No.701002

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その22

2014-07-15 16:56:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5758   閲覧ユーザー数:1310

『闇に平伏セ、魔風塵(まふうじん)

 

「霊符『夢想封印』」

 

暗黒竜の姿となった“誘いの鍵”、その最上部。

 

アザゼルの周囲を浮遊していた無数の剣は一斉に風の斬撃を放ち、ガルムは即座に無数の魔力弾を生成してから弾幕を張り、お互いの攻撃を相殺。爆発によって発生した煙で何も見えない状態が出来上がったものの、二人は互いの居場所を気配で察知していた。

 

「…そこぉ!!」

 

『グ…ヌンッ!!』

 

「のごわ!? チィ…おんどらぁ!!」

 

飛び出したガルムがアザゼルの胸部に蹴りを炸裂させるも、アザゼルは彼の足を即座に掴み取って真下に叩き付ける。そのまま浮遊していた無数の剣がガルムに向かって飛来するも、ガルムは倒れていた状態から素早く起き上がって一本目の剣を拳で粉砕し、二本目の剣を強引にキャッチ。手元から抜け出そうとする剣をガルムは力ずくで振り回し、飛んで来る剣を次々と跳ね返していく。

 

『爆ゼろ、魔刃剣』

 

「!? おっと…!!」

 

アザゼルの詠唱に気付いたガルムが剣を手放すと同時に、手放された剣や周囲の剣が一斉に爆発。ガルムが爆炎に包まれている中、アザゼルは足元の魔法陣から禍々しい形状の大剣を出現させる。

 

『無駄にシブトイ奴め…』

 

「悪かったな。これでも俺、実力には自信があんだよ」

 

爆炎の中に立っていたガルムは両手を翳し、周囲の爆炎を操ってから巨大な火炎弾を生成。それを見たアザゼルも大剣を構え、その全身からドス黒いオーラを放出する。

 

『ナラばその自信、この場デ打ち砕イテみせよウ…!!』

 

「はん、思い上がってんじゃねぇよポンコツ鎧が…!!」

 

『…ハァッ!!!』

 

「うぉらあっ!!!」

 

アザゼルの振るった大剣とガルムの放った火炎弾がぶつかり合い、更に大きな爆発が発生する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『オォォォオオォォォォォォォォオォォオオオォォォォォォオオォォォォッ!!!!!』』』』』

 

「ちょ、コイツ等しつけ…ぬぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「支配人さん!? くそ、邪魔を…!!」

 

一方、“誘いの鍵”内部では支配人達の戦闘が更に激化していた。巨人兵は支配人とディアーリーズを押し潰そうと剛腕を振るい、タイガーロイドを始めとする強豪怪人達も全力でその二人に攻撃を仕掛け、活性化した亡霊達はまるで流星群のように二人に向かって降りかかっていた。何とかこの状況を打破したい支配人とディアーリーズだったが、目的の巨人兵は想像以上に頑丈で、怪人や亡霊達の妨害もあって全く進展が無い。

 

『痛イ!! 痛イ!! 助ケテ、助ケテ、助ケテエェ…!!』

 

『パパ、ママ、何処ニイルノ? 痛イヨ、苦シイヨ、ココカラ出シテヨォ…!!』

 

「ッ……彷徨える迷い子達に、魂の救済を…!!」

 

Gホーリーライトの詠唱と共に支配人の周囲が光り出し、その範囲内にいた亡霊達が一瞬で浄化。浄化された亡霊は大人しくなったものの、まだまだ多くの亡霊達が彼等に襲い掛かって来る。

 

「駄目だ、数が多過ぎる…!! ディア、まだ行けるか!?」

 

「何のこれしきですよ……雲雀さん達の苦痛に比べれば、どうって事…!!」

 

「…あぁ、だろうな」

 

『喰ラェ!!』

 

立ち止まった二人に向かってタイガーロイドが連続で砲撃を放ち、二人はその場から大きく飛んで回避。そのまま巨人兵の顔面まで飛来し、支配人が巨人兵に向かって『Gホーリーライト』を発動するが…

 

『オォォォォォォォオォォォォォオオォォォォォォオオオオォォォッ!!!』

 

「うぐぁ!?」

 

