No.712179

義輝記 星霜の章 その十弐

いたさん

義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい!

2014-08-30 00:02:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:873   閲覧ユーザー数:787

【 大乱の前の静けさ の件 】

 

〖 徐州 下邳 曹操軍陣営 にて 〗

 

それからのち、晋軍に対陣する為、華琳達も陣営を構築! 大友勢、島津勢も華琳達を手伝い動いていた。 そんな時、道雪は……ある事を願い出た!

 

道雪「華琳殿! 僭越ながら……要望を叶えていただけませんか?」

 

華琳「私に出来る事ならね? ……で、何なの?」

 

道雪が頼んだ物は二つ。 

 

『 輿 』と…………。

 

華琳「どうして!? 本当に──それを望むの!?」

 

道雪「はい。 私の配下には弱兵を、どうか配置して下さいますよう……」

 

ーーーーー

 

春蘭「何ぃ!? 道雪は、弱兵を華琳様に所望しただとぉ!!」

 

秋蘭「あぁ! 流石に華琳様も驚いていらした! しかも、家族である二人は道雪殿を止めるどころか………満足そうに見ていたんだ! いったい、何の秘密があるのだろう……」

 

ーーーーー

 

雛里「道雪様………凄いね。 私達と同じく死を覚悟しているんだ……」

 

朱里「うん! 天の国は、ここよりも相当争いが酷かったんだよ。 きっと! ………もっと早く気付ければ良かったのにね、雛里ちゃん。 そうすれば……『ご主人様』を世に出せたのに!」

 

雛里「……で、でも! 松永久秀さんや筒井順慶さんに目を付けられて……あ~んな事やこ~んな事されたかも────!!」

 

朱里「雛里ちゃん! いつの間に……そんなイヤラしい子になったの!?」

 

雛里「あわぁ────! しゅ、朱里ちゃんに開発されたからぁぁ!!!!」

 

朱里「う、嘘は駄目ぇ!! もともと好きだったくせにぃ────!!」

 

桂花「……………アンタ達って………」

 

『きゃああぁぁぁ────────!!!』

 

★☆☆

 

俺が発石車の準備をしていると……島津四姉妹が来られた!

 

義久「こんにちわぁ~! 貴方が『北郷一刀』君ねぇ~? 妹達が世話になりましたぁ~! 挨拶が遅れましたが……島津家現当主『島津義久』と申します~!!」

 

一刀「あ、貴女が!? いえっ! ご丁寧に有り難う御座います! 北郷一刀です! 宜しくお願いしま───ムグゥ!!」

 

急に……腕を引っ張られてたと思うと、何か柔らかい物が顔を包み込む!?

 

義久「やぁ~ん! 可愛いぃ~!! お姉ちゃんの事は、お姉ちゃんって呼んでねぇ! 一刀君~!!」

 

一刀「く、苦し───い!!」ジタバタ ジタバタ!

 

義久「あぁ~ん! そんなに動いちゃ駄目ぇ~!!」

 

家久「よしねぇ!! 早く離して! 一刀お兄さんが死んじゃうよぉ!!」

 

歳久「流石……北郷家の血筋ですね。 私の予想を上回る行動を起こさせるなんて。 あっ、もしかすると……一刀殿の魅力が加味している? そうであれば、実に興味深い………」

 

義弘「お、お姉ちゃん! ワザとやってないよね!? は、早く助けなきゃ!!」

 

ーーー

 

一刀「し、死ぬかと思ったぁ………」

 

家久「一刀お兄さん、大丈夫?」

 

義久「あらあら、ごめんなさいねぇ~?」

 

義弘「もぉう!! 本当に気を付けてよ!! ここで一刀に何かあったら、私達は罰せられちゃうんだからぁ!! そうなったら、颯馬に頼まれた事なんか出来なくなるんだよ!!!」

 

歳久「……そうですね! 私達の目的は、曹操軍を無事に官渡に到着させる事。 些細な出来事で遅滞など、許されません!」

 

義久「えぇ~ん! としちゃんとひろちゃんが怒るの! 助けてぇ! 一刀く~ん!!」

 

一刀「ちょっと、某アニメの眼鏡が虐められて、ロボットに助けを求める台詞……ウホッ! せ、背中に………柔らかい双丘があぁぁぁ!!」

 

家久「駄目だよ! 仕事の邪魔しちゃ!! それこそ怒られるよ!!」

 

家久が一番上の姉を怒っていると───黒い影が現れた!

