No.713173

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

もう一つのミッドチルダ

2014-09-02 18:03:47 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3562   閲覧ユーザー数:1855

OTAKU旅団アジト楽園(エデン)

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、つまり大企業のご令嬢さんって事になるのか?」

 

「大まかに言えば、そういう事になりますわ」

 

食堂にはデルタ、二百式、miri、ガルム、竜神丸、ZERO、げんぶ、Blaz以外の旅団メンバーが一通り揃っており、突然楽園(エデン)にやって来た朱音似の女性―――桐山瑞希(きりやまみずき)から自身がバニングス家や月村家に並ぶ大企業の社長令嬢であるという事、自身のいる大企業がOTAKU旅団に資金を送っているスポンサーでもあるという事、そしてUnknownの婚約者であるという事を聞かされていた。その中で、蒼崎は瑞希を見る姿が相変わらずだったが。

 

「刃、お前もよく案内役なんか引き受けたな」

 

「仕事柄、どうしても身体が動いてしまいまして(まぁ、俺がやる必要性が見えなかったがよ)」

 

「にしても、バニングス家に月村家ともねぇ……彼女達とも仲良くやってるんですか?」

 

「よく三人で話をする事もありますわ。たまにすずかさんと一緒に、アリサさんから愚痴や惚気話を聞かされる事もありますけど」

 

「…アキヤ、お前って奴は…」

 

「う……だ、だって、普段の任務も忙しくてさぁ…」

 

「そんなの他のメンバーに任せるとかしてさ、ちったぁ相手とかしてやれよ。女子にとってはなぁ、自分が好きな相手に構って貰えないって地味にキツいんだぞ」

 

「「…そうなのよねぇ」」

 

支配人の言葉に、朱音と瑞希も思わず溜め息をつく。

 

「私がどれだけ迫っても、アン娘は男の子らしい反応を全く見せてくれないし…」

 

「私がどれだけ愛情を見せても、あの人はこちらの気持ちに気付いてくれてませんわ…」

 

「「…はぁ」」

 

(しまった、重い空気になっちまった…!!)

 

朱音と瑞希が精神的に沈んでいっているのを見て、支配人は失言をしてしまった先程の自分を殴りたいという気持ちに駆られてしまう。ちなみに肝心のUnknownは…

 

「さ~て、次の任務もまた無人世界での活動になるから、機体調整はちゃっちゃと済ませて、団長からもコジマ使用の許可を貰う事さえ出来ればまたコジマカーニバルが出来るっと。あぁ楽しみだ、コジマのパワーをフルに発揮出来るなんて滅多に無いチャンスだぞフフフフフフフフフフフフフフフフ…」

 

(((((本人はずっとあんな調子だし)))))

 

次の任務に備え、機体調整の準備などに集中している真っ最中である。仮にもOTAKU旅団No.2の座に就いている男が、本当にそれで良いのか。

 

「まぁとにかくですわ。私もアン娘さんの婚約者の一人として、彼の事を諦めるつもりなんて微塵もありませんわ。そういう事だから朱音、申し訳ないけれど諦めてくれないかしら?」

 

「…ほう、言ってくれるわね? 後から遅れて頭角を現したところで、今更あんたに遅れなんて取り戻せるのかしらねぇ、ミ・ズ・キ?」

 

「あら、何年も一緒にいるにも関わらず進展していない時点で、そちらの状況を察する事なんて非常に簡単ですってよ?」

 

「この…あぁ言えばこう言う…!!」

 

「あぁ二人共、ここで喧嘩したら私も怒るよ?」

 

「何を言ってるのかしらアン娘ちゃん、私達はずぅ~っと仲良しよ? そうよね瑞希」

 

「勿論ですわ朱音。だからアン娘さん気にしなくても大丈夫ですのよ?」

 

「「ホホホホホホホホホホホホホホホホ♪」」

 

(女って大変だなぁ…)

 

(そんな事、今更知るような事じゃないだろうに)

 

Unknownが注意した途端に朱音と瑞希は肩を組んで微笑み合うのを見て、支配人とawsの二人は改めて認識させられる。あぁ、女とはどれだけ複雑で難しい生き物なのかと。

 

「ところで、瑞希さんは今回どうしてここに?」

 

「えぇ。実はちょうど海外での仕事も終えた後でして、それで少し様子を見に来たんですの。アン娘さんも朱音も、元気そうで何よりでしたわ」

 

「…あんたにそう言われると、何だかこっちも複雑な気分になるわね」

 

「あら、これでも純粋に心配はしていましたのよ? 同じ社長令嬢としてね」

 

「ちょ、何でここでそれを言うの!? あぁもう、私も大企業のご令嬢の一人だって皆にバレちゃったじゃないの!!」

 

「あれ、朱音さんもそうだったのか?」

 

「わ~い、仲間が増えた~!」

 

「ちょい待ちこなた、重要なのはそこじゃないでしょうに」

 

「…あぁもう、何このカオス」

 

「カオスはカオスで面白いと思うけど…!」

 

この時、kaitoはある事を閃いた。

 

「瑞希さん、ちょっとよろしくて?」

 

「? 何でしょう」

 

kaitoは瑞希にある事を耳打ちし始める。

 

(瑞希さん、あなたもアン娘さんの事が好きなんですよね?)

