No.701040

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第四十六話


 お待たせしました!

 五胡により幽州が陥落し、涼州・益州においても

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2014-07-15 20:17:17 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:6552   閲覧ユーザー数:4661

 

 ~冀州にて~

 

「それでは公孫賛殿は民達を逃がす為にわざと敵陣の中に突入したという事なのですね?」

 

 劉備と華雄が陣を張る前線に到着した月は劉備に話を聞いていた。

 

「はい、私達は白蓮ちゃんに頼まれて避難する人達の誘導と護衛の任に当たっていたので

 

 すけど…五胡の軍勢の動きが予想より早く、白蓮ちゃんは時間を稼ぐ為に敵中に突撃し

 

 ていったんです。私達もすぐ応援に行こうとしたんですけど、幽州に入ろうとした時に

 

 兵士さんが来て『助けは無用、これ以上は来るな』との伝言を受けたんです。それでも

 

 助けに行こうとしたんですけど、もう既に五胡の軍勢が近くにまで来ていて何とか防衛

 

 の陣を張ったと同時位に華雄さんの援軍が来てくれたので此処まで押し返す事が出来た

 

 のです」

 

「むしろもっと奥まで進もうとしたのですが、諸葛亮と鳳統に『今の状況ではこれ以上進

 

 むのは危険』と言われて、ならばどう進むかと協議していた所で月様がご到着されたと

 

 いう状況なのです」

 

「それは賢明な判断でした。そのまま突き進んでいたらおそらく敵に包囲されて今頃は殲

 

 滅されていたでしょう」

 

 劉備と華雄の言葉に月はそう答えると目の前の地図に眼を落す。

 

「現在、五胡の軍勢は占拠した北平を中心に軍を展開させています。我々の取るべき道と

 

 しては、まず幽州に入った所に橋頭保を築いてそこから徐々に包囲殲滅を行っていこう

 

 と思いますがどうでしょう?」

 

「これだけの兵力があるのです、そのような生温い事などせず一気に北平を落として五胡

 

 の奴らを駆逐してしまえば良いではないですか!」

 

 月の作戦に真っ先に異議を唱えたのは…言うまでもなく華雄だった。

 

 

 

「華雄…確かに兵は集まったけど、もはや敵地同然の状況になっている幽州に闇雲に入っ

 

 ていったってこっちが殲滅されるだけでしょう!駆逐するにしても、もう少し手順がい

 

 る事位分かりなさいよ!」

 

 そして詠に即座にそう言われてしまう。

 

「詠ちゃんの言う通り、ただ馬鹿正直に正面から戦っていてはこちらの損害も計り知れま

 

 せん。幽州を奪い返した後の事もありますので最小の損害で最大の効果が出る方策を考

 

 えてからでも決して遅くはありません。いいですね、この戦は焦った方の負けです」

 

 月のその言葉に皆が頷いていたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「劉焉…どういう事だ、これは!」

 

 所変わってこちらは北平を占拠した五胡の陣である。この軍を束ねているのは劉焉を保

 

 護している部族長であったのだが…幽州の制圧こそうまくいったものの、城に入ってみ

 

 れば人もいなければ物資もほとんど空っぽであり、物資や人の略奪が目的で参加した他

 

 の部族の軍からの不平不満が高まっており、それがこの部族長に全て向けられていたの

 

 で、それをまた劉焉にぶつけているという状況であった。

 

「も、申し訳ありません…しかし此処は幽州の州都、必ずや何処かには隠してある兵糧が

 

 あるはずですので…」

 

「ならばさっさとそれを見つけてこい!何度も言うが役立たずの老人を飼ってる余裕など

 

 無いというのを忘れるな!」

 

 

 

「くそっ、何故儂がこのような目に…しかし何故兵糧も人も全くないのだ?まるで我らが

 

 来るのを予想していたかのように綺麗さっぱりと…まさかな、考え過ぎか」

 

 劉焉はそう一人ごちながら歩いていた。そこに、

 

「…劉焉様、ただいま戻りました。こちらへ」

 

