番外編 獅子なる守護者
「
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
体内で擬似魔力回路たる『刻印虫』が暴れまわり、自分の肉を貪り食らう
しかし肉を対価に体内の虫は俺に魔力を与える
この蟲を操る魔術を嫌悪して俺は間桐の家を出奔した
俺の背後では妖怪―俺の記録上の『父』である間桐臓硯が目尻を下げて怪しく嗤う
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者―――」
妖怪め、桜ちゃんの為で無ければこんなこと絶対にするものか
桜ちゃん、というのは俺の義理の姪―性格には俺の幼馴染である遠坂葵の娘だ
彼女は実の父である遠坂時臣によって、この醜悪な間桐の家に養子に出されてしまった
そこで行われていたのは大量の蟲による凌辱の日々―
ギリッ
知らず知らずのうちに悔しさで歯軋りしてしまう
俺が知っていれば、間桐の魔術を葵さんに教えていたものを―
「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。」
後一節、後一節だというのに虫達に貪られ続けるこの体は言うことを聞かなくなっていく
喉の奥から鉄臭い血液がこみ上げてくる
抑えたつもりだったが、抑えきれずに口の端から滴り落ちていく
「ッ…汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれっ!天秤の守り手よ―――!」
召喚の詠唱を唱え終えると同時に、体内の刻印蟲が一層激しく暴れまわり肉を代価に魔力を生み出す
その苦痛に耐え切れず口から血を吐き、地面に倒れ付してしまう
だが魔力が魔法陣に持っていかれ、魔方陣は発光する―自分の目で直接見ることは敵わないが、薄暗い蟲倉が照らされた事でそれが分かった
やった、成功した―!
やがて魔方陣がズズズ…と重々しい音を立て、サーヴァントが出でくる
そして、頭上から俺に向かって、問いが投げかけられた
「―問いましょう。貴方が僕を召喚したマスターですか?」
少年の、声
およそ何かを成した英雄とは思えないほどの幼い声
辛うじて顔を上に向け、召喚した英霊の顔を伺う
黒い髪色、黒い瞳。少したれ目がちなその目は少年の優しさが垣間見える
そして深い藍色の蔓の眼鏡をかけている
身長は自分が伏せている為に正確な判断は出来ないが、自分より少し低いように見える
その姿は、余りにも普通の少年だった
「…ふむ、之は異な事よ」
ふと背後で静観していた臓硯が口を開く
ぬらり、と暗闇から現れる姿はまさに妖怪だ
「儂はこやつにバーサーカーを召喚させるつもりでおったが、何の因果か召喚された英霊は言葉を解しておる。…さて問おう、サーヴァントよ、主のクラスは何じゃ?」
「…失礼ですが貴方からは令呪の気配を感じません。マスターでない者の質問に答える気はありませんよ。―さて」
サーヴァントが倒れ付した俺に目を向ける
臓硯には興味が無いといわんばかりに
「ここには他に貴方しかいませんね。やはり貴方が僕のマスターということで良いですか?」
「あ…ああ、俺が君のマスター、だ」
途切れ途切れでは有るものの、何とか問いかけに答える
「ではマスター。―あそこにいる化け物は貴方の敵ですか?それとも味方ですか?」
「…化け物?」
サーヴァントのその言葉に臓硯はピクッと眉を吊り上げる
「ど…どう言う…ことだ…?」
「僕はサーヴァントです。貴方に危害を及ぼす者がいるなら排除するつもりですよ」
俺の問いかけにサーヴァントは一瞬の逡巡もせずに即答する
「かっかっか、面白いサーヴァントよ。―彼我の技量差も見極められぬ腑抜けとはのう。落伍者のお前には似合いのサーヴァントじゃて。のう?雁夜よ」
臓硯が手に持った杖で蟲倉の床をカンッ!と叩く
軽い音が蟲倉に響くと同時に、床を這いずる様な音や羽音、顎を鳴らすような音が無数に聞こえてくる
「儂が雁夜の敵?儂は雁夜の父親じゃぞ。味方であれこそすれ、敵などありえんじゃろう?」
そう嘯く臓硯の背後には大量の蟲が隊列を組んでいた
牛骨すら噛み砕く『翅刃虫』や桜ちゃんを凌辱していた虫など多種多様の虫がサーヴァントを襲わんとしていた
それは露骨な威圧。俺に『臓硯は敵ではない』と言わせようとしているのだ
ガチガチと歯が鳴る。体が震える
そんな俺を庇うようにサーヴァントは前に出る
「大丈夫ですよ、マスター。貴方は僕が守ります。それが僕の専門分野ですから」
根拠の無い言葉、だが不思議と信じられるような気がした
後ろから見るサーヴァントの背中は、俺より年下とは思えないほどに大きくて頼りがいがある気がしたんだ
「あれは…俺の…俺達の、敵だ!サーヴァント、あいつを殺してくれ!」
「了解しました、マスター」
「―雁夜、主は選択を誤ったのう」
臓硯がまたも杖で床を叩くと、隊列を組んでいた虫たちが一斉に俺達を喰らわんと襲い掛かってくる
ヴヴヴヴヴヴと言う羽音が耳障りだ
「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト、『
しかし飛来してきていた虫の大群は、サーヴァントが放った紅い炎の魔術によって焼き払われた
未だに襲い掛かってくる虫もいるが、炎の矢のような魔術で的確に打ち落とし続けている
やがて虫たちの羽音がやみ、サーヴァントの魔術もやんだ頃、蟲倉には虫が焼ける臭いが立ち込めていた
「ほほう…中々にやるではないか、サーヴァントよ。どうだ?そのような落伍者より、儂と契約をせぬか?その雁夜はもう半年と持たぬ体よ。そやつと組むより儂と組んだ方が勝ち残れる確率は高いぞ」
「―ふっ、笑止ですね」
臓硯の提案をサーヴァントは一笑に付する
そして右手で左腕を掴んだかと思うと、左腕が十字架が描かれた大剣へと変化した
「僕のマスターはこの人です。そしてマスターに命じられた以上―サーヴァントはその命令を果たさなければいけませんよね?」
「―――――」
臓硯が絶句する
―どこで間違えた?儂はどこで間違えたのだ?