 

(そうですけど…それがどうかしたのですか?)

 

(良いんですか? このままだと、朱音さんの方が一歩リードしてるような状態ですよ? 何せアン娘さんと同じナンバーズメンバーの一人なんですから)

 

(む…それは、確かにそうですわね…)

 

(そこでです。あなたもナンバーズメンバーの座に、身を置いておくという手はどうでしょう? 少しでもアン娘さんに近付ければ、あなたも本望でしょう?)

 

(!! そ、そうですわね……ですが、よろしいのでしょうか? そんな勝手に決めてしまって)

 

(大丈夫ですって。うちの団長、実力がある人は積極的に旅団に迎え入れる人ですから。それに……ナンバーズメンバーになる事で、アン娘さんを美味しく頂ける日が来るかも知れませんよ?)

 

(…それ、良いですわね)

 

(でしょう? さぁアン娘さんに近付く為に、あなたの実力を見せてやりましょう)

 

(分かりましたわ、kaitoさん)

 

「「フフフフフフフフフフフフフフフフ…♪」」

 

(…こっちはこっちで何を考えてんだか)

 

kaitoと瑞希が不敵な笑みを浮かべている中、ロキはもう何も考えない事にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、地下の資料室では…

 

 

 

 

 

 

 

「違う…違う…違う…違う…」

 

無数に存在している書物の中で、二百式はある調べ物をしていた。しかし彼が求めているような資料は一つも見つかっておらず、書物を片っ端から調べて回っては元あった棚には戻さずそこら中にポイポイ捨てて次の資料を調べ続けている。

 

「くそ……どれもこれも全然違う!!!」

 

二百式は苛立ちのあまり書物を放り捨て、近くの椅子を思いきり蹴り倒す。この資料室に自分の求めているような情報が存在しないと分かった以上、二百式はさっさと資料室から出ていく。

 

(全く情報が掴めないなんて、そんな事があるのか…!? こうなったら、知っていそうなメンバーに直接聞いてみる他ありはしない…!!)

 

あれから二百式は、竜神丸とガルムの会話に出て来た“アレ”について、楽園(エデン)でずっと調べ物を続けていた。しかし彼がどれだけ探し求めてもそれらしい情報は未だ見つかっておらず、状況は何一つ進展してはいないのである。

 

「旅団の中で知っていそうなメンバーは…」

 

思わず竜神丸を思い浮かべるも、二百式はすぐに首を横に振る。

 

(奴が素直に情報を吐くとは思えない……やはり、他のメンバーに一人ずつ聞いていくしかなさそうだ)

 

二百式は自身の中に溜まり続けている苛立ちをどうにか抑えながらも、自分が一番知りたい情報を求めて活動を続けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、別の場所では…

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました、ZEROさん」

 

研究室にて、竜神丸は手に持ったスーツケースの中身をZEROに見せていた。スーツケースの中には、認証前の戦極ドライバーと『LS-20』と描かれたレッドピタヤ状のロックシードが収納されていた。ZEROはそれを見て小さく笑みを浮かべる。

 

「やっと出来たってか……お前にしては、ちょいとばかり遅いんじゃねぇのか?」

 

「申し訳ありません、最終調整に少し時間がかかってしまいまして。まぁそれぐらいは大目に見て下さると助かります」

 

「はん、言ってくれる…」

 

ZEROはスーツケーツの中から戦極ドライバーとレッドピタヤロックシードを取り出し、自身の懐に収める。

 

「これで俺はアーマードライダーの力をも手に入れた。今度はそうだなぁ……お前がコソコソと隠し持っているベルトも、寄越して貰おうか?」

 

「ゲネシスドライバーはまだ調整中です。いずれはあなたの分もきちんと用意致しますので、それまではしばしお待ちを」

 

「…ふん、まぁ良いさ。だが戦極ドライバーとロックシードは授けておいて、ロックビークルを何一つ俺に渡さないとはどういうつもりだ? 竜神丸」

 

