No.712577

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第223話

2014-08-31 16:49:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1657   閲覧ユーザー数:1501

 

~夜・トリスタ~

 

「ふう―――これで終わりっと。わわっ、もうこんな時間!?」

店を出て一息ついたトワは既に夜になっている事に慌て

「はは……日が暮れるのも少し早くなってきましたね。それにしても会長がこの店の常連だとは思いませんでしたよ。」

慌てているトワをリィンは苦笑しながら見つめた。

 

「あはは、ミヒュトさん、色々な物を仕入れてくれるから。学院の購買で買えないものはいつもお願いしちゃってるかな~?イベントで使う花火とかペンギンの着ぐるみなんかを頼んだこともあったっけ。」

「なるほど、普通の店じゃ確かに無理そうですね。」

「うんうん……って。わわっ、いつの間にリィン君にそんな大荷物を!?ゴメンねっ!?わたしがもっと持つからっ!」

両手が荷物で塞がり、更に腕にも荷物が入った袋をかけているリィンにようやく気付いたトワは慌てた様子でリィンを見つめた。

 

「このくらい大丈夫ですよ。会長も結構持ってるんですから無理はしないでください。」

「ううっ……ゴメンね。その、コーヒーでも奢るからそこの休憩所で休んでいこう?学院祭の相談っていうのも聞かせて欲しいし。」

その後リィンはトワと共にベンチに座って一息ついた。

 

「そっかぁ……確かに難しい状況だねぇ。」

リィンからⅦ組の出し物についての事情を聞き終えたトワは困った表情で頷いてリィンを見つめた。

「うーん、大掛かりな設備や飾りつけが必要なものは人数的に無理だろうし……もちろん、簡単な飲食店なら大丈夫だとは思うけど。」

「やっぱりそうですか……でも、やるからには他のクラスに負けないものにしたいんですよね。」

「あはは、男の子だね。うーん、劇とかゲーム大会だったら小人数でも何とかなりそうだけど……どっちも他の1年のクラスが申請しちゃってるんだよねぇ。」

リィンの答えを聞いて微笑ましそうにリィンを見つめたトワは困った表情で自分が知っている情報を口にした。

 

「そうなんですか……うーん、ネタがかぶるのもちょっと避けたい所だな……そういえば……去年、先輩たち4人で舞台の出し物をしたそうですね?」

「はわわわっ……!き、聞いたんだっ!?えっと……どこまで聞いたの?」

今まで生きて来た自分の人生の中でもトップクラスに入る恥ずかしい出来事をリィンが口にするとトワは慌てた様子でリィンを見つめて問いかけた。

 

「いや、先輩たちには微妙にはぐらかされて……凄く盛り上がったとだけは聞いたんですけど。」

「うううう~……っ…………そんなに知りたい?」

リィンの答えを聞いたトワは肩を落とした後上目使いでリィンを見つめ

(うふふ、ここまで取り乱しているんだから是非聞いてみたいわよね♪)

(普段から慌てる事が多い彼女がここまで慌てるとはさぞかし恥ずかしい出来事なのでしょうね。)

(ア、アハハ……私もちょっとだけ気になってきました……)

(フフ、一体どんな事をしたのかしら?)

トワの様子を見たベルフェゴールとリザイラは興味ありげな表情をし、二人の念話を聞いていたメサイアは苦笑し、アイドスは微笑みながらトワを見つめ

「え、ええ……できれば。何かいいヒントが見つかるかもしれませんし。」

リィンは戸惑いの表情で頷いた。

 

「そっか……わかったよ。可愛い後輩の頼み……他ならぬリィン君の頼みだもん!勇気を振り絞って打ち明けるよ!」

リィンの答えを聞いたトワは何かを吹っ切ったかのような決意の表情でリィンを見つめ

「は、はあ……(そこまでの内容なのか?)」

トワの様子にリィンは戸惑いながら頷いた。

 

「えっとね、わたしたちがやったのは一言で言うと『演奏会』なの。ちょっとしたミニコンサートって言ったほうがいいのかな?」

「へえ……!ちょっと意外ですね。会長、楽器も弾けるんですか?」

トワの話を聞いて驚いたリィンは目を丸くしてトワを見つめて問いかけた。

 

「あはは、わたしはサッパリ。だから代わりに”歌(ボーカル)”を担当したの。アンちゃんとクロウ君とジョルジュ君が演奏担当だね。」

「へえ……凄くハマリそうな感じですね。そうか、音楽だったらエリオットもいるわけだし、プリネさんの使い魔―――アムドシアスさんもいるしな……ちなみにどういうジャンルの音楽をやったんですか?」

「そ、それは……情熱的というか、……破天荒というか……」

リィンに尋ねられたトワは冷や汗をかいて言葉を濁した。

 

「情熱的?破天荒?」

(ん~?な~んか、心当たりがあるような気が……?)

(?気のせいかしら?随分昔にそんな印象を感じる演奏をどこかで聞いた事がある気がしてきたわ……)

トワの答えを聞いたリィンは首を傾げ、ベルフェゴールとアイドスもそれぞれ不思議そうな表情で首を傾げていた。

 

「あはは……帝国じゃまだあまり広まってないジャンルの音楽だったみたいで……帝都のオペラハウスとかじゃ絶対にやらないのは確かかなぁ。」

「???」

恥ずかしそうな表情で答えたトワの説明を聞いたリィンは首を傾げ

「ううっ……わかったよ。―――リィン君。明日の夕方、時間あるかなぁ?旧校舎の調査が終わってからでいいんだけど。」

リィンの様子を見たトワは肩を落とした後決意の表情でリィンを見上げた。

 

「明日の夕方……ええ、大丈夫だと思います。生徒会室に行けばいいんですね?」

「あ、ううん。本校舎の端末室に来てくれる?」

「端末室……わかりました。去年のコンサートの話に関係しているんですよね?」

「えへへ……それは明日のお楽しみかな。」

リィンの問いかけに微笑みながら答えを誤魔化したトワは立ち上がった。

 

「それじゃあ、お手数だけど第二学生寮まで付き合ってくれる?お互い、あんまり遅くなったら寮の夕食に間に合わないかもだし。」

「はは、そうですね。」

トワの言葉にリィンは頷きかけたが

「……って、だから会長はこれ以上持たなくていいですって。力仕事は後輩に任せてくださいよ。」

トワが自分より多くの荷物を持とうとした事に気付いて慌てた様子で制止し

「むううっ……リィン君のガンコ者。」

制止されたトワは頬を膨らませてリィンを睨んだ。

 

その後トワを第二学生寮に送り届けたリィンは第三学生寮に戻って夕食を取って一息ついた後、明日に備えて休み始めた。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
2
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択