真・恋姫†無双~物語は俺が書く~ Inドタバタ日常編
1~2日目
皆さんこんにちは。覇炎です。この物語はある意味“拠点フェイズ”と一刀の日常もといネタを中心とした物です。
本編とは絡まないとは言いませんが、読まなくても問題等は無い……はずです。
文構成も本篇と違い周りくどいものではありません。
では、本物語をご堪能下さい。
1日目――…来た……来た……!――
討伐から帰ってきた次の日の朝。朔に氣の使い方を教えると言われ俺こと、一刀は城の庭で朝から坐禅を組み瞑想を行っているのだが…。
〈ダメです、ダメです、ボンクラですマイスター〉
朔のダメ出しに口をムッとさせながら瞑想を止め、目の前の地面に突き刺した『朔夜』を恨めしそうに見る。そんな視線を敢えて無視して講釈を垂れる朔。
俺も教えてもらっている立場な為に文句は言わない。
〈先ほども教えたように、瞑想で氣を使えるようになるなら今頃、お寺の住職さん達が皆なオーラマスターですよ?もう一度申し上げますが、氣とは使う人の感情の昂ぶりが齎[もたら]す内に秘めたる力。人の昂ぶりは十人十色、戦いにより得る者。三大欲求―睡眠欲、食欲、性欲―欲望など〉
〈もし、解り難いというならばそうですね……“思い”と立て替えても障りは無いでしょう。愛する者を守りたいという思い、破壊衝動、殺人本能…言い表せばキリがないほど。マイスターにだってそう言う物くらいあるでしょう?例え様の無い欲望とか?〉
「……欲望、思いか…」
〈あれ…?突っ込みは?おーい、無視しないでくださいな!私は放置プレイされて喜ぶ、変態じゃ…ないですよ?ほんと〉
朔が何か叫んでいるがそれを無視し、ずっと坐禅を組んでいた為に尻が痛くなり立ち上がる。そして、青い空を見ながら深く深呼吸。焦りはどんな時でも禁物、スパルタ爺さんからはそれを嫌というほど教えられ身に沁み込まされた。
俺の思い…欲望ってなんだろ?
…金欲?別に要らないとは言わないが高ぶるほどじゃない。
…性欲?それは人として何か拙い。いや、男としては!……よそう。取敢えず違うと言う事で。
浮かんでは消え、浮かんでは消える。それを繰り返す内にある一つの事が浮かんだ、その瞬間。
――パリッ!
〈ッ!今、イメージしている事を強く思ってください!〉
身体に電流が走ったような感覚に襲われると共に、朔も俺の異変に気づき声を荒げながら指南してくる。そして、言われた通りに今思い描いている事を強く、より鮮明にイメージする。すると、身体の奥から何かが弾けようと…この殻(体)を打ち破り外に出ようとしている事を感じる。
〈あの、戦の際にマイスターは自覚なく少ない量ですが氣を使っていました。あの量であれだけ戦えたマイスターなら、氣の使い方を学べば更に上を目指せます!?さぁ、あの時と同じことを思い強く願ってくださいな!!〉
あの時の事?あの時、俺は……生きたい。生きて――たい!そう願った!!
―――ポーンッ―――
ラの波長音が聞こえた…。同時に感じた、身体の奥から何かが這い出そうとしている!身体からパチパチっ青白い物―静電気―が走る。
「…来た?……来た……来た!……」
〈あ、あの……マイスター?〉
俺の様子おかしい事に気づき心配しているようだが……もう、これを抑える事が出来ない!!
「……来い…」
今、俺の中で何かが爆発しそうになるが身体がそれを止めようとする。
「……来いよ!…」
余計な事だ!!俺は欲しい、力が!!
「俺は…」
―――事ができる力が!!
「ここにいる!!」
だから、自分で打ち破ってみせろ!
