No.703430

義輝記 星霜の章 その壱

いたさん

義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。
7/25 加筆訂正しました。

2014-07-24 21:40:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1117   閲覧ユーザー数:993

【 策 の件 】

 

〖 洛陽 宮廷内 颯馬室 にて 〗

 

あれから……七日以上経過した。

 

異民族の軍勢の動きは、全くなかった。 

 

……が、街に暮らす者達にとっては、異民族の来襲が何時来るのか? 今日来るのか? 明日来るのか? と………脅える日々を送っている。

 

まだ、洛陽辺りは大丈夫だったが、辺境の村では家財道具を纏め、大陸の中心部に向かい、逃げだす者達も少なからず出ているようだ。

 

ーーーーー

 

颯馬「我慢比べか………。 取りあえず、三方から向かってくる敵陣営の道程は把握出来ているのかい?」

 

伯約「はい! 西涼は馬寿成様率いる西涼勢三万が待機! 月様と詠殿、翠殿、蒲公英殿達と共に出向しております!」

 

颯馬「策の準備は?」

 

伯約「はっ! 敵軍勢の通る街道に砦を築き上げ、全面に『幕』を垂らしております。 敵が近寄れば、直ぐに幕の端を、前方に打ち込んだ杭に掛けるようにしてあります!」

 

颯馬「幕を、砦と地面の高低差を利用して、『坂』を作りだすのは出来たんだな? 竹の動きもどうだ?」

 

伯約「はい! 『竹』も先を炙り(あぶり)、少し上向きに修正しました! そのため、幕に引っかかる事もなく、前方に飛び出します!!」

 

颯馬「後、水を大量に用意する事、『木の枝』も多いのに越した事はない!」

 

伯約「はっ! 申し伝えておきます!」

 

颯馬「…………っと、それから、伯約さんに伝えておこう。 絶対に死ぬなよ! 残された者の事を考えて、行動してくれ!」

 

伯約「あっ、ありがとうございます!」

 

颯馬「あの天水の戦いより……ずっと困難な任務を任せてばかり。 申し訳ないと思っているよ。 だけど……情報収集に頼れる者が少ないから………。 早く戦乱を鎮めて、御家族と安全に暮らせるようにするからな!」

 

伯約「きょ、恐縮です……! ではっ!!」──スッ

 

ーーーーー

 

小太郎「………颯馬様! 伯約ちゃんが顔を赤くして、嬉しそうに走って行きましたけど、どうしたんですか?」

 

颯馬「んっ? 日頃の労いと早急に平和実現に向けて誓いを述べたんだが。 

 

………そうか! そうだよな! 『早く戦の無い世を!』と言われば、熱望しているこの世界の者には、喜ばれるのも当然!! その期待を裏切らないように、頑張らないとな!!」

 

小太郎「……………」

 

颯馬「…………何か報告かい?」

 

小太郎「………颯馬様! 今回はどうか、お傍に控えさせて下さい! 何か嫌な予感がするんです! 北条の母様より頼まれていますし! どうか!!」

 

颯馬「あぁ、いいよ! 今回は小太郎をこっちに残すつもりだったから…」

 

小太郎「わぁ~い!! ありがとうございます!!」ガバッ! スリスリ

 

颯馬「胸に擦り寄せて来なくていいから!!!」

 

ーーーーー

 

三太夫「旦那! 何進の旦那と御妾御一行、無事成都に到着したぜ!」

 

颯馬「おいっ!! とんでもない発言してると……矢が飛んでくるぞ!!」

 

三太夫「へっ! 忍びの俺を出し抜く技が出来るかってんだ! それより、銅鏡を更に三つ配置。 『牛、小刀、藁、模様が書いた赤い布』って……これも準備したけど、例の策の付属物かい?」

 

颯馬「これも策の内さ! 異民族なら、さぞかし驚く事になるだろう!!」

 

三太夫「天城の旦那も性格悪いねぇ………ムッ! よっと!」パシッ!

