二人の劉備と二人の御使い~咎を受けし御使いの最後の旅
彼の始まりの物語
旅立ちの日
For沁side
旅立ちの日当日、一刀、桃香と一緒に一騎達が来るのを待っていた。
沁「・・・なあ一刀。」
劉北「なに?兄さん。」
沁「あれはなんだ?」
劉北「何言ってんのさ、桃香の荷物だよ。」
沁「そうか荷物か・・・って可笑しいだろ!?あれ明らかに一人で持てる量超えてるよな!?何?高さが俺の倍ある荷物なんてどうするんだ!?」
劉備「え?だって・・・鄧艾さんが量を気にするなって・・・」
二人「「え~・・・」」
呆れてものも言えねぇな・・・
一騎「お待たせ。って・・・こりゃすごいな。何が入ってるんだ?」
劉備「えっと・・・化粧品でしょ?着替えでしょ?あくせさりーでしょ?手鏡でしょ?香水でしょ?甘味でしょ?」
三人「「「・・・・・・・・・」」」
おいおい、一騎もあんぐりしてんじゃねえか。
一騎「ま、まあいいか。紫苑と璃々ちゃんが来るまでちょっと待っててね。」
劉備「は~い」
それからしばらくして、黄忠と璃々が合流。一騎の奴がこれからの事について話し始めた。
一騎「これから行く場所は襄陽だ。どうやら襄陽に行く途中で“黄巾党”があの賊に合流したんだと思う。」
劉備「黄巾党?」
劉北「民衆の暴動、漢王朝に対する不満が黄巾党を生み出したんだ。」
沁「・・・此処でもそうだとは限らない。だろう?一騎。」
一騎「ああ、此処では少し違う。」
劉北「どう違うってんだ?」
一騎「ここではただの追っかけだよ。」
三人「「「は?」」」
一騎「今は信じなくていい。移動を開始しよう。皆、劉備の荷物の周りに必要な物以外を置いてくれ。」
その指示通り、俺達は桃香の荷物(と言う名のある意味岩)の周りに荷物を置くと・・・
ばさぁ!
と、外套を荷物になでるように翻すと、荷物は完全にその姿を消した。
一騎「はい!見事荷物は消えました!ザ・手品!」
劉備「・・・すご~い、一刀さん見た?手品だよ手品。始めてみた~!!」
劉北「・・・・・・いやいやいや、明らかにおかしいから。明らかに不自然だから!」
沁「・・・諦めろ一刀。桃香はこういう奴だ。お惚け天然ホンワカ脳内お花畑の蜂蜜少女なんだから。」
劉北「義妹への評価が酷過ぎる!?」
劉備「ねえねえ、鄧艾さん、種は?種は?」
一騎「知りたいか?なら教えてやろう。この外套は異世界に繋がってるんだ。」
劉北「なんだろう、もう突っ込みつかれたよ。」
劉備「すっご~い!」
沁「なんだろう・・・俺もちょっと頭痛くなってきた。」
紫苑「あの・・・一騎さん?」
一騎「ん?どうしたんだ?紫苑。」
紫苑「説明・・・してくれるんですよね?」
一騎「応。じゃ、移動しながら話そうか。」
そう言って鄧艾は先頭に立って歩き出した。そこから一騎の纏う雰囲気が変わったのを他の面々も察したのか(璃々嬢は別として)後を付いて歩き始めた。
語り(一騎)
これは一人の少年と、一人の覇王の少女の物語。
少年の名は北郷一刀。多少は名の知れた私立の高校に通う学生だった。
明くる日、彼は光に包まれ眼を覚ますと・・・見慣れない荒野に居た。
彼が最初に出会ったのは趙雲、程立、戯志才と名乗る少女たちであった。
彼はよく知らないその世界で不意に程立の真名を呼んでしまったのだ。
激昂した趙雲に槍を突きつけられ、程立からは明らかに怒りを露わにしていた。