 

儁乂「北郷様! 至急お耳に入れたい事がございます!!」

 

 

◆◇◆

 

【 氷の策士 の件 】

 

〖 西涼 西涼城付近 にて 〗

 

劉宣「ははははっ! 日が大分上まで昇ったな!? あの忌々しい『凍った地面』も溶け出して動く事ができる! 今より攻めたてるぞ!!」

 

匈奴兵に命令を出し陣営より動き始める! その数は先程よりかなり減らされて五万を下回ったが、士気は旺盛であった!

 

ただ、目の前には竹槍、遺体が残り……馬が使えない。 その為、歩兵と化して攻めいるしかない! 

 

陣営に残っている者達には、今のうちに竹槍や遺体の処理を任せた。 待機中の集団だから、暇を持て余しているし……遺体処理中に金になる物があればちょろまかす事も可能。 決して損では無いのだ。

 

それぞれの役割を決めて、動きだした!

 

★☆☆

 

詠「敵が動き出したわね。 伝令兵! 兵士達に至急命じて! 前方で覆っている布の留め具を外す! そして、敵が近づいたら、急いで引っ張り上げて砦に収納させるように!!」

 

伝令兵「はっ!」

 

詠「他にもあるわ! 川より多くの水を汲んで頂戴! 何人か並んで梯子状態の運送で桶に水を溜めておくの! そうね……初めは百程用意して! 出来るだけ冷たい方が都合がいいのよ!!」

 

ーーー

 

白菊「敵さんは、やっと動きだしたようだねぇ………。 どうやら詠の計略が徐々に功を成してるようだし。 お前達! 馬達にも飼い葉を与えて、よく英気を養っておくんだよ! あたしらの出番は、あと少しだ!!」

 

翠「あぁ! こんな大戦を前に無様な真似してられねぇよ! 錦馬超の力、しっかり見せ付けて、二度と攻め寄せて来ないようにしてやるぜ!!」

 

蒲公英「お姉さまみたいな戦いは出来ないけど……うん! それなりに頑張るよ! 二人の足手纏いにならないように!!」

 

ーーーー

 

月「詠ちゃん! 私も……出るからね。 幾ら……詠ちゃんが止めても……」

 

詠「…………あのねぇ、ボクと月の付き合いって、何年経つか分かる? 十年以上……もう少しで二十年になるわよね? 

 

月が容姿の割りには、頑固で意地っ張り! そして、結構お茶目で……ボクをよく困らせるんだよ? 何時も、そんな顔して……ボクが一生懸命心配するのに、柳に風で受け流して実行に移すんだもの!!」

 

月「詠ちゃん………ごめんなさい。 本当にごめんなさい! だけど……私、私────!!!」

 

詠「月………。 一つだけ、絶っっ対に約束守ってくれる!?」

 

月「………………?」

 

詠「この戦いは必ず勝つわ! 白菊達の武勇とボクの軍略が重なれば、あんな軍勢なんて雨後の竹の子みたいな者よ! 

 

だけどねぇ…………月が重傷を負ったり、万が一でも死んじゃう事なんて事になったら………ボクは耐えきれない! 月の後を追うわよ!!」

 

月「詠ちゃん─────!!」

 

詠「だから……ボクに可笑しな真似させないように、必ず無事に帰ってくる事! 颯馬達と一緒に、ボクと月の親友二十年記念のお祝いしなきゃならないんだから!! 絶対に絶対に絶対にぃぃ守ってね!!!」

 

月「う、うん!! 絶っっっ対に守るからね! 大好きな詠ちゃん!!」

 

詠「…………うぅ、やっぱ駄目ぇ! 月~可愛いもん!! あんな危ない所に行かせられないぃ!!!!」

 

★★☆

 

劉宣「無事に越えられたな。 この日差し、この暖かさ! 天は我々に復讐せよと告げているようだ!  

 

者共! 砦には、もう少しで到着する! こんな脆い盛り土で仕上げた砦なぞ、我々の敵ではない!! 簡単に打ち破りて、戦利品を奪いされ!! 我が南匈奴の恐ろしさを、最初に味わせてやるがいい!!」

 

歩兵と化した匈奴兵が砦に殺到する!

