No.716861

ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY24 年長者の実力

やぎすけさん

どの世界でも、主人公より年長者って奴の中には必ずチーターが交じっている

2014-09-13 09:27:52 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1170   閲覧ユーザー数:1138

前回のあらすじ

 

教皇の姑息な戦法によってアスナを盾にされ、動揺した隙に捕らわれてしまったキリトとデュオ。

2人を吸収したことで教団の巨大な人型兵器“神”が完成した。

動き出した神は教皇と共に何処かへ飛び去って行き、ベリルはシュヴァルから教皇の野望を聞く。

もはや気力だけで命を繋いでいる状態のシュヴァルは最期に、キリト、デュオ、アスナの3人を救って欲しいとベリル頼み、光となって消えた。

その後、教団の手によってフォースゲートが開かれ、さらに開放されたテラーメモリーの力によって街にモンスターが溢れ出す。

容赦無く人々を襲うモンスター。

しかし、そこへ頭部に教皇を乗せた神が鎧騎士を率いて現れ、モンスターを一掃する。

教団本部の頂上から教皇の自作自演を見ていたベリルは、シュヴァルの遺言を果たし、ウィアードアーティファクトである“夜空の剣”を奪還すべく行動を開始。

本部の頂上から華麗なダイナミックバンジージャンプ(紐なし)を決め、モンスター出現の原因であるテラーメモリーを破壊するため密林へと向かった

 

STORY ⅩⅩⅣ 年長者の実力

 

 

 

 

ベリル視点

球体から伸びている電流の数からして、起動している“テラーメモリー”は3つ。

教団が生み出したあの板切れには、アスナ(嬢ちゃん)の記憶の結晶が動力源として使われており、それによってモンスターを出現させている。

ならば、まずはそれらを破壊して記憶の結晶を取り戻してモンスターの発生を止め、それから“夜空の剣”を回収に向かった方が良い。

熱帯林のそれに近い木々が生い茂る森を、空に疾る電流を頼りに進む。

 

ベリル「おっ・・・あったあった」

 

獣道を通って深い茂みを抜けて視界が開けると、古い石材で造られた遺跡の広場に出た。

その広場の奥には、唯一真新しい素材でできた黒い板切れ、テラーメモリーが建っている。

やはり電流の出所はあの板らしく、建造物の中央には黒い電撃が突き刺さっていた。

 

ベリル「んじゃ、ファイト一発といきますか」

 

コキコキと音を立てて首の骨を鳴らし、剣に手を掛けながら再び歩を進める。

すると目の前で、板の中央部に電撃が集まり出した。

それは、直径3mを軽く超える球体へと変化しこちらへ向かって飛んでくる。

帯電する光のボールは、そのまま俺の目の前に着地し弾けた。

強烈な光に、俺は顔を手で覆う。

やがて光が収まったのを感じて目を開けた俺の前にいたのは、一言で例えると死神だった。

真っ黒なフード付きのボロいローブに包まれる白骨化した顔と腕。

そこだけ生々しい血管が浮き上がる眼球と、そのぎょろりとした視線。

そして右手に握るのは、凶悪に湾曲した刃から赤黒く粘っこい雫をぽたぽたと垂らす長大な黒い大鎌。

ぐるりと回った眼球が、対峙した者にさらなる恐怖と嫌悪感を与えることだろう。

それが普通の人間ならば・・・

 

ベリル「“The Fatal scythe(ジ・フェイタルサイズ)”?名前のわりに、見かけからしょぼいな・・・」

 

“死を覚悟した瞬間の恐怖を具現化する”というものだと言うから少し期待してみたのだが、とんだ期待外れだった。

俺がそんなことを考えている間に具現化したフェイタルサイズは、空中をゆっくりと移動して迫ってくる。

俺は剣から手を放しつつ歩調は変えずに歩き続け、そのままフェイタルサイズを横切った。

大鎌を振り被っていた死神が素通りした俺の後ろで振り返るのを気配で感じ、それが振り下ろされるのも感じ取れる。

だが俺は、それを回避することも防御することも、抜剣することさえしなかった。

理由は単純。

次の瞬間、赤い閃光を纏って叩き降ろされてきた大鎌が地震にも似た地響きを立てて地面に突き刺さった。

それによって舞い上がった土煙が、フェイタルサイズの吐き出す瘴気と混ざり合って周囲を包む。

少しして視界が晴れ、互いの姿が視認出来るようになった時、フェイタルサイズは驚くような素振りを見せた。

当然といえば当然だろう。

たった今仕留めたはずの敵が、無傷のまま腕を組んで自分の得物に寄りかかっているのだから。

そう、俺がこいつの攻撃に対して回避も防御もしなかった理由は、単純にその必要がなかったからだ。

普通に考えて、鎌を縦に大振りしてくるなら、当たる直前に身体を逸らせば当たることはない。

動揺しているのか、硬直して動かない“運命の鎌”様に問い掛ける。

 

