No.706195 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~soranoさん 2014-08-04 17:35:27 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1972 閲覧ユーザー数:1774 |
その後課題を終えたリィン達が町に戻ってくると、不穏な空気が漂っていた。
~レグラム~
「……?」
「何やらざわついてるな……」
「何かあったのでしょうか?」
町の様子にリィンやラウラ、セレーネは不思議そうな表情をし
「あれれー?んー、水上定期船が戻ってきてるみたいだけど。なんか変な連中もいるねー。」
波止場に停泊している定期船を見つけたミリアムが呟いた言葉を聞いたリィン達が町を見回すと、何と領邦軍の兵士達が町中で行動していた。
「兵士がいるなんて、別におかしくないじゃん。貴族に兵士がいるのは当たり前の事だし。」
「いや……彼ら―――”領邦軍”はアルゼイド家に仕えている兵士ではないし、アルゼイド家は辺境の領ゆえ、領邦軍は存在しない。」
エヴリーヌの疑問にラウラは首を横に振って答えた後真剣な表情で領邦軍を見つめていた。
「”領邦軍”……貴族派の兵士だったか?」
「え、ええ……そうみたいですけど。」
ガイウスの疑問にエマは戸惑いながら答えた。
「白と紫……帝都でも見かけた色だな。」
「言われてみればそうですわね……」
「……たしかあの色はラマール州のものだったはずだ。」
リィンとセレーネの会話を聞いていたユーシスは自身の知る情報を口にした。
「ラマール州と言えば帝国のほぼ反対側……どうしてその領邦軍がレグラムを訪れるのだ……?」
そしてラウラが眉を顰めて領邦軍を見つめていたその時
「よ、戻ってきたみたいだな。」
トヴァルがリィン達に近づいてきた。
「トヴァルさん……」
「その、これは一体……」
「どうやら対岸の波止場から定期船を徴発したみたいでな。サザーラント州じゃなくてラマール州ってのが謎だが……どうも貴族のお偉いさんが子爵閣下を訪ねてきたらしい。」
「父上を……?」
「一体誰が……」
「……気になるな。」
「………………」
トヴァルの説明を聞いたリィン達が眉を顰めている中、ミリアムは真剣な表情で考え込んでいた。
「ま、そんなに気になるなら様子を確かめてきたらどうだ?街道から戻ってきたってことは手配魔獣も退治してきたんだろ?」
「ええ、それなんですが。」
「その、実はおかしな事が……」
リィン達は手配魔獣が機械仕掛けの魔獣であった事をトヴァルに報告した。
「機械仕掛けの魔獣……」
「……トヴァル殿?」
「……何か心当たりが?」
報告を聞いて考え込んでいるトヴァルを見たラウラとガイウスは尋ねた。
「いや……そうだな。念のため俺の方でもその”残骸”を調べてみよう。とにかくご苦労さんだったな。報酬を渡しておくぜ。」
そしてリィン達はトヴァルに報酬を手渡した。
「そんじゃ、子爵邸の方はお前さん達に任せたぜ。」
「んー、何だか心当たりがあるっぽいね?」
(……”結社”かな?)
去って行くトヴァルを見つめて首を傾げたミリアムの疑問を聞いたエヴリーヌは考え込んだ。
「フン……まあそちらは任せておけばいいだろう。」
「俺達はいったんラウラの実家に戻るか。」
「ああ……!」
その後リィン達はアルゼイド子爵邸に向かった。
~アルゼイド子爵邸~
(……ぁ……)
(あれは……)
屋敷に戻ったリィン達はアルゼイド子爵と対面している護衛らしき人物達を傍に控えさせた豪奢な装いの男を見つけた。
「フフ、そう言わずに考えておいてくれたまえ。貴公が来てくれれば会合にも箔がつくというものだ。」
「所詮、片田舎の領主に過ぎぬ身。さすがに買いかぶりでしょう。」
男の誘いにアルゼイド子爵は静かな表情で遠回しに断った。
「価値を決めるのは周囲であって貴公自身では無いのだよ。わかっているとは思うが……くれぐれも妙な真似はせぬことだ。正規軍の武術教練とやらもできれば今後は控えてもらいたい。無用な波風を立てたくなければな。」
「それは……」
「フフ、それではさらばだ。―――執事。なかなか美味い茶だったぞ。」
答えを濁しているアルゼイド子爵の様子を満足げな笑みを浮かべて見つめた男はクラウスに視線を向け
「恐縮でございます。」
クラウスは恭しく頭を下げた。
「ほな、よろしゅうに。」
「……失礼する。」
そして男の護衛らしき長身の青年と巨漢の男は挨拶をした後男と共にその場から去り、玄関にいるリィン達と鉢合わせた。
「ラウラ嬢か、久しいな。ほう、ユーシス君までいるのか。」
「……ご無沙汰しております。」
「いつも父たちがお世話になっております。」
男に話しかけられたラウラとユーシスはそれぞれ会釈をして答えた。
(お知り合いみたいですね……)
(見た所貴族の方みたいですが……)
二人の様子を見ていたエマとセレーネは小声で囁き合い
(だが……あの二人の緊張ぶりは。)
(貴族の大物みたいだね。)
緊張している様子のラウラとユーシスの様子にガイウスとエヴリーヌは気付き
(んー、まさかこんな所に現れるなんてねー。)
ミリアムは真剣な表情で男を見つめ
(”四大名門”筆頭にして西のラマール州の統括者……海都オルディスを治める大貴族、”カイエン公爵”……!)
