第3章 群雄淘汰・天下三分の計編 23話 『 意地 vs 意地 』
砂塵が舞う乾いた風が強く吹き荒れる中
江陵・江夏という両重要拠点を落し、水軍を率いていた江夏を思春、琥珀に江陵を任せる算段をつけていた
補給の手配並びに琥珀と交代するまでの期間の治安維持を穏に任せ、緋蓮は一足先に軍を北へ向け進発させる
緋蓮達は行軍の途中、第2軍を率いる楓達と当陽から10里ほど東部で無事合流を果たし ※1里=500m
総勢13000もの大軍勢に膨れ上がると、この度の戦いの本丸である襄陽へ
意気揚々と進軍していた孫呉軍であったのだが、途中長坂を下って3里ほど北へと進軍した頃
先をゆく祭が、進軍先に旗が棚引いているのを発見し、状況を把握すべくすぐさま軍を停止させ偵察へと入る
そして斥候から受け取った情報を手に、大将である緋蓮のもとへと急行した祭
「祭 軍を停めたが何かあったのか?」
そう問いかけた緋蓮に対し、祭は煮えきらぬ態度で1つ頷き返すと緋蓮の問いに答えた
「うむ それがのう 堅殿・・・ 前方に現れた軍が劉琮の軍ではなく、深紅の呂旗なんじゃそうな・・・如何対処致す?」
「何だと! 呂布!? ううむ・・・」
劉琮軍が待ち構えていたと思いきや、棚引く旗は見紛うことなき深紅の呂旗であった
劉琮相手ならば、緋蓮としてもこれ幸いと軍を進めていたことだろう
しかし緋蓮の反応が鈍い事を祭も即座に感じ取ったのだろう
緋蓮が思考している間に、後方に控える紅と楓へと伝令を走らせていた
だが緋蓮が思考し祭が伝令を走らせている合間にも、前方に突如として現れた呂布軍に動きがあった模様で・・・
「堅殿 誰かこちらへ向かってきてますぞ?」
「そのようだ 軍から出てきた奴がいるな」
眉間に皺を寄せ厳しい表情を崩さぬまま、前方へと目を凝らす緋蓮と祭
「赤い馬・・・呂布」
緋蓮と祭が見つめる傍からそう答えた者が現れた
その人物とは伝令で呼ばれた楓で、楓の方が視力が良かったのだろう
そういい終えるや益々緋蓮、祭、楓とも微妙な表情となっていた
・・・というのも、呂布がここへ軍を率い現れた目的が皆目見当がつかなかったからである
何故劉琮との戦いに参戦するのか? 一刀が率いていると勘違いし一騎討ちを所望しているのだろうか?
そうした呂布軍の思惑を探る内に、3人は益々出口の見つからぬ迷宮へと入り込んでしまったようで
困惑の度を深めた表情を浮かべる結果となり果てていたのだった
「そのようじゃの どうする?堅殿 紅が来るまで待つかの?」
祭は大将である緋蓮へと呂布への対処を促す
それは敵の本拠地である襄陽を落す前に、無駄な血を極力流すべきでないと考えていたゆえの祭の助言であったが
「本来なら紅を待つべき所なのだろうが、あちらが出てきた以上すぐに襲い掛かられるという訳でもあるまいよ
先ずは話を聞いてくるさ 祭、楓、即戦闘出来る準備だけは怠らないでおいてくれ それでは行ってくる」
緋蓮はそう祭、楓へと注意を促しておき
「「承知した(じゃ)」」
祭、楓の反応をみた緋蓮はひとつ頷くと、愛馬の歩をゆっくりと前方にいる呂布へと進めてゆく
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反董卓連合時には華雄との負傷ゆえに実現しなかった江東の虎・孫文台と飛将軍・呂奉先との邂逅
「おまえ達に恩はあれど恨みはない けれどこれ以上の進軍を許す訳にいかない」
開口一番、飛将軍・呂布の言葉は、緋蓮にとってなんと表現すべきか分らない
この上なく不快で意味不明なモノであった
「一刀との一騎討ちを所望してるのかと思いきや違うのか・・・
それにしても、我々に恩はあれど恨みはないというのに、貴様は劉琮との因縁の戦において邪魔するというのか?