「第一相、死の○怖『スケェ〇ィィィィィィス!!!』」
〈…………気が済みましたか、一刀?いえ、カスト?誤字じゃないですよ〉
このマイスター、何処まで馬鹿なのでしょうか?氣は霧散し、目の前には脱力している青年が一人立っているだけ。自分のボケでチャンスを不意にするなんて愚かです。まぁ、本来は何年も修練を積み得る物。ですから1日であそこまでいくこと自体がすごい事なのですが……私のマスターである以上甘やかす訳にはいきません。取敢えず次回に来たいという事で、今回はここまでに……あれ、マイスターの身体から青白い光が!…まさか!?
「うおぉぉぉぉ!!」
マイスターが呻ると共に身体から氣が溢れ出した。マイスターの後ろに鎌を持った死神が!!
……なんと申しますか一言で言うなら。
「おぉ、これが氣なのか!?身体が軽い!はっはっ。朔、どうよ!?」
〈絶望した…。ギャグで覚醒した青年がマイスターである現実と覚醒させた世界に…〉
「さ、朔?」
う、うぅ~、マイスターが心配しているし、しょうがないので甘んじてこの現実を受け入れましょう。そして、調子に乗らないよう釘を打たねば…。
〈取敢えずはおめでとうございます。ですが、一つ忠告しておきますがマイスターの氣の量なのですが、あの戦の時に比べれば多い…しかし、そこら辺の闘士に比べれば下の上、中の下と言ったところです〉
ふっふっ。いいですね。その希望から絶望に落とされた時の表情、たまりません。“擬人化”していたら、さぞかし妖艶な笑みを浮かべていたでしょう。まぁ、このままでは可哀想なので少しぐらいは希望をチラつかせる事に…と、思っている傍からマイスターは顔をあげる。その顔は私の好きな希望を持って挑む顔。
「朔!それって今のままならだよな!?修行とか強くなるか?それと氣の使い道を細かく教えてくれ!量より質だし、量が無くたって針のように細く、短くして飛ばす事が出来れば!!」
全く、頭の回転が速くて賢いです。マイスターの言うように修行をすれば量も増え、身体能力の向上。コントロールさえ覚えれば針どころか様々な形や投擲も出来ます。黙秘を肯定と思ったのか一人で喜ぶ、マイスター。
―――…子供のような姿。もし、あんな事がなければこれがマイスターの本来の姿なのかもしれません。―――
―――ですが、それを悲観して嘆いていてはそれは成長する事を止めるも同然。―――
―――だから、マイスター?もっと傷ついて下さいな。それが貴方を更なる高みへと誘います。―――
―――もし、傷つき立てなくなれば私が助けますし、貴方の代わりに傷つき護ります。昔、貴方が私を“護ってくれたように”。そして、―――
「おーい、北郷!何を、って何だそれは!?身体が光っているぞ!?」
「あれは…朔殿が言っていた氣というものか?」
「兄ちゃん、すげー!!」
「体がそのまま消えれば良いのに…」
―――心は周りにいる仲間が護ってくれます。背を押し、護ってくれる人がいます。―――
「一刀、貴方の報酬の件だけど用意が出来たから見てくれるかしら?」
「あぁ、今行くよ!」
―――貴方はもう、一人じゃないのですよ?―――
マイスターは私の柄を掴み、皆の方を向く。
「さぁ、朔。行くか?」
〈…えぇ、何処までも共に〉
マイスターは首を傾げ皆の所へ走りだす。
―――私はマイスターの卑屈になる処が嫌いです。ですが、今、少しずつではありますが自分を見つめ前へと進む貴方が好きです。―――
―――私は貴方の希望に満ちた顔を壊そうとする者から、護ります。マイスターのその笑顔を愛していますから。ですが、時に…。―――
〈所でマイスター?身体の方は大丈夫ですか?〉
「…そう言われれば、だるい様な?」
〈言い忘れましたが、無駄に放出し続ければガス欠となり死にいたる場合も…〉
