No.713939

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第240話

2014-09-06 00:06:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2302   閲覧ユーザー数:2181

 

 

~ルーレ市・ダイニングバー『F』~

 

「改めて―――こんばんは、リィンさん、フィーさん、レン姫。きちんとした形で話すのはこれが初めてですね。」

「ええ……そうですね。俺も一度、きちんと話したいと思っていました。」

「あら。」

「うふふ、もしかしてクレアお姉さんも落とそうと思っているのかしら♪」

リィンの答えを聞いたクレア大尉は目を丸くし、レンはからかいの表情で問いかけ

「やっぱりわたしお邪魔虫だった?」

フィーは首を傾げてリィンに尋ねた。

 

「そういう意味じゃないから。それとレン姫、”クレア大尉も”ってどういう意味ですか。――――ミリアムの件といい、正直、疑問が多いのも確かです。ですが根本的な質問を一度したいと思っていました。あなた方は――――いえ、オズボーン宰相は一体、何をしようとしているんですか?」

「……!」

「へえ?」

リィンの問いかけに驚いたクレア大尉は表情を引き締め、レンは興味ありげな表情でリィンを見つめた。

 

「夕方の領邦軍との対立……市街で装甲車を持ち出した彼らに共感を覚える事はできません。ですが、地方の治安維持は元々領邦軍の役割だったはずです。あなた方の活動はそれを土足で踏みにじっている挑発行為に思えてなりません。」

「確かに、ケンカを売ってるようにしか見えないかも。」

「まあ、領邦軍にとって設立されてまだ数年の”余所者”に好き勝手される事は間違いなく怒りを覚えるでしょうね。」

「……確かに、そういう側面があるのは否定しません。ですが、帝国における対立はもはや一触即発に近い状況です。加えて現在、独立が盛んに議論されているクロスベルや、民族問題で揺れるカルバード、隙あらば漁夫の利を狙って来るメンフィル……そんな状況で、より広い治安維持のネットワークを構築せざるを得ません。そして―――それができるのは鉄道憲兵隊や情報局だけなのです。」

リィン達の指摘に静かな表情で答えたクレア大尉は真剣な表情でリィンを見つめた。

 

「それは……」

「でも、そういう対立や混乱……拍車をかけてるのもあなた達のボスだよね?」

「……否定はしません。ですが閣下は―――オズボーン宰相はある意味、誠実に行動なさっています。”どこかの誰かたち”のようにテロリストを支援するなどという一線を越えたことはなさらない。それだけは信じてあげてください。」

「あ……」

(うふふ、”赤い星座”を雇った事に突っ込めばどう答えるか興味があるけど、ここは空気を読んで黙っておいてあげましょう♪)

「言っちゃったね。やっぱり、連中(テロリスト)の背景には”貴族派”がいるんだ?」

クレア大尉の遠回しな言い方にある事に気付いたリィンは呆けた声を出し、レンは口元に笑みを浮かべ、フィーは真剣な表情で尋ねた。

 

「もはや否定できないかと。少なくとも四大名門の筆頭、”カイエン公”が背後にいるのは間違いないでしょう。彼らが使った3隻の飛行艇も海都オルディスから流れた物である調べもついている状況です。」

「―――加えて通商会議の時にプリネお姉様が世間に公表した領邦軍に”帝国解放戦線”の身分を保証するカイエン公爵の印籠が押されてあった書状もあったしねぇ?」

クレア大尉の話に続くようにレンは口元に笑みを浮かべた。

「そうでしたか……」

「カイエン公……ケバケバしいオジサンって聞いたけど。確か、ユーシスのお兄さんがレグラムに迎えにきたんだっけ?」

「ああ……聞いた話によるとね。そして今回、そのルーファスさんが秘密裏にルーレを訪れていた……―――教えてください。このルーレで起きていることを。そして……アリサの実家が、”ラインフォルトグループ”がそれとどう関わっているんですか?」

フィーの問いかけに頷いたリィンはクレア大尉に話を促した。

 

「ふふ……ようやく本題に入る事ができますね。―――現在、鉄道憲兵隊では『ラインフォルト第一製作所』への強制査察を検討しています。」

「強制査察……」

「第一製作所……RFグループの一部門ですか。」

(うふふ、狙いはいいけど、それはダミーよ?)

リィン達と共にクレア大尉の話を聞いているレンは口元に笑みを浮かべた。

 

「ええ、鉄鋼などを中心に手がけるラインフォルトの主要部門ですね。その部門に、我々は今、ある疑いをかけている状況です。……お二人とレン姫は、RFグループに様々な派閥があるのをご存知ですか?」

「そうなの?」

「ああ、アリサとシャロンさんがそんな事を漏らしてたけど……」

「まあ、大陸全土に支店を広げている巨大重工業メーカーだから、当然あるでしょうね。」

クレア大尉の説明である事が気になったフィーに尋ねられたリィンとレンはそれぞれ答えた。

 

「ええ、レン姫の仰る通りです。鉄鋼、鉄道、兵器、工作機械など、RFグループは巨大な各部門によって構成されています。問題は、それらの一つ一つが、あまりにも巨大になりすぎた事……そして―――それぞれの部門が貴族派、革新派にわかれている事です。」

「そ、そうなんですか!?」

「……そんな所まで。」

「まあ、”戦争”をするからには兵器の製造元を抑える必要はあるものね。」

クレア大尉の話を聞いたリィンとフィーは血相を変え、レンは納得した様子で頷いた。

 

「勿論、グループをまとめるイリーナ・ラインフォルト会長もある程度は把握しているでしょう。ですが、独立採算制という彼女が導入したシステムもあって各部門の独立性は極めて高く……イリーナ会長も完全には掌握しきれていないようです。」

「……すると、鉄道憲兵隊が査察を検討している『第一製作所』……やはり貴族派が占めているんですね?」

「ええ、そしてその査察を領邦軍に露骨に牽制されている―――それが夕方起きた小競り合いの”背景”になりますね。おそらくイリーナ会長は各部門をコントロールするため現在、動いているのでしょう。ですが彼女は5年前、グループの実権を掌握するために両勢力から力を借りています。その意味では、根本的な解決は難しいでしょうね。」

「キナ臭くなってきたね。」

「ああ……思っていた以上に危うい状況みたいだ。しかも帝国内の対立状況と完全に連動してしまっている……」

「うふふ、グエン会長から実権を奪い取った時にできた”借り”が肝心な所で返ってきたようね。」

クレア大尉の説明を聞いたフィーとリィンは真剣な表情で呟き、レンは小悪魔な笑みを浮かべた。

 

「―――伝えられる情報はここまでとなります。各地でも緊張は高まっていますがルーレは別の導火線も抱えています。”危機”の輪郭も見極め、できれば近寄らないでください。それが今回、”Ⅶ組”の皆さんが実習で学ぶべき経験でしょう。」

「あ……」

「ふふ……それでは頑張ってください。―――レン姫、ホテルまでお送りします。」

「うふふ、ありがとう♪お言葉に甘えさせてもらうわ。―――リィンお兄さん、”西風の妖精(シルフィード)”さん、お休みなさい(グッドナイト)♪」

そしてリィンとフィーに自分の話を伝え終えたクレア大尉はレンと共にその場から去って行った。

 

 


 
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