ベリル「どうした?死神も俺の行動は予想外だったか?だとしたらよく覚えておけ」

 

言葉を切ると同時に抜き放った長剣を勢いよく振り上げ、地面に刺さったままの鎌を打ち上げてやると、それに引っ張られてフェイタルサイズも後退した。

 

ベリル「年長者への礼儀は大切だってな」

 

振り上げた勢いでチャージしておいたエネルギーを、言葉と共に剣を振り下ろして放出する。

緑のプラズマを纏った巨大な衝撃波は、ガラ空きになっているフェイタルサイズの胴を捉え、そのまま吹き飛ばした。

地響きと土煙を立てて転がったフェイタルサイズだが、すぐになんともなかったかのように立ち上がってくる。

その様子に、俺は剣を肩に担ぎながら口笛を吹く。

 

ベリル「雑魚にしちゃ意外とタフだな」

 

完全に立ち上がったフェイタルサイズが、再び大鎌を振り被って襲い掛かってきた。

先程の反撃を受けて学習したのか、今度は縦振りでなく横薙ぎに鎌を振るってくる。

しかしそれも大振りであることだけは変わらないため、動作は大して速くない。

俺に言わせれば“止まって見える程”の遅々とした動作。

俺は迫ってきた鎌を跳び上がることで回避し、そのまま振り切られた刃の腹に着地する。

またもや驚愕の色を見せてくれるフェイタルサイズにニヤリと笑いかけてやると、死神は俺を振り払うために鎌を素早く振り回した。

すぐにその場から跳躍してフェイタルサイズの頭上に身体を躍らせ、その体勢のまま腰のホルスターに手を伸ばして、“ブラン”と“ノワール”と名付けている二挺の拳銃を引き抜く。

 

ベリル「バレット・レイン(弾丸の雨)!」

 

掛け声と同時に引き金に力を込め、上空から無数の弾丸を見舞う。

弾の火薬が炸裂する音に続いて、骨と金属が発する鈍い硬質の音と薬莢が地面に落ちる音が、静かな密林に響いた。

その後、綺麗なフォームで着地した俺の後ろで、ボロマントを弾痕でさらにボロくした死神が大鎌を振り被る。

 

ベリル「まだやるのか?」

 

またも横薙ぎに飛んでくる鎌を、今度は剣で受け止めてみた。

甲高い音を響かせて2種類の刃が噛み合い、接触点からはギリギリと軋むような摩擦音を発する。

フェイタルサイズは得物を押し込もうと力を込めてくるが、俺の剣は全く動くことはない。

 

ベリル「ネタ切れか・・・」

 

力技に頼り始めた時点で、俺にとって奴はもはや戦う価値のなくなったものに等しい。

俺はやはり期待外れだったことに落胆しつつ、剣に力を込めて一気に弾き返す。

打ち上がった鎌に引っ張られて上体のバランスを崩したフェイタルサイズの胴に、フルダッシュからの斬り上げを叩き込んで、同時に自分も跳び上がった。

高度を合わせた後、右袈裟斬り、左横薙ぎ、右払い、叩き付けの順に4段の攻撃を当て、そこから引き戻して連続突きのセンチュリオンに繋げる。

正確な連続突きで白骨の身体を徐々に削り取りながら、上に表示されているHPを見ると、8本あるHPバーの内まだ3本しか削れていない。

 

ベリル「ちまちまやってても仕方ねえか」

 

4本目のHPバーを削り始めた段階で、俺は突きを止めて剣を上段に構える。

そのまま、俺は構えた剣を思い切り振り下ろした。

重力の落下速度が加わった斬撃が、フードで覆われた頭蓋骨を打ち、突っ伏させる形で地面に叩き付ける。

ウィークポイントへの攻撃でHPバーがガクンと大きく減少したフェイタルサイズが立ち上がろうとするが、それより速く目の前に降り立った俺は剣を担いで構えた。

 

ベリル「Shall we go to the “Dance Macabre”(さあ、“死の舞踏”といこうか)?」

 

問い掛けに合わせて前方に大きく踏み込み、敵前ギリギリでの急停止をかけてから袈裟斬りを打ち込む。

再び地面に叩き付けられ、バウンドして戻ってきた骸骨頭に今度は身体を軸に剣を右左右に持ち替えながらの横車輪斬りで2回斬り付ける。

さらに振り上がった剣でさらに左右に袈裟斬りした後、2度目のセンチュリオンで串刺しにした。

目にも留まらぬ神速の突きが、無駄にでかい頭蓋骨にやや大きい風穴を開けながら、そのHPをガリガリと削る。

一気に減少していったHPバーが残り1本になったタイミングで俺は剣を引き戻し、素早く右袈裟斬り、左水平斬り払い、右逆袈裟斬り上げの順に斬撃打ち込み、そこからくるりと手を返して左逆袈裟斬り上げでフェイタルサイズを叩き上げた。