「先に言え!どうやって抑え…る、んあ?」
「「「北郷!?」」」
「兄ちゃん!?」
「ちょ、一刀!?」
倒れるマイスターに慌てて近づき起こす皆さん。
―――私が困らせてもいいですよね♪?―――
1日目―了―
2日目:午前 ―いらっしゃいませ!!ブレイ○食堂…―
今、私こと魏の曹孟徳またの名を華琳は最近やって来た天の御遣い、北郷 一刀を探していた。本来ならこの様な事は、他の者にやらせればよいのだろうが偶々、手持無沙汰になったので散歩がてらに探していた。
探す理由は先の戦の報酬で、『もう一部屋、出来れば今いる部屋の隣が欲しい』と言ってその通りにした翌日…一刀の隣の部屋の“扉が消えていた”。比喩的意味では無く、文字通り消えてないのだ。その詳細を知る事が一つ。一刀にもう一つ仕事をこなして貰おうと思ってだ。まぁ、先ずは書類整理をさせて能力を見てそれから…。
思考を展開しながら歩いていると、私の鼻が香ばしくて美味しそうな匂いをかぎ取る。その匂いに釣られてやってきたのは…。
「調理室?まぁ、当然か。しかし、…多分肉を焼いた匂いだけどこの嗅いだ事もない匂い…誰が何を作って……」
私がここの主なのだから、遠慮などする必要は無く扉をくぐる。そして、かまどの前に人が立ち調理をしていた。
「~制御不能 熱い炎 戸惑いを焼き払い 昨日までの感覚 忘れさせる~~~まだ知らない自分が 目覚めてく…Sup〇rno〇a~♪」
「…………」
かまどには火が灯り勢いよく燃え盛り、上にある中華鍋を熱する。その鍋を操るは…聴いた事の無い歌に旋律と言葉。しかし、何やら気分が乗る…そんな歌を唄っている私の探し人。
「でーきたっ!我ながらいい出来だ。材料がそれは無いから色々代用はしたがうまくいって良かった」
「そう、それは良かったわね。是非、ご相伴に与かりたいものね?」
自分も気づかない内に、私は食卓の椅子に座り一刀の手料理を待っていた。こちらを向いた一刀は薄い長袖の服に、確かずぼん?だったかしら。それを穿きその上に服が汚れぬよう前掛けをしていた。
私と視線が合い、笑顔で返したつもりだけど、一刀の表情が笑顔のまま固まる。まぁ、いきなり現れたらそうなるかしら?気配も感じ取れないくらい熱中していたようだし。
思考が動き出したのか、何かと葛藤していたようだけど直ぐに私の目の前に皿を用意して調理していた物を乗せる。当然よね?それこそ渡さないなんていうなら…ふっふっ。どうしたのかしら、私?
「華琳、作った身としては出来たての内に食べてほしいのだけど?」
「分かっているわ。だけど、その前に料理はなんて言うものかしら?」
目の前の皿の上には、楕円形をして焦げ目のついた“何か”が食欲をそそるいい香りを出していた。この私が涎を出しそうにするほどのだ。一刀が言うには、この楕円形の料理は『はんばーぐ』と言うらしく調理法・食材を聞く限りでは食べれない物では無い。後は料理人の腕次第。では…。
「いただきます」
「どうぞ♪」
どうやら、かなり自信があるのか笑みを崩さない。ふっふっふっ、本当に可笑しな奴。取敢えず、箸ではんばーぐを一口で食べられる大きさに切る。すると、切ると共に肉汁が溢れ出す。ふむ、中までしっかりと火が通っているわね。さて、お味はっと。
私は箸で一切れ摘み、口に運ぶ。
……。
…………。
…………………。
「…一刀」
「な、なんだ?もしかして、不味かったか?くそっ!自信が有ったとはいえ、やはり味見をすべきだった!料理人として何たる失態!?」
「一刀!!!」
「はい!?」
何やら混乱している一刀を一喝して落ち付けさせる。全く!!不味い物を食わせたら首を刎ねるとでも思っていたのかしら?…間違えた認識とは言い難いけど。それよりも!