彼は戯志才の言う通り訂正をし、真名について教えられた。
その後、官軍が近づいて来て、三人は面倒事はまずいとのことで彼を置いて行ってしまったのだ。
そして、近づいて来たのは曹操孟徳と言う・・・一人の少女だった。
これは、一人の少年が、愛した少女を、大陸の王にする物語・・・
曹操の下、彼は勉学に勤しんだ。文字も読めない彼にとってそれは大事なのであった。
彼の努力もあってか彼は文官としての才を開花させつつあった。
元々現代知識を用いた政治をしていたのだから失敗すること自体が珍しいのだ。
その後、彼は楽進、李典、于禁と言う三人の部下に恵まれた。北郷隊の結成だ。
そこからは北郷警邏隊の名称で親しまれ、民からの信頼を勝ち取った。
黄巾党の乱以降、大きな戦は二つ。反董卓連合、群雄割拠。この乱を治めれば彼女の覇業は成しえたも当然と言えた。
だが・・・それは二人にとって果て無い時の別れと言う物になる。
歴史の矛盾が生んだ定軍山の戦い、夏候淵の死を彼は回避させた。
曹魏の敗北の歴史、赤壁の戦い。彼は歴史の知識によって結果を反転させた。
だが、それは二人の別れを早めてしまう。
かつて夏候姉妹、曹操と行った街の視察。そこで許子将と言う人物に言われたのだ。
『大局には逆らうな、逆らえば身の破滅』
大局・・・歴史の流れを変えた彼は、曹孟徳の前から姿を消すことになったのだ。
彼は見続けた、自身が消えて、彼女のあんな顔を、彼は初めて見た。そして後悔する。
彼女を泣かせてしまった。
そんなつもりじゃなかった。
ただ笑ってほしかった。
ただ前に進んでほしかった。
だが彼は勘違いをしていた。
やるべきことは彼女の夢を叶える事なんかじゃなかったんだ。
ただ・・・彼女の隣に居ればそれでよかったのだから。
さあ、物語はこれで終わり。
否、これが始まり・・・彼の旅はまだ始まったばかりなのだから・・・
For一騎side
一騎「・・・ふぅ。まあ、入りはこんな所か。どうした?劉北」
いったん離し終わり周りを見渡すと、劉北が
劉北「・・・あんた・・・北郷一刀って言ったよな?」
一騎「・・・言ったが?」
藪から棒になんだ?と思いながら聞き返すと
劉北「どう言う事なんだよ・・・」
納得できないと言うような返答が返って来た。
一騎「もう、分かってるんだろう?」
劉北「分かんねえよ!鄧艾が・・・北郷一刀?俺だって北郷一刀だよ!」
此処に来て自分の正体をばらしてきたが、ちょっとばかりはぐらかしてやろう。
一騎「お前は劉北郷徳だろう?」
劉北「そっちだって分かってて言ってんだろ!?」
なるほど・・・同然至極な返答だ。
一騎「・・・そうだな、二人の北郷一刀が存在するなんて認めたくないよな?だが現実だ。受け入れろ。」
劉北「そんな話・・・納得できるかよ・・・歴史を変えて・・・離ればなれになるなんて!」
ああ、こいつは自分の存在が消えるのが心配なんだな。当然と言えるかもしれない。大事な人が傍に居て、もしかしたら離れ離れになってしまうかもしれないなんて。
一騎「・・・安心しろ。お前は大丈夫だ。」
劉北「何で断言できる!」
一騎「この外史・・・世界の歴史の修正力は無いに等しい。つまり・・・」
劉北「歴史を変えても・・・消されない?」
一騎「そうだ・・・安心したか?」
劉北「・・・ちょっとは・・・」