リィンは真剣な表情で男を見つめながら男―――カイエン公爵を知らないガイウス達に説明した。
「おや、どこかで見た顔かと思っていたがアルフィン殿下の”婿候補”と噂されているシュバルツァー家の養子か。」
その時リィンに気付いたカイエン公爵は興味ありげな表情でリィンに視線を向け
「リィン……」
「…………」
その様子を見守っていたラウラは心配そうな表情をし、ユーシスは真剣な表情でカイエン公爵を見つめ
「……ご無沙汰しております。それとお言葉ですが自分如きがアルフィン殿下の婿候補という畏れ多き資格があるとは思えません。あれはマスコミの方達の憶測です。」
リィンは静かな表情で会釈をした。
「フフ、そのくらいの事はわかっている。しかしシュバルツァー男爵家の直系の双子の妹のエリス嬢はアルフィン殿下の付き人を務め、姉のエリゼ嬢はリフィア殿下の専属侍女長の上、かの”剣聖”から直接剣の師事を仰いでいる事からリフィア殿下―――”聖魔皇女の懐刀”と称され、リィン君自身はアルフィン殿下の失態どころかエレボニア帝国の失態を取り消すようにリウイ陛下に意見をし、リィン君の意見によってメンフィル帝国は夏至祭で起こった件について追及しなかったと聞いている。アルフィン殿下どころかエレボニア帝国を守り、エレボニアとメンフィル、それぞれの皇家に信頼をおかれているシュバルツァー男爵家の息子なら、養子とはいえアルフィン殿下の婿としての”価値”もあると思うがな。シュバルツァー男爵も予想外の大活躍をした”拾い物”を拾った事に、さぞ喜んでいるだろう。」
「「「…………」」」
「…………恐縮です。」
カイエン公爵の言葉の節々からリィンを侮辱している事に気付いていたラウラとユーシス、セレーネは厳しい表情でカイエン公爵を見つめ、リィンは一瞬複雑そうな表情をしたがすぐに気を取り直して会釈をし
(何、この男……遠回しにご主人様の事を貶しているわね。)
(恐らく大貴族の子息でもないご主人様が自国の皇女に気に入られている事が気にいらないのでしょうね。)
(典型的な血統主義者ですか……)
ベルフェゴールとリザイラ、メサイアはそれぞれ静かな怒りを纏ってカイエン公爵を睨んでいた。
「フフ、久闊を叙したくもあるが少しばかり急いでいてな。また近いうちに、会う機会を設けるとしよう。うむ、それではさらばだ。」
そしてカイエン公爵は護衛達と共に去り始めたが、護衛達は立ち止まってリィン達を見つめた。
「ハハ、なるほどなぁ。君らがトールズ士官学院の”Ⅶ組”ってやつか。」
「……!?」
「何故それを……?」
青年が自分達の正体を知っている事にリィンは驚き、エマは信じられない表情をした。
「いやな、縁があって少しばかり調べてたんや。うん、なかなかええ面構えしとるわ。」
「え、えっと……」
「………………」
青年の言葉にエマは戸惑い、ミリアムは真剣な表情で青年と大男を見つめ
「それに……まさかこんな所で”あいつら”を仰山(ぎょうさん)殺した”魔弓将”と会う事になるとはな。」
「誰の事を言っているの?エヴリーヌは今まで殺した雑魚の事なんか一人も覚えていないよ。」
不敵な笑みを浮かべる青年に見つめられたエヴリーヌは首を傾げて答えた。
「何やと……?」
エヴリーヌの答えが気に触ったのか青年は殺気を纏ってエヴリーヌを睨んだが
「……閣下がお待ちだ。そのくらいにしておけ。」
「……ああ。ほなな~。」
「それでは失礼する。」
大男の忠告に気を取り直した後その場から去り、子爵邸を後にした。
「……なんだ、今の男たちは。」
「領邦軍の兵士じゃないのは確かのようだが……」
「私達の”Ⅶ組”のことを知っているようですけど……」
「それにエヴリーヌさんの事まで知っているようでしたけど……」
「さあ?エヴリーヌはあんな奴等、見覚えがないよ。」
不安そうな表情で尋ねたセレーネの疑問にエヴリーヌは首を傾げて答えた。
「―――おそらくカイエン公が私的に雇っている護衛だろう。」
その時アルゼイド子爵がリィン達に近づいてきた。
「父上……」
ラウラは心配そうな表情でアルゼイド子爵を見つめた。
「フフ、そんな顔をするでない。だが……いよいよ、本格的に動き始めたようだな。」
その後リィン達は執務室でアルゼイド子爵から詳しい話を聞き始めた。
原作と違って、リィン、貴族達にわりと知られています。(そりゃアルフィンのダンスパートナーを務めれば嫌でも有名になりますよ(苦笑))
Tweet |
|
|
2
|
2
|
追加するフォルダを選択
第177話