 

詠「今よ! 布を引っ張り上げなさい!!」

 

詠が、号令を掛けて布を回収させた! 

 

匈奴『──────!!』

 

そこは、日差しの中でも……燦然と『凍りついた地面』、『凍りついた砦』が姿を見せ付けた!!

 

匈奴兵1「……うぐっ! あ、足が動かない!」

 

匈奴兵2「な、なんでぇ!?」

 

ーーーーー

 

詠「掛かったわね! アンタ達が、獣の皮より作った靴を履いているのは知ってるのよ!? だから、泥水の中を歩いてきたアンタ達を足止めするように、凍りついた場所を用意してあげたわ。 布で溶けないように、わざわざ覆いまで行ってね!! 感謝なさい!!!」

 

▼☆▼  ▼☆▼  ▼☆▼

 

詠、颯馬の合同奇計

 

『飛滑竹槍の計』『氷結地縛の計』

 

砦と地面の高低差を利用し布を張り『簡易な滑り台』を現出。 砦本体と砦の周辺にも水を撒き散らし、冬の厳寒を持って辺り一面に凍りつかせる。

 

敵が近付けば、砦から竹槍を滑り台から落とし、更に周辺に作った『凍りついた地面』を滑り込み、威力を増して被害を与える。

 

敵としては、竹槍や遺体、凍りついた地面を嫌がり、溶けるまで待つ結果になる。 ここまでが、颯馬の策。

 

その間、地面や砦に張った布を外さず置いておく。 日陰になれば凍りついた場所の溶けるのが遅くなる。 敵が動き始めれば、剥がす準備を行う。

 

敵兵は、溶けた地面を歩み近付くため、足には泥水を吸った靴を履く事になり、必然的に靴が地面に張り付いてしまう。 水に濡れた手で氷を持つと、張り付いて離すのに、苦労する事になるのと一緒で。 これが、詠の策である。

 

▲☆▲  ▲☆▲  ▲☆▲

 

詠「射てぇ!! 一斉に射てぇ!!」

 

匈奴1「ガハッ!」

 

匈奴2「グワァァ────!!」 

 

しかし、流石に、匈奴兵は勇猛であり、仲間の遺体を凍った地面に横たえて、遺体を足場にして攻略を始める!! 敵勢は四万以上!! 持ってきた矢も限度が見えてきた。

 

詠「次! 桶の水を浴びせなさい!!!」

 

西涼兵『はっ!!』

 

ブーン! バシャバシャ! バシャバシャ!

 

匈奴兵3「うわぁ!? なんだこりゃ!!」

 

匈奴兵4「つ、冷てぇぇ! 冷てえぇ───!!」

 

果敢に攻め寄せる匈奴兵達に、落とされたのは『水』! 普通に川から汲み出してきた水だ。 種も仕掛けもございません! 一応言っておく…………。

 

ただ、今の時期は冬。 日差しで氷が溶けようが……周りは凍った状態。 しかも、匈奴兵達は、防寒着として毛皮を着込んでいる。 その上から冷たい水を被れば………当然…………!!

 

匈奴3「ハ、ハクション!!」

 

匈奴4「か、身体が冷え切って!!」

 

体温が急激に下がり、末端部分である手足の熱は、身体の重要な部分に集められるので、動きは鈍くなる。 逃げ出したいたいが、後ろからも欲に駆られた奴らが近付く! 

 

詠の指示は、どんどん水を撒き散らすように、矢継ぎ早に繰り出す!! 

 

勝敗は─────見えた!!

 

劉宣「ぜ、全軍!! 退却!!! 退却だあぁぁ!!!」

 

更に減った軍勢を引き戻し、陣営に帰ろうとする劉宣!!

 

劉宣「不甲斐ない!! 不甲斐なさすぎる!! これが近年勇猛を馳せた匈奴兵の力なのか!?!?」

 

劉宣は、残りの軍勢の手助け全部を使い、西涼の軍勢を滅ぼそうと決意する! 南匈奴の面子なんてどうでもいい! ここまで、南匈奴をコケにした奴らを、殲滅するまで許されない!! 許せるものか!!!