「……しなさい」
「…?聞こえないんだけど」
「…教えなさい」
「何を?」
「!!作り方を教えなさいって言ってんのよ!!!」
珍しく一刀が驚いている顔をしている。まぁ、私がお願いするなんてことはあまりないし…ね?でも、しょうがないじゃないの!?おしかったのだから、その作り方だって知りたいのが人の郷と言う物。しかし、一刀にお願いなんて…きっと色々な意味で顔は真っ赤であろう。一刀はと言うとなんか清々しい顔をしていた。そして指をてんにむけ
「.天の道を往く総てを司る男の人が言っていた。“誰にもわからないように隠し味をつけるのは楽しい。だが、それを見つけるのはもっと楽しい”っとね。関係の無い事だけどな…。俺が言いたいのは自分で見つけた方が楽しいだろ?」
……ふむ。なるほど、簡素な言葉の中に深い意味があるわね。確かに考える事もしないで答えを聞くなんて面白みが無いわね。一度、一刀にその男の格言全て書かせようかしら。寧ろ今すぐ書かせよう!
有言実行と言う言葉があるように、私はすぐに書かせた。しかし…。
「……?……!?……」
「…最初に断ったよな?俺は“華琳たちと同じ文字の読み書きが出来ない”ってな。言ったよね?」
当然、一刀の常識がこちらに通用しない以上は“こちらの常識も通じない”事を意味する訳である。一刀が書いた文字らしき物は私ですら解読が出来ない物であり、この分じゃ書類整理も出来ないであろう。まぁ、秋蘭の情報では一刀もこっそりと秋蘭に字の読み書きを習っているようだから、今は使えないって事にして置きましょう。んぅ?何時聞いたのかって?そんなの聞くだけ野暮でしょ?
しかし、文字の読み書きが出来ないのならしょうがない。……次の案を提示することにしましょう。
2日目:午後~デン○イナー署、出動!!~
「ふっふっ…あいつ、しっかりと仕事をこなしているかしら?」
「きっと、その辺で死んでいますよ、華琳さま」
「そこまであやつが嫌いなのか、桂花よ?」
「春蘭様、あそこにおいしそうな点心が!?」
私こと秋蘭の横では華琳様が意地悪な笑みを浮かべ、桂花が北郷の悪口をいい、姉者こと春蘭が頭を捻っているり、季衣がはしゃぐ。ふっ、かわいいなぁ…姉者は。
しかし、姉者と華琳様だけで戦っていた日々。あの頃はこの様に騒ぐような日が来るとは思っていなかった。盗賊を追って北郷に出会い、盗賊討伐の際に桂花が自分を仲間にしてほしいと嘆願し、その途中で季衣と出会った。全く…北郷と出会ってからは時間が経つのが速く感じられるし、華琳様や姉者もよく笑うようになった。……ま、まぁ、華琳様の場合は北郷を苛めて愉しんでいるようだが…。
先ほどもいきなり、『一刀が町の警備隊やる事になったから、午後に様子を見に行きましょう』などと言い始める始末。それが午前の事で日が真上に来た頃に、皆で市へと繰り出し北郷の様子を見に来た訳などだが…。
「しかし、北郷の奴!何処をほっつき歩いておるのだ!?華琳様が御身自ら出向いておるというのに」
正にその通り。先ほどから探し歩いているのだが、一向に見当たらない。だが、それもしょうがないだろう。先ほど言った通り、北郷が華琳様に警備隊の命を受けたのは“今日”の午前。たかだか数刻で出来る事など限られている。華琳様にも今日で無くとも、っと助言したのだが…。
『秋蘭、私はね無理に一刀に押し付けた訳じゃないわよ?あいつったら「ふーん、それって市で暴れる奴らをぶっ飛ばしても構わないのか?」って言うし、その後、自信有り気に「いいだろ、その件この天の御遣いである北郷 一刀が引き受けた!!」とか言って詰所の場所を聞いて走り出して行ったわ』
その後、華琳様は小声で仰った。
『私ね秋蘭、彼は色々な可能性を秘めていると思っているのよ。これはその可能性を引き出す第一歩に過ぎないの。それに見に行くだけで期待などしていないわ…今はね?』
北郷、華琳様にこれだけ期待させているのだ…。裏切ってくれるなよ?