 孟達がやってきて劉焉を物陰に引っ張る。

 

「おお孟達、待ちわびたぞ。それで、首尾はどうだ?」

 

「…ようやく首を縦に振ってくれました。しかも主力の大半が各地に散っている今が好機

 

 でもあると」

 

「そうか、ならばそちらは任せると伝えてくれ」

 

「…かしこまりました。それでは…」

 

「…くっくっく、劉弁の奴めまさか留守を狙われるなどとは夢にも思うまい。見ておれよ、

 

 今度こそ儂が玉座に座る時ぞ」

 

 劉焉は一人そうほくそ笑んでいたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「…以上が劉焉様よりのお言葉だ。そして勝利の暁にはお前を大将軍に任ずるとも言って

 

 おられている」

 

 二日後、孟達がいたのは司州と并州の境の辺りに巣食う黄巾の残党の根城である。孟達

 

 は劉焉に協力してくれる者達を求めて何度もやってきており、ようやくこの二千程の兵

 

 力を持つ残党軍を味方に引き入れる事に成功したのであった。

 

 

 

「ほぅ…大将軍ねぇ、それは随分と豪気な事だな。でも本当に俺達が決起したら他にも続

 

 く奴らがいるんだな?」

 

「…無論、皇帝に不満を持っている者は大勢いる。その者達が一斉に決起するのは間違い

 

 ない」

 

 残党の頭領はそれを聞くと笑みを浮かべる。

 

「そうか、でも何人起とうが一番の手柄は俺達になるって事をちゃんと覚えておけよ」

 

「…当然だ、それ故の大将軍叙位の約束だ」

 

「なら俺達は準備出来次第すぐ行動に移るからな」

 

 ・・・・・・・

 

「…ふふん、賊徒風情が大将軍などとおこがましい話だ。悪いがそれはこの孟達が受ける

 

 事になっている…精々我らの為に働いてくれ」

 

 孟達はそう呟きながら来た道を戻ろうとしていたのだが、

 

「へぇ~、やっぱ何かいろいろしてたんは、あんたかい。やっと見つけたで」

 

「…!?誰だ!」

 

 突然かけられた声に戸惑いの声をあげる。

 

「やっ、どうも初めまして、ワイは及川いいます。よろしゅうに」

 

「及川…何者だ!?」

 

「何者いう程のもんちゃいますけど…あえて言うならあんたの同僚の張松を捕まえた男と

 

 でも申し上げておきましょか」

 

 及川のその言葉に孟達の眼は驚きに見開かれる。

 

「なっ、まさか…それじゃ」

 

「はい、ワイは衛将軍北郷一刀の下で諜報部隊の長をしてるもんですわ。そういうわけで

 

 ワイが何しに来たかは分かってますわな?」

 

 

 

「ちっ…一体何処から?」

 

「まあ、あんさんが并州に入った辺りからですかな」

 

 その言葉に孟達の頭の中は混乱の極みになっていた。

 

「なっ!?嘘だ、だったらもっと前に『ああ、それは誰があんたらに与するのかを見る為

 

 にわざと此処まで泳いでもらっただけですわ』…ぐっ」

 

「とりあえずご同行願ってもええでっしゃろか?ちなみに拒否権はあらしまへんけどな」

 

 それを聞いた孟達は腰の剣を抜く。

 

「あらら、おとなしゅうしててくれればそんなに痛い目見んでも良かったですのに」

 

「…ふん、お前と会話をしている間に周りの気配を探らせてもらったが、お前以外は誰も

 

 いないではないか。ならば此処でお前を斬り捨てれば良いだけだ」

 

 孟達はそう言うなり及川に向かって突進するが、及川はそれをかわす。

 

「おおっ、危なっ。でもええんですか本当にそないな事して?これ以上はあんさんが怪我

 

 するだけでっせ」

 

 孟達はその質問に答えずに再び及川に斬りかかろうとするが、

 

「そこまでです!」

 

 背後から現れた周泰によって一撃で昏倒させられる。

 