我らが起こしたこの戦の意義を、貴様は少しも理解しておらんようだな」
緋蓮としては長き因縁を断ち切る戦、だが先程恋が発した言葉を聞いて分るとおり
事前に祭達と予想していた一刀との一騎討ちを所望して出てきたという訳でもないようで
それ故に問いたださねば、気持ちの高ぶりが抑えられないほどまでに、緋蓮の思考が凝り固まっていく
「戦いの意義? ・・・知らないし興味もない」
そして最初から互いの想いをぶつけ合うつもりもないときた
出会い頭の奇襲も行わず、何故こうしてのこのこと現れた?
より沸騰する頭で思考する緋蓮に、恋の悲しき瞳に宿る微かな想いを推し量る事など出来よう筈もなく
「貴様の心底が見えぬな 我らの進軍を邪魔しおって貴様一体何がしたいのだ?
一刀に救われし命を無駄にする愚か者だったのか? 幻滅だな・・・
もっと利巧な娘かと思っておったが、噂に踊らされて少々買いかぶりすぎていたか」
と逆に恋を煽る始末の緋蓮に、正直に理由など言った所で鼻で笑われるだけと恋も悟っているので
「最後の警告 このまま退け ・・・でないと死ぬことになる」
売り言葉に買い言葉、恋も退けないという意思表示を示してみせる
苦境に追い込まれていた恋にとって、進軍してくる孫呉の軍へ奇襲をしなかったのも
こうしてわざわざ警告に出てきたのも、全ては一刀に受けていた数々の恩義ゆえの行動であった
ここまで苦境に立たされ、苦悩に満ち満ちていた恋に出来る、数少ない恩返しの行為であったのだが・・・
そんな恋の苦悩を、因縁の決着に燃える緋蓮が推測できる筈もなく・・・
「ふんっ! ぬかせ! 殺れるものなら殺ってみせい!
貴様の脅しに屈し退くぐらいならば、そもそもこの戦いで最初(はな)から軍など率いておらぬわ!
江東の虎の牙が錆びついておらぬか、そち相手に存分に試してやるから覚悟せいや!」
一刻も早く、劉琮との因縁に終止符を打ちたいと逸る今の緋蓮には
恋の言葉と行動は挑発行動としか映らなかったようで・・・
「そう・・・ 今の恋は手加減できない」
「ふんっ! ぬかせ! 弱い犬ほどよく吠える」
交渉は見事なまでに決裂した、両者とも本心では戦いを望まぬというのに・・・
歴戦の勇士の邂逅は、なんともほろ苦い不調な結果に終わってしまうのであった
祭と楓は緋蓮を送り出したものの・・・いきなり呂布と一騎打ちし始めるのでは? そんな思いに囚われる祭と楓
どちらもキチガイじみた戦闘狂だけに、前方を見つめる視線も自ずと緊張を伴うものとなっていたが
漸く現れた紅に先程の状況を説明している内に、あちらの方でも何やら言い合ってた様子であり
祭と楓の杞憂だったようで、緋蓮がこちらに駆けて戻ってくる姿を確認するや、安堵の溜息が2人から洩れたほどである
「呂布の奴め 逐一こちらを挑発しおってからに・・・ 最後には退けときたものだ
あやつは一体何をしに独り出てきたのか 最後まで一向に掴めなかった」
「ふむ」
「へぇ~?」
「そうですか」
軍へと戻った緋蓮は、開口一番そう祭と楓、紅の3人へと愚痴をぶちまけたのである
緋蓮と恋、互いに焦る気持ちの齟齬が生んだ悲劇の戦いの幕開けといえるのだろう
「鋒矢の陣を敷く」
「皆の者、密集体系、魚鱗の陣へと移行せい」
「外周先頭の者は、大盾の用意も忘れずになさい」
恋、緋蓮と紅、それぞれの陣替えの号令が発せられたのと同時に
両軍は文字通り、死力を尽くした壮絶なる戦いへの突入を余儀なくされることとなった
「緋蓮様、例の策を実行しとうございます よろしいですね?」
「ふむ あれか・・・ 準備不足も甚だしいぶっつけ本番だが大丈夫なのか?」
「さすがに判りませぬ 成果を見るためにも試してみるべきでしょう
もし”アレ”を今使わねば、緋蓮様は大将から外されることとなりますけどよろしいので?」
紅の口から恐ろしい予告を告げられ、緋蓮は瞳を大きく見開くこととなった