 

しかし、劉宣のこの考えは………実行に移される事はなかった。

 

引き上げる匈奴兵の中に、数十人に服装の似た者達が、紛れ混んだ事を気付かなかったのだ………。 

 

◇◆◇

 

 

【 意外な結果 の件 】

 

〖 徐州 下邳 晋軍陣営 にて 〗

 

真っ昼間の中……晋軍の中では、酒宴が開かれ兵士達が浮かれ踊っている! 横には、例の『漢女』や『美少女』達が横に付き、場を盛り上げる。

 

そんな浮かれた雰囲気の中、中央の天幕では……場違いの緊張した空気が漂う場所があった。 韓馥が籠もる天幕である!!

 

ーーーーーー

 

椅子に座りながら、韓馥は閔純と作戦を練っている。 

 

だが、その韓馥の横には、星が見た『女性の姿見をしている美少年』が二人、地面に腰を下ろし、左右の両手に撓垂れ掛かる(しなだれかかる)様子があった。

 

韓馥「曹操軍は、この二日間……何の音沙汰も無さそうじゃの! 今日もワザと宴会をして、隙を見せているが………陣中奥深く潜り込んだままとは! 呆れたものじゃ!! ほ──っほっほっほっ!!!」

 

閔純「足止め……と言う事なら成功だろう! だかな! 青州黄巾賊討伐では、久秀様や順慶様に恥を晒してしまった! 俺としては、曹操と北郷一刀を許してはおけん!! この手で葬り去ってやりたいのだ!!」

 

閔純の怒気を含む態度と対象的に、冷ややかな応対で返す韓馥。

 

韓馥「……行けば良いじゃろう!!」

 

閔純「本当に………か!?」

 

韓馥「協力は惜しまん、閔純よ! 五万の兵を預けてしんぜよう!!」

 

閔純「ご、五万も!!」

 

韓馥「…………しかもな、儂の持つ精兵部隊『念者衆』、『若衆』を連れて行け!! 復讐での……良き手助けになろうからのぉ!!」

 

★…………………★

 

韓馥が冀州牧の時より趣味で創設した部隊。 韓馥が認めた武と美貌を誇る者達を集め訓練した精兵達、しかも……身も心も韓馥に心酔して入る為、忠誠度も高いというオマケ付き。

 

因みに『念者衆』が漢女に似た者達、『若衆』が女性に似た者達である。

 

★…………………★

 

閔純「いいのか? アンタが手塩に掛けた、子飼いの精兵だろう?」

 

韓馥「人の欲に中には、我慢出来ない三大欲があると聞く。 その中で『色欲』を使い、異民族達を堕落させておいたわ! ぐふふふっ! 女とまた違うモノを味あえる……のが要諦でな? 三日も経たずに骨抜きよ!!」

 

異民族の手懐けさせる為に……子飼いの精兵を娼婦?にしただと? 韓馥の性癖に呆れつつ、更に話を進める事にした。

 

閔純「それとこれ、何の関係が………?」

 

韓馥「簡単な事! 禁断の味を体験して、更に求めているのだ! しかしな、コイツらの情交など無理な話! 儂はヤツラに申し渡してあるのだ! 『真面目に戦って勝たなければ、再度の情交など……許す訳にはいかぬ!』とな!」 

閔純「う……うむ?」

 

韓馥「………ただ、申し渡していても……儂の目を盗み密通を重ねる輩も居るかもしれん! 異民族もコイツらも、心底なぞ分からんからな!

 

そこで、閔純……お主の話だ! お主が曹操軍に一緒に連れて行けば、密通なぞ無理な話。 しかも、禁欲で滾る異民族達の力、どこまで高まるかのぉ? そして、儂の話は本当だったと信用される。 一石三鳥の策じゃ!!」

 

閔純「たがよ! 俺も…『若衆』の色気で引きずり込まれそうだ! なんだよ、あの妖艶(ようえん)な色気は……偶に順慶様達を忘れそうになるぜ……!」

 

韓馥の傍に居る若衆の一人と目が合うと、慌てて逸らす閔純!!

 

韓馥「……なれば良かろう? なって虜になれぇ! ホッホッホッホッ!」

 

閔純「………だ、誰が! ………失礼する!!」

 

閔純は、足早々に天幕より立ち去った!

 

韓馥は、閔純が出ていった後に、若衆と唇を重ねた後、それぞれの天幕に向かわせる。 今夜も需要が入っていたのだ………。

 

韓馥「ふふふっ……本当は一石四鳥の策じゃわい! 閔純の軍勢を囮に、我等が黄河を渡りて曹操軍と相対する! 曹操軍に知将多きと聞くが……まさか、このような異質の兵がいるとは、思い付かないじゃろう? 