「ウルさん…!!」

 

「ぐっ!? くそ、やっぱり駄目だ、魔力が足りねぇ…と!!」

 

Gホーリーライトを持ってしても、巨人兵に取り込まれた亡霊達の浄化は出来なかった。巨人兵はすかさず二人を殴り飛ばし、ディアーリーズは美空のいる結界に激突し、支配人は着地すると同時にスタッグビートルオルフェノクの振るった杖を防御する。

 

「そして何より、コイツ等が邪魔過ぎる!!」

 

『『グワッ!?』』

 

「それは確かにそうです…ねっ!!」

 

『グルルルルル…!!』

 

スタッグビートルオルフェノクをサドンダスにぶつけてから、支配人は手に持ったブレイラウザーでガーゴイルレジェンドルガを一閃。ディアーリーズも自身の身体を一瞬だけ液状化させ、アルビノレオイマジンの振るったモーニングスターを回避する。そして液状化が解けた瞬間、ディアーリーズの背後からビースト・ドーパントが襲い掛かり、彼の顔面を爪で斬りつける。

 

『ヌゥン!!』

 

「がっ!? く…!!」

 

「ウルさんに…手を、出さないで!! 時間回復(リカバリー)!!!」

 

「! 美空さん、ありがとうございます!」

 

『ガァ!?』

 

しかし美空の刻盤(タイムレコード)のおかげで時間がすぐに巻き戻され、ディアーリーズの頬の傷も瞬時に回復。驚くビースト・ドーパントをウォーロックソードで一閃してから、ディアーリーズは結界内にいる美空と視線を合わせる。

 

「待ってて下さい。雲雀さんは、必ず助けます」

 

「ッ……必ず、帰って来て…お母さんと、一緒に…!!」

 

「…はい、必ず!!!」

 

『ギギッ!?』

 

ディアーリーズは美空に笑顔を見せてから、サイコローグの頭を踏み台に飛び出し再び巨人兵の下まで駆け出して行く。

 

(そうだ……美空さんにも、雲雀さんにも、これ以上苦しい思いをさせる訳にはいかない…!!)

 

『グゥッ!!』

 

ドラスの放つエネルギー破も華麗に回避し、更にライノセラスビートルオルフェノクをも殴り倒す。

 

「今度こそ、守り通すんだ……雲雀さんとの約束を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ、面白そうな状況になってんじゃねぇかよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「―――ゑ?」」

 

ドスの利いた低い声。それを聞いた支配人とディアーリーズは、急に汗がダラダラと流れる。

 

「い、今の声は…」

 

「せっかくだ……俺にも何匹か、食べさせろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「「やっぱりZERO(さん)かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」

 

彼等の真上から、ZEROの変身した仮面ライダーガオウが落ちて来た。彼は着地と同時にズ・ザイン・ダをガオウガッシャーで斬りつける。

 

「よぉ、餌共。大人しく俺に喰われろや…!!」

 

『ナ、何ダ貴様!? 我等ゴーストショッカーヲ嘗メルナァッ!!』

 

「ふん…!!」

 

『ギギ…ギガァッ!?』

 

「…近くにいた、お前が悪い」

 

タイガーロイドが砲撃を放つも、ガオウは近くにいたサイコローグを盾にする事でそれを防御する。その所為でサイコローグがダメージを受けてしまったが、そんな事はガオウの知った事ではない。

 

『フンッ!!』

 

「ほう、ファントムまでいやがんのか……お前、俺に喰われてみるか?」

 

『!? グ、ォ…ガァ……カ、ァ…!?』

 

『ナ、カーバンクル!?』

 

「!? あいつ、ファントムを…!!」

 

「ちょ、何やっちゃってくれてんですかZEROさん!?」

 

飛び掛かって来たカーバンクルの拳も左手でキャッチし、ガオウはそのまま左手を通じてカーバンクルをエネルギー状にして吸収してしまった。タイガーロイド達が驚く中、ガオウは面白そうに左手をゴキゴキ鳴らしている。

 

「良いなぁ、新しい力が漲って来るぜ……オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

『『『『『ガァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』』』』』

 

「待てZERO、こっちの事も考えろアホォ!?」

 