 

颯馬「どうした?」

 

三太夫「おいおい───本当に矢が飛んで来やがったよ! この窓が一カ所しかない部屋の中で、俺一人を狙ってかぁ!?」

 

颯馬「大変じゃないか! 早く謝れ!!」

 

三太夫「いや……これは俺への挑戦と見た! 犯人が、どこに隠れているか、一丁探ってやるぜぇ!!」──スッ

 

颯馬「おいっ! 三太夫! 三太───!!」

 

と、声を掛けたが……既に遅く……姿が見えなくなった。

 

心配したが、アイツも一流の忍びだ! 何とかするだろう!

 

俺は……そう思い直すと、決戦への策謀を練り直した。

 

 

◆◇◆

 

【 久秀の考え の件 】

 

〖 兗州 鳥巣 鳥巣砦 にて 〗

 

左慈「久秀! 五胡の奴らが不満を漏らして、煩くなってきたぞ! 獲物を待たせてお預け状態だ! かなり荒くなってやがる!!」

 

久秀「そこを何とかするのが、貴方の役目でしょう。 観察して報告するのであれば、貴方じゃなくても出来るわよ?」

 

左慈「その慰撫も限界だと言ってるのだ!」

 

于吉「左慈の慰撫を受けながら、このような仕打ち! 憎き五胡共ですね……! 左慈に成り代わり、私が天誅を───!!!」

 

順慶「もしかしたら、老師の懲罰を受けたい為、再度反抗する可能性も!」

 

于吉「………と思いましたが、話せば分かり合える同行の士……の可能性もありますね!?」

 

左慈「言っちゃ何だが……そんな輩の中で……何故俺が無事だと思う!?」

 

順慶「于吉の考えは扨置き(さておき)、動かす頃合いに丁度良いのでは? このまま放置しても、勝手に動き出すのは分かりきっているのに、何か支障があるのですか?」

 

久秀「かの三人の調教が……思わしくないの……。 『カンウ』が出来たから『チョウヒ』、『コウチュウ』、『バチョウ』の玩具を作るつもりだったのに……自我が消えないのよ!」

 

順慶「もしかして、五虎将を作る気………って『チョウウン』は?」

 

久秀「作らなくても、既にいるじゃない!」

 

ーーー

 

于吉「………私ですか? いやぁー、困りますね!」

 

左慈「黙ってろ! 『混ざるな危険!』と言う格言を知らないのかぁ!!」

 

ーーー

 

順慶「………はぁ?」

 

久秀「コホン! ……………貴女よ、順慶! この世界の趙雲を倒せば、貴女を名乗らせてあげる。 …………因縁あるんでしょう、あの将とは?」

 

順慶「そうですが……別に名乗る気もありませんわ! 第一この世界は破壊されてしまうのに、何故名乗らなければいけませんの! 久秀の配下になど、なりたくも、なろうとも思いもしないですし!!」

 

左慈「………言うの忘れていたが、俺の氣の影響だろう。 俺の氣を分け与えてやったから、久秀の術に耐性が出来たんだ」

 

久秀「そういう事は早く言いなさい!! どうするのよ! 無駄に時間掛かった割に、全く成果が得られなかったなんてぇ!!」

 

于吉「大丈夫です。 自我は残りますが、久秀殿の命令を着実に実行するよう、術を掛けておきますので。 ただ、『カンウ』と同様な働きは、一切できません。 多少常人を上回る働きは出来ますが………!」

 

久秀「あぁ~残念!! 劉備のように五虎将率いて、戦いたかったのに!」

 

順慶「意外ですわね? てっきり……董卓のように『酒池肉林』の悪逆非道な行いを目指すかと思ったのですが…………それに、統一してもこの世界は、破壊されますのよ? 分かっておいでですの?」

 

久秀「分かっているわよ───そんな事! だからこそ、この機会に行うのでしょう? それに、勘違いしてるようだけど……正史の劉備は久秀と同格かそれ以上よ? かの英傑は『厚黒学』……面の皮が厚い事で有名なの!

