No.714220

真・恋姫†無双 拠点・曹洪1

ぽむぼんさん

恋姫の世界に曹洪がいたらこんな感じでしょうか?という願望をこめたものです。全部で5話程度の短い文章なのでサクサク読めるようなものを目指しました。

2014-09-07 04:21:51 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4113   閲覧ユーザー数:3487

 窓からの日射しが明るい。眩しい、と感じる程の猛烈な日射し。時刻は丁度正午といったところだろうか。

 栄華は自室の椅子に座って、書簡に眼を通していた。

 書簡に書いてあるものは『三国統一記念・天下巡回つあー』。魏・呉・蜀が統一され平和になった記念に各国の王と側近数名が各地を巡るという、旅行のようなものだった。

“……輜重兵を誰に率いてもらおうかしら。あぁ、どうしてこんな事に”

 などと、小さくため息をついて筆を取り、また戻す。

 机の上には書簡と印章、そして奇麗に先の整えられた数本の筆が乗った硯。

 一見するとこれから仕事を始めるように見える……が、その実、この姿勢に入ってから三時間は経過しようとしている。

 栄華はこと資産運用に関して言えば、魏軍随一だろう。普段ならばすぐに計画し、どの程度の予算がかかるのか計算して、なおかつ「さ、仕事は終わったからお茶にでもしましょうか」と言って厨房へ向かうだろう。しかし、今のこの状況で栄華は集中する事が出来ないでいた。

 理由は言うまでもない。

 眼の前で筆を一心不乱に走らせている北郷一刀が鬱陶しいのだ。「あ、間違えた」と言っては書簡を削り、ゴミを増やしている。何をするのにも煩い男だった。

 栄華こと曹洪子廉は、男が嫌いだ。理由は単純明快。クサくて、汚い。

 幼い頃は嫌いでは無かったし、むしろ元気があって良しと思っていた。嫌いになったのは今日のような暑い日、髭をたくわえた男から漂う形容しがたい臭いと、肌をかくとボロボロと零れおちる垢を見せられてあまりの汚さに失神した時からである。

“あぁ……お姉様!何故こんなクサくて汚い男と一緒に私を閉じ込めるのです!”

 

 

 

 栄華が悩む原因を作ったのは三時間程前の出来事だった。

『三国統一記念・天下巡回つあー』の発案者である北郷一刀は曹操から命じられて栄華と共に三国を巡回する為の物資の配給、整備、衛生面やどの施設を利用するか等の立案を命じられた。

『一刀。三日以内に纏めなさい。栄華をつけてあげるわ。呉と蜀の王にも伝えなければならないから急ぎなさい。そうね、栄華の部屋で練るといいわ』

『は……?お、お姉様?』

『なにかしら』

『わ、私の部屋にこの男を入れろと仰るのですか!?』

『えぇ。何か問題でも?貴女も知っている通り、こう見えて一刀は有能よ。貴女の足を引っ張るような事はしないと思うのだけれど』

『問題だらけです!あぁ、お姉様!私がこの男と一緒だなんて!』

『大丈夫よ。一刀は貴女が知っている野蛮な男とは少し違うわ』

『魏の種馬ですのよ!?』

『酷い言われようだ』

『なんや隊長。違うと思てんの?』

『違……わないけどさ』

『とにかく。時間が無いわ。急ぎなさい』

 

 

 

「―――――はぁ」

何度目かのため息をつき、栄華は再び筆を取る。ふと視線を上げると、一刀の顔がすぐ傍にあった。

 

 

 

ので―――――おもいっきり眼に筆を突き刺した。

「っがぁあああああ!痛い!?いきなり何すんだ!」

目、鼻、口。顔中から液体を撒き散らし転げまわる一刀を見下ろして思う。やはり、汚い。

「男なんてクサくて汚くて……寄らないで!その股間にぶら下がっている焦げた筮竹、ブチもぎますわよ!」

あぁ、なんて汚い!もうこの机は使えませんわ。春蘭にでも売りつけようかしら。と言いながら心底汚らしいモノを見る目をした栄華を前にして、一刀はどうやっても華琳からの命令をこなせない事を確信した。

 

 「栄華と仲良くなれ?」

 一刀は茫然とする。眉間に皺をこれでもか、と寄せて正気か?と顔で抗議をする。

「その顔はやめなさい。あの桂花を堕とした貴方ですもの。きっと私の可愛い従妹の男嫌いもなんとかしてくれるでしょう?」

 正直な所、栄華と仲良くなる事は無理だと北郷一刀は思う。まず、桂花とは男嫌いのレベルが違うと感じるからだ。

「あの桂花が『一刀。どうして昨日は私の部屋に来てくれなったの!もう!』なんて目を潤ませて言うのよ?一体どんな手を使ったのかしら」

 華琳の眼には尊敬の念と嬉々とした何かを孕んでいた。からかう気概満々である。

「桂花はともかく、栄華は無理だろ。部屋をノックしただけで発狂して殴られたんだから。見てくれよこのアザ」

 ほら、と言いながら上着の裾をまくって腹を見せる。そこにはくっきりと、青々とした少女の拳の形があった。一刀は軟弱なわけではない。確かに春蘭や秋蘭といった将軍達にこそ劣るが、そこいらの兵士と同じくらいには強いのだ。そんな体をした男の腹にくっきりとアザを残せる力がどれ程のものか、想像するのに難しくはない。

「あら、私の一刀に傷をつけるだなんて。……どうやら栄華にはお仕置きが必要ね」

 そう言うと唇を一刀の腹に近づけ、アザを軽く愛撫する。

「痛っ」

「ごめんなさい。優しくしたつもりなのだけれど」

 華琳はくすっと笑い、舌をゆっくりとアザに這わせ、傷の形を確かめる。

痛いような、気持ち良いような。ゾクっとする感覚が一刀を苛む。

「いい事を思いついたわ」

 顔を腹から遠ざけて、指を唇にあてながら喋る。

「一刀。貴方の言っていた『三国統一記念・天下巡回つあー』を使わせてもらうわね」

 


 
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