「うわ、ちょ…のわたたたたたた!?」

 

「あ…!」

 

ガオウが唸り声を上げた瞬間、彼の全身が光り出しいくつもの魔法石を放出。それで怪人や亡霊達は一気に押し退けられ、支配人やディアーリーズも慌てて流れ弾を回避。その中で美空は足元に落ちた魔法石に気付き、すぐにそれを拾い上げる。

 

「うわぁ~またやっちゃってるよZEROさんったら~!」

 

「ん…フィア!?」

 

「ごめんレイ、お待たせしちゃったねー!」

 

そんな状況の中で、支配人の前にフィアレスが降り立って来た。

 

「いやぁ~ここに来るまで苦労したよ! 鍵がいきなり黒い竜になるわ、亡霊達が凶暴化するわ、向かってる途中でZEROさんに見つかってここまで連れて来られるわ、散々だったよ」

 

「おいおい、本当に行動が読めねぇなZEROの奴……まぁ良い。フィア、早速頼むぞ。状況を打破するには魔力が足りない」

 

「ほいほい、ラジャー!」

 

「行くぞ!!」

 

フィアレスは高いテンションのまま支配人に憑依するような形で融合し、支配人が大剣を掲げると共に全身が光り出す。そして光が収まったそこには、全身が黒い鎧に包まれ、竜のような兜を被った支配人の姿があった。

 

「この姿も久しぶりだ……フィア、調子はどうだ?」

 

『体力も魔力も万事OK、力の方もブルーゾーンだよ!』

 

「うし、なら問題ないな」

 

『姿ガ変ワッタトコロデ何ニナル!!』

 

「おっと……クロックアップ」

 

『ナ…ガギャアッ!?』

 

タイガーロイドの砲撃も身体を逸らすだけで回避し、支配人は再びクロックアップを発動しタイガーロイド達を攻撃。その後はすぐにクロックアップを解除し、瞬時に巨人兵の前まで移動する。

 

「ディア、もたもたするな!! 先にこのデカブツを浄化するぞ!!」

 

「は、はい!! でも他の奴等は…」

 

「喰われろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

『『ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』』

 

「…ZEROがいるから問題ねぇだろ」

 

「…確かに」

 

『流石ZEROさん、本当に暴れん坊だよねぇ』

 

フィアレスの突っ込みはともかく、ZEROがガオウとして乱入して来たおかげで怪人達の妨害を心配する必要がなくなったのも事実。ガオウが怪人達を抑えている内に、自分達は一刻も早く巨人兵の中に取り込まれている亡霊達を浄化しなくてはならない。

 

『オォォォォォォォォオオオォォォォオォォォォオオォォォォォォォッ!!!』

 

「遅ぇよ!!」

 

「ほっ!!」

 

『!? ヴォォォォォォオォォオオォォォォォッ!!』

 

巨人兵の振るった拳を難なくかわし、その拳から腕の上を素早く登っていく支配人とディアーリーズ。それを見た巨人兵は口から黒い炎を吹き出すも、ディアーリーズの繰り出した水魔法で掻き消される。

 

「ディア、ちょっくら時間稼いでろ!!」

 

「支配人さん、何を…!?」

 

「もっかいホーリーライトをぶちかます!! ただし、今度は飛びっきり莫大な魔力を込めてなぁ!!!」

 

『ヴォォォォォォォォ…!!』

 

≪ジャイアント・ナウ≫

 

『オォォォォオォォオオォォォォ…!?』

 

「させませんよ……あなた達の為にも…雲雀さんの為にも!!」

 

支配人は手に持った大剣を構えたまま宙に浮かび、大剣の刃先に魔力を集中させ始める。それを阻止しようと巨人兵が拳を振るうが、割って入ったディアーリーズが巨大化させた右手でそれを防いでみせる。

 

「ぐ、くぅ…う……まだまだぁ…!!」

 

巨人兵が持つ圧倒的なパワーに押されかけるも、ディアーリーズは持ち前の根性でそれを耐え、巨大化させた右手で巨人兵の拳を押し返していく。すると巨人兵は口から黒くて巨大な火炎弾を放ち、ディアーリーズを焼き尽くそうとするも…

 

『!? オ、ヴォォォ…!?』

 