俺の言葉に安堵したのか、少し笑みを浮かべる劉北。その視線は劉備に向かっていた。ふむ・・・なるほど・・・ほほぅ。
一騎「そうか・・・お前は劉備が大好きだもんな。」
大暴投。直球の大暴投である。
劉備「ふぇ!?」
劉北「んなぁ!?」
一騎「ん?違うのか?そうか・・・なら俺が口説k」
劉北「駄目に決まってるだろう!」
劉備「あの・・・私・・・一刀さん以外に興味ありませんから!」
おっと・・・劉北を焚きつけるつもりがとんでもない所で火が上がった。
劉北「////////」
劉備「あ/////////」
沁「おうおう、お熱いねぇ・・・」
紫苑「もう、一騎さん。分かっていても言う物ではありませんわ。」
璃々「劉備お姉ちゃん、劉北お兄ちゃん、お顔真っ赤~」
二人「「///////////////////」」
一騎「くっくっく・・・まあ、あれだ。俺の時の様に別れるなんてことはないから安心しろ。死に別れが無いように俺が鍛え上げてやる。だから・・・お前はお前の信じる道を行け。劉北。」
劉北「あ、ああ。ありがとう。」
一騎「そうだ、いい機会だから俺の真名を預けておくぞ。一騎、一騎当千の一騎と書いてかずきだ。覚えておけ。」
劉備「それなら私も桃香でお願いします。黄忠さんも、璃々ちゃんもね。」
紫苑「私にまで預けてくださるのですか?ありがとうございます。私は紫苑です。よろしくお願いしますね、桃香さん。」
璃々「よろしく~」
劉北「俺は一刀だ。って言うか、違和感ないのか?一騎・・・さんは。」
一騎「呼び捨てでいい、それと・・・俺は多くの居世界を渡ってきている。この程度で違和感を覚えていたら、キリが無い。」
一刀「分かった。よろしく頼むよ、一騎。」
桃香「よろしくお願いします!」
沁「改めて自己紹介した所で進もうか。」
沁の一声で俺達はまた足を進めた。
語り(一騎)
少年が降り立ったのは不思議な異世界。
少年少女たちが青春を謳歌する為に作られた、死後の世界。
そこでは死を受け入れられない者たちの戦場だった。
居もしない神、勘違いで天使とされた少女の物語。
少年はそこで一人の少女と恋に落ちた。
歌の力を信じ、彼女の歌は彼の心を捕らえて離さなかった。
而して時は流れ、その物語も終端を迎えた。
少女は自身の写し身である楽器を少年に託し、別れを告げる。
少年は自身の死を受け入れた。しかしそれは新たな旅の始まりだった。
少年はまた、新たな世界へと降り立った。
For一騎side
一騎「・・・ふぅ、今日はここまでにしよう。」
沁「お?なんだ。これからだってのに・・・」
一騎「まだまだ長いさ、なんせ・・・10年以上旅をして来たんだからな。」
沁「・・・そうだな。なげぇよな。」
沁はそう言うと、自身も思い当たる節があるのか、落ちかけた太陽を眺めながら黄昏ていた。
一刀「・・・死後の世界・・・かぁ。とんでもないなぁ。」
桃香「頭破裂しそう~」
紫苑「壮大な物語ですわね・・・」
皆、様々な反応であった。さて、今日一番の驚きを皆に・・・
一騎「さ、皆この外套『黒炎』の中に入るんだ。皆にも紹介するよ。俺の・・・旅の仲間たちを。」
一刀・桃香「「中に入る?」」
沁・紫苑「「旅の仲間?」」
璃々「く~・・・く~・・・」
璃々ちゃんは俺の背中でお休み中です。はい。
一騎「ああ、そら!!」
バサ!