 

劉備のように、底辺から相手を見据え、己と玩具の才覚と知識でのし上がり、徐々に権力を掌中に握る! そして、相手が格下と油断した隙を突いて倒した時の快感!! 『下剋上』……あぁっ! なんと、甘美で良き響きかぁ!!」

 

順慶「はいはい………現実世界に戻りなさいな!」

 

久秀「くっ、于吉に毒されてきたわ!///// 

 

さて、戯れ言は此処までにして……。 それじゃ……進軍を開始させるのよ! 三方同時進行を命じて『西涼』、『成都』、『交州』への進軍を行いなさい!!」

 

◆◇◆

 

【 孫呉 対 山越 の件 】

 

〖 江東 雪蓮居城 にて 〗

 

冥琳「雪蓮、交趾郡太守『士燮』から報告だ! 山越を含む異民族各地で一斉蜂起し合流、そのまま南海郡番禺へ進行! その兵数───百万!!」

 

雪蓮「ふ~ん? 颯馬の報告がこれを差していたようね………」

 

冥琳「間違いないだろう。 それに交趾郡太守『士燮』が『わざわざ』連絡を入れた………。 本来なら異民族から真っ先に攻撃を仕掛けられる官軍代表が、敵に見向きもされずに悠長に報告を送る………か」

 

穏「失礼しま~す!! 冥琳様! 将の収集掛けましたので、直に皆さん集まってきますので、謁見の間にお集まりを願いますー!!」

 

小蓮「姉様! 大変な連絡が入ったのよ!!!」

 

蓮華「姉様! 冥琳! 大軍が此方に向かっていると!!!」

 

雪蓮「今、冥琳から報告を貰ったわ!!」

 

冥琳「………穏! この竹簡を読んでみろ!」バッ!

 

穏「はいはい! 失礼しますぅ~! ………………………随分とのんびり屋な太守様ですね? 敵軍勢が領土を行き交うのに、竹簡へ詳細をこれだけ書ける余裕があるなんてー。 尊敬しちゃいますよー!!」

 

雪蓮「で……答えは?」

 

穏「孫呉と裏の人物を秤に掛けた両面外交ですねー!」

 

冥琳「やはりか………。 あの男も有能なんだが……面従腹背過ぎるのが玉に瑕だ。 周りが強国に囲まれているとはいえ、こうも日和見が多いと領国経営にも支障を生じりかねん! 何とかせねば!!」 

 

雪蓮「それじゃ……この機会を逆に利用して、交州を孫呉の領地に加えてちゃおうかぁ!!」

 

『───────────はぁ!?』

 

★☆☆

 

〖 交州 南海郡 番禺周辺 にて〗

 

東は獅子洋(川)が流れ、南は珠江と呼ぶ湾岸が広がる平野部。

 

バサバサッ! ゴワーゴワー! 

 

シュー! ギャギャギャギャ! ピシャン!

 

辺り一面が、丈の長い葦等の草が伸びつつ、干潟が一面に見渡せるために、野鳥や渡り鳥達が餌場にしたり、休みの場所として利用していた。

 

そんな長閑な場所に突如現れた『百万の人』!

 

初めは驚き、何十羽が飛び立った………。 しかし、自分達に危害が加えられないと知るや、少し離れた場所で羽を休める。

 

『脅かすんじゃねぇ!』と言うような………警戒の眼差しを見せながら。

 

ーーーーー

 

その軍勢から、二人の男が現れる。

 

一人が費桟……山越の首領。 尤突と比べると背丈が半分しかない小柄の男だが、割れ鐘をつくような大声を出す小太りの五十代男。

 

もう一人が尤突……同じく山越の首領。 八尺(約184センチ)の背丈を誇るが、かなりの痩せ型。 口数は少ないが、熱が入ると饒舌になる五十代の男。

 

費桟「左慈と言う小僧が言っていた事、端っから信じていなかったが……まさか、ここまでの軍勢が集まるとは………」

 

尤突「………アイツは強かった! 強き者に従うのは我らの作法!」

 

費桟「……孫呉、いや孫家は先代が戦死した事でケチがつきやがったぜ。 袁術様に取り込まれ、反董卓連合に加わるが、実質の負け戦! そして、新たな戦いには、洛陽勢の加勢あったお陰で、押し返したと言うじゃねえかぁ!!」

 

尤突「あの左慈が、今は亡き軍師『司馬仲達』様直属というのが不思議だが、我らに接したのも縁! ここで、山越の恐ろしさ思い知らせ、孫呉の領土を我ら『南越国』と建て替えてやろうではないか!!」

 

費桟「意気込むのいいが、この大軍! 動きが鈍くなって困るんだよぉ! 

