No.706669 欠陥異端者 by.IS 第二十一話(本番より準備の方が楽しいって、本当?)rzthooさん 2014-08-06 21:15:03 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1096 閲覧ユーザー数:1072 |
一夏「却下だ」
"ええええええぇぇっ!?"と、一年一組女子総勢30名以上が、批判めいた声をあげた。
だが、俺は一歩も引くつもりはない。何故なら─────
一夏「"織斑一夏のホストクラブ""織斑一夏とツイスター""織斑一夏とポッキー遊び""織斑一夏と────こんなの認められるかぁ!! 誰が喜ぶんだ、こんなもん!」
谷本「私は嬉しいなぁ、断言する!」
一夏「はぁ!?」
岸原「そうだそうだ! 女子を満足させる義務を全うしろ!」
その他にもグチグチと理不尽な文句を言われ続け、俺では手が負えなくなってきた。
しかも副担任は副担任で・・・
一夏「はぁ・・・先生からも何か言ってください」
真耶「えっ!?・・・え、え~と、ポッキーゲームなんて良いと思いますよ」
こんな時に千冬姉がいれば・・・はぁ~。
一夏(せめて零が同じクラスだったら、心強かったのに・・・)
鈴音「う~~~~~~~ん」
根本「・・・決まらないわね~」
ティナ「ってか、鈴にクラス委員の進行なんて出来るのか疑問だわ」
鈴音「そこ! 文句言う前に、良い案を出しなさいよ!」
零「・・・」
午後の授業二時間分を使い、学園祭で開くクラスの出し物を決めようとしているのだが、さっきからこんな感じで前に進めていない。
その時、一組の方からどっと歓声が上がった。
それを壁越しに聞く私達の教室の雰囲気が、一層暗くなった。
青柳「・・・せ、先生。このままじゃ何も決まりませんよ」
小林「ん~? まぁ、今日で完璧に決めなければいけないって事でもないし、しょうがないんじゃない?」
二組一同「「「・・・」」」
最近、合コンで知り合った男性とうまくいっているらしく、本業の教務が適当になっている・・・よく教師できるよな。
その先生の一言によって、その後の時間は誰一人として言葉を発すことがなかった。
鈴音「もうっ! 何なのよ、あの先生はっ!!」
零「あ、あの、食堂で大声を出すのは────」
鈴音「うっさい! 何も発言しなかったアンタに言われたかないわよっ!」
鈴音さんは、食堂のテーブルに置かれた水を一気に飲み干す。
昼休み・・・私は鈴音さんと二人で昼食を取っていた。
一夏達は屋上でお弁当を開くみたいだが、鈴音さんはそれを拒み、視線だけで"面貸せ"と私をここに連れてきたのが、ここまでの流れ。
鈴音「何で、あたしだけ一夏と別のクラスなのよ・・・[ブツブツ]・・・」
どうやら、私は愚痴をぶつけるためだけに呼ばれたようだ。
大した期待も無かったから、脱力することは無い・・・逆に、こんな関係も悪くない気がする。
鈴音「"男"の一夏がいる時点で、殆どの客を持ってかれて─────そういえば、零も"男"じゃん」
零「・・・今更ですか?」
鈴音「だって、普段から丁寧に話すし、外見も中性的だし、女装すればそれなりに・・・って今はそんな事どうでもいいや。とりあえず、一夏が率いる一組に対抗できるのは、アンタだけなのよ」
そう言われてもねぇ~・・・
零「一夏さんと私じゃ、人気の差が果てしなくありますよ。それに加えて、燕尾服着用の一夏さんです。既に校内に情報が出回って、学園問わず大騒ぎなんですから」
布仏さんからの口コミだから事実かは不明。しかし可能性はかなり高いだろう。
鈴音「じゃああれよ。今から人気を集めるわよ」
零「どうやって?」
「あ~~」と鈴音さんは、天井に視線を泳がせ顎を指でトントンと叩く。
その後、数秒間腕を組み、残った昼食を口にかきこんで、もう一度水を飲み干した。
鈴音「・・・自分で考えて。じゃっ!」
零「ちょ、ちょっと!?」