これは紅が反董卓連合時の強さを元に、今回の戦いに当て嵌め算出したのであるが
兵数差を見積もっても大したことはあるまい、そう軽く考えていた緋蓮の思惑が見事根底から覆されたのである
「ううむ・・・ そういうことならば致し方あるまい 祭、楓、万事滞りなく紅の指示通りに致せ」
「うむ そういう事ならば承知した」
「承知しました」
突如として現れた呂布軍に対して、孫呉軍もまたぶっつけ本番で、紅指示の下、”何か”を試すようである
一方の恋も、鋒矢の陣への陣替えを終えると、居並ぶ古参の者達へと頭をぺこりと下げ呟いた
「大切な家族であるねねの為、みんなついてきてくれてありがとう」
そう一言皆へ別れを告げると、恋は手綱緩め赤兎を疾駆させると同時に、すぐさま軍の先頭へと躍り出た
そして恋の言葉を聴いた呂布軍の面々は、皆それぞれに喊声をあげつつ
先頭を駆ける恋を追いかけ、猛然と愛馬を駆ることに集中する
恋を先頭に突撃する姿は、一ノ谷の戦いにてみせた源義経の逆落とし
戦国の世における銃弾飛び交う中を一騎駆けを行ったと噂される上杉謙信を彷彿とさせるほどの
対峙する側の魂を一瞬に死の恐怖で凍らせるほど、勢いのある騎馬突撃をこの時の恋は敢行してみせたのであった
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孫呉軍は総勢13000に対し、兵糧不足が祟り呂布軍は5000足らずまで減少させていた
2.6倍もの兵力差、しかも相手は大陸最強の軍勢の一角である孫呉軍である
「弓隊! 一斉に放てぇい!」
呂布軍が砂塵を舞わせ突進してくる中、祭の号令が轟き、突撃してくる呂布軍の騎馬軍団へ一斉射する
それだけで勢いが削がれる筈もなく、少数の被害を出しただけで急いで大盾隊の後ろへと後退する弓隊
「大盾隊、急ぎ弓隊と交代し前面へと展開せい!」
孫呉軍を追い返したとて、劉琮軍が約束を守りねねを解放するかどうかも定かでないそんな中
不安を掻き消すかのように先頭を駆けていた恋は、弓隊の攻撃を素早く掻い潜ると
先頭で待ち構える大盾隊と攻撃を交える間際に、赤兎と阿吽の呼吸で大きく跳躍してみせた
汜水関で美羽と対した時のように、盾を構えていた者達を嘲笑うかのように、悠々と飛び越えてみせたのである
「死ね! 死ね! 死ねぇーーーーーーーーーー!」
恋は方天画戟を縦横無尽に振るい、味方の突撃を支援すべく
大盾を展開する孫呉の兵達の後方から容赦ない攻撃を加え、1人また1人と確実に屠っていく
「さすがは恋様だ! 皆恋様に続けぇーーーーーーーー!」
「「オオオォォォーーーーーーーーーーー!!」」
恋が切り開いた道をさらに拡げるべく、騎馬をさらに駆り勢いをつけ突進させる呂布軍の面々に対し
「むうぅぅーーーー 大盾隊、邪魔になる! 中央より”左右”へと別れつつ下がれぇい!」
怒号がひしめく中、魚鱗の陣の第1陣めを指揮する祭の号令が戦場へと響き渡ったものの・・・
平野部での呂布軍の騎馬突撃の勢いは凄まじく
さらに恋の攻撃も加わり、祭が率いる前線部隊は大混乱へと陥った
祭がなんとか兵を纏めようとするものの・・・
津波のように次々と押し寄せてくる騎馬の群れに為す統べなく翻弄されてしまう兵達に
祭は歯噛みして悔しがる
「他の者も無理して当たるでない! ”右”へと退け! 死にたくなかったら急ぐんじゃ!」
接近戦というのに、蛮刀ではなく多幻双弓を素早く引き、騎馬を駆る者達を狙い済まし射殺す祭
だがそれも焼け石に水状態で、次々に騎馬の突破を許し、前線の建て直しに必死に奔走する中
(ふむ そうか・・・呂布、先程は表情が読めぬゆえ判らなんだが・・・
お主あの時すでに死人であったか・・・ 焦りゆえ見抜けず返って挑発してしまったようだ
だからといって手加減をして退いてやる訳にもいかぬ
こちらにも呂布の意見を聞き大人しく退けぬ理由もあったしな)