 

それで…だ! 俺達は首領が二人いる。 少数精鋭で山場を越え、荊州桂陽から進行! もう一方の軍勢は、そのまま進行して交州を突ききり揚州東候官に侵入する!! 勿論、盗った獲物は自分達の者! ……悪くない話だろう?」

 

尤突「いいだろう! 俺が………山越えの軍勢か?」

 

費桟「お前が山側の山越の長、俺が海側の長! それぞれの利点を重んじたやり方じゃねえかぁな!? まぁ……はははっ! 決まったからにはこの辺りで野営しようか? 士燮の野郎も酒や肴を沢山用意してくれたからなぁ!!」

 

☆★★

 

〖 交州 交趾郡 士燮屋敷 にて 〗

 

交趾郡太守『士燮』……交州に地盤を持つ豪族だったが、若き頃洛陽に遊学するなど勉学をし、数々の役職を経て、交趾郡太守の役職を命じられた。

 

だが、この男の持つ領土の利点《 貿易による多額の利益 》が、他の強国より狙われ、有名な話では……劉焉でさえ思い腰を上げて動いたという。

 

狙いは利益と共に『動物の耳』だと噂が一時流れたが…………。

 

ーーーーー

 

士燮「いやいやいや、本日も冷えますなぁ~! あぁ! 例の献金! ご用意しておりますに! ささっ、どうぞどうぞ!!」

 

恵比寿顔でにこやかに対応、いつ何時訪れても揉み手擦り手で、愛想が良い。

 

本日も『金が必要だから、融通を利かせろ!』と申し込んできた山越兵に、腰を低くして対応。 その良さに、何時ものしかめ面も笑顔になる。

 

だが……この男。 献金しても………ただでは転ばない! 

 

士燮「ほぅ!! 二手に分かれて攻め寄せる! それは大変おますな! ささっ! グイッと呑んで呑んでぇ!! それで、皆さん大変でしゃろが……どちらへ向かうんどす!?」

 

山越兵「………これは秘密だがぁ………お前だけに漏らすが、誰にも言うなよ! 『えぇ!! そりゃ口避けても喋りませんよぉ!』………よし! 行き先は……………………」

 

こうして、山越兵の進路方向が、その日の内に雪蓮へと伝わる。

 

士燮………別名『揉み手擦り手で指紋を消した男』

 

この男が笑顔で迫る時、得をしたように見えて、大損をするが決まった……兆候だという。

 

◇◆◇

 

【 策の準備 の件 】

 

〖 交州 南海郡 番禺周辺 にて 〗

 

《 昼過ぎ (午後3時) 》

 

今、雪蓮達は……居城より軍勢を進軍し、番禺周辺の小高い山の上より、山越の軍勢を様子見していた。 士燮の所には、既に場所を知らせている。

 

冥琳が反対したのだが、雪蓮は強硬に命じた。

 

勘が『大丈夫』と告げているそうだ………………。

 

時期が冬の為、火が焚きたいのだが、敵に見つかる恐れがあるため、厚手の服を重ね着する事で対応。

 

兵達には焚き火を許可してあるが、分散して遠くで暖を取るように指導していた。

 

ーーーーー

 

雪蓮「『揉み手擦り手の士燮』より伝令が来たわよ!」

 

冥琳「その異名……何とかならないのか?」

 

雪蓮「無理よ! 本人が名乗ってる訳じゃないんだから! 周辺の者達が名付けるんだから仕方ないの!」

 

小蓮「でもぉ……本人次第だもんねぇ………」

 

蓮華「そんな話は後にして、山越の軍勢は……どう行動するそうですか?」

 

雪蓮「あの干潟寄りで野営するんだって。 これって好機よね、冥琳?」

 

冥琳「これ以上、颯馬の策を最大に活用出来る場所は無い!! 雪蓮! すぐに軍勢を三部隊に分ける! 戦闘開始時刻は早朝! 場所は左の干潟に一万、右の山中腹に一万、中央に一万五千! 残り五千は別の策を申しつける!!」 

