No.715246

涼宮ハルヒの製作 エピローグ

ユウジさん

とりあえず時間軸合せの第一部完ッ!!

2014-09-10 19:53:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:699   閲覧ユーザー数:695

そして、時は移りかわって九月、俺達はとてもとてもテンションが下がっていた。

理由は簡単である。

第七回ガンプラ世界大会の事故を皮切りに、プラフスキー粒子が各地へと提供されなくなったのである。

その事件に関係あるのかないのか知らんが、会長と秘書も行方不明とか新聞に書いてあったな……。

そのせいもあって、実質会社は活動停止となってしまったという報道が一時期紙面を賑わしていた。

もともとプラフスキー粒子は製造方法とかも秘匿とされていたってなんかで読んだし、活動停止とあっちゃあどうしようもあるまい。

ハルヒが初めてガンプラバトルに勝利した日から細々とガンプラバトルを続けていたわけだが、これにより子供がおもちゃを取り上げた後にふてくされるように、半ば諦観とともにこのガンプラバトルが出来なくなった状況を甘受せねばならなくなった。

 

「ねえ、キョン」

 

教室でノートをうちわ代わりに扇いでいると、それはもう頬杖を突いてアンニュイといえば聞こえがいいが、実際はやる気がないという状況のハルヒからお声がかかった。

 

「なんだ?」

 

「アタシも扇いで」

 

「却下だ」

 

「あっそ、ケチ」

 

「ケチで結構だ、それとハルヒ」

 

「なによ」

 

「最近、ガンプラ作ってるか?」

 

「……作ってるけど、進捗の方は聞かないでね」

 

「そうか」

 

モチベーションが下がるのも致し方ないことだ。

もともとハルヒは『バトルするため』にガンプラ始めたようなもんだからな。

ガンプラバトル世界大会をみんなと集まってTVで見たときのハルヒのテンションの上がりようは凄まじかったからな。

このまま世界選手権を目指す、なんて言い出さないかひやひやしたものである。

まぁ、実際のところそんなことにはならなかったが大会期間中はガンプラバトルのペースが上がり、戦っては勝ち、戦っては負け、の繰り返しだったが、それも世界大会決勝まで。

ニュースで見た限りでは、プラフスキー粒子が暴走を起こしたようにしか見えない事故が起こり、さっきも言ったとおり各地にプラフスキー粒子が供給されなくなったのだ。

それを知ったハルヒの落胆ぶりは凄まじく、SOS団定期ミーティングという名目の不思議探索パトロール+ガンプラウィンドウショッピングも一時休止と相成ってしまったくらいだ。

このままではいかんと思い、未作成のブレイズザクファントムをハルヒに押し付けるように渡し、これを作るように促した。

受け取るには受け取ってくれたが、先ほどの返答を聞くにあまり進捗の方は芳しくはないようだ。

俺も俺で、陸戦型ガンダムがまだできてないしなぁ……、まずいよなぁ、この状況。

 

そして放課後の部室。

気だるげに椅子に座り、何をするでもなくボーっとしているところに古泉が話しかけてきた。

 

「おや、どうなされました?心ここに非ずという感じですが」

 

「いや、なんだかテンションが上がらなくてな……」

 

「心中お察しします、しかしいつまでもそのままというわけにはいかないのでは?」

 

「頭では分かっているんだがな、どうも気持ちの方が理解してくれん」

 

「そうですか……」

 

と納得したようなしてないようなあいまいな返事をする古泉。

少しばかり寂しそうな表情をしているのはきっと気のせいじゃあないんだろうな。

朝比奈さんは朝比奈さんで、俺に話しかけづらいのかもじもじしているし、長門も長門でプラモの雑誌を読んで謎のアピールをしている。

皆に気を遣わせていると思うと本当に心苦しいが、俺もハルヒもどうしようもないんだと思う。

その時ドアの方からがちゃり、と音がして

 

「うぃーす……」

 

なんて谷口かと思うような声を上げ、ハルヒが部室へと入ってきた。

最近のSOS団の放課後というと、まず俺と古泉は談笑を交わしつつボードゲーム。

朝比奈さんは基本お茶くみだが、それ以外の時間は手持ち無沙汰なのか暇を持て余しているのかハルヒの方をちらちら伺いながら暇を潰している。

長門は常に読書である、時々プラモ雑誌を読んではいるが。

そしてハルヒはというと、団長席で前に作ったガンダムMk-Ⅱを寂しそうに弄繰り回しているだけだ。

あぁ、これでは誰が見たってなんとかしなきゃという気持ちになるのが普通だな……。

しかし、俺からハルヒへ何を言えばいいんだ?

