音リン):鏡音リン

レン(鏡音レン):鏡音レン

 

妖精ネル:亞北ネル

妖精ハク:弱音ハク

妖精テト:重音テト

 

その他:エキストラの皆さん


 
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