魚鱗の陣の3陣目となる中央付近にいた緋蓮は
必死の形相で第1陣である祭率いる孫呉軍の兵達を屠る恋の姿を目の当たりにし
漸く恋の気持ちに辿り着いてた だがそれが解った所で呂布の意を汲み退ける訳もなく
是非もないという心境で戦場を俯瞰する
その合間にも恋は、魚鱗の陣の第2陣めに控えていた楓の軍へと早くもその鋭き牙を突き立て始めていた
「隊列を崩すな! 呂布1人相手に何をやっている!」
恋と赤兎の騎馬突撃は全く留まることを知らなかった
孫呉の兵達は、恐怖のあまりに気圧され、我を忘れ一瞬に半里ほど下がらされた程、凄まじき突進力であった
「呂布1人になんて無様な! ぐぅぅーーーーー おのれ!
次から次へと現れくさってからにぃ! 邪魔するな! 呂布はあたしが直々に殺る!
邪魔だ! お前達は”左”へと下がれ! どけぇぃーーーーーーー!」
鉄脊蛇矛を手に奮戦する楓であったが、指揮をしていた位置どりが左よりすぎて
赤兎を駆り”中央”を突進を続ける恋に届く筈もなかったのである
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恋が突撃を開始し出した孫呉が敷く魚鱗の陣
残りは3陣目に大将である緋蓮、4陣目には軍師である紅が率いる軍勢が控えていた
しかしこの時点で、孫呉が敷いた魚鱗の布陣のおかしさに、呂布軍で気付いた者は皆無であった
ねねがもしこの戦場に従軍していたならば、気付いた可能性も捨て切れないが・・・
本来、魚鱗の陣は三角形の底辺中央に大将が位置するのが普通なのである
また荊州は平地が広がり、対峙した呂布軍は騎馬が多く
背後を取られる可能性もあるというのに、孫呉軍は何故魚鱗の陣をわざわざ敷いたのか?
後方へと回られた時の為に、紅を4陣目に配したとも取れなくもないが
それならば、全方位の敵に対処する方円陣を敷けばいいので、わざわざ魚鱗の陣を敷く必要がないのである
色々な謎が深まる中、孫呉が呂布軍に対し魚鱗の陣を敷いたこと事態
このまま敗北すれば、軍師である紅の重大な失策ともとられかねない
しかし、この第1陣に祭、第2陣に楓、第3陣に緋蓮、第4陣に紅を配した魚鱗の陣
これこそが呂布軍に勝利する為の布石であったのだ
・・・というのも、恋や部下達によって散々に蹴散らされ、孫呉軍の被害は拡大の一途を辿っていたと思われがちなのだが
呂布軍の突撃に際して、各陣で早々に”左右”へと退散させていたこともあって、実はそれほど酷い被害ではなかったのである
「呂布といえど所詮我らと同じ人の子だ! 限界は必ずやって来る! それまで耐えるのだ!」
緋蓮は腹の底から声を響かせ、折れそうになる兵達の心を叱咤激励する
そうしている合間にも、孫呉の魚鱗の陣形は、紅、祭、楓、によって実に巧妙にカモフラージュされ水面下で移行
恋が大将の緋蓮率いる第3陣へ本格的に突撃し出す頃には
いつの間にやら、幅の広いUの字となる鶴翼の陣へと陣替、展開されていたのである
「皆良く耐えてくれた! 今だ! 第3陣、中央部から”左右”へ分れ下がるのだ!」
第3陣を率いていた緋蓮の号令が、騎馬によって砂塵が渦巻く戦場一杯に轟き渡ると
緋蓮の指示に従い、皆が駆け足で左右へと散っていく
(みつけた! コイツさえ殺せれば、きっとねねは帰って来る)
恋は大将である緋蓮の姿を見つけるや、中央から方向転換し引いていく緋蓮を
そんな妄信を抱き尚も執拗に追っていく
第3陣を率いる緋蓮の隊が左右へと別れ下がった為、中央から徐々に姿を露にするのは第4陣である紅率いる部隊であるが
呂布軍の眼前に広がる第4陣の光景が、他の陣とは違い独特で異様であったのだ
紅が口にしていた”アレ”の正体が、陽に照らされ鈍い光を放つ姿を、ついに呂布軍の前に露にした瞬間であった
陽に照らされ鈍い光を放つ”アレ”の正体とは・・・ 一体!?
