「急に呼び出して申し訳無いな長谷川二佐」
「いえ……流石に緊急の用件と言われたら来ざるを得ませんよ」
今朝、レジアス中将本人から直々の御呼び出しを受け、俺は地上本部の一室にいる。
ここには亮太、椿姫、澪が既にいたのだが
「(緊急の用件か…。一体何だろ?)」
地上本部所属の転生者大集合である。
この4人で何かの任務を遂行するとか?もしそうなら結構な過剰戦力とも思えるが…。
そんな俺の思考を読んだかの様にレジアス中将が口を開く。
「長谷川二佐、実は本日とある企業が開催するパーティーにワシと共に参加して貰いたいのだよ」
「はあ…………は?」
パーティーに参加とな?しかも今日ですか?
「それはレジアス中将の護衛も兼ねてという意味での参加ですか?」
「いや、護衛が必要なパーティーではない」
じゃあ何で?
緊急っていう程じゃないのか?
「君も既に階級が二佐であり、管理局以外の企業や団体にも顔が知れる程の有名人になってきたからな。今後はこういった催し物に参加する機会も多くなろう。だから今回のパーティーへの参加はそういった事に慣れておくための現場研修だと思ってくれて構わない」
「……特に断る理由もありませんし、参加してもいいですけど……」
別に緊急な用件じゃないよねそれ?
それならここにいる3人の誰かでも良くないか?
俺が3人に視線を向けると亮太、椿姫は視線を逸らし、澪は申し訳無さそうな表情を浮かべている。
「あの3人の内の誰かでも良いと思うんですけど?」
「ワシも最初は君以外に言ったのだがな」
レジアス中将の視線も3人に向く。
「す、済みません。今処理してる書類データの作業完了期日が迫ってまして、あまり時間を割けないのです」
澪が申し訳無さそうな表情をしているのが分かった。
自分の担当してる仕事の処理に追われていると。ならば無理強いは出来ないな。
「亮太と椿姫は?」
「僕達よりもこういう事は勇紀の方が慣れてるだろ?」
「そうそう、アリサとかすずか関係で。私達にはまだ時期尚早だと思うのよ」
「……本音は?」
「「メンドくさいから勇紀に丸投げ」」
ジャキッ!
俺はクリュサオルのみを展開し、剣先を2人に向ける。
HAHAHAHAHA。コイツ等には少しO☆HA☆NA☆SHIする必要があるかなぁ。
「勇紀、刃物の先端を相手に向けると危ないよ?」
「大丈夫。刃物は刃物でも非殺傷設定の魔力刃だから」
「室内でデバイス展開するのはどうかと思うわよ?」
「なら訓練場行くか?それともここで結界張ればいいか?好きな方を選べ」
「どうどう、少し落ち着こうよ勇紀」
「カルシウム、フソク、シテイマセンカ?」
片言の椿姫がマジムカつく。
「ていうかお前等がやれよマジで。そもそも緊急の呼び出しが無ければ今頃優人達に着いて行ってたのに」
はぁ、と口から溜め息が漏れてしまう。
「「「優人?」」」
他人の名前に反応する転生者3人。
「高校で出来た新しい友達の名前だよ」
あー……マジで落ち込むわー。
優人と九崎は今日野井原に連れられ、天河の実家へ赴いている。
俺も着いて行きたかったのに。天河家の歴史や光渡しに関する書物は興味有ったんだが。
本当なら俺も行く予定だったのだが、今回の呼び出しのせいでドタキャンする羽目になってしまった。
「……申し訳無い事をしたな」
「いえ……」
レジアス中将に頭を下げられても困る。この人に悪気は無いんだし。
「それでそのパーティーってのは何処主催なんですか?」
「うむ。『イーグレット・セキュリティー・サービス』という会社を知っているかね?」
おおぅ…。まさかの『イーグレットSS』ですか。
「そこの末っ子にして長女の『アイシス・イーグレット』嬢の誕生日を祝うためのパーティーに呼ばれておってな」
俺達が管理局に入局する以前はよく他の次元世界へ赴く際の護衛の依頼でお世話になっていたらしい。
地上本部とのパイプ繋がりあったのかイーグレットSS。
「だか「何をしているんですかレジアス中将!!」……は?」
元気良い声でレジアス中将の声を遮るのはつい先程までパーティーに参加する気が全く無かった亮太であった。
「パーティーに遅刻してはいけません!!早速会場に向かいましょう!!!」
「……大槻二佐。君はパーティーの参加に乗り気ではなかったのではないのかね?」
「いえいえ!改めて考えると勇紀に負担ばかりかけるのは申し訳ないですからね!!今回は経験を積む良い機会だと思ったんです!!」
…さっきと言ってる事が180度違うじゃねえか。
まあ、コイツがここまで態度を変えた理由なんて1つしか無い訳だが。
「……ん?亮太が行くなら俺は晴れて自由の身では?」
今から地球に戻って全力で優人達を追い掛ければ……
「あ、勇紀。悪いんだけど僕の仕事代わりにやっといてくれないかな?」
「知るか!自分の仕事位自分で片付けろや!」
「そんな事言わないで頼むよ。今度僕がお奨めするミッドの料亭で晩ご飯奢るからさ」
爽やかな笑顔を浮かべながら俺にお願いしてくる亮太。
………いや、指先をコチラに向けながら光を収束させ始めてる辺り、『お願い』ではなく『脅迫』という言葉の方が的確な表現だな。
てか結界も展開してないのにレーザーぶっ放そうとしてる辺り、一切周りの被害とか考慮してないよね?
