No.717307

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第263話

2014-09-14 13:20:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1546   閲覧ユーザー数:1438

 

10月4日――――

 

 

~翌朝・鳳翼館・ロビー~

 

「窓の向こうが一面の雪景色だな……」

「幾ら何でも早すぎるだろう!?」

「山の天気は変わりやすいという話は聞いた事はありますが……」

「ああ……ノルドでも中々見ない現象だ……」

翌朝仲間達と共にロビーに集まったユーシスは窓の外の景色―――雪景色になったユミルを驚きの表情で見つめ、マキアスは信じられない表情で声を上げ、セレーネは戸惑いの表情をし、ガイウスは重々しい様子を纏って頷いた。

 

「どんどん積もってきている……これは雪かきが必要だね!」

「えー……めんどくさい。」

トワの話を聞いたエヴリーヌは嫌そうな表情をした。

「この勢いだと、午後には相当積もるはずです。帰りに俺達が乗るケーブルカーの運行にだって支障が出る可能性が―――」

「いや、もう遅い。」

「お早うございます……兄様、皆さん。」

そしてリィンが何かを言いかけたその時、シュバルツァー男爵とエリスがリィン達に近づいてきた。

 

「父さん……?エリスも……!」

「一通り郷を見て回ったが、山の斜面にも雪だまりができてしまっている。ケーブルカーはしばらく運行できないだろう。」

「そ、そうなんですか……昼には帰る予定でしたけど……」

「しばらく、身動きが取れなくなりそうね……」

シュバルツァー男爵の説明を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、サラ教官は真剣な表情で考え込んだ。

 

「いや、その点に関しては心配いらない。このユミルがメンフィル領になって少ししてからメンフィル帝国によって設置された転移門があるから、それを使って帰るといい。先程そちらを調べた所、問題なく動いていたから転移先を経由してトリスタに帰る事は可能だ。」

「そうですか…………」

シュバルツァー男爵の話を聞いたエマは安堵の表情をし

「ちなみにその転移門はどこと繋がっているんですか?」

「セントアークとメンフィル大使館だ。ただし、メンフィル大使館は大使館側の許可を貰えなければ、使用できない。」

「フム……という事はセントアークから帰るのか。やれやれ、面倒な帰りになりそうだね。」

「でも、帰る手段があるだけラッキーと思った方がいい。」

アリサの質問に答えたシュバルツァー男爵の話を聞いたアンゼリカは疲れた表情で溜息を吐き、フィーは静かに呟いた。

 

「兄様……」

「ああ……」

「?どうかしたのか?深刻な顔をして……」

互いの顔を見合わせて重々しい様子を纏っているエリスとリィンに気付いたラウラは不思議そうな表情で尋ねた。

「実は……8年前ぐらいにも、似たような事があったんだ……」

「えっ!?」

「そうだったな……ちょうど同じ状況だ。あの時は確か……3日程雪が降り続いたはずだ。その後唐突に止んでしまったが…………」

「フム……何か事情がありそうだね?」

リィンの話を聞いたアリサは驚き、シュバルツァー男爵は8年前の出来事を思い出し、その様子をアンゼリカは真剣な表情で見つめた。

 

「そう言えばリィン、従業員からこれを預かってきた。――――”鳳翼館”トールズ士官学院Ⅶ組当てに来た郵便物だ。」

「え……」

「これって……実習の封筒!?」

「どういう事だ……!?」

「差出人は書いていないようだが……」

「一体何故このタイミングで……」

「へえ?面白いじゃない。リィン、開けてみなさい。」

シュバルツァー男爵がリィンに手渡した見覚えのある封筒にそれぞれが戸惑っている中、サラ教官は口元に笑みを浮かべて指示をした。

 

「あ……わかりました。…………―――『Ⅶ組諸君に、”特別実習”の”課題”を手配する。ユミル渓谷に赴き、季節外れの積雪を阻止せよ』……!?」

「しかも最後にリィン・シュバルツァー同行の事って書いてあるよ……!?」

「積雪を阻止せよって……どういう事!?」

謎の課題内容にリィンやエリオット、アリサは信じられない表情をした。

「とても信じられないが……どうやらこの異常な雪は何者かの仕業らしいな……」

「馬鹿な!?」

「だが……確かにそうも読める。」

リィンの推測にユーシスは声を上げ、ガイウスは真剣な表情で考え込んだ。

 

「それにこの文面……どこかで見た事のあるパターンのある気が……?」

「あ、わたくしもです。」

「ああ…………」

「……………(もしかして、あいつ?)」

フィーの言葉にセレーネとリィンは頷き、ある事に気付いたエヴリーヌはある人物を思い浮かべた。

 

「さて……どうするの?」

「……………―――行きます。この雪を降らせている何者かが、俺達を呼び出している……しかも、俺に関してはわざわざ名指しまでして……確証はありませんが、確かめない訳には行きません……!」

「そうですね。」

「フッ、頼もしい限りじゃないか。」

「うん、去年の試験運用を思い出すね……あの時も大変だったけど、Ⅶ組はわたし達の時よりずっと、いいチームに育ってくれたのかもしれないね。」

サラ教官に促され答えを出したリィン達の様子をアンゼリカは感心した様子で見守り、トワは嬉しそうな表情でアンゼリカの言葉に頷いた。

 

「みんな、早速向かおう!」

「フン、ならば準備するか。」

「き、危険です!」

そしてリィン達が行動を開始しようとしたその時、エリスが必死の表情で声を上げた。

 

「エ、エリス?」

「だ、だって……どんな得体の知れない相手が待っているかわからないのに……!そんな場所に……兄様達を行かせる訳にはいきません!」

「エリス……彼らは士官学院の生徒。危機に立ち向かう術を学ぶ者達だ。お前の兄も同じ……見守ってあげなさい。」

「父様……!でも、でも……!」

「エリス……大丈夫だ。」

シュバルツァー男爵に反論しようとしたエリスをリィンは優しく諭し始めた。

 

「兄様……」

「あの時と似た状況だけど、今回はみんながいるんだ。俺はきっと……”あの日”を乗り越えて見せる。だから……いい子で待っててくれ。……な?」

「……わかりました。絶対に……無事に戻って来て下さい……!もし戻って来なかったら、私が姉様と一緒に兄様を助けに行きますから……!」

「ああ……わかっている。」

真剣な表情で自分を見つめるエリスの言葉にリィンは静かに頷いた。

 

「フフ、リィンの事は私達に任せてちょうだい。」

「ああ!きっと無事に戻ると約束しよう!」

「はい……よろしくお願いします……!」

そしてアリサとマキアスの言葉に頷いたエリスは頭をアリサ達に頭を深く下げた。

 

「それじゃあ、行ってくるよ、エリス。」

「ええ……行ってらっしゃいませ、兄様……!」

その後準備を整えたリィン達はユミル渓谷に向かった。

 


 
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