「周泰はん、おおきに。これ以上は避け切れんかったかもしれんでな」

 

「そうですか?及川様も、あれだけの身のこなしなら後三回位は大丈夫そうに見えました

 

 けど?それに及川様がわざとあれだけ大仰に動いてくれたのでまったくこちらには気付

 

 かれませんでしたしね」

 

 周泰がそう言うと、及川は『勘弁してぇな』みたいな顔で笑っていた。ちなみに及川は

 

 輝里より『おそらく劉焉は主力不在の洛陽を攻撃しようと画策するでしょうから司州周

 

 辺で怪しい動きをする者を見張れ』と指示を受け、念の為に孫権より護衛役として周泰

 

 を派遣してもらっていたのであった。

 

 

 

「そうか、及川の方はうまくいったか」

 

「はい、及川様は孟達を洛陽に連行した後でこっちに来るとの事です。それと劉焉に与し

 

 ようとした賊どもは黄忠様と郭嘉様が鎮圧されましたので」

 

 よし、これで留守の洛陽は一安心だな。

 

「ならば俺達は予定通り益州・涼州の応援に向かう。蒲公英と風は涼州へ向かい馬騰さん

 

 の指示に従ってくれ。後は俺と共に益州へ」

 

 蒲公英と風は不満気な表情を見せたが『益州の鎮圧が済み次第、涼州に行くから』とい

 

 う約束で涼州へ行ってもらったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「そうですか、やはりこの一連の動きは劉焉が画策していたのですね…」

 

 成都に入ってすぐに俺はこれまでの事を鈴音に報告すると少々伏し目がちに彼女はそう

 

 呟いていた。幾ら追放したとはいえ、父親が敵にいるというのはやはりこたえるものは

 

 あるという事なのだろうか。

 

「さあ、鈴音様。まずは益州に入ってきた五胡の軍勢の対処ですね」

 

 話をそらすそうに摩利さんがそう話しかけると鈴音は頷いて地図に眼を落とす。

 

「現在、五胡の連中はその数およそ十五万、西方の境目にあるこの城とその周辺の数ヶ村

 

 を占拠してさらに侵攻せんとしております。我らは桔梗と李厳に三万の兵と共にこの地

 

 まで出張ってもらって防衛陣を張ってもらっている状況です」

 

「ならばこっちの取る作戦としては防衛陣に兵力を増強しつつ側面より奇襲をかけて殲滅

 

 する…という所でどうでしょう?」

 

 輝里の提案した作戦に皆が同意したのでそれにそって行動を決める事になった。

 

 

 

「では、曹操さんと孫権さんの軍勢にはこのまま進んでもらって防衛陣に加わってもらい

 

 ます。その間に俺達は奇襲部隊としてこちらに」

 

「待って、私達は此処まであまり出番が無かったんだし、此処は奇襲部隊に混ぜてもらい

 

 たいわね」

 

 俺が曹操さんと孫権さんに説明すると、孫権さんは同意してくれたが、曹操さんはそう

 

 申し出て来る。

 

「しかし幾ら奇襲とはいえ相手は十五万、こっちは防衛分を除くと俺達と益州勢を入れて

 

 もおよそ七万、不利な状況には変わりありませんよ?」

 

「だからこそ、そこに私の二万を加えればより成功率が上がるってものでしょ?」

 

 ふむ…どうやら曹操さんは引く気は無いようだな。俺はそう思いながら輝里に眼をやる

 

 と、彼女は頷いていた。まあ、輝里が同意したのなら…。

 

「分かりました。なら曹操さんにはこちらに加わってもらいます。輝里、代わりに桔梗さ

 

 ん達のいる防衛陣に向かってくれ。それと空様、象がいたのでは奇襲は無理なのであな

 

 たも防衛陣の方へお願いします」

 

「分かりました」

 

「仕方ないな」

 

 こうして輝里と空様が三千の兵を率いて、孫権さんの軍勢四万と黄権さんの兵一万と共

 

 に桔梗さん達の防衛陣へ加勢に向かい、俺達は摩利さん・英美の率いる三万と曹操さん

 

