No.699249 【獣機特警K-9ⅡG】彼女の舌はごまかせない【交流】2014-07-07 23:28:12 投稿 / 全7ページ 総閲覧数:764 閲覧ユーザー数:721 |
ここはラミナ市近郊にあるロッターブルク宇宙港。
「はぁ、この荷物をですか…」
宇宙税関の職員が、青ネコ形ファンガーの運送業者に職務質問をしていた。
「ご心配なく。既にそちら様より輸入の許可は得ておりますので」
「ふむ…」
男が出した許可証をしげしげと見つめていた職員は、やがて一息つくと、
「…わかりました。ではこちらへどうぞ」
と、あっさりと男を通したのであった。
それから数時間後、宇宙港からのびる道路の上を、一台のトラックが走っていた。
助手席に座ってタバコをふかしていたのはピンク色のネコ形ロボットの女性だった。
「ふふふん、だから言ったとおりだろ?アタイの言うとおりにしてれば抜けられるって」
「いやぁ、まさかあの許可証が偽物だとも気づかないであの男もちょろいもんでさ!さすがボス!!」
「あっはははは!」
ゴマをする男に、高笑いする女。だが、しばらく道を進んでいくと、道路の真ん中に一人の少女が飛び出してきた!!
「う、うわぁ!?…おい!なに急に止まってンだい!!」
「それが、前見てくださいよ前…」
「前?…あぁ、どこのガキだかねえ?ジャマだ、追っ払ってやりな」
「へい」
女に言われるがまま、男はトラックの外へ降りると、少女の近くに歩み寄り声をかけた。
「あーキミキミ、ダメだよこんなところに飛び出してもらっちゃ。オジさんたちは急いでるんだよ。ね?」
声をかけられた少女は口を尖らせてうなだれながら、
「す、すみません…」
と、つぶやいた。
「さ、わかったらおとなしくおうちに帰りなさい。いい子だから」
「はーい…あ、でも…ちょっといい?ひとつ聞きたいんだけど」
と、少女は顔を上げると、男に質問を投げかけた。
「ああ、なんだいお嬢ちゃん?」
「…このトラックの中…なに積んでるの?」
一瞬男はひるむが、すぐ何事もなかったかのような表情を装って答える。
「ああいや、ちょっと子供には見せられないようなものがいっぱいあるんだ。だから見ちゃいけな…」
と、言いかけたそのときだった。あろうことか、少女はトラックの荷台によじ登り、扉をこじ開けにかかったのだった!!
「あ、こらキミ!やめなさい!!何してるんだ!!」
と、男が止めようとしたとき、助手席にいた女が叫ぶ。
「ちっ!オイ出せ!こんなガキ振り落としちまえ!!」
「へ、へいっ!!」
あわてて男は運転席に飛び乗ると、アクセルを全開にしてトラックを急発進させる。
「きゃあ!?」
あまりの衝撃に思わず悲鳴を上げる少女。
「へっへっ…こんなことしたくはなかったが、あの子も運が悪いよなあ。悪く思うなよ」
と、男がため息をついたそのとき、少女の声が響いた。
「ほんと、運が悪いわよねえ…『アナタたちは』…」
「「なっ!?」」
二人の顔は青ざめる。驚きのあまり、急にトラックを止めてしまう男。
「お、おいアンタ、どうやって中に入った!!」
「そんなの知る必要はないわ。荷台の中身、しっかり改めさせてもらったわよ…これは星間取引の禁止されている違法ドラッグじゃない。これをいったいどこへ移動するつもりだったのかしら?」
その少女の言葉に、女は食って掛かる。
「うるさいガキだね!どこへ運ぼうと知ったことか!だいたい、貿易省の許可証だってあるんだ!ホラ!!」
と、女が見せた許可証には、こう書かれていた。
輸 入 許 可 証
輸入業者名 ランガスト・インポート社
品 目 植物性粉末体 30トン
出 発 港 ××港
到 着 港 ロッターブルク宇宙港
上記の輸入を許可する
XXXX年XX月XX日
ファンガルド貿易省 Department of Trade of Fangard
長官 ジュリィ・アツギ
「どうだ!この許可証がある限り、あたしらの行為は合法だ!ははははは!!」
と、勝ち誇ったように笑う女の頬に、少女は勢いよく平手打ちを喰らわせた!!
