七月七日、七夕の日。
ここ空美町もその色に染まっており、あちらこちらに短冊や笹が見られる。
「七夕かぁ…」
「何それ、美味しいの?」
まだここ桜井家はと言うと、そうでも無いらしい。
「ニンフ先輩知らないんですかぁ?プスス」
「う、うるさいわね!そう言うあんたこそ、どうなのよ?」
「そんなの決まってるじゃないですか」
アストレアは自信満々な顔で、その豊かな胸を張った。
「七夕アイスとか、七夕饅頭とかが売られてる日です!」
あながち間違いではないのだが、それは本来の目的ではない。
「あのなぁ、七夕ってのはな。織姫と彦星が結婚し、夫婦生活をイチャイチャと過ごしていたら天帝というお偉いさんの怒りを買い、起こった天帝さんは2人を天の川で引き離してしまった。しかし毎年七月七日だけは会うことが許され、その日に雨が降ってしまうと2人は会えない…というお話だ」
はっきり言って違う。
「転じて、イチャイチャしすぎるリア充は周囲の怒りを買い、一生悲惨な目に会うという事だ」
「へー」
ふむふむ、と大きく頷くアストレア。
たが七夕にそんな教えは無い。
「ま、それとは別に楽しい行事もある」
「何?」
ニンフが興味津々な目で見つめてくる。
「短冊に願いを書いて、笹にかけるんだ」
「タンザク?ササ?」
アストレアは初めて聞く単語に頭を悩ませている。
「そうだな…見た方が早いかもな。こんな事もあろうかと…」
智樹は押入れを開け、そこからスチール箱と物干し竿を出した。
「一応用意しておいたんだ」
その後、買い物に行っていたイカロスとカオスも帰宅し、みんなで短冊に願いを書くことにした。
「願い事、願い事…」
「デルタはあれでしょ、美味しい物たくさん食べたい、とかでしょ?」
「そりゃもちろん…って違います!わ、私だってまともな願いが…」
「書けた!」
カオスは短冊を書き上げ、智樹に見せて来た。
ーー みんなで なかよく くらせますように ーー
「デルタよりまともな事書いてるじゃない」
「私まだ書いてません!」
「マスター、できました」
ーー 世界がスイカでいっぱいになりますように ーー
「……イカロス、カードは絶対に使うなよ」
「?…はい」
シナプスのカードでこんな事を実現させたら…想像するのも恐ろしい。
「できたわ」
ーー 昼ドラが一日中放送されますように ーー
もしそうなれば、もはや昼ドラではない。
「はいはいーい!私も私もー!」
ーー アタマがよくなりますように ーー
「無理だな」
「無理ね」
「ひ、ひどい!でもほら、カタカナが使えるようになったのよ!」
確かに、アストレアにとっては大きな進歩だろう。
彼女に幸あらんことを…
「トモキは?」
「ん、俺か?」
ーー 平和が一番 ーー
平和が一番、智樹が常々言っている彼のモットーだ。
「本当はもっと色々あったんじゃないの?」
「そうそう、スケベだし」
「お前ら俺を何だと思ってんだ!ったく…とりあえず、全員書いたな?飾るぞ」
その後、物干し竿に短冊をくくり、縁側に飾った。
五人分の少ない願いだが、イカロス達エンジェロイドにとっては初めて形で表した願い。
たわいもない願いも、それぞれの持つ大切な願いだ。
そして、皆が眠った真夜中。
彼女達は智樹の顔を思い浮かべながら、本当の願いを天の河に送るのだった…
作者より…
七夕…もう過ぎてますね。
つい忘れていました。気付いたのが8日です。
今年の七夕、みなさんの地域は晴れましたか?
僕の地域は雨でした。天の河見れない…
短冊にはどんな願いを書きましたか?僕は書いてませんが(来年は書いてみようかな?)。
もし書いた方でこの作品を読んでくれたら、きっと天使達があなたの願いを叶えてくれますよ(なんつって)。
読書の皆さんにいいことがありますように!
それではこの辺で、さようなら…
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2日遅れですが、七夕ネタです。