楯無「それで、私に上級生の橋渡し役になれ・・・と。いいわよん♪」
あまり頼りたくはなかったのだが、会長に尋ねてみれば、快く受け入れてくれた。
楯無「なら、さっそく行きましょう!」
零「今、放課後なんですけど」
楯無「いいからいいから」
学園祭に関する資料をほっぽり出して、俺の手を握って生徒会室から連れ出す。
零「また、布仏先輩に怒られますよ」
楯無「だって最近は、ずっとデスクワークで退屈してたんだもん」
零「はぁ・・・」
この人は相変わらずだな・・・。
零「それで、どこに連れていくんですか?」
楯無「二年寮よ。そこに私より使える人物がいるわ」
生徒会長権限発動によって、私は二年寮に引っ張られた。
廊下で二年生の女子達とすれ違うと、不思議そうにこちらを窺う。
そんなの気にせず、会長は私の手を引いて目的の寮室に到着し、ノックもせずに入室した。
楯無「薫子~、良いネタ持ってきたわよ~」
零「"薫子"って・・・まさか、あの─────」
黛「ふぁ? ふぁっちゃん、ほかえり」
黛 薫子・・・二年生にして新聞部のエース。
一夏さんに色々と取材をしている風景を目撃しているから、顔は覚えている。
そんな黛先輩は、まだ五時過ぎだというのに歯を磨いており、私服姿だった。
黛「ひょいとまっへへ」
歯ブラシを咥えたまま、洗面所へ向かう黛先輩を余所に、会長は私の手を引いたまま部屋に招き入れた。
黛先輩と相部屋らしい会長は、私からようやく手を離してベットに腰を下ろし、私もその隣に座らせてもらう。
同時に、黛先輩が帰ってきた。
黛「それでネタって?・・・もしかして、落合君?」
その質問に会長がにんまり顔で返すと、黛先輩の表情がキラキラと輝きだした。
黛「本当!? いや~、最初の頃は完璧拒否状態だったから、はんば諦めかけてたのよね~・・・なら、さっそく聞きたかった事を根掘り葉掘り」
零「・・・そういう事ですか」
確かに、短期間で学園全体に自分の事を知ってもらえる手段として、新聞部を活用するのが良策。
楯無「まず、学園全体に落合君がどういう人なのかを広めてからじゃないと、上級生とのコミュニティーを作りにくいでしょ」
零「ええ・・・まぁ、確かに」
黛「なるほどね、そういう目的か・・・よっし! なら、巻きで進めて明日に掲示するわね。では、さっそく─────」
いつの間にか用意された録音機とカメラをこちらに向け、数々の質問をぶつけてきた。
聞かれたことは、よく一夏さんにしている質問。主に、女子受けが宜しいものばかりだった。
黛「ハーレム状態の織斑一夏君に対して、何か思う事はありますか?」
零「ん~・・・一夏さん自身に思う事はないんですけど、小細工なしに"告白した者勝ち"な戦いに見えますね」
黛「なるほど、確かに一理あるけど、恋する乙女には色々あるってことを忘れないでね」
楯無「そうよ。特に、あの五人は性格的にも特殊だし」
会長もね・・・
黛「それにしても、会長と落合君は仲がいいわね。生徒会室の出入りが多いって風の噂で聞いたけど・・・もしかして、付き合ってる?」
零「いや、そんなことは─────」
楯無「バレちゃった? 実はそうなのよ!」
零「は?」
隣に座る会長が、私の腕に絡みついてきた。
むにゅっと柔らかな感触が腕から伝わってくるが、理性フル回転させて引き剥がしを試みる。
零「こ、ここで冗談はやめてください!」
楯無「ええぇ~~」
零「ええぇ~~、じゃないです! 勘違いされたら────」
黛「大丈夫、大丈夫。この人の性格はよ~く知ってるから」
楯無「ちぇ~、つまんない」
黛「でもでも! 落合君の赤面ゲット♪」
カシャッと、フラッシュが焚いた。
黛「最初はこんなもんかな? じゃあ、最後にたっちゃんとの関係を教えて」
零「関係って・・・」
チラッと会長を見ると、にたにたと含み笑いを浮かべていた。明らかに楽しんでやがる。
というか、普通に"先輩と後輩"と言えばいいはず・・・だけど、何か言えない・・・あれ?