「た・の・む・よ」
「…とりあえずその光の収束を霧散させろ。話し合いはそれからだ」
そう言って亮太が光の収束を解除してから話し合う事になった。
……と言っても最後には俺が折れて、亮太の仕事を全て………ではなく期日の近い案件だけ処理する事にした。
くそぅ……優人達に着いて行けず、仕事する羽目になるなんて今日は厄日だよ………。
昼過ぎ…。
「ふぅ~……終わった終わった」
亮太が担当している期日の近い案件は4件程あり、今最後の案件処理が終わったところだ。
「お疲れ様。お茶飲む?」
「頼む」
声を掛けてきた椿姫に頼んで飲み物を用意して貰う。
「……………………」
少し離れた場所では澪が複数のディスプレイを表示させ、それらを睨む様に目を細めながら無言でコンソールを叩いていく。
「あ……そういやシュテル達の姿見ないな」
今更ながらに気付いた。
皆して何処か行ってるのか?それとも今日は4人揃ってオフの日か?
「シュテル達なら訓練場よ。教導官のシュテル以外はあまり身体を動かしていないから身体が少し鈍ってるらしいわ」
お茶を持ってきた椿姫が教えてくれた。
今日はシュテル主導で3人が訓練を受けてるのだとか。
「ていうか勇紀はどうなのよ?身体、鈍ってるんじゃないの?」
私で良ければ模擬戦付き合うわよ、と言われたが丁重にお断りする。
地球で過ごしてる俺は訓練してない様に見えるのだろうけど、実際はメガーヌさん、ルーテシア、ジーク、アギトとちょくちょく訓練してるので身体は鈍っていない。
「へぇ…アギトも?」
「おう。今のアギトはリインとのガチバトルなら勝てるんじゃないかなぁ」
少なくともSts原作時よりも今のアギトは強いと思う。
俺はお茶を啜りながら思考する。なんなら俺が知るアニメ、マンガ、ゲームの炎系統の技、魔法を教えるのも面白いかもしれない。
詳しい使い方については
……もしソレ等を使いこなせる様になったら魔改造アギトの完成だな。
そこまでするかどうかは気分次第だが、ユニゾン前の単体で強くなる事には何の問題も無い。
「たたた、大変です!!!」
そこへ飛び込んできたのは慌てた様子のドゥーエさんだった。
彼女は前にいた部署から異動し、今は俺、亮太、椿姫、澪を補佐する秘書的な立場にいる。
ドゥーエさんの上げた大声のせいで俺、椿姫に加え、仕事に集中していた澪までが当人に視線を向ける。
「今入って来た情報なんだけど、ミッド北部のとある邸宅で幼い子を人質に取った立て籠もり事件が発生したとの事です!」
「立て籠もりって……物騒ですねぇ」
「そうなんです。犯人は複数の集団で多額の現金と、逃走用のヘリを要求しているものでして」
何てお約束的な行動を取るんだ。
「現地近くの管理局員が既に犯人達の立て籠もっている邸宅を包囲してはいるんですが、『もし逃走を防止する様な封時結界を展開しようものなら人質の命は無い』って言われて…」
犯人達の逃走経路を封じる事は出来ないと…。
「犯人達の主武装は質量兵器だけど、中には数人魔導師も交じっている事が判明しています。相手のランク次第では長谷川二佐、大槻二佐、滝島二佐、暁二佐の誰かに現地へ向かってもらう事も考慮しているんですけど…」
「あの…私は無理です」
「…みたいですね。何だか忙しそうですし。なら長谷川二佐、大槻二佐、滝島二佐の中からという事になりますが……大槻二佐はどちらへ?」
「現在街に出てます。スーツ買いに」
亮太は誕生日パーティーに参加するための
物凄くイイ笑顔を浮かべていたなアイツ。
自分の好きなキャラとのファーストコンタクトだから頬が緩むのも止む無し…か。
「あとドゥーエさん。別に丁寧語で話さなくても良いですよ」
「そうね。私達より年上なんだから遠慮しなくても良いと思うわ」
「私達は別に階級差とかは特に気にしませんからね」
俺、椿姫、澪が丁寧語で説明するドゥーエさんに言う。
一応、階級は俺達が上であるが管理局に入局したのはドゥーエさんの方が早いから普通に考えれば彼女は先輩なんだ。
階級差を気にして敬語を使う必要は無い。
