No.716474

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第259話

2014-09-12 14:30:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1964   閲覧ユーザー数:1787

 

 

~シュバルツァー男爵邸~

 

「そう言えばリィン。二月ほど前に老師と会ったぞ。」

ベルフェゴール達との話を終えたシュバルツァー男爵はある出来事を思い出してリィンを見つめて言った。

「ユン老師に!?本当ですか!?」

「ああ、相変わらずご壮健でいらっしゃった。気を抜いていたら、飲み比べで負けてしまったよ。」

「もう……何をしていらっしゃるんですか?」

苦笑しながら答えたシュバルツァー男爵の話を聞いたエリスは呆れた表情で父親を見つめ

「ハッハッハッ!」

シュバルツァー男爵は笑って答えを誤魔化した。

 

「俺については何か仰っていましたか?」

「ああ……」

リィンに尋ねられたシュバルツァー男爵は手紙をリィンに手渡した。

「手紙?」

「老師から預かった。読んでみるとよかろう。」

「は、はい。これは……」

シュバルツァー男爵に促されたリィンは手紙の封を切って手紙の内容を読み始めると驚きの表情をした。

 

「どうしました?」

「何か気になる事でも書いてあるのですか?」

リィンの様子を見たエリスとセレーネは不思議そうな表情でリィンを見つめた。

「ハハ……相変わらず自由に過ごされているみたいだ。大陸各地をのんびり放浪しているらしい。そんな近況報告と、俺はの”ある言葉”が書かれている。」

「”師として”のお言葉ですか……?」

「一体何が書かれてあるのでしょうか?」

「ああ……これさ。」

エリスとセレーネの問いかけに頷いたリィンはエリスとセレーネに手紙の内容を見せた。

 

「……『お前に授けた”七の型”は”無”。そして”ある事”と”ない事”はそもそも”同じ”……その意味を今一度考えて見ろ。』ですか?」

「どういう意味でしょうか?」

「…………」

「どうやら老師は気付いていたみたいですね。」

エリスとセレーネに尋ねられて押し黙るシュバルツァー男爵にリィンは静かな表情で尋ねた。

 

「「え……?」」

「その言葉は老師に弟子入りして、最初に教えてもらった言葉だ。俺が未だにその意味を掴めないでいる事を、そして……色々な意味で迷っている事を老師は見抜いていたという事さ。」

「あ……」

「それは……」

リィンの説明を聞いた二人はリィンが抱え込んでいる”悩み”を思い出して複雑そうな表情をした。

 

「老師からの”宿題”と言う訳だ。仲間と湯につかりながら、せいぜい考えてみるといい。」

「はい……」

シュバルツァー男爵の言葉にリィンは真剣な表情で頷いた。

 

「あなた!すみません……!ジャムの蓋が固くなってしまって……開けて下さらない?」

「ああ、今行く!」

そしてルシア夫人に呼ばれたシュバルツァー男爵は立ち上がってキッチンで用事をしているルシア夫人の元へと向かった。

 

「そろそろお茶の支度も整うみたいですから、難しい話はこのくらいにしましょう?」

「ああ、そうだな。」

「そうだ、兄様。今夜は屋敷でお休みになるんでしょう?」

「ああ……すまない、エリス。お茶を飲んだら”鳳翼館”に戻るよ。」

目を輝かしたエリスに尋ねられたリィンは申し訳なさそうな表情で答えた。

 

「うっ……そ、そんな!今日くらい、いいじゃないですか!」

「今回の帰郷はあくまで陛下のご厚意によるものだからな。食事も宿泊も士官学院のみんなと過ごすのが筋だと思うんだ。」

「もう……お兄様は真面目すぎですわ。エリスお姉様のお気持ちを少しは考えてあげてはどうですか?」

「理屈はわかりますけど……フウ。仕方ありません……あ、明日もちゃんと来てくださいね!?」

リィンの説明を聞いたセレーネは呆れた表情で指摘し、エリスは溜息を吐いた後真剣な表情でリィンを見つめた。

 

「ああ、わかっている。」

「絶対ですからね!?」

「お兄様、これを機会にエリスお姉様ともっと親交を深めてくださいね?」

「わ、わかっているって!というか何でそこでセレーネがエリスの味方になるんだよ……」

「フフッ、あらあら……”兄様”を避ける為に女学院に行ってしまった娘はどこに行ったのかしら?」

「3年前、リィンが養子だと知った頃合いだったか。」

リィン達の様子をシュバルツァー男爵夫婦は微笑ましく見守りながら昔の事を思い出した。

 

「それまでミルスからエリゼと一緒に帰ってくる度にべったりだったのに……いきなりよそよそしくなって。よほど混乱したんでしょう。フウ……リィンがあの娘達をお嫁にもらってくれれば、万事収まるんですけど……」

「うむ……よくできた息子だとは思うが、そう簡単に娘達はやれんぞ。」

ルシア夫人の希望を聞いたシュバルツァー男爵は複雑そうな表情で考え込みながら呟いた。

「大人気ないですよ、あなた?フフ……でも、学院のお嬢さんたちも素敵だという噂ですし、今の時点でも今まで会った事のないような素敵な女性の方々に慕われているのですから、未来がどうなるかは誰にもわかりませんわね♪」

「”未来”か………両帝国で過ごしている子供達が無事に望む未来を掴めるといいんだが……」

ルシア夫人の話を聞いたシュバルツァー男爵は重々しい様子を纏って呟いた。

 

その後お茶をご馳走になったリィンとセレーネは”鳳翼館”に戻り、仲間達と共に夕食を取り始めた。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
3
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択