零「・・・」
楯無「・・・え? な、なによ? そんなに見つめて///」
零「あっ、いや・・・別に」
直視された会長が珍しく恥ずかしそうに顔を赤くし、恥じらいの仕草をする。
その反応に私も顔を赤くし、離れた会長の体温が恋しくもあった。
黛「あらら? まさか、本当に"そういう関係"?」
楯無「ちょ、ちょっと! こんなの冗談に決まってるでしょ!」
零「・・・」
黛「ちょっと残念そうね」
零「っ・・・そ、そんな訳ないでしょ」
楯無「むっ! へ~、私にそんな魅力はないと?」
あなたは本当に面倒な人だな・・・これ以上、混乱させないでくれ。
黛(・・・なるほどね。これは一夏君とは、種類の違う修羅場が見れそう。面白くなってきた♪)
零「もう、私は失礼します・・・それでは黛先輩、よろしくお願いします」
黛「任せておいて~!」
逃げるように寮室から出る。
自分からお願いしたことだが、ようやく解放されたと安堵に息を────
楯無「置いていくなんて酷いじゃない」
零「うぉわ!? け、気配消して後ろに立たないでください!」
楯無「置いていく方がわるいの」
そう言って、また私の腕に絡みついてくる。
楯無「それで?」
零「え?」
楯無「何で、私の事を見つめてたの?」
からかう目的ではなく、純粋な疑問として投げかけてきているようだ。
上目遣いで、前のめりに顔を覗き込んでくる。
零「何でもないですよ。ただ、何を答えたら正解かを吟味していただけです」
平静を装って解答すると、会長は「ふ~ん」と納得していないご様子で、腕から離れていく。
楯無「じゃあ、私の橋渡しはここまでだから」
零「あ、はい。ありがとうございます」
楯無「うん♪ じゃ、まったね~!」
そう手を振って、悠々と去っていく会長。
零「・・・」
(何故に、部屋に戻らないんだ・・・?)
階段を下っていく会長を見つめながら、しばし首を傾げるのだった・・・。
零「・・・って、いつまでもここに立ち尽くす訳にはいかない」
さっきから上級生たちが陰から監視されている。
この視線が、疑わしい視線から好奇な視線に変えなければならないと思うと、先が思いやられる。
ため息をつきながら、二年寮を出て、一年二組の教室に置き忘れた荷物を取りに戻った。
その帰り────
本音「おっとっとっと~~!」
零「げっ!」
[バササァッ!]
廊下に散らばる大量の紙片。その紙片に埋まる私と、相変わらず危なっかしい布仏さん。
私が階段を上り終えて曲がり角にかかった時、丁度良く紙片に視界を遮られていた布仏さんに接触した。
普通、足音とかで分かるものなのに、まったく気が付かなかった・・・。更識家の従者だから、そのような技術が体に染みついているのか? だったら、それは布仏さんにとって無駄な能力だな。
本音「う~~・・・あっ、れいちん」
零「あ、うっ」
ヒラッヒラッと被っていた紙片がこぼれ、布仏さんと目が合う。
すると、いつぞやの"不可抗力による猥褻"を思い返してしまい、またキョドってしまった。
とりあえず、その場の紙片を拾い集める。それに合わせて、布仏さんも慌てて紙片をかき集め始めた。
零「・・・」
本音「・・・」
その間の会話は一切ない。
私は黙って、紙束の2/3を持つ。
本音「だ、だいじょう────」
零「また、転ばれたら困るので。これ、職員室ですか?」
本音「あ、う・・・うん」
私が歩き出すと、その三歩後ろをとことこと布仏さんが付いてくる。
上履きが廊下を擦る音が時々聞こえるぐらいで、静か過ぎる時間。
思っていたよりも、職員室までの道のりは長く、胃に穴が開きそうだ。
零「失礼します」
その解放の時が訪れた時、私は心底ホッとした。
紙の束を職員室に届け終わり、布仏さんに一言を告げてから帰寮しようとする。
本音「ま、待ってよ~・・・」
零「え?」
袖越しに袖を掴む布仏さん。
本音「気にしてないから[ボソッ]」
零「ぁ・・・」
本音「じ、じゃあ~、まったね~!」
振り向きもせず、俺を抜いて走っていく布仏さんは、相変わらず遅い。
私は呆気に取られながら、嬉しくて頬が緩んでしまった。
楯無「ほれほれ~、お縄につけぇ!」
一夏「ちょ、ちょっとやめてください!」
部屋に戻ってみれば、会長が同室の一夏を襲っていた。
零「・・・何してんの?」
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のほほんさんのデレって中々、想像がつかない・・・