かつて反董卓連合・汜水関攻防戦にて使用された『弩弓砲』 ※第2章08話参照
だがこの時試験運用された時には、あくまでも固定砲台として”牽制”という限定的な使用方法であったが
亞莎の報告書の中での一文「車等に乗せたまま移動、固定後、実用可能に改良できないものでしょうか?」 ※第2章10話参照
この点に着目した琥珀が、手を加えより改良された『弩弓砲・改』と呼ばれる代物であった
今までの固定方式ならば、防衛又は先に設置という、かなり限定的な使用に限られてしまっていた兵器だったモノが
移動出来る兵器としてこの度生まれ変わったことで、攻撃、設置場所共に幅広い運用が可能となっていた
当初は江陵・江夏の戦いで拠点攻撃用に使用すべく用意されていたのだが
黄祖、黄射親子の抵抗が、当初の予想と違いあまりにも不甲斐なかった為
皆へお披露目する機会もなく、ひっそりと物資の1つとして運ばれていたのである
恋や部下達は、威力、射程はもとより、残念ながら『弩弓砲』を使用された瞬間を目の当たりにしたことがない
『弩弓砲』を使用された後に、連合軍後方に現れたからだ
呂布軍の中にも、戦後兵器の噂に聞いた者もいるだろう
しかし実際に攻撃を受けた者と噂を聞いただけの者達には、絶対に埋めることの出来ない
”経験”という大きな隔たりが存在していた
一度経験した者なら、必ずや火薬による強大な威力・射程の長さの凄まじさから
”射程範囲”からの待避を即実行したことだろう
悲しい事に、この”経験”の有無の差が、呂布軍がこの戦に勝利する為の機会を永遠に奪われてしまった瞬間でもあった
「一斉に点火なさい!」
紅の指示が混乱する戦場に轟くや、兵達は皆一斉に導線へと火を入れる
導線の長さも反董卓連合時に使用した時より短く調整されている為、着火した火が次々と『弩弓砲』へと吸い込まれていく
「待避ぃーーーーーーーーーー!!」
突如姿を現した兵器に、初見であるものの不穏な気配を感じた恋は、すぐさま待避指示を出すものの
・・・刻すでに遅く
バッシューーー! バ!・バ!・バ!・バ! バッシューーー!!
『弩弓砲・改』は、機関車と同等いやそれ以上の大量の火薬の黒煙を、発射と同時に一気にもくもくと周囲へと放ちつつも
次々と轟音と紅き閃光を放ち、猛然と唸りをあげ、勢い良く上空へと弧を描き飛んでいく
緋蓮へと迫っていた恋の頭のすぐ横や上、はたまた遙か上空をすり抜け
味方の命を奪い尽くすメギドの焔が、流星の如く次々と天を焦がしながら宙を駆けていく
馬ごと貫かれ焼かれる者達は跡を絶たず、先程まで背中を預けあった大切な仲間だった者の変わり果てた姿
焼け焦げた臭い、死臭、下草が燃え燻る、戦場はさながら地獄絵図へと一瞬にて様変わりし果てていた・・・
恋のように中央から外れたり、運良く当らなかった者達であっても、味方の死体が累々と折り重なる状況を目の当たりにし
戦意はすでに失われ、身体は震え顔面蒼白、茫然自失状態で、もはや呂布軍は戦どころの話ではなかった
「惨たらしいもんじゃのう・・・ これだけは一向に好きになれんわい」
「何度見てもゾッとするな・・・この光景」
指揮していた祭も楓も、呂布軍の成れの果てを眺め言葉を濁した
「皆何を動きを停めぼさっとしておる! 今は戦の最中だぞ? しっかりせんか馬鹿者!