どんなことを言ったところでお為ごかしにしかならんだろう……、そんなことでハルヒのテンションが戻るわけでもないし、下手をすりゃ癇癪もありうる。

なんというか、始めたころの気持ちとは言わんが、もう少し気持ちが戻ってほしいものである。

 

「あ」

 

えらく間の抜けた声を出し手しまったが、始めたころで思い出した。

何だ、まだやる事があるじゃないか!

 

「何かありましたか?」

 

すかさず古泉が間抜け日本代表という声を上げた俺へと突っ込んでくる。

 

「いや、俺達はまだ目標を達成していないことを思い出してな」

 

「目標……ですか?」

 

そういうと俺はハルヒの前に立ち

 

「ハルヒ、明日またここでガンプラを作ろう」

 

と告げた。

ハルヒはきょとん、という顔をしていたが見る見るうちに表情が沈んでいく。

 

「アタシはいいわよ、やりたいならアンタだけでやって……」

 

「いーや、こればかりはお前も参加しないわけにはいかないぞハルヒ。

いいか、俺達はまだ目標を達成してないんだ!!」

 

「目標?」

 

「そうだ、忘れていたなんて言わせないぞ。

お前が言い出したことだからな」

 

古泉や朝比奈さんが心配そうにこちらを見ているが、俺は言葉を続ける。

 

「俺達は、最低でも店に飾られるほどのガンプラを作れるようになってないじゃないか!!

古泉や長門、朝比奈さんはともかく、俺達のガンプラは店に飾られるほどの物か!?」

 

「あ……」

 

とハルヒは呆気にとられたような言葉を漏らす。

まったく、思い出すまでに時間がかかっちまったな……、団長様がせっかく立てた目標じゃないか!

 

「そうよ、確かにアタシそう言ったわ……。

やだな、どうして今まで気づかなかったんだろ……」

 

ハルヒの奴も目標を思い出したようだ……、というかショックで当初の目標を忘れるとか、それだけでショックの度合いが伺い知れるものだが。

 

「わかったわ!明日ガンプラ持ってくる!!

だからあんたも持ってきなさいよね、忘れたら死刑なんだから!!」

ハルヒはすっかり元の調子に戻りつつあった。

俺も含めて、まったくやれやれと言った感じである。

まぁ、店に飾られたらその後どうするかは団長様にお任せしよう。

まさか、燃えつき症候群になったりしないよな?

 

 

 

そして季節は巡ること1年、俺達は無事進級することができ、その間にも映画を撮影したり、クリスマスパーティやその他いろいろイベントがてら、ガンプラを作るというハードスケジュールも裸足で逃げだす過密で濃厚な日々を過ごした。

まぁ、その冒険譚はさておき、丁度朝食を食いながら朝のニュースを見ていた時のことである。

そこには信じられないようなニュースが流れた。

そう、それは俺が、いや俺達がいや、この世界中のガンプラファンが喜びのあまり川や海にでもダイブしてしまいそうな最高のニュースだった。

何かの間違いじゃないかと新聞でも確認したが、今日の朝刊にもきっちりとそのBIGニュースは載っていた。

俺はその朝刊を握りしめて朝食を切り上げ、最大船速で学校へと向かった。

一刻も早く、俺の知る限り誰よりもこのニュースを待ち望んでいる奴のために。

日頃から運動もろくにせず体力に自信がない俺があの坂道を全力で上ったこともあり、学校につくころには見事なまでにボロボロになっていた。

 