ディアーリーズに向けて放った火炎弾が、途中でピタリと止まってしまった。美空が刻盤(タイムレコード)の力で時間を停止させたのだ。

 

「ウルさん!!」

 

「!! よ……こいしょおっ!!!」

 

≪ハンマー・ナウ≫

 

『ヴォオオォォォォオオォォォォオォォォ!?』

 

ディアーリーズは魔法陣から召喚した巨大ハンマーを使い、空中に止まった火炎弾を巨人兵に向かって打ち返した。打ち返された火炎弾はそのまま巨人兵の顔面に命中して爆発し、巨人兵が怯んで動けなくなる。

 

「支配人さん、今です!!」

 

「よぉし、こっちも準備は出来た!!」

 

ちょうど支配人も、魔力の充填を完了していた。右手にはアークコアの填められた大剣、左手にはキングラウザーが持たれている。

 

「お前等の力も貸して貰うぜ、キング……ウェイ!!」

 

『ヴォオオォォ…!?』

 

二本の剣から放たれたエネルギー波が巨人兵の全身を拘束、そのまま巨人兵の足元を巨大な金色の魔法陣が封じ込める。

 

「こんだけデカい魔法陣だと、術式と魔力を組み込むのに時間がかかっちまうからな……この一発で決めてやるよ!!」

 

支配人が二本の剣を真上に掲げ、巨人兵を拘束していた魔法陣が輝きを増していく。

 

「彷徨える迷い子達に、魂の救済を……Gホーリーライト!!!」

 

『ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ…!!?』

 

詠唱と共に魔法陣から放出された光が巨人兵を飲み込み、取り込まれた亡霊達が次々と邪気を祓われ浄化されていく。それは雲雀やクレアも例外ではなかった。

 

「ほっと!」

 

「! 雲雀さん!!」

 

巨人兵はあっという間に消滅し、浄化された亡霊達は周囲に離散。その中でクレアは支配人に、雲雀はディアーリーズによって受け止められる。

 

「!! お母さん…!!」

 

「今は眠ってるだけ、これでもう大丈夫な筈です」

 

「クレアの方も、問題は無さそうだ」

 

『安心安心、だね』

 

眠っている雲雀とクレアは美空がいる結界内に寝かされ、美空は雲雀の姿を見て安堵した表情になり、それを見たディアーリーズと支配人も思わず笑みが零れる。

 

「さて、喜んでばかりもいられない。早くアザゼルを止めなきゃならん」

 

「絶対に止めましょう……これ以上、あんな奴に好き勝手なマネをさせる訳にはいきません」

 

「あぁ、そうだな。美空ちゃんは二人を連れて、早く外に」

 

今度こそ、アザゼルと決着をつけなければならない。支配人とディアーリーズはお互いの顔を見合わせてからコクリと頷き、自分達が最初に飛び込んだ真上を見上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに…

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハハハハ!! そうだ、もっとだ、もっと俺に喰わせてくれよぉっ!!!」

 

『『『『『グギャァァァァァァァァァァァァァッ!?』』』』』

 

『オ、オノレ…グワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』

 

離れた位置で、ガオウが未だに怪人達を弄んでいたのは言うまでも無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、高層ビル屋上…

 

 

 

 

 

 

『ヌ、グゥ…!!』

 

たった今、クリムゾンとジェネラルシャドウの決着がついたようだった。クリムゾンがあまりダメージを受けていないのに対し、ジェネラルシャドウは全身が傷付きボロボロの状態で膝を突いている。

 

『ハァ、ハァ……見事、だ…そなた程の実力者と戦えて…私は、とても嬉しく思うぞ…!!』

 

「あぁそうかい、満足出来たようなら何よりだ。俺はどうでも良いけど」

 

『そうか…………まぁ良い、冥土の土産だ。一つ教えておいてやろう…』

 

「あん?」

 

ジェネラルシャドウは上空を浮遊している“誘いの鍵”を指差す。

 

『あの竜は、外部からの攻撃を一切受け付けん。あの竜は常に、奴と一心同体となっておるからな…』

 

「一心同体だぁ? おいおい、そりゃどういう事だ。てか奴って誰だオイ」

 