戦での死にザマに、良し悪しなど問うている暇などあるものか!
漸く勝機が巡ってきたのだ 反撃の機会ぞ! 愚痴を言っとる暇があったら、さっさと指示し包囲殲滅へと移れい!」
戦争なんぞ・・・必要悪に決まっておるわ!
負ければ皆が抱いた夢も想いも、全て無駄になり儚く消え果てるだけ・・・
そう緋蓮は心を鬼にし、周囲へ大声で檄を飛ばす
「おっおう・・・ 今じゃ! 呂布軍を包囲殲滅せい!」
「ハッ! 申し訳ありませぬ それ皆反撃だ! 一斉にかかれぇーーーーー!」
緋蓮に発破をかけたれた祭と楓は、戦場に広がる惨たらしい惨状に飲まれていたものの・・・
正気に戻ったのか、すぐさま周囲へ指示を出し、自身も敵を屠るべく武器を手に突撃を開始する
戦意喪失気味の呂布軍の兵達も、少しは持ち直し立ち直る者もいたが
大多数の者が『弩弓砲・改』の前に戦意を削がれ、見事に突かれたことにより雪崩をうったように崩壊
(まだ終われない・・・ 大切な家族である・・・ ねねを取り返せない・・・)
絶望に打ち拉がれそうになる心をなんとか堪えつつ、その後も恋は、必死に方天画戟を振るい孤軍奮闘するものの・・・
孫呉との兵力差に押し潰され、呂布軍に属する者達は古参の者達を含め、次々と取り囲まれ討ち取られていくのであった
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●『真・恋姫†無双 - 真月譚・魏志倭人伝 -』を執筆中
※本作品は【お気に入り登録者様限定】【きまぐれ更新】となっておりますので、ご注意を
人物設定などのサンプル、詳細を http://www.tinami.com/view/604916 にて用意致しております
上記を御参照になられ御納得された上で、右上部にありますお気に入り追加ボタンを押し、御登録のお手続きを完了してくださいませ
お手数をおかけ致しまして申し訳ありませんが、ご理解とご了承くださいますよう、何卒よろしくお願いいたします<(_ _)>
■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン)
春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し
『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた
優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた
容姿:髪は桃色で、孫家独特の狂戦士(バーサーカーモード)になると、右目が赤色に変化するのが特徴で、平時は量目とも碧眼である
祭と同じく胸が豊満で背は祭より高い 体格は祭よりすこし大きい 顔立ちは蓮華というより雪蓮に似ているだろうか
○張紘 子綱 真名は紅(コウ)
呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程昱(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる
張昭と共に『江東の二張』と称される賢人
※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。
呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です
容姿は青眼で背丈は冥琳より少し低い 顔は姉の王林とは似ておらず童顔で人に安心感を与える顔立ちである
髪は腰にまで届こうかという長く艶やかに保った黒髪を束ね、ポニーテールと呼ばれる髪型にしている事が多いが
その日の気分により、長髪を肩辺りで束ね胸の前に垂らしている場合もあるようである
服装は藍色を基調とした西洋風ドレスを身を纏っている
○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)
普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う
発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する
このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される
※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです
容姿は真名と同じく琥珀色の瞳をもち、髪は黒で肌は褐色がかっており月氏の特徴に似通っている
背は明命と同じくらいで、服装は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っている
○張昭 子布 真名は王林(オウリン)
呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる
張紘と共に『江東の二張』と称される賢人
妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか
容姿は冥琳より少し高めで、紅と姉妹でありながら顔立ちが似ておらず、冥琳と姉妹と言われた方がピッタリの美人系の顔立ちである
眼鏡は使用しておらず、服装は文官服やチャイナドレスを着用せず、珍しい”青眼”でこの眼が妹の紅と同じな事から