 

蓮華「分かったわ!」

 

穏「お任せ下さい!!」

 

小蓮「まっかせてぇ!!」

 

雪蓮「思春! 頼むわね!!」

 

思春「はっ!」

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

 

〖 番禺 干潟周辺 にて 〗

 

《 夜 (午後8時) 》

 

 

焚き火を数カ所で燃やし、暖を取りながら呑み交わす。

 

山越兵「前祝いだ! 英気を養わなければ、先が持たんぞ!!」

 

山越兵「金もたんまり貰ったしになぁ!! アハハハハハッ!!」

 

尤突「俺達も………乾杯!」

 

費桟「それぞれの勝利を祝ってな!」カン!

 

ガヤガヤガヤガヤ! ドンチャンドンチャン!

 

ーーーーー

 

〖 番禺周辺 山上 にて 〗

 

雪蓮「私も呑みたいな…………」

 

冥琳「呑むなら勝ってからにしろ!!」

 

ーーー

 

蓮華「ひゃ、百万の大軍……うぅぅ…………人、人、人と(掌に人文字を書く)……ペロッ!」

 

穏「蓮華様~? その呪いなんですか~?」

 

蓮華「緊張した時に行えば、緊張が解けるって颯馬から……」

 

穏「へぇー! 良いこと聞きましたぁ!! 穏も後でやってみます~!!」

 

蓮華「穏に緊張なんて……あるのかしら?」

 

ーーー

 

小蓮「ZZZZZZ………」

 

思春「シャオ様! 寝ている場合じゃありません!!」ユサユサ

 

★☆☆

 

〖 番禺 干潟周辺 にて 〗

 

《 夜中 (午前2時) 》

 

山越勢天幕内

 

山越兵「ヒック! 呑めねえぇ! 呑めねえぇよぉ!」

 

山越兵「うーん! ムニャムニャムニャ~!」

 

費桟「ゴガァァァ───────!!!」

 

尤突「スゥ─────────!!」

 

ーーーーーー

 

〖 番禺周辺 山上 にて 〗

 

冥琳「そろそろ頃合いか! 蓮華様、思春! 干潟へ移動! 小蓮様、穏は山側へ向かえ!! 法螺貝も忘れず持っていけ! 雪蓮! お前は合図があるまでここだ!! ここにいろ!!! 」

 

雪蓮「私、これでも王よ! そんな事……命じなくたって!」

 

冥琳「一度は、男の為に投げ出そうとしたお前が───何を抜かす? それから、皆、焚き火より焼け石を持って行く事。 布に巻きつけて、身体に付けておけ!」

 

穏「これって冥琳様の判断ですー? 凄いじゃないですかぁ?」

 

冥琳「颯馬に教えて貰ったのだ!」

 

ーーー

 

思春「蓮華様! こちらです!」

 

蓮華「ありがとう! 思春!」

 

ーーー

 

小蓮「───ほらぁ! 穏! 急ぐ急ぐ!!!」

 

穏「ま、待って下さい~い!!」

 

ーーー

 

〖 番禺周辺 街道沿い 移動中 にて 〗

 

《 夜中 午後3時 》

 

雪蓮「さぁ! やるわよぉ!! お酒呑めなかった分──存分に!!」

 

冥琳「まだだ! 後方部隊! 『旗』と『太鼓』は用意したか?」

 

孫兵「はぁ……白い布を三十枚、桶の底を抜いて、革を貼り付けた物で宜しいのですか?」

 

冥琳「充分だ。 合図があれば、旗を一気に押したて、太鼓を打ち鳴らせ!」

 

孫兵「はっ!!」

 

◆◇◆

 

【 源氏の戦い の件 】

 

〖 番禺周辺 干潟 にて 〗

 

《 朝 ( 午前6時 )》

 

朝日が……………顔を出した。

 

まだ、気温が低く、吐く息も白いが………身体は熱い。

 

私達が、音を立てないように、干潟をゆっくり移動して配置についた。

 

敵軍勢………百万! 対する孫呉の軍勢は四万。 

 