『こちらから言える事、は……ただ…それ、だ…け……だ…』

 

「あ、ちょ、おいコラ!? 勝手に消えんじゃねぇ!!」

 

クリムゾンの呼びかけにも反応せず、ジェネラルシャドウは粒子となって消滅。粒子の中から人魂のような物だけが飛び出し、“誘いの鍵”まで飛び去って行く。

 

「…何だってんだ?」

 

ジェネラルシャドウの言っていた事の意味が分からず、クリムゾンは首を傾げる事しか出来ないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グガァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

「く、コイツ…!!」

 

別の場所では、二百式がバットオルフェノクと死闘を繰り広げていた。しかしバットオルフェノクの方は“誘いの鍵”の影響で凶暴化しており、二百式も複数の銃火器を扱いながら戦いを生き延びていた。

 

『グルルルルルッ!!』

 

「ぬぉ!? くそ、また狙いが正確になってきたか…!!」

 

凶暴化しているバットオルフェノクは二丁拳銃から連続で弾丸を発射し、凶暴化前よりも更に正確な射撃を繰り出すようになってきた。二百式がライフルで応戦するも、バットオルフェノクは二百式の放った弾丸をヒラリヒラリと回避しては彼に向かって接近していく。

 

(遠距離だとかわされるか……ならば!!)

 

バットオルフェノクが至近距離まで迫って来た。近距離ならそう簡単にはかわせまいと、二百式は素早くライフルの弾倉を入れ替えてからその時を待つ。

 

『グルァッ!!!』

 

(来た…!!)

 

目の前まで迫って来た。二百式は構えていたライフルをバットオルフェノクに向けようとしたが…

 

『―――グルァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

「な、何…がぁっ!?」

 

突如二百式の目の前で、バットオルフェノクが巨大な蝙蝠の姿―――“飛翔態”へと変化したのだ。突然の変化に想定外だった二百式はバットオルフェノクに咥えられる形で捕まり、そのまま宙に舞い上がろうとする。

 

「この……離せ!!」

 

『グガッ!?』

 

そんな状況でも、冷静に対処してみせるのが二百式。彼はホルスターから抜き取ったハンドガンでバットオルフェノクの顔面に数発ほど弾丸を当て、怯んだバットオルフェノクは口に咥えていた二百式を離したまま真下へ落下していく。

 

「よっと……どうした蝙蝠野郎? ほら、かかって来いよ」

 

『ギギギ……グガァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』

 

地面に着地した二百式が挑発し、バットオルフェノクはそれに釣られたかのように二百式に向かって猛スピードで突撃。鋭利化した翼を羽ばたかせ、すれ違い様に二百式を切断しようとしたが…

 

「終わりだ」

 

すれ違い様に切断されたのは、バットオルフェノクの方だった。二百式が太刀を鞘に納めると同時にバットオルフェノクの身体も縦に真っ二つとなり、そのまま地面に落下する。

 

「最初はなかなか冷静だった癖に、パワーアップした途端に俺の挑発にも乗るようになった。そうなった時点でお前の負けは確定していた」

 

二百式がそれだけ告げたところで、斬られたバットオルフェノクは地面に倒れたまま少しずつ灰となっていき消滅。灰の中からは人魂だけが飛び出し、そのまま“誘いの鍵”の方まで飛び去って行く。

 

「…ぐっ」

 

バットオルフェノクの最期を見届けてから立ち去ろうとした二百式だったが、突然腹部を押さえて地面に膝を突く。二百式が服を捲ると、彼の腹部は2、3発の銃弾によって貫かれた状態で多量の血を流していた。

 

(アイツ……凶暴化した状態でも、ここまで正確な射撃をこなせるとは…!!)

 

「オルフェノクとやらも、伊達ではない……か…」

 

二百式はその場に倒れ、ゆっくりと瞼を閉じて一時的に眠りにつく。そんな彼の下に、竜神丸が転移して姿を現す。

 

「こんな所で寝られるとは、対応に困る事をしてくれますねぇ。二百式さん?」

 

呆れたように呟いてから、竜神丸は気絶した二百式と共にその場から転移するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…」

 

『ハァ、ハァ…』

 

ショウとガドルも、決着をつけようとしていた。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
4
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択