「あなたにヘルヘイムの森で暴れられるような事があっては、貴重なロックシードが根絶やしにされてしまいかねませんからね。それについては、今までのご自分の行動を振り返ってから文句を言って下さい」

 

「チッ。お前みたいなマッドは、すぐそう言って俺の行動を制限しようとしやがる…」

 

「あなたの自業自得でしょう? ただ、ロックビークルの代わりとするには何ですが、これもあなたに渡しておきましょう」

 

「何…っと」

 

竜神丸は懐からある物を取り出し、それをZEROに投げ渡す。『LS-10』と描かれた、スイカ状のロックシードだった。

 

「コイツは…」

 

「通常のロックシードの中でも、特に異質な代物です。ただし燃費は悪いので、ご利用は計画的に」

 

「…なるほどな」

 

ZEROは面白そうに笑いながら、スイカロックシードも懐に収めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またまた場所は変わり、今度はとある次元世界…

 

 

 

 

 

 

 

「グギャァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

ここでも多くのモンスターが、一人の狩人によって次々と討伐されていく。

 

「逃がしませんよ。我等がOTAKU旅団の為に、あなた方には塵も残さず消えて貰います」

 

「ピギャアッ!?」

 

デルタは逆手に持った軍刀をサラマンダーの首元にズブリと喰い込ませ、そのまま首を切断させて血飛沫を舞わせる。返り血を浴びてもなおデルタは動きを止めず、逃げようとするグールの全身を一瞬で細切れの状態へと変え、遠くから毒針を飛ばして来るマンティコアには取り出した大型拳銃を乱射してあっという間に蜂の巣にしてしまい、どんどんモンスターが駆逐されていく。

 

「うっは、相変わらず凄ぇなオイ」

 

そんな光景を、ガルムとBlazは離れた位置から眺めていた。Blazは純粋にデルタの無双ぷりを見て関心しているが、ガルムはある事情を知っているからか複雑な感情が表情に浮かび上がっている。

 

「ん、どうしたガルム?」

 

「いや、何でもない…」

 

デルタが薙ぎ倒したオークの頭を軍刀で滅多刺しにし続けている中、ガルムは幽霊騒動前にあった団長室での出来事を思い出す。

 

(嫌なもんだな。幻想郷の皆を守る為とはいえ、旅団の皆を守る為とはいえ……その為に、仲間の記憶を改竄する事になってしまうのは…)

 

クライシスから伝えられた真実の内容を思い出し、ガルムはやるせない表情になる。しかし今更そんな事を考えたところでもう遅い。何せ今の自分は、もう既に後戻り出来ない立ち位置にいるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、事件は発生する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽園(エデン)食堂にて…

 

 

 

 

 

-ズズズズズズ…-

 

「「「「「!?」」」」」

 

「な、何だ!?」

 

突如、食堂にて巨大な次元の裂け目が発生。突然の事態に一同が驚く中、裂け目はその場にいる全員を吸い込もうとブラックホールの如く吸い込み始めた。

 

「な、ちょ…うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「な、何ですかこれ…どぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!?」

 

「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!?」

 

「お、おい、お前等…うぉあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「兄さ…くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

 

「ありゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ぐ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」

 

「姉貴!? 先輩!? く…ぬ、ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…!?」

 

okaka、ルカ、kaito、蒼崎、支配人、ユイ、フィアレス、aws、朱音、瑞希、Unknownの順番に旅団メンバーが次々と裂け目の中へと吸い込まれていく。

 

「な、何なんですかこれは…!!」

 

「う、く…きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「ッ…美空さん!!」

 

「ちょ、ウル、美空ちゃん!?」

 

「ぬぉ!? おいウル、俺の服を掴むな、ちょ…うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

「あぁ、ハルトまで…嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「も、もう駄目で~ス!!」

 

「な、何でこうなるのさぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」

 

「あぁ~れぇ~♪」

 

ディアーリーズ、美空、アキ、ハルト、こなた、アンジェ、響、アスナ、凛、みゆき、咲良までもが裂け目の中へと吸い込まれていく。ただし咲良のみ、何故か他のメンバーとは違って妙に楽しそうにしながら吸い込まれていっているが。

 

「な、何じゃこりゃ…ぐぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「くそ、何がどうなって…!!」

 

「だ、駄目だ、もう持たない…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!? ちょ、ロキ、俺達を助けろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ぐぇ!? ちょ、馬鹿、首の後ろを掴むな…ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

刃も吸い込まれてしまう中、FalSigとシグマの二人に無理やり首根っこを掴まれた事でロキもとうとう限界に達してしまい、纏めて裂け目の中へと吸い込まれていってしまった。そして全員が吸い込まれた後、次元の裂け目はいきなり消滅し、何事も無かったかのように消えてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれは、別の場所でも発生していた。