祭が私達の勝利を信じて、守備兵力を数千しか居城に残さなかった。 しかし、近くに華琳が、三十万の兵を準備して………万が一に備えてくれている。

 

 

『私に独立を許可しておいて、出たら孫呉が滅びました! そんな風評が流れると嫌だから……守るのよ!!』

 

 

顔を赤くして、説得力が余り無い話を早口で喋る覇王。 確かに信じていいかも……と心で笑うのだが……目の前の敵を見ると、そんな余裕も無くしてしまう。 

 

 

『颯馬……………私に力を!』 

 

 

私は先程、行った呪いを……もう一度してから、相手側を見る。

 

殆どが……緊張感なく……だらしなく寝ている様子! 見張りの姿も見えず、隙など有りすぎる程! 

 

私は、前代未聞の……この戦いに……勝利の確信を得た!!!

 

★☆☆

 

ドオオオォォォーーーーーーーン!

 

ドオオオォォォーーーーーーーン!

 

 

太鼓の音が二度響く!

 

山越兵「ん? なんだぁ?」

 

何人かの山越兵が寝ぼけ眼で顔を上げる!!

 

 

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

 

 

干潟から、山側から、街道からーーーー聞いた事がない『音』が聞こえる!!

 

山越兵「て、敵? な、なんだぁ!!」

 

山越兵「か、怪物! 物の怪!? ────あ、あれは!?」

 

 

 

バサバサバサバサ!!! バサバサ────!!

 

バサ━━━━━━━━━━!!!!!

 

 

 

干潟で羽を休めていた渡り鳥が、法螺貝の音に驚き飛び立った!!

 

山越兵「なんだぁ━━━━━!! 何があったんだあ───!」

 

費桟「ごがぁぎゃあああああ━━━━━!!!」ドスドスッ!

 

尤突「いつまで寝てやがる! 敵が来たぞ!!!」

 

山越兵「敵だ!! 干潟から数万の軍勢がぁぁ───!!」

 

山越兵達は大混乱に陥った!! 酒の壺を数人で取り合ったり、槍の穂先と石突きを間違えて構えたり、果ては同士討ちまで!!

 

★★☆

 

〖 番禺 近辺の山腹 にて 〗

 

穏「法螺貝! もう三度! 吹いてぇ!!!」

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

穏「私達は突撃です! えぇ~と『逆落とし』でぇすー!!」

 

小蓮「シャオの力! 食らいなさあぁぁぁい!!!」

 

穏、小蓮達が山の中腹より駆け降りる!!

 

ーーーーー

 

〖 番禺周辺 干潟 にて 〗

 

蓮華「思春! 私達も!!」

 

思春「はっ! 法螺貝! 二度だ!!」

 

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

ブオオオオォォォォ━━━━━━!!

 

 

蓮華「私に続けぇ!! 行くぞぉぉぉ!!!」

 

思春「この鈴音と共に──あの世へ渡れ!!」 

 

ーーーーー

 

〖 番禺周辺 街道沿い にて 〗

 

雪蓮「こっちも法螺貝! 一度! だけど、大きく長くお願い!!」

 

 

ブオオオオオオオオオオオオ━━━━!

 

 

雪蓮「孫呉を侮りし憎き者共!! この孫呉の力、思い知るがいい!!」

 

『ウオオオオオ━━━━━━━━!!!』

 

 

孫呉四万! 

 

百万の敵に奇襲を仕掛けた、乾坤一擲の戦いであった!

 

ーーーーーー

 

後世、この話を聞いた学者が、『ギャラルホルンの言い伝えは、この戦を元にしている!』と発表し、諸説紛々で……今でも決着が付かないらしい。

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

まずは、本文で登場します《交趾郡太守『士燮』》は、同じTINAMIの作者様である赤糸様のキャラとは、モデルは同じでしょうが、中身は全然違いますので、ご理解をお願いします!

 

『天馬†行空』は作者も好きですので、応援しております!!

 

策は、ご存知の方ならわかると思いますが『富士川の戦い』を元に、こうなりました。

 

この話は、もう少し続きます。

 

また、宜しければ読んで下さい。

 


 
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