 の軍勢二万、そして自軍の残り一万七千を率いて燐里を道案内に五胡の軍勢が展開する

 

 側面の位置に移動したのであった。

 

 

 

「よし、大勝利だ!皆、よくやってくれた!」

 

 軍を展開してから一刻後、俺は一気に五胡の軍勢に奇襲を仕掛け、五胡の軍勢も最初の

 

 内はまだ戦っていたのだが、防衛陣から空様や桔梗さんが呼応して攻撃を仕掛けてくる

 

 に及び算を乱して逃げ出して行き(どうやら先頭を行く象に恐れをなしたようでもある

 

 が)、一気に益州の外にまで追いやる事に成功したのであった。

 

「何だかあっさり終わった感じがして拍子抜けだがな」

 

「張任殿、まだ敵を壊滅させたわけじゃないのだから気を抜いてはいけないわよ?」

 

「これは曹操殿、ご忠告痛み入ります」

 

 曹操さんと摩利さんがそんな芝居じみた会話をしていたが…確かに態勢は整えておく必

 

 要はあるな。

 

「一刀兄ィ、つまんないにゃ!みぃ達の活躍の場位残しておいてほしかったにゃ!!」

 

 そして戦が終了した直後に到着した美以達が不満そうに騒いでいたりする。

 

「一刀殿、ありがとうございました。皆様が来てくれたおかげでこっちは何とか乗り切る

 

 事が出来ました」

 

「でも敵の首を一番あげたのは摩利さんと桔梗さんだったし、あまり俺達はお役に立てな

 

 かったような気もするけどね」

 

「そんな事は無いですよ。一刀殿が来てくれたからこそ安心して攻勢に出られたというの

 

 もあるのですから」

 

 鈴音はそう笑顔で答える。まあ、役に立てたのなら援軍に来た甲斐もあるのだけどね。

 

 

 

「ともかくこれで益州は大丈夫だろうし、続けて涼州の方へ向かう事にしよう。どうやら

 

 あちらの方が敵の数も多いようだからね」

 

「それはそうでしょうが、ただでさえ一刀殿達は遠征続きで兵達の疲労も溜まっている事

 

 でしょうから、こちらで一日位は休んでいかれた方が良いでしょう。粗末な物ですけど

 

 お部屋の用意は出来てますので」

 

 確かに鈴音の言う通りか…あまり行軍ばかりだと疲れがたまって士気にも影響してくる

 

 だろうし。

 

「ならお言葉に甘えて…皆、明日一日は休息日とする!但し、明後日の朝一番には涼州へ

 

 向けて出発するからあまり羽目を外すなよ!」

 

 ・・・・・・・

 

 そしてその晩、一刀にあてがわれた部屋にて。

 

 久々に寝台で横になった一刀はすぐに寝ようとしたのだが…。

 

「何だか目がさえて眠れない…逆に寝台で寝る事に身体が戸惑ってるとかか?」

 

 とはいえ休まないのも問題だろうし…確か眠れなくても横になって眼を閉じているだけ

 

 でも寝ないよりはマシだとかいう話を聞いた事があったような。ならこのまま眼をつぶ

 

 っていようか。

 

 そんな事を考えていると…うん?何だかこっちに近付いてくる足音がするな…誰だ?

 

 俺は密かに刀を引き寄せ扉に背を向けた状態ですぐに身体を動かせるように整える。

 

 そしてその足音は部屋の前で止まり…静かに扉が開かれる。

 

「一刀殿…やはり寝ておられますよね」

 

 何とそれは鈴音であった。この夜更けに何故彼女が一人で此処に?

 

 

                                      続く。

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回も少し投稿が遅れまして申し訳ありません。

 

 とりあえず今回は益州から五胡を排除する事に成功

 

 しましたが…何やら最後に発生しました。

 

 果たして鈴音が何しに来たのかは次回にて。

 

 というわけで次回はこの続きからです。

 

 

 それでは次回、第四十七話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 一応次回は18禁的な展開がある予定…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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