しかし、私の望みはすぐに崩れ去った。
「おう、兄ちゃん!!ちょっと見ていかないかい?良いもん入っているよ」
「どれどれ?おぉ、これは!?おっちゃん、何処でこのバイオリンを手に入れたんだ!?この時代じゃまだ無いはずだぞ!!?」
「ば、ばいおんりん?唄音鈴[バイオンリン](誤字なし)?えと、ここだけの話。実は近くの海の浜に打ち上げられていた物で、へえ」
「なんだと?ふむ…幾らだ?はぁ?高いぞ、話にならん。こんな変わった物を買うのは、きっと俺ぐらいだと云うに。まぁ、その値段で買う者が何時現れるかは知らんが達者でな?……なんだ、まけてくれんのか?幾ら。………帰る。もう少し安くなければなぁ?……なんだ話せるなじゃないか、おっちゃん!!気に入った、その輝いてる石の一緒に貰おう!!」
「あ、有難うございやした…(畜生!どっちがぼったくりだ!?)」
今、目の前には探していた北郷がいい笑顔でやつれきった…と言うよりは絞り取られた商人が、北郷に変な形をした革の箱と石の入った袋を渡していたが……そんな事はどうでもいい!!それより!?
「秋蘭?」
そら見ろ。私の横からはひんやりとした空気を放出している華琳様に、私と同じく失望と共に怒りを感じている姉者と呆れている桂花に季衣。私に呼びかけた華琳様は『先ほどの言葉、撤回は効くかしら?』と北郷から目を離さずに行って来る。ご心中お察しいたします。
北郷よ?華琳様から仰せつかった命を成し遂げない事では飽き足らず、怠ける事までするとは何されても文句は言えまい!!
その時、事件は起こった。
「大変だ!!引ったくりだ、誰か捕まえてくれ!?」
「こっちは酔った大男が暴れ始めたぞ!?」
「三つ隣の通りで、盗賊が!?」
「助けてくれ~!?なんか、褌履いた大男と桃色下着しか穿いてない大男と熱血男が暴れてー!?」
「蝶の仮面をつけた変態が悪者退治しているってよ、見に行こうぜ」
「うはっはっはっ、ひれ伏せ、雑種ども!!?」
くそっ、やはり北郷の奴には荷が重すぎたという事か!?華琳様がすぐに姉者、季衣、そして私に鎮圧するように命令するが人がたらな過ぎ……。
「華琳、その必要は無いぞ?警備隊の仕事を取らないでくれるか?」
「「「「「!!?」」」」」
いつの間にか目の前に居た北郷が、気配もなく我々の背後に立っていた。しかし、そんな事に驚いている暇は無い。いち早く鎮圧をしなければ!!だが私たちより速く前に出た北郷が、手を上げて指をパチンッと鳴らす。すると、
―――いーじゃん!いーじゃん!スゲーじゃん?!
軽薄な歌を刻み、踊りながらやってきたのは……我らが警備隊だった。しかし、あれは私の知っている警備隊じゃない……少なくとも防具が赤や青、黄や紫に白等々。この短時間で何が………いや、短時間で北郷色に染められたのか?華琳様も驚いたのか、口を半開きにして呆けていらっしゃる。姉者と桂花も同じで言葉も出ないようだ。季衣は本来の子供の目になり見入っていた。
そんな私たちを余所に、テキパキと警備隊に指示を出す。
「赤鬼[せきき]部隊は大男を!」
「お任せを!オメーら、いくぜ!いくぜ!いくぜ!」
「青亀[せいき]部隊は引ったくりを!」
「はい。見事にお釣り致しましょう」
「金熊[きんのう]部隊は盗賊」
「我らが力で泣かせて見せましょう」
「紫龍[しりゅう]部隊は…」
「私たちは蝶の仮面を被った変態を!答えは聞きません」
「白鳥[はくちょう]隊は褌の変態を」
「仰せのままに」
「後の兵は俺と共に…あの馬鹿笑いしている金色の男を始末する。この件でお前らの所属が決まると思え!!」
「は、はいっ!隊長!!」
「違う!!?俺の事はチーフと呼べと言ったろう!?」
「すみません!!“血畏怖[ちいふ]”!?」
その後、事件は物凄い勢いで解決した。