俺は外套を大きく翻し、全員を外套の中にしまい込む。と、同時に俺、璃々ちゃんも中に入り、外套もその姿を消したのだった。
一刀「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
某太陽になんちゃら風だな。
沁「おったまげた・・・・」
眼が点ってこう言う事を言うんだな。
桃香「あわわわわわ・・・」
桃香よ・・・それは言ってはいけないセリフだと俺の中の何かが叫んでいる。
紫苑「な、なんですか?ここ・・・」
紫苑、それをこれから説明するよ。だから俺の服の裾をきゅって握るのやめてもらえません?めっちゃ萌えるんですけど。
一騎「ようこそ・・・北郷家へ。」
璃々「むにゅ~・・・す~」
璃々ちゃん・・・此処まで騒がしくして寝れるなんてすごく大物です。
一騎「野宿なんてしたくない!なのでこうして家に寝泊まりするんです。問題ある?無いよね??どうよ一刀。風呂完備、ふっかふかの布団、新鮮野菜や新鮮肉の美味しい料理、娯楽もあるよ?」
一刀「色々聞きたいけど今は問題ありません!風呂入りたいです!!」
さすが俺、ノリがいいではないか。
一騎「・・・混浴?」
一刀「あるの!?」
一騎「ふ、求めよ、望め、さすれば与えられん・・・」
一刀「桃香とお願いします!」
綺麗な土下座である。
一騎「本人の同意を得な。準備はしといてやる。」
一刀「あざーっす!!」
そんなやり取りをしていると・・・
藍「おかえりなさいませ、一刀様・・・いえ、今は一騎様ですね。」
一騎「ただいま、藍。大広間に皆を集めといて。自己紹介をしながらちょっと宴会を開こう。これからの旅路の安全を祈願しながら・・・ね。」
藍「畏まりました。皆さん、私は此処で農業管理兼環境管理を任されています、八雲藍です。後で改めて自己紹介は致しますが・・・まずは妖精メイドがご案内差し上げます。小ちゃん、お願いします。」
小ちゃん「は~い、おっまかせ~!」
藍は小ちゃんを呼び出し、皆を白魔館へと誘っていく。さすがに宴会ともなると洋館の大広間の方が騒ぎやすい。
一騎「さて・・・と。俺も行きますか。」
俺もそのまま白魔館へと足を進めた。
その日は全員の自己紹介や、飲めや食えやの大騒ぎ。一刀は桃香と風呂に行ってしまったし、沁は何やらワインに興味があるようで、めっちゃ飲んでるし(紫苑も一緒になって)、璃々ちゃんは早々に白魔館の客間でお寝んね(ぶっちゃけ一度も起きてない)している。
セイヴァー達も自己紹介を済ませ、どうやら真名の交換までやっていたようで・・・改めて思うけど皆真名の扱い軽くない?と思ったのは・・・置いておいた方がいいだろう。
一刀にいたっては『アーサー王!?女の人!?すっげー!!』と驚き慄いていた。
俺も久々の和室に布団・・・落ち着くわ~。ちなみに今の俺の姿は着物です。歳をとるとこう言ったラフな格好が落ち着くのである。
こうして、俺の・・・俺達の旅は始まったのだ。
あとがき
桃香「桃園三姉妹の」
鈴々「あとがきコーナー!なのだ!!」
愛紗「ど、ドンドンパフパフ~って、何故私がこんな事を・・・」
桃香「は~、ご主人様との混浴だなんて・・・向こうの私羨ましい!」
鈴々「お兄ちゃんの事だからお願いすれば皆で入れるのだ!」
愛紗「・・・(言えない、つい最近お風呂でシタって言える訳が無い!)」
桃香「どうしたの?愛紗ちゃん。」
愛紗「な、何でもありません!それよりもユウヤ、我等の出番はないのか?」
あ、考えてないです。
愛紗「なんだと!?」
鈴々「安心するのだ愛紗。ユウヤは愛紗大好きだからきっと出してくれるのだ。」
愛紗「そうか?」
鈴々「黒髪ロングヘヤー大好物って言ってたのだ。」
はい、その繋がりで明命も大好きですよ。
愛紗「そ、そうか//////」
桃香「さてと・・・次回はどんなお話かな?」
ああ、次回は彼の始まりの物語2だ。
鈴々「何だか尺稼ぎに見えるのだ。」
そ、そんなことないです事よ?
愛紗「我等の出番も楽しみしているぞ。」
ぜ、善処します。
三人「「「それじゃあ、また次回お会いしましょう!(なのだ)」」」
悲しい事にまだ二人の出番は考えてないんですよね・・・どうしましょう?
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なんだか本編から離れていってる気がしなくもなくも無く?
まあ気にしないで行ってみよう
それではどうぞ。