「しかし公私の区別ははっきりしておかないと…」
「少なくとも今はいいですよ。ここには顔見知りしかいませんし」
寧ろ丁寧語、敬語を使われると違和感しか感じない。
「……了解。正直、この言葉遣い結構疲れるのよね」
やれやれ、といった感じで肩を竦めるドゥーエさんを見て俺達も苦笑する。
「…で、その犯人達に占拠された邸宅っていうのは誰の家ですか?」
「確か『イーグレット』邸だったかしら?人質に囚われている子がそこの長女らしいけど…」
「「「ぶふっ!!」」」
俺、椿姫、澪は同時に吹き出した。
ま、マズいぞ!これは非常にマズい!!
イーグレット邸だけならまだ良かったが人質になってるのがあの『アイシス・イーグレット』だというのなら……
「澪……は無理だから俺か椿姫が出るしかないな」
「そうね。というより上からの指示が出る前に向かった方が絶対に良いわよね?」
「間違い無く迅速な対応が必要ですよ。もしこの事が亮太君の耳に入ったら…」
「「「犯人達が亮太(亮太君)に殺される(殺されちゃいます)」」」
肉体的な死か精神的な死かは断定出来んが確実に殺られるだろう。
管理局内において近接戦闘最強であり、あらゆる攻撃は
それはもはや一方的な蹂躙、虐殺…。
……いかんな。このままだとサウザー以外に『ひでぶ!』『あべし!』を量産する人材が増えてしまう事になる。
こうなれば亮太の耳に入る前に俺か椿姫がこの一件を処理しようとしていた矢先に…。
「ただいまー……って、あれ?ユウ来てたの?」
今現在ミッドで暮らしているレヴィ、そしてレヴィに続く様にシュテル、ディアーチェ、ユーリが執務室に入って来た。
「何やら難しい顔してる様ですが、何があったんですか?」
「ああ、ちょっとな…」
ユーリの問いにも短く答える。
「ふむ……そう言えば先程我等は訓練を早めに切り上げて街へ昼食を取りに出たのだが、道中で亮太の姿を見掛けたぞ」
「「「っ!!」」」
「見掛けた当初はとてつもなく良い笑顔を浮かべていたのですが……何やら通信に出たかと思うと段々と表情が憤怒のモノに染まっていきましたね」
あれ程怒ってる亮太は初めて見ました、とシュテルは言うが…
「「「Oh……」」」
俺、椿姫、澪は同時に項垂れた。
もう……既に賽は振られ、手遅れだという事実に気付いて。
「で、その後すぐにどっかへ飛んで行っちゃったんだよ」
「………市街地の飛行許可、出してないわよね?」
当たり前の事を確認する椿姫の言葉に俺と澪は頷く。
事後処理になっちまうな。
「レヴィ、アレは飛んでいったというより自分の身体を光に変えて移動したんだと思いますよ」
訂正。どうやら亮太は飛んでいったのではなく、
現地に着くまでの時間はそうかからないだろう。
頼む犯人達。どうか亮太と遭遇する前に投降してアイシスを解放しておいてくれ。
無駄な事だと思いつつも、俺は祈らずにはいられなかった………。
~~犯人視点~~
「おい!現金と逃走用のヘリはまだ準備出来ねえのか!?」
「へぇ……現金はもう少しで用意できるらしいんスけど、流石にヘリはここまで来るのに時間掛かるみたいッス」
「ちっ…」
俺は舌打ちをする。
既にこの屋敷の周囲は管理局の連中に包囲されてるが、連中の中に驚異的な
もっとも、魔導師の連中が来ようと俺達にはAMF発生装置という切り札があるしな。
俺達の中にいる魔導師も魔法の使用が困難になるが、質量兵器を用いて戦えば何の問題も無ぇ。
それに人質もいる以上、管理局の連中も迂闊に攻めてこれねえしな。
だからと言っていつまでもここにいるつもりは無いが。
人質の
「親分。この
「俺達が安全な場所に逃げ切れるまで連れて行く」
その後は何処ぞの違法研究を行っている連中の実験材料として売り飛ばすのが良いかもな。こういった
俺がここから逃げ切った後の予定を思案していると、俺の前に立っていた1人の部下が固まったまま立ち竦んでいた。
俺の背後に何かとんでもないモノがあるかとでも言う様に。
「(何だ?)」
俺はゆっくりと振り返る。