 

驚愕の隙を付いて、閔純が敵を追い詰めれば良し! もし、仮に全滅しても異民族の情交への恨みを買い、我が軍が更に強くなる! どちらに転んでも、悪い事など無しじゃわい!!! 儂をこのように仕込んだ于吉には、感謝せねばな!!」

 

韓馥は一人ごちた。 自分の作戦の完璧さに酔っていたのだ。

 

 

 

そして………天幕より……影が一人………抜け出していった………。 

 

 

★☆☆

 

〖 徐州 下邳 曹操軍陣営 にて 〗

 

華琳「発石車を利用して、壺の中身を敵軍勢に投げ入れて混乱。 その隙に御遣いの軍が横槍を入れる。 混乱を拍車を掛けた後、私達が攻める! ……なかなかの作戦ね………」

 

朱里と雛里からの献策を、華琳は吟味して考える。 

 

確かに、策としては悪くはない。 どちらかと言えば上策だ。

 

しかし、一点だけ気になる事がある。 それは…………!

 

桂花「───ですが、敵も同じような方法で襲ってきた場合、如何しましょう? 敵の人数は、私達より多いのは実情です。 もし、余分な軍勢を別働隊を率いて来られれば……二面攻撃で、我が軍は一溜まりもありません!」

 

桂花の言う通り、敵の進行方法が分かっていなかったのだ。 

 

この作戦は、『敵が動かない事』を前提とした策。 

 

もし、動いたら……! 最悪、同じ戦法を使われたら……数の勝る方が勝ちだ! その対応が出来ていなかったのだ!!

 

朱里「しかし! 敵軍勢に怯え過ぎていて、好機を逸する事態になれば、それこそ本末転倒でしゅ! 勇を持って決断すべきかと!」

 

雛里「敵が同じような攻撃を起こすかは、確証が無ければ、ただの妄想にすぎせん! 私達は、私達の命を掛けて進言しています! 桂花さん! 貴女の反論はわかりますが、何を掛けて訴えるおつもりですか?」

 

桂花「……………!」

 

朱里も雛里も、普段と違う気迫がある! 失敗した時は、自分達の命を奪われる!! 誰だって死にたくはないのだ………。 

 

それに描きかけの絵が多数。 勿論、長期連載大人気の娯楽本も抱えている身! そんなモノが、自分達の死後に出てきたら……後世に悪名を残す結果になるかも知れない!! そんな恥ずかしい事を許す訳にはいかないのだ!

 

鬼のような気迫の二人、唖然となる桂花達!

 

そんな中、北郷一刀が突然、天幕に飛び込んできた!!

 

一刀「待ったぁ! ────その策は駄目だぁ!!」

 

朱里「えっ────!?」

 

雛里「ご、ご主人様? なんでぇ────!?」

 

桂花「な、なんで……私の味方………するの?」

 

華琳「一刀! 理由を言いなさい────!!」

 

急に現れた新たな情報提供者に、皆の目が向く! 一刀は、呼吸を整え喋り出した!!

 

一刀「ハァハァ……! 儁乂から連絡が入った! 敵陣営より別働隊の出陣が確認されたって! あと少し経てば、敵が大挙して攻め寄せてくるぞ!?」

 

『──────────!』

 

朱里と雛里の顔は、真っ青となる! 桂花が先程心配していた事が、現実になったのだ! 『策を考えた時は、敗れた時の事を考える!』 その基本原則を忘れていたのだ!!

 

朱里「じゃ、じゃあ! 私達の策は………無駄……」

 

歳久「…………無駄ではありません!」

 

家久「そうだよ! この作戦、とても面白~い!! 止めちゃうなんて、もったいないよぉ!!!」

 

義弘「…………私には、よく分かんないけど……必要だと思うの! 更なる策の布石に!!」

 

天幕に、更なる将達が入ってくる。

 

雛里「………どういう事……ですか? あっ!」

 

??「…………………」スタスタスタ

 

そんな雛里を無視し、威厳を醸し出しながら華琳の前に進み、膝を付き顔を向ける将は『島津義久』その人! いつものほのぼの気分は、まったく見当たらない為、居合わせた華琳達は驚く!