 

 

 

 

 

 

 

「!? な、何だ…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

通路を歩いていた二百式も、同じように発生した裂け目の中へ吸い込まれていき…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? おい、何だこれは…!!」

 

「これは…くっ!?」

 

「アル!?」

 

研究室にいたZEROと竜神丸も吸い込まれてしまい、それを偶然目撃したキーラも裂け目の中へ自ら飛び込んでいき…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? な、何だ!?」

 

「これは…く、ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

「な…!?」

 

デルタ、ガルム、Blazの三人も次元の裂け目へと吸い込まれていき…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? な、何じゃこれは…!!」

 

「く、フレイア!!」

 

「ユリス…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「フレイアァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

支配人達が経営していた孤児院でも、ユリスとフレイアの二人が吸い込まれてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ぅ、ん」

 

地べたに這いつくばった状態の中、ロキは静かに目を覚ました。

 

「ここは…」

 

「たく、やっと目ぇ覚ましやがったか」

 

「ロキさん、良かった目が覚めて…!」

 

「起きて下さい。私達は今、かなり大変な状況の中にいますよ」

 

「Blaz、ディア……それに、刃もいるか」

 

ロキの隣にはBlazとディアーリーズ、刃の三人もいた。三人は何やら呆然とした表情をしており、ロキは思わず不思議そうに首を傾げる。

 

「どうした三人共? それに大変な状況ってのは一体…」

 

「自分の目で確かめりゃ、分かる事だぜ。お前もよ~く知ってる世界だ」

 

「? そりゃどういう…」

 

言いかけたところで、ロキも周囲を見て唖然とする。

 

「こ、ここは…!!」

 

周囲には崩れてボロボロの建物、炎上したまま放置されている複数の車、火花を散らしながら地面に倒れている電柱、そして…

 

「あれは……地上本部…!?」

 

遠くには、時空管理局の地上本部が見えていた。しかしその地上本部は、何やら植物のような物で全体が支配されてしまっていた。

 

「Blaz……ここって、まさか―――」

 

「あぁ、間違いないぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは、荒廃したミッドチルダだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼等のいる位置から、少し離れた場所のビル…

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…!!」

 

一人の女性が、幼い少年を連れながら走り続けていた。女性は右肩を僅かに負傷しているが、そんな事を気にする間も無く少年をビルから連れ出そうとしている。

 

「まだ走れるか?」

 

「う、うん…」

 

「そうか。安心してくれ、私がアジトまで連れていってやるから…!!」

 

しかし、その時だ。

 

『ヒャアッハッハッハァー!!』

 

「「!?」」

 

そんな二人の後方から、三叉槍を手に持った悪魔のようなモンスターが迫って来ていた。

 

『このリトルデビル様から逃げられると思ってんじゃねぇぞ、クズな人間如きがぁーっ!!!』

 

「ッ…逃げろ!!」

 

女性は少年を出口まで走らせ、後方から飛んで来るリトルデビルを何とか足止めしようと近くの鉄パイプを拾い上げる。

 

「来るな、化け物が!!」

 

『おぉっと、当たらねぇぜ?』

 

「く…!!」

 

女性は鉄パイプを必死に振り回すも、リトルデビルは簡単に鉄パイプを回避し、一気に女性の目の前まで接近していく。そして…

 

 

 

-ザシュウッ!!-

 

 

 

「が、は…」

 

リトルデビルの三叉槍が、女性の腹部を突き刺した。女性は口から血を吐き出し、刺された腹部を押さえながら床に倒れていく。

 

『はん、下等な人間なんぞがこの俺に歯向かうからそうなるのさ!! ヒャーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』

 

リトルデビルが愉快そうに笑い声を上げる中、倒れた女性はそんな笑い声も碌に聞こえないまま少しずつ意識が薄れていく。

 

(さっきの、子は……無事に、逃げてくれた、ん…だろう…か…)

 

先程逃がした少年の事を思いながら、女性は暗い闇の中へと意識を落としていく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

「ディア、どうした?」

 

ディアーリーズはある方向を見て感知する。

 

「これは……血の匂い…?」

 

「あ、おい待てディア!!」

 

「たく、行動が早いな……Blaz、刃、俺達も行くぞ」

 

「やれやれ、仕方ありませんね…!」

 

血の匂いを感知したディアーリーズはすぐさま血の匂いがした方角へと移動し、ロキ、Blaz、刃の三人もすぐにその後を追いかけていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは荒廃した平行世界、ミッドチルダ。

 

そんな世界で、彼等はどのような物語を繰り広げてくのか―――

 


 
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