振り返った先……開いていた部屋の窓の縁に1人の男が立っていた。
「……………………」
無表情で俺達を見下ろす男。
こんな奴は仲間にいねえし、何より窓の縁に立っているという事は窓の外からやってきた部外者。つまりは……
「テメエ!!管理局の人間だな!?」
俺はすぐさま拳銃の銃口を局員であろう男に向ける。俺の行動に倣い、室内にいる部下達も一斉に銃器類を取り出し、局員に発砲する準備を整える。
しかし、そんな俺達の態度を見ても目の前の局員は動揺する事無く淡々と口を開く。
「やってくれたねぇ君達…。僕が楽しみにしていた彼女の誕生日パーティーをブチ壊してくれちゃって……」
男は一度、人質として眠らせている
「君達にとっては未だにここから逃げられない現状に苛立っているみたいだけど、誕生日パーティーを台無しにされた僕の苛立ち度の方が遥かに上…なんだろうねぇ。けど困るよ。君達みたいに雑魚でクズで名無しのモブ軍団は身の程っていうのを弁えて貰わないと」
淡々と語りながら男はフワッと身体を浮かせたかと思うと、ゆっくりと窓の縁から室内に降り立った。
「生まれて初めてだよ。この僕をここまで怒らせたお馬鹿さん達は…」
目の前の男に対し、俺は冷や汗を垂らす。
「まさかこんな結果になるなんて思ってもみなかった……」
俺の長年の勘が警鐘を鳴らしやがる。目の前の局員はヤベェと。
「ゆ……許さん……」
小刻みに震え、徐々に怒りを露わにする局員。
「絶対に許さんぞ虫ケラ共!!!じわじわと嬲り殺しにしてくれる!!!!」
遂に怒声を放ち、一気に殺気を解放しやがった。
「一人たりとも逃がさんぞ!!!覚悟しろ!!!!」
「「「「「「「「「「ひいっ!」」」」」」」」」」
局員の凄まじい殺意に小さく悲鳴を上げる俺の部下達。
「び…ビビッてんじゃねえ野郎共!!!おいっ!!!AMF発生装置を起動させろ!!!」
「は……はっ!」
部下の1人がAMF発生装置を起動させる。
これで俺の仲間の魔導師も魔法の使用が困難になるが、目の前の局員も魔法の行使が厳しくなる筈。
「はっはーっ!!これでテメエは魔法が使えねえ!!逆に俺達の武器は
俺達が圧倒的優位な状況に立ったと確信した俺は上機嫌気味に局員に向かって言う。
「はっはっは。AMFを展開した位で醜い顔で高笑いしやがって…」
と、局員は余裕そうな表情で短く言ったかと思うと
「いちいち癇に触る野郎だ!!!」
次の瞬間、俺の側頭部に何かが直撃したかと思うと、俺は意識を手放していた………。
~~犯人視点終了~~
「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」
地上本部の執務室。
俺、椿姫、澪、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、ドゥーエさん、そして執務室に戻って来たレジアス中将とオーリスさん。
この場にいるメンバーは全員言葉を発する事が出来ず、現場……亮太のデバイスであるボルサリーノから送られてきた映像を見詰めていた。
犯人のリーダー格を瞬く間に蹴り飛ばし、蹴り飛ばされた男はドゴン、ドゴンと音を立てていくつかの部屋の壁を突き抜け、やがて止まる。
早速1人が殺られちゃった。非殺傷設定だろうけど殺られちゃった。
『『『『『『『『『『お、親分ーーーーーっっっ!!!!!?』』』』』』』』』』
しかも殺られちゃったのはグループのリーダー格だったみたいだ。
『あはははは!!!AMF?そんな下らないモノでこの僕を止められると思ってたのかい?』
怯える犯人達を見て高笑いする亮太。
「………こ、降伏勧告を出さずに攻撃したが良いのか?」
ディアーチェは顔を引き攣らせながらこの場にいる誰かに問うが、答える者は誰もいない。
今の亮太が降伏勧告なんて出す訳が無いだろう。ていうか絶対に降伏なんて許さないと思う。どこぞの聖帝様と同じで…。
続いて指先を犯人達の1人に向け、極太のレーザーを容赦なく放射する。
ズムッ!!!!