頭に引っ張られるようにして、フェイタルサイズの巨体が真っ直ぐ上に打ち上がるのを見ながら、俺は野球のバッターのようなフォームで構える。

 

ベリル「これで、サヨナラホームランだ」

 

腕に力を込め、刀身にプラズマを帯びたエネルギーをチャージ。

直後、落下してきたフェイタルサイズをフルスイングのホームラン斬りで吹き飛ばした。

斬撃に合わせて駆け抜けたエメラルドグリーンの衝撃波が、密度のある太い首の骨を深々と抉り取って両断する。

胴と頭がさよならしてしまった死神はそのまま空中で爆ぜ、青白い光の欠片となって消滅していった。

光の残滓が舞う中、俺は頭上に円を描くようにして剣を右手に持ち替え、ぶんっ!と振り切ってから背に戻す。

 

ベリル「案外、呆気無かったな・・・ん?」

 

ふとフェイタルサイズが消えた場所に視線を向けた時、消滅していく粒子の中に1つだけ消えない塊があることに気がついた。

一見すると光りの球体のようなそれは、周りのポリゴン片のような淡い光り方とは明らかに違い、強烈な白い輝きを放っている。

なんとなく手を差し伸べると、それを待ち構えていたように光球は俺目掛けて飛来し、その手に収まった。

触れた部分に金属に似た硬質な感覚を感じた直後、光球はじわじわとその姿を棒状に変えて前後に伸び始め、あっという間に2m近い長さの棒に変形する。

次いでその先端からやや薄い板が伸び、湾曲しながら太い刃を形作った。

やがて大鎌の形になった光の塊は徐々にその輝きを弱めていき、光が完全に消え去ると同時にその姿を現す。

それは、先程倒したフェイタルサイズが持っていた黒い大鎌だった。

黒一色の素材で出来た長大な鎌は、柄を握る右手に木枯らしを思わせる冷たさを伝えてくる。

 

ベリル「鎌・・・か・・・」

 

確認すると、名前は“死人鎌(しびとがま)・フェイタルサイズ”というらしい。

使い手を試すような感覚を放つ鎌を少し見つめてから、俺は遠方に建っているテラーメモリーに視線を向けた。

そしてニヤリと口元を歪めた後、手に持つ鎌を横向きに振り被り、回転を加えて放り投げる。

水平に回転しながら飛んで行った大鎌は、テラーメモリーを一閃し、ブーメランのように戻ってきた。

その間に、俺はテラーメモリーに向かって駆け出し、戻ってきた鎌をキャッチする。

ちょうどそのタイミングで、切断したテラーメモリーが切断面に沿ってズレた。

すかさず石突で下側をぶん殴って弾き上げて、高々と上がった所で俺も跳び上がる。

そして残骸の真下から半円を描く軌道で鎌を振り、軽い手応えと共に分断された残骸にファイヤーダンサーさながらに振り回した大鎌の斬撃を浴びせてさらにバラバラに切り刻む。

一通り斬り終えて着地した俺を追って、1つ1つがレンガ程度の大きさになった瓦礫が落下し、小さな山を作った。

息を吐き、握った力を緩めた瞬間、大鎌は形そのままの小さなキーホルダー変化する。

 

ベリル「なるほど・・・」

 

確信は出来ないが、どうやらこの大鎌は任意のタイミングで武器形態とキーホルダー形態に変化させられるようだ。

その時の気分で武器を選ぶ―――時には敵から奪い取ることもある―――俺にとってこの特性は都合が良い。

 

ベリル「まあ、何にしても。とりあえずは1つ目だ」

 

キーホルダー化した鎌を石突部分に付いているチェーンで腰のベルトにぶら下げてから、テラーメモリーの起動装置を思い切り蹴り付ける。

その衝撃で、中から直径8cm程度のガラス球のような物体が吐き出された。

上手い具合に俺の手に収まった淡い銀色の輝きを宿す球体を、俺は新しくウインドウから呼び出した専用のポーチに詰めて腰に固定した。

 

ベリル「あと2つ」

 

残るはプラントと森林に設置されているテラーメモリーと記憶結晶、そして夜空の剣。

この分ならまだまだのんびりしていても問題はなさそうだが、いつまでも神(笑)に取り込まれたままじゃ、坊やも嬢ちゃんも気分良くないだろう。

俺は気持ち急ぐ程度の感じで、密林を抜けるべく歩き出した。


 
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