姉妹と認識されている節もある 紫色を基調とした妹の紅と同じ西洋風のドレスを身を纏っている
○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)
緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名
祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする
部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている
真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・
容姿は祭と同じくらいの背丈で、端正な顔立ちと豊かな青髪をうなじ辺りでリボンで括っている
均整のとれた体格であるが胸は祭とは違いそこそこ・・・ちょっと惜しい残念さんである
○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ)
荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると
知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる
以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま
呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている
容姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女
(背丈は朱里や雛里と同じくらい)武器は不撓不屈(直刀)真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます
○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)
『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族
槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人
部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす
容姿:亞莎と同じくらいの背丈で、黒褐色の瞳に端正な顔立ちであり黒髪のセミロング 人懐っこい柴犬を思わせる雰囲気をもつ
胸に関しては豊満で、体格が似ている為よく明命から胸の事で敵視されている
○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)
弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人
『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが
一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で徐々に頭角を現し
後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる
容姿:思春と同じくらいの背丈で黒髪のショートヘア 体格も思春とほぼ同じく、遠めからでは瓜二つである
二人の区別の仕方は髪の色である(所属部隊兵談) またしなやかな動きを得意としている為、思春の弓バージョンと言える
○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)
朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される
その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される
天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為
未熟であった一刀の補佐にと転属させられる
初期には転属させられた事に不満であったが、一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に
一刀に絶大な信頼を寄せるようになる
後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している
容姿は朱里より頭一つ高いくらい 茶髪で腰まであるツインドテール 朱里とよく似た童顔でありながらおっとりした感じである
服装に関しては赤の文官服を着用しており、胸は朱里と違い出ている為、朱里とは違うのだよ 朱里とは・・・
と言われているようで切なくなるようである(妹・朱里談)
○太史慈 子義 真名を桜(サクラ)
能力を開放しない雪蓮と一騎打ちで互角に闘った猛者 桜の加入により瑠璃が一刀専属の斥候隊長に昇格し
騎馬弓隊を任されることとなった(弩弓隊・隊長 瑠璃→子虎、騎馬弓隊・隊長 子虎→桜に変更)
本来の得物は弓で、腕前は祭を凌ぎ、一矢放てば蜀の紫苑と互角、多矢を同時に放てば秋蘭と互角という
両者の良い処をとった万能型である
武器:弓 不惜身命
特に母孝行は故郷青州でも有名であり、建業の役人街が完成した際に一刀の薦めもあって一緒に迎えに行く