避ける間もなくレーザーに呑み込まれた犯人達の1人は、レーザーが止んだ後、プスプスと身体から煙を発しながらその場に崩れ落ちる。
「よ、容赦無いね亮太…」
「今まであんなに怒った亮太を見た事は無いんですが、何故あんなに怒ってるんですか?」
「小さい子供が人質に取られているというのが許せないのでしょうか?」
「「「……………………」」」
レヴィ、ユーリ、シュテルの言葉が耳に届く。
亮太がブチ切れてる理由を説明できるのは俺、椿姫、澪だけだが決してその回答を言おうとは思わない。
『人質に取られてる子は亮太が前世の頃から好きな子なんだ』なんて言える訳ねえよ。
『え…AMFの影響下で魔法が使えるなんて……』
『っ!?思い出したぞ!!コイツ、地上本部首都防衛隊に所属するエースの1人だ!!』
犯人達の1人がようやく、亮太の事に気付いたみたいだ。
それから銃を発砲するが、銃弾は亮太の身体をすり抜けていく。
『こ…この化け物め!』
亮太に対する恐怖心が一層増す犯人達。言葉が震えているではないか。
『あははははは!!さあ、次は誰にしようかな?』
笑顔を浮かべつつも目だけは決して笑わない亮太が視線を動かし、1人1人吟味する。
視線が合う度顔色が真っ青な犯人達はビクッと身を竦ませる。
亮太は静かに光を収束させ、剣の形に変える。
『決めたぁ!!!』
亮太の姿が消え、次の瞬間には犯人グループの中で一際大きな体格の男に
『ぐはっ!』
突き刺された男は目を剥き、そのまま意識を失って亮太に覆い被さろうとするかの様にゆっくりと前に倒れるが、素早く
蹴り飛ばされた先にはAMF発生装置があり、男が勢いよく装置にぶつかるとAMF発生装置は壊れてしまい、AMFが消えてしまった。
これで現場にいる魔導師は魔法の使用条件が普段通りに戻ったと言える。
『何だ何だ!?さっきから凄い物音がしてるぞ!!』
『どうした!?一体何があったんだ!?』
戦場となってる部屋に新たな人影が数人現れる。
どうやら他の場所を見回りしていた犯人達の仲間だろう。
『き、気を付けろ!!アイツ、地上本部のエースの1人だ!!』
『俺達以外は全員アイツにやられた!!親分もだ!!』
増援で現れた連中は一斉に銃を構える。中にはデバイスを起動させる魔導師もいた。
『やれやれ……
……亮太君、マジで口調が悪くなってますねぇ。普段から言う事の無い『モブ』という単語が当人の口から飛び出してくるんだもん。
「……アレ、本当に亮太なのですか?違いますよね?」
「亮太のソックリさん……じゃないかなぁ……」
「…レヴィの言葉には一理あるな。容姿だけでなくバリアジャケットの見た目やレアスキルまでもが亮太と同じとは…」
「やっぱり次元世界って広いですねぇ…」
普段とのギャップの激しさを見て、遂には映像越しに映る亮太を別人だと思い込もうとするシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ。
こらこら、現実をちゃんと直視しなさい。
『俺が奴の動きを止めてやる!!!!』
犯人グループの1人は亮太に対してバインドを使う。
『はぁ……バインドなんかで僕が………あれ?』
ん?