「ゼェ……ハァ……、グッ……ハァ……」

 

駄目だ、一言も声が出せん。

日頃の不摂生のせいかなこりゃ、たまにはランニングでもして体力をつけるべきだとつくづく思ったよ。

なんて逡巡していると何やら少しばかり俺に視線が集中していることに気付く。

冷静に振り返ってみると、今の俺の姿は相当に奇妙であることがわかる。

全力でここまで自転車で飛ばしてきたせいもあり制服はヨレヨレ、しかも手には今日の朝刊を握りしめている男子生徒。

そりゃ注目を集めるってもんだぜ、と思いつつ息を整えてヨレヨレの制服を直し、一通り落ち着いた後に、上履きに履き替え教室へと向かう。

ドキドキしながら教室のドアを開けると、すでに俺の後ろの席にはハルヒが窓から空を見上げていた。

その瞬間、俺の中の衝動は抑えきれなくなり、その赴くままズカズカハルヒへと向かって行き

 

「ハルヒ!」

 

と、少しばかりボリュームを上げて声をかける。

 

「何よ、朝っぱらからうるさいわね……って何その汗!?」

 

「いや、それは置いておいてくれ。

ところで今日、新聞かニュースは見たか?」

 

「見てないけど……それがどうしたの?」

 

「じゃあこの新聞のこのページを見てくれ」

 

と、俺がページを捲るよう促したそこには

 

『若き天才、ニルス・ニールセン地球軌道上にてプラフスキー粒子の独自生成に成功!』

 

と記してあった。

それを見つけたハルヒはどんどん破顔していき、しまいには精一杯の笑みを浮かべ

 

「キョン、これって……」

 

「あぁ、そうだ!

また近いうちにガンプラバトルができるんだよ!!」

 

あまりの嬉しさに感極まったのか、俺達は人目のある教室だというのにもかかわらず二人して抱き合ってしまった。

まったく、テンションに身を流されると人間何でもやってしまうものだな。

ふと我に返り教室を見渡すとクラス中の視線を集めており、谷口の方を見ると驚愕の表情で固まっていた。

いかん、この状況はもしかしてまずいのでは?なんて思ったがもう手遅れだし、このままハルヒが素に戻るのを待とう。

それから数秒後、ハルヒも我に返ったのか顔を赤くして慌てふためき自分の席へ着いてしまった。

そうして放課後、ハルヒと同伴出勤して部室へと向かった。

HRが終わって……いや、もうちょっと前からだろう、ハルヒはうずうずという擬音が付きそうなくらいに落ち着きがなく、早いとこみんなにこのニュースを教えたいかがわかる。

 

「てぇーい!」

 

と毎回恒例となるこの乙女らしからぬ挨拶とともにハルヒはこのニュースを皆に告げた。

そのニュースに皆は色めき立ち

 

「よかったですね、涼宮さん。またガンプラバトルが出来ますよ。」

 

「またガンプラバトルができるなんて夢のようですぅ……」

 

それぞれがそれぞれのリアクションを取り、このニュースの喜びを分かち合った。

そしてその後、あれよあれよという間にヤジマ商事がPPSD社を傘下に置き、全世界でガンプラバトルが再開し始め、俺達もこの長蛇の列に並びながら今か今かとバトル出来る時を待ちわびている。

ありがとうよ、若き天才。

アンタにゃ、返しても返しきれないものをもらったのかもしれないな。

なんて我ながらくさい台詞だなと思いを巡らせていると

 

「こらキョン!!順番なんだから早く来なさい!!」

 

と、団長様に怒られてしまうのであった。

 

「……で、なんでバトルモードなんだ?」

 

「なによ不服なわけ?

せっかくこのアタシの復帰第一戦目の相手をするっていうのに!!」

 

へいへい、不服はございませんよ、なんて皮肉めいたことを言いつつガンプラをセットし

 

『Battle start』

 

「涼宮ハルヒ、ガンダムMk-Ⅱいくわよーっ!!」

 

このハルヒの喜びの声を合図に、俺達のガンプラバトル生活が再開したのであった。

 


 
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