「…な、何すんだい!失礼なガキだね!!」
殴られた頬を押さえながら吼える女に対し、少女は冷たい視線を投げかけながら答える。
「あら、失礼なのはどっちかしら。よりによって人の名前を間違えるなんて…」
「人の名前だって!?」
と、男が驚きの声を上げると、少女は一息ついてポケットから小さなカードを取り出した…。
「いい?あたしの名前はジュリィではなく
「な…ま、まさかおまえが貿易省の長官!?」
「フン、知るか。ガキのごっこ遊びだ!」
「あら、じゃああたしの市民IDを読んでみるがいいわ。正真正銘、あたしが貿易省の長官だってわかるから」
と、余裕の表情を浮かべるジュリに対し、男女は明らかに焦りの色を見せていた。
「さっきの荷物もあたしの
「フン、まったく鋭すぎる女だね。こうなったらあの世に行ってもらうしかないな!!」
と、女が銃を抜いたそのとき、ジュリはさらに吐き捨てるように言った。
「…どこまでもバカな人ね。周りをよく見てみなさい」
「な、なにぃ!?」
そう言われた女が周りを見てみると、いつの間にやら無数のパトカーがトラックを取り囲んでいたではないか!!
「動くな!たった今ジュリ貿易長官から通報があった!ムダな抵抗はやめろ!!」
「宇宙貿易条項違反、特定薬物取締法違反の疑いで逮捕します!!」
「ヘタに動いたら…テメエらの頭に風穴が開くぜ!!」
次々に吼えたのは、ラミナ警察署K-9隊の久遠・ココノエ、イシス・ミツザワ、ジョナサン・ボーイングだ!!
「ぼ、ボス…」
「うう、あと一歩だったのに…」
握りこぶしをひざに叩きつけて悔しがる女に、ジュリはさらに一言。
「…ほんと、あと一歩だったわね。名前さえ間違えてなきゃね。まあもっとも、どっちんしろあたしがこの品物の輸入を許可した覚えはないんだけど」
…かくして、税関の目を欺いた薬物の密輸は、一人の少女…いや、『少女の姿をした貿易長官』とK-9隊の手により阻止されたのであった。
数日後、厚木家。
「へえ、そんなことがねえ」
と、事件の顛末を聞いて目を丸くしたの彼はジュリの夫である厚木大樹。
こちらもまた、見た目こそ少年に見えるが食品会社の社長である。
「あの時あっさり通してしまった税関も税関だけど、それにしたってやけにスムーズに行き過ぎててね。ははあんと思って追跡したら案の定だったわ」
「しかし、どうしてあの積荷がドラッグだったってわかったんだい?」
「フフ、そんなの決まってるじゃない大ちゃん。あたしの舌は成分分析用のセンサーになってるのよ。どんなキケンな毒薬だって簡単に検出しちゃうんだから!!」
そう言って舌を出すジュリ。彼女の言うとおり、そのピンク色の舌には無数のセンサーが入っているのだ。
もし彼女が、ドラッグを仮に飲み込んだとしても中毒症状にはまずかからないであろう…。
そう、ジュリはロボットなのだから。
「でも、あんなマッズいドラッグなんかよりも、やっぱりおいしいご飯のほうがいいわねw」
「まあ、それはそうだよね…じゃあ、そろそろユメミも帰ってくるし夕食にしようか?」
「そうねー。久々に家族そろってのお食事ですもの、大ちゃんハンバーグお願いねwww」
「いやいや、それはご贔屓にどうもwww」
…こうして、何事もなかったかのように厚木家の夜は過ぎ行くのであった。
…ファンガルド貿易相・厚木 寿梨。
彼女は今日もまた不正貿易を撲滅するため、小さな身体でファンガルド中を奔走するのだった。
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久々にジュリさん活躍回。
あと、今回はラストで大ちゃんも出るよ!!
■出演
ジュリ:http://www.tinami.com/view/672616
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