No.701784

IS レギオン 第5話

駿河さん

ゆっくりと更新します

2014-07-18 21:09:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:824   閲覧ユーザー数:814

簪は一人鬱蒼とした森の中に入っていった。一応虫除けを体に吹きかけて、小さめのショルダーバック(内容物:懐中電灯,水筒、タオルなど)を肩にかけてのんびりとした歩き方で好きな歌詞を口ずさみながら森林浴を楽しんだ。

簪「はあ、森の空気って気持ちいい、疲れとか嫌なこととか忘れられる。」

と満足そうに歩いて行った、暫くすると小さな小川があった。すると喉が渇いていた簪は、小川の水を少し掬い喉を潤した。

簪「うん、とっても美味しいな。あれ、なんだろうあの祠?」

すると、小川の反対側にこじんまりとした祠が目に飛び込んできた。

 

 その祠は、まるで斜面に埋め込まれている様な格好で佇んであった。その祠は、なにか不思議な雰囲気が周りに流れていた。

簪「なんだろう、不思議な感じまるで私を呼んでるみたい。ちょっとだけ、はいってみようかな?でも、閉まっているかも。」

と小川に点在している石を飛び石代わりに祠の入り口まできた。

 

 祠の近くまで来たときに気が付いたが、その祠は、鍵の類が全く無く誰でも簡単に入れるようで扉の間から風が流れているようで、時折カタカタと音がしていた。

簪「入っていいのかな?少しだけならいいよね。」

と思いながら、ゆっくりと扉を開けた。扉の中は、湿っているのかとても涼しいが、視界が真っ暗だった。簪は、持っていた懐中電灯で足元を照らしながらゆっくりと進んでいった。

 

 暫くすると、開けた場所にたどり着いた。そこは、少し広めの部屋の様な処だったが、此れといった物が無く、ただ部屋の片隅にラグビーボールより大きな石が天に向かって真っすぐに立っていた。

 

 それが、簪の運命を左右するとは知らずに。

祠の広い場所は、天井が吹き抜けになっており、天井は木々に覆われ、簡単には見付らない様になっていた。簪は、この祠にこんな広い部屋があることに驚いた。

簪「こんな処が在ったなんて知らなかったよう。」

と周りを懐中電灯で照らしながら言った。その時、目にふと飛び込んできた。一つの物体に焦点が合わさり、其れに吸い寄せられるように近づいて行った。

簪「何だろう、この石?」

と興味と好奇心に打ち勝てず、不意に石の頂点を触れた。

 

 その時、まるで何かに怯える様に森の中の鳥たちが騒ぎ出し、空に向かって、何百匹と飛び立った。簪は、ヒッと身がすくんだ。そして、石の様な物が大きく振動し、きれいに真ん中に割れた。

簪「何,何、何なの、何で勝手に割れるの?」

と混乱、少しだけ後ろに後ずさった。

 

 すると、これが石の様な物なものでは無く、卵だと分かった。なぜなら、割れた石から変わった色の膜に絡まれた変わった生き物が姿を現した。

簪「生まれた!でも、こんな生き物見たことがない。」

と素直に驚きと感動に包まれた。

 

その生き物は、体長1メートル程の巨大なカタツムリのような外見と体を覆う殻からは触手が何本か出ており、口の様な物が全く見当たらない生き物だったからである。しかしながら、簪は、その異様な生物にまったくと言っていいほど動ぜず、まるで何らかの力に導かれるように自分から歩み寄っていった。

 

 この後、簪が自分の身にこれから起こる事など微塵も思うっていなかった。それが大きな人生の転換点とは知らずに。

 簪は、そいつに近づき、ゆっくりと観察した。そして、バックから持ってきた水筒についているコップをそいつに飲ませようとして、気が付いた。

簪「何か、可愛いな。でも、口とかがないなあ。」

と言葉をそいつが理解したのかわからないが、一部の触手を動かした。すると、動かした触手の先端から鋭利なナイフのようなものを出した。

 

「ザシュ。」

と金属製の水筒を易々と貫き、中の中身を吸い込んでいった。それと同時に金属製の水筒をまるでアルミ缶のように凹ました。

 