溜め息を軽く吐き出し、バインドから抜け出そうとした亮太だったがバインドから
「どうしたのかしら?」
「遊んでる……っていう訳でもないですよね?」
椿姫と澪の表情もやや驚きが混じっている。
光人間である亮太に武装色の覇気の纏わない魔法は通じず、バインドですらすり抜ける筈なんだが…。
亮太はバインドから抜け出そうともがいているが、やはり抜け出せない。
「……まさかあのバインド、
てかそれ以外に亮太の実体を捕えられる理由が思い浮かばない。
バインドを使ってる犯人の1人は覇気なんてもの自体知らないだろうし自覚も無いだろうけど。
『食らえ!!』
バインドを使った男が更に念じる様な動作を行うと、突然バインドがドンッ!!という音と共に爆発し、縛られていた亮太は
『……………………』
「「「「「「「……………………」」」」」」」
信じられないと言った様子で驚愕し、目を見開いて映像を見る執務室の面々。だが
「亮太の奴、油断し過ぎだな」
「まあ、仕方ないんじゃない?まさかバインドを爆破させるなんて思わなかったでしょうし」
「ついでに言えばバインドに覇気が纏われてるのも計算外でしょうしねぇ」
俺と椿姫、澪だけは目の前の映像を見てものほほんと会話をしていた。
「…って、何でお前等はそんなに呑気な会話をしておるんだ!!りょ、りょりょ亮太の身体が真っ二つになって死んだのだぞ!!」
するとディアーチェに怒られた。
どうやら現実をちゃんと直視し、映像の向こうの人物がソックリさんではなく、本物の亮太とちゃんと認識している様だ。
ていうか亮太が死んだ?
「それは無い無い」
ディアーチェの言葉を俺は首を左右に振って否定する。
「無い無いって……大槻二佐の胴体が分かれてしまったんですよ!」
オーリスさんも顔を青くしながら言ってくる。椿姫と澪を除く面々もコクコクと頷いている。
…ひょっとして皆見た事無いのか?
シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリは地球に住んで居た頃ルーテシアと共に特訓した事も有るから
もしかして目の前の光景がアレ過ぎてその事自体忘れてるのかも。
「落ち着いて下さいオーリスさん。
「そうです。第一亮太君をよく見て下さい。身体が真っ二つになったというのに、
「「「「「「「え?……あ」」」」」」」
澪の言葉で他の皆はようやく気付く。
亮太のちぎれた胴体の部分から一切血が流れていないという異変に。
映像の向こうでは亮太を殺せたと思っている犯人達が満面の笑みを浮かべて歓喜の声を上げているが、次の瞬間その表情は絶望に染まる。
なんと、亮太の下半身がひとりでに立ち上がったのだ。
上半身は光の粒となって下半身の上に集まり、それが再び人の形を形成していく。その光景は、録画した映像を逆再生しているかのようだった。
程無くして亮太は爆破される前の元通りの状態になった。
『あー……ビックリしたぁ~…』
あまりにも予想外だった出来事に亮太も驚きを隠せない様だった。
けどすぐに表情からは驚きが消え、バインドを仕掛けた魔導師を睨む。
睨まれた相手はガタガタと震え、完全に戦意を失っているみたいだ。
『今のは…痛かった……』
『ひいっ!す、すすす済みません!!こ、降伏します自首します!!!ホラ、武器もデバイスも捨てますので命だけは、命だけはおた…………』
『痛かったぞーーーーー!!!!!!!!!!』
……魔導師の命乞い及び降伏、自首宣言は無駄に終わった。
亮太は叫ぶと同時にバインドを仕掛けた魔導師目掛けて一直線に突撃し、強烈なヘッドバットをブチかます。
相手の魔導師は悲鳴を上げる間もなく吹き飛ばされ、最初にやられたリーダー格の男同様に壁を何枚か突き破っていった。
その様子を見て他の連中は一斉に部屋から逃げ出した。
もはや戦おうという者は1人もいない。
『あははははは!!!誰1人として僕が逃がすと思うかい?』
亮太は残虐な笑みを浮かべ、高笑いしながら1人…また1人と
それから犯人グループが全滅するまで時間は掛からなかった。
「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」
その映像を最後まで見ていた地上本部執務室内は沈黙に包まれている。
やがて俺はゆっくりと口を開く。
「……何があっても亮太だけは本気で怒らせない様にしよう」
俺の言葉に執務室内の全員が静かに頷く。
アイシス・イーグレットが関わらない限りあそこまでキレる事は無いと思うけど。
こうして地上本部首都防衛隊には暗黙のルールが1つ出来た。『亮太を本気でキレさせてはいけない』というルールが。
尚、最後まで現場に取り残されていた人質のアイシス・イーグレットは亮太本人かデバイスのボルサリーノが結界魔法で保護していたため、一切傷付く事は無かった。
この後すぐに俺は亮太に現場へ呼び出され、アイシス・イーグレットの誕生日パーティーを開催させるべく、亮太が暴れたせいで全壊寸前のイーグレット邸宅を
~~あとがき~~
シュテル達、少しだけですが久々の登場です。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。