 

義久「華琳殿! お願いです! 少しだけ島津勢に、全軍指揮を委ねて頂きませんか? 策の内容が詳らかに出来ませんが、必ず勝利に導きますので!!」

 

華琳「もし、負けたら───?」

 

華琳も全軍の将兵達の責任を持つ王である! 幾ら御遣いだからと言っても、責任を果たし貰わないと困るのだ!! 

 

義久「私の首でも身体でも、お好きになさって頂ければ結構です!!」

 

並々ならぬ決意を聞き、即断する華琳! 

 

華琳「全軍、一時だが……島津勢の指揮下に入る事を命じる!」

 

義久「ありがとうございます! それでは────!」

 

★★☆

 

 

〖 徐州 下邳 曹操軍陣営 にて 〗

 

 

閔純「行けぇぇ!! ここが曹操軍の陣営だ!!!」

 

閔純は、付近の長く続く森林の中を通り抜け、曹操軍の陣営を発見した。 対岸からは、よく見えるのだが、左右両側は森林で塞がれた場所。 軍の動きを読ますせないように、設置したため!

 

閔純は、気付かれないように迂回して、曹操に奇襲を掛けたのだ!!

 

だが、予想に反して陣営内には………人影が無い!

 

食事の途中だと思われる食いかけの料理、手入れ途中の道具、干しっぱなしの洗濯物………と、何もかもが中途半端な有り様だった。

 

閔純「な、何故だ! 何故、誰もおらん! 奴らはどこへ消えた!!」

 

??「どこにも消えない……此処にいるわよ!」ヒョッコ

 

見たこともない衣装を着用した美女が、天幕の陰から現れる!

 

近くに居た『念者衆』や『若衆』が、閔純の周りを囲む!

 

閔純「何者だ!! 名を名乗れぇ!!!」

 

義久「島津家当主『島津義久』……天の御遣いの一人」

 

閔純「はっはっはっ! 天の御遣いが只一人で、こんな場所にだと!? 笑わせてくれる! 俺は誠の『神の御遣い』にお仕えする閔純だ! 貴様のような似非の御遣いなど、俺達に囲まれて死んじまいなぁぁ!」

 

馬鹿笑いをし、義久の言葉を不定する閔純を────睨み付ける!

 

義久「私も……貴方なんて大嫌い! 私のお気に入りの子を困らせ、小さい子達に悲壮な決意をさせ、特に………私の大事な人を苦しめる原因を……崇拝する考え無しの貴方なんてぇ!!!」

 

閔純「あぁ! 構わないぜ? 負け犬の遠吠えにしか聞こえねえぇからな! 長話も無駄だから、そろそろ……死んで『その前に……』──ん?」

 

義久「その前に、私が言う事が出来るかしら? 『俺を殺せる者が居るか!』と三度叫ぶ! 出来たら、この身体……好きにしても……いいわよ!」

 

義久が唐突に言い出した『 賭事 』……。

 

閔純は……ちょと考えた。 

 

今の自分の立場、味方の数、逃走路の確保。

 

大丈夫だ! 心配なぞ無用! 

 

誰が、この俺を殺せるのだ……?

 

俺を殺すと言う奴の顔を……見てみたいもんだぜぇ!!

 

閔純「ははっ! 言ってやろう! 三度だな! 三度だけでいいのだな!?」

 

閔純は、息を吸い込み──────大声で叫んだ! 

 

 

 

『俺を殺せる者が居るか─────ぁ!』

 

 

 

 

 

『…………お望みのままに』

 

 

 

 

─────────────!?

 

 

 

────ゴロン! ゴロゴロゴロ………

 

───────ドサッ! 

 

 

 

閔純の得意気な表情を浮かべた首は、肩からユックリ落ちる! 途中……驚愕な表情に変えて……地面を転がっていった。

 

そして、噴水のように血飛沫を飛び散らせ、両膝を付き地面に倒れ臥した。

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

前回でネタを少しバラしたので、少し複雑にしようかなと考え……考え……考えてましたが……余り浮かびませんでした。

 

特に閔純の部分どうすればいいかと思い……こうなりました。

 

どこかで見たようなシーンですよ。 名場面の一つですから、分かる人はご存知ですね? この後も、大体予測通りですので。

 

また、よろしければ読んで下さい。

 


 

 
 
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