簪は、目の前の光景を驚き、

簪「なにこれ。」

と呟いたが、なぜかそいつの事が愛おしく、思えて不思議だった。そして、まるで、母親のようにそいつの顔を優しく撫でていった。

 

簪「大丈夫、怖くない、お腹が空いたのね。」

と言いながら、また撫でていった。すると、そいつはまるで、簪に自分の名を決めてほしいという感じの目線を送った。

簪「名前がほしいの?分かったよ、ええっと、どんな名前がいいかな、イージス?違うなぁ、イリちゃん?ウウンッ、これもなんか違うなぁ、ウウンと、そうだ!イリスっていう名前でいいかな?」

と聞くと、そいつはうなずく様な仕草をした。

簪「イリスでいいの?分かったよ。君の名前は、イリスだよ!」

と喜んだ、

 

 そして、ある空間にある時計の針がまた、時を刻むような音を出したことなんて,簪には、判らなかった。

簪は、暫くの間イリスの頭部を優しく撫でていた。すると視線を下の地面に戻すと、何かが埋っている事に気がついた。

「何だろう、これ?」

と少しだけその埋っている物を掘り返していった。そして出てきたものは、少しだけ普通の勾玉よりも長い形で、まるで何かの爪の様な形であった。

 

 すると、その勾玉から緑色の光が漏れてきた。

「何だろう、とってもあたたかい気持ちになる、それにイリスの気持ちが理解できる」

と上気した顔で簪は呟いた。それ呼応するかのようにイリスが触手を地面にしっかりと付けて体を浮かせた。そして、頭を簪に向けて、何かを訴えてきた。その時、イリスの頭部が若干光っていたのには、簪は気が付かなかった。

「何、イリスそんなに見つめないでよ、体が火照ってくるよ。」

と、光っている勾玉を持ちながら、立ち上がりながら、火照った体を涼しくしようと、服のボタンを外していった。

 

 するとイリスが、身震いを起こしながら、簪を包み込むように触手を広げた。簪は、イリスが、まるで自分を包み込むのが判るかのように、少しずつふらふらと近づいて行った。

 

 そして、イリスと簪の距離がゼロになり、完全にイリスが、簪を包み込んでいった。

 

 それが、簪にとって歓喜と絶望を生むなど知らずに。

ポチャン,ポチャンと何処からか水滴が垂れる音が聞こえてきた。

「う、うんん」

と声が漏れる、すると、倒れていた簪の閉じていた瞳が開いてきた。

「あれ、私、なんでこんなところで倒れているんだろう?頭がフラフラする気持ち悪い、今何時だろう?」

とポケットから携帯を取り出し、時刻を確認すると少しずつ立ち上がり、元のキャンプ地にフラフラと頼りない足取りで戻っていった。

 

 しばらく歩いていると、気分が少しずつ良くなってきたと思えてきた。そして、

「お姉ちゃん、ただいま」

と笑顔で簪は報告した。

「あら、簪ちゃんお帰り、遅かったわね。もうすぐ、夜ご飯だそうよ」

と刀奈は、笑顔で答えた。すると、刀奈は、簪が今まで身に着けていない物に気が付いた。

「あら、簪ちゃんその首に掛けている物はなぁに?」

その言葉を聞いた簪は、首から下げている勾玉に気が付いた。

「あれ、こんなの身に着けていたっけ?」

と少し困惑したが、刀奈が、

「似合っているわよ。」

と返したのであまり気にしなかった。そして、二人仲良く手をつなぎながら、両親が待つ処に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 薄暗い森の中

 

 祠からキャンプ地に戻る道、ここは今死体の山なっていた。小さな爬虫類から大型の熊や猪、鹿などの野生動物が死体の道と成り果てていた。しかもそれらは、骨と皮だけとなっており、暫くして、調査に入った者の報告だと内臓や細胞片すらなく、文字通り中身がすっからかんであり、どのようにしてそんな事が出来る生物がいるか。など議論を呼んだ。

 

 

 さて、いよいよ物語の時間がとてもゆっくりに、しかし着実に時を刻みながら、進んでいった。

 


 
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