儂はここで死ぬはずではない
儂は不老不死を手に入れなければならないのだ
―何のために?
そういえば、不老不死を…永遠の命を求めたのは何故だったろうか
確か、何か目的があったような―
「退魔ノ剣」
サーヴァントが、呆然としている臓硯に大剣をズグリと突き刺す
大量の蟲によって構成されたその体は、剣が突き刺さったところから崩れていく
―サーヴァントも雁夜も知らないことではあったが、偶然にも臓硯の本体である蟲を退魔ノ剣が切り裂いていた
つまり間桐の妖怪、間桐臓硯―もといマキリ・ゾォルケンという魔術師は、この時永遠の眠りに付いたのだった
「さて、敵を排除したところで改めて自己紹介と行きましょうか、マスター」
サーヴァントが剣を担ぎながらこちらを振り向く
驚くほど純粋な笑顔で彼は自分のクラスと真名を明かした
「―僕はエクストラクラスのサーヴァント・
彼は剣を地面に突き刺して、右手で俺に握手を求める
俺は彼の純粋な笑顔に毒気を抜かれ、握手に応じて契約を完了した
【CLASS】
【マスター】間桐雁夜
【真名】ウルティムス・
【性別】男
【身長・体重】170cm前後・54kg
【属性】中立・善
【ステータス】筋力A 耐久B++ 敏捷A+ 魔力EX 幸運E‐ 宝具A+++
【クラス別スキル】守護者B+
他者を守る時、一時的に防御力を上昇させる。B+であれば10人程度であれば軍勢からも守れる
【保有スキル】高速詠唱A 怪力C- カリスマB- 騎乗B 心眼(偽)B 対魔力EX 中国武術A 魔力放出B+ 模倣A+ 魔術A+++ 剣術A+
【宝具】
『
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1人
由来:造物主から授かった『造物主の掟』
魔物を召喚することや、消し去ったりすることが可能。ウルのそれは鍵の形状をした剣である
また使用者に大量の魔力を供給する
『
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ1~10 最大補足:30人
由来:義理の妹との仮契約によって現れたアーティファクト
仮面(普段は顔につけない)のついたマント、右腕にまでマントとつながっている同じ材質のものがつき、左腕は黒色のシャープな鉤爪となる
またこの宝具を封印することで左腕を剣(後述)に転換することも可能
『
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:1人
由来:神ノ道化が進化したアーティファクト
退魔の能力を持つ大剣。幅広の刀身には十字架が現れている
退魔とは言われているものの、その真価は『異能の破壊』。
魔力や気、その他異能力を持つ生物を切りつけると、ギザギザの傷が走りその異能が破壊される
また斬撃のエネルギー刃を放つことが出来る
『
ランク:D~B+ 種別:対己宝具 対象:1人
由来:魔法使いに変身するためのベルト
装着者を仮面ライダーウォーロックに変身させるベルト
ランクが変動するのはウォーロックの上に強化スタイルが存在するため
【スキル解説】
対魔力EX:完全魔法無効化能力が形を変えたスキル。ほぼ全ての魔術を防御可能
模倣A+:コピー能力が形を変えたスキル。魔術や体術を模倣可能
魔術A+++:ネギま!の魔法が世界によって修正されたスキル
剣術A+:京都神鳴流の剣技が形を変えたスキル
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これは一発ネタです
連載は今のところ考えてはおりませんのであしからず、です