隊長として挨拶した一刀であったが、桜の母はその際に一刀をいたく気に入り、是非、桜の婿にと頼み込む程であった
容姿はぼん・きゅ・ぼんと世の女性がうらやむような理想の体型でありながら身長が瑠璃ぐらいという美少女系女子
眼はブラウン(濃褐色)であり、肩下までの黒髪 気合を入れる時には、白い帯でポニーテールに纏める
一刀の上下を気に入り、自身用に裁縫し作ってしまう程の手先の器用さもみせる
真剣に話している時にはござる口調であるが、時折噛んだりして、ごじゃる口調が混ざるようである
一時期噛む頻度が多く、話すのを控えてしまったのを不憫に思った為
仲間内で口調を指摘したり笑ったりする者は、自然といなくなったようである
○高順
「陥陣営」の異名をもつ無口で実直、百戦錬磨の青年
以前は恋の副将であったのだが、恋の虎牢関撤退の折、霞との友誼、命を慮って副将の高順を霞に付けた
高順は恋の言いつけを堅く守り続け、以後昇進の話も全て断り、その生涯を通し霞の副将格に拘り続けた
○馬騰 寿成 真名を翡翠(ヒスイ)
緋蓮と因縁浅からぬ仲 それもその筈で過去に韓遂の乱で応援に駆けつけた呉公に一目惚れし
緋蓮から奪おうと迫り殺りあった経緯がある
この時、緋蓮は韓遂の傭兵だった華雄にも、何度と絡まれる因縁もオマケで洩れなくついて回ることとなるのだが・・・
正直な処、緋蓮としては馬騰との事が気がかりで、ムシャクシャした気持ちを華雄を散々に打ちのめして
気分を晴らしていた経緯もあったのだが・・・当の本人は、当時の気持ちをすっかり忘れてしまっているが
この事情を孫呉の皆が仮に知っていたのならば、きっと華雄に絡まれる緋蓮の事を自業自得と言いきったことだろう・・・
○孫紹 伯畿 真名を偲蓮(しれん)
一刀と雪蓮の間に生まれた長女で、真名の由来は、心を強く持つ=折れない心という意味あいを持つ『偲』
”人”を”思”いやる心を常に持ち続けて欲しい、持つ大人へと成長して欲しいと2人が強く願い名付けられた
また、偲という漢字には、1に倦まず休まず努力すること、2に賢い、思慮深い、才知があるという意味もある
緋蓮、珊瑚、狼をお供に従え?呉中を旅した各地で、大陸版・水戸黄門ならぬ
”偲”が変じて”江東の獅子姫様”と呼ばれる
○孫登 子高 真名を桜華(おうか)
一刀と蓮華の間に生まれた次女で、子供の扱いが分らぬ蓮華の犠牲者1号となり
早々に侍従長の咲と思春の手により育てられることとなる
そんなエピソードがあるのにも関わらず、聡明な娘で人望も厚く育ち、王となってからは自身の才能をいかんなく発揮させる
一刀や蓮華に似ているというより、姉である雪蓮に似ているとの蓮華談有り
後年孫呉の王として、天皇となりし姉・偲蓮を支えることとなる
●その他武将
蒋欽ー祭の副将、董襲ー楓の副将
歩シツー珊瑚の副将、朱然ー昔は瑠璃、現在子虎の副将、丁奉ー昔は子虎、現在は桜の副将 周魴ー瑠璃の副将
○青(アオ)
白蓮から譲り受けた青鹿毛の牝馬の名前
白蓮から譲られる前から非常に気位が高いので、一刀以外の騎乗を誰1人として認めない
他人が乗ろうとしたりすれば、容赦なく暴れ振り落とすし蹴飛ばす、手綱を引っ張ろうとも梃子でも動かない
食事ですら・・・一刀が用意したモノでないと、いつまで経っても食事をしようとすらしないほどの一刀好き
雪蓮とは馬と人という種族を超え、一刀を巡るライバル同士の関係にある模様
○狼(ラン)
珊瑚の相棒の狼 銀色の毛並みと狼と思えぬ大きな体躯であるが
子供が大好きでお腹を見せたり乗せたりする狼犬と化す
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【あとがき】
常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは 雪月でございます
いつも大変お待たせし、お世話になっております
暑い溶けそうでしゅ・・・ 得意先周りする為建物から出た途端、即汗だくに・・・
溶けていくアイスの気持ちが少し解った気がしました・・・
それに社会人なので、まとまった夏休みなんてないですしね!
春と秋だけの二季だけの気温だけで一年巡ればいいのに・・・と思う昨今
さて話は変りまして、呂布軍と孫呉軍の戦闘の模様を今回はお伝え致しました
ねねをなんとか救出した一刀であったものの・・・間に合わず
恋と緋蓮による戦いが開始されてしまう結果となってしまいました
次回の更新は、決着後の双方の行方の模様を描こうと思っております
これからも、皆様の忌憚のない御意見・御感想、ご要望、なんでしたらご批判でも!と何でも結構です
今後の制作の糧にすべく、コメント等で皆様のご意見を是非ともお聞かせ下さいませ
それでは完結の日を目指して、次回更新まで(´;ω;`)ノシ マタネ~♪
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常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております
この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております
※猶、一刀君はチート仕様の為、嫌いな方はご注意を! ※オリキャラ紹介は本文下記参照のこと
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