赤鬼部隊が喧嘩殺法で大男を潰したり、青亀部隊が見事な連携で引ったくりを抑え込み、金熊部隊が盗賊どもを泣かした。紫龍部隊と白鳥部隊は接戦はしていたが、敵もやるらしく逃げられたようだ。
北郷はと言うと、金色の鎧を着た男と戦っていた。最初は兵達を当て、両者の力を測っていたように見えた。その後、直ぐに兵を各部隊にあてがい分隊する。その行為に敵は北郷に文句を言う。
「おい、雑種!?どういうつもりだ?まさかこの俺相手に一人で…」
「己どころが相手の力量も測れない物が吠えんな。つか、何だその恰好は?某英○王気取りですか?」
相手は逆上し、北郷に突出する。それでは盗賊と何ら変わりも無い、北郷も呆れて溜息をつく。そして、敵の攻撃を『望月』で受けた…ように見えたがギリギリで『望月』の角度を変えて受けずに回避して相手の真横に付く。相手も受け止められると思っていたのに、想像と違った為に重心を崩した。
「氷の型、型崩し。そして必殺、俺の必殺技…幻の……」
「幻!?」
姉者が驚いた声を上げ、周りを静寂が包む。一瞬がこれほど長く感じた事はない、華琳様も息を呑み見守る。そして、時は動き出した!!
「―――何の変哲もない横腹打ち!!!」
「ぶはっ!?」
「「「「「「―――ふざけんなぁぁぁぁぁ!!!?」」」」」」
金色の男は倒したが、周りで息を呑んでいた私達も違う意味で倒れた。
――――その夜――――
「全く、あんたね~。あそこでなんで『何の変哲もない横腹打ち』って、なによ?」
私こと華琳は事件が収まった後、一刀を呼び昼の件について酒のお酌をさせながら聞いていた。兵の能力事に色分け及び部隊編成を行い、事件に適した兵を送る。その案には少しだが感心していたが買い物をしていた事に関しては許すわけにはいかない。結局、職務怠慢していた事には変わりは無い。その事に関して一刀の言い分は…。
「あぁ、あの時の事は否定しない。私情だったしね?だけど、その前はその通りの市の人に治安状況を聞いて回っていた。でも、それを正当化しようなんて思わないから」
いい心がけだわ。それに免じてお仕置きで勘弁してあげようと思い、どんな事が良いか思考を巡らしていると一刀が一枚の紙を差し出しそれを私は訝しげにそれを見る。こそに書かれている物は…ってあれ?
「あなた、こちらの字が!?」
「あぁ、人と話をして文字を読んでもらい、それで少しずつだが読み書きが出来るようになった…と言っても読めないとこもあると思うから、口で説明するよ」
開いた口が塞がらないとはこの事ね…。もしかして、彼は天才なの?取敢えず、紙に目を通す。内容は治安維持の本案!?だめよ、華琳。一々驚いていては“覇王の威厳”が!?
ふぅー、もう一度目を通す。…ふむっ。……ふーん。………なるほどね。一刀の方に目を向けると真剣に睨むようにこちらを見ている。
「一刀、これに関してだけど。一町ごとに詰所を設け、兵を常に常駐させるってどういう事?」
「それは…今回三つ隣の通り盗賊が暴れたろ?鎮圧は出来たが少々被害が大きい。やはり、移動する時間がかかるし人通りが多い時間じゃ、行く前にもう終わっているんじゃ話にならない。それならその案を実施すればすぐに駆けつける事が出来る」
「でも、それだと、人手も経費も馬鹿にならないわ」
「平時は半数を本隊の兵士から回してもらい、残りはこちらで募集を掛ける」
「……義勇兵ということ?それなら」
そこからしばらく討論が続き、気がつけばかなりの時間がたっていた気がした。勝手に商人と出資の約束したり、人を使ったりしたから治安維持の件は一刀に丸投げしたが本人もその気だったらしく、快く受けたが少し気に入らない。
「じゃ、この件はこれで……」
「ちょっと待って、この案で少し提案があるのだが」
もう遅い為に切り上げようとしたら一刀が、もう一枚の紙を渡してくる。その紙には町の区画整理についてだった。どうして、今?ってなるほど。そう考えれば治安維持に繋がる訳か。
理由については分かったが、私は少し意地悪して一刀に理由を尋ねた。
「簡単な話。町がごちゃつくと治安が乱れるし、速い内に区間整理…職種ごとに整理すれば、その後に移動しろっていうより時間も費用もかからない。そして、その職種の区間でよく起きる事件に適した部隊を置けば、迅速に対応をする事が出来る」
「例を挙げなさい」
「点心や酒を振る舞う区間には赤鬼部隊を。この隊は勇敢で力強い者が多く、怯む事無く突撃する」
「小物や服屋を売る区間では引ったくりが多いと思うから、青亀部隊を。この隊は町の道に詳しく連携が得意だから、敵を追い詰めて捕まえる事が出来る。こんな感じだが、まだ例を挙げるか?」
「もういいわ」
部隊編成はいずれ行うであろう区間整理の伏線とは…。ほんとに頭の回る奴よね。自然に笑みが零れ落ち、何かを悟ったのか一刀が乾いた杯にお酌をする。それを飲み干し、一刀に杯を差し出す。
「んぅ?おかわりか?」
「あんたも飲みなさい。注いで上げるわ」
「…ありがとう。では、お言葉に甘えて」
そう言うと、注いだ酒を飲み干す訳だが…何も感じないのだろうか。その、間接的だけど接吻なのだけど。って、一刀の顔が赤い?もしかして、酒に弱い?
「んぅ~、お酒と華琳に酔っちまったよ~」
心がこいつをシバけと、命じる。手が我が武器、大鎌『絶』へと伸びる。今なら使える気がする。曹家秘伝の奥義が!!一刀も危機を感じて逃げようとするが……遅い!!!
「環伐○絶閃!!」
地から黒い爪が伸びて一刀を切り裂こうとするが、見事に避けられてしまった。そのまま、そのまま逃走して自分の部屋へと帰ってしまった。全く、きっと私の顔は赤く染まっているだろう。
この私を前に、どんな時でも私に恐れなどを抱かずまるで友達と接するような態度に私は逆に戸惑いを覚える。そんな風に接してもらったことは無く、それはとても新鮮で、心地いいものであるが覇王としての私が『それでいいのか?』と、問う。
正直、その問いに関しては答える事が“今は”出来ない。
私は、部屋の明かりを消して床に就き独り言のように呟く。
「一刀とならその答えが探せるかしら?」
私は子供のようにウキウキしながら目を瞑り、夢の櫂を漕ぎ始めた。
2日目―了―
――裏話――
「ねぇ、一刀。どうして“何の変哲もない横腹打ち”が幻なの?」
「―――本編でそんなことしたら、俺の流派が弱く見られそうだから。こういう裏でしかやらないから幻なんだよ」
「へ、へぇー。それじゃ“血畏怖”ってのは?」
「チーフって言うのは天界の言葉で長、かしら、上司って意味なんだがな。詰所にいったら性根の腐った奴らがいてな、それを叩き直した際に周りの奴等が叩き直した奴の“血”をみて“畏怖”されてな…。『俺の事は隊長では無く“チーフ”と呼べ!!』と言ったら……」
「そんな経緯があったのね。しかし、短時間で自分色に染めたあんたに畏怖しているわよ。私も」
後書きはありません。しかし、敢えて言うなら……超climax Jumpを買いました。今までと違い心地いい曲でしたww。いつか、恋姫のオールキャスト『魏軍合唱』、『呉軍合唱』、『蜀軍合唱』、『全軍合唱』、『作者選抜合唱(左慈や于吉、貂蝉に卑弥呼、華陀など)』、でお送りしたいなと計画しています。しかし、予定は未定という言葉もありますんで……。期待はしないでくださいね。
追伸:仮面ライダーディケイドのエンディングテーマ『Ride the Wind』も買いました。この音楽の乗りに合わせて一刀には、戦の最中に歌ながら舞って貰おうかと算段中。
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今回は余り期待せんといて下さい。
戦を終えた一刀を